京丹後市立久美浜病院 診療部長
Dr. Yasumasa Seo京都の医師コラム

― 専門分野と仕事について
私は学会専門医としては循環器・消化器内視鏡・救急・プライマリーケアなどがありますが、一般内科医として診療しています。ですが、専門科にとらわれず、脳卒中を初めとした神経疾患や糖尿病、呼吸器疾患、時には血液疾患などにも対応しています。
地域の小さな病院ですが、循環器領域では心臓カテーテル検査やPCI(経皮的冠動脈形成術)、ペースメーカーの留置なども行っています。消化器領域では上部・下部内視鏡検査、ERCP、ESD(胃粘膜下層切開剥離術)などにも取り組んでいます。救急では内科救急疾患のみならず、小児診療や外科的な疾患に対応することもあります。私たちは専門領域を大切にしながら、総合的な視点に立って地域のニーズに応えるべく全人的な医療を行ってゆくことを目標としています。
― 苦労すること
私が勤める京丹後市立久美浜病院は小さな病院で、大病院のように専門家が多くいるわけではなく、最先端の医療機器が常に備わっているわけでもありません。その上に若い先生たちが都会の大病院に流れ、地域では医師が不足していますので、多種多様な疾患に対して少人数で対応していく必要があります。技術や知識を身につけるには研修を利用したり、時には都会で開催される学会や研究会に行く必要がありますが、日々の診療の中でも、すべての患者さんを教科書として医療を学んでおります。
また久美浜市立病院は地域の病院ですから、どんな救急の患者さんも断ることはできません。もし私達で対応しきれない疾患や治療方法が必要なときは、峠を越えて大きな病院へ搬送しなければなりません。今でこそトンネルが出来たり道路が整備されたりして搬送しやすくなりましたが、16年前に私が赴任した当時は救急車での長い道のりの途中に急変する人もいて大変でした。地域医療をするということは、身近で大切な人たちに医療を行うこということで、これは非常に大きなプレッシャーでもあります。
― 地域医療の魅力
久美浜は京都北端の地で、美しい自然を有しています。夏は海、冬は温泉、名物はカニです。地域の方々も心豊かで思いやりに溢れており、とても優しく、私達の医療を受け入れてくださいます。
久美浜という場所で地域医療を行う魅力としては、苦労のところで触れたことの裏返しですが、地域医療を行うということは身近で大切な人たちに医療を行えるということ、そして、住民の方々の期待や信頼、責任を負うことで、医師としての絶対的な存在感を感じられることでしょうか。医者冥利につきるとか、そんな簡単な言葉では言い表せない重圧がありますが、その使命に応えることには例えようのない喜びとやりがいを感じます。細分化され、進歩を遂げる医療の中で、地域医療には医療の原点のようなものを感じますね。
― 働く上で心がけていること
「鬼手仏心」…仏の心を持って時には厳しい治療などを行う。 患者さんに苦痛のある処置や治療を行わなければならない時にはいつも心に思っています。
「ChangeすることにChallengeする」…変化することに挑戦していく。 人も地域も生きているものは変化してゆきます。私たちは常にその変化から逃げることなく挑戦してゆかなければなりません。 この2つですね。
― 京都府で働く魅力
たまに、京都が日本海に面していることを知らない人もいますよね。でも、私の住むこの日本海側の丹後地域というのは、豊かな自然と、家族や地域を大切に想う人たちがいるんです。そういうすばらしい場所で働けることが魅力の一つですね。
― 私生活について
基本的に休日も病院に行くことが多いですが、たまの休みには子供とサッカーや将棋をしたりしますね。庭で野菜を作るのも趣味です。また、地区の子ども会の会長でもあるので、学校や地域の行事などは積極的に参加するようにしています。
― 医師を目指したきっかけ
高校の時、近しいところ(家族、知人)に病気で苦しんでいる人がいて、それが医師を目指すきっかけになりました。
― 試験に向けてのアドバイス
やはり、夢を諦めずに勉強することが大事です。私は進学校でもない一般の公立高校出身で、中学・高校はサッカーに明け暮れました。医師を志したのは高校3年生の夏で、浪人という挫折も経験しましたが、諦めずに頑張り抜いて医師になることができました。