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3 トリガイの品種改良に利用した形質と特徴
具体的な品種改良の話に入る前に、予備知識としてトリガイの貝殻の色についてと、トリガイが雌雄同体の貝であることについて説明します。
(1)トリガイの殻色について
通常のトリガイの殻色は赤っぽい褐色をしていますが(写真1、左側)、平成3年、種苗生産した稚貝の中に殻色が黄色の個体を偶然数個体発見しました(写真1、右側)。
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| 写真1 殻色が通常の個体(左)と黄色個体(右) |
この殻色が黄色の貝は、それ以前も以降もこの系統以外には全く見られていません。
殻色黄色個体どうしを交配したところ、その子供の殻色は全て黄色でした。また、殻色が通常の褐色個体と黄色個体を交配したところ、その子供の殻色は全て褐色でした。さらにその子供どうしを交配したところ、その子供のほとんどの殻色は褐色でしたが、黄色の個体が低い割合ですが出現しました。したがって、天然トリガイでは全く見られない殻色が黄色の形質は、劣性の遺伝形質であることが分かりました。
天然で黄色の個体が見られない原因は、この黄色形質を持った個体がそもそも非常に少なく、また劣性の遺伝形質であるためと考えられます。
(2)トリガイは雌雄同体
トリガイは二枚貝では比較的珍しい雌雄同体の貝です。雌雄同体とは人間も含めた一般の動物のように雌雄の区別がなく、同じ個体が卵と精子を同時期に持つもののことです。それでは、雌雄同体のトリガイはどのような産卵行動をしているのかを見てみることにします。
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| 写真2 通常の方法による採卵風景 |
トリガイの種苗生産では、クロアワビ等と同様の紫外線照射海水法により産卵誘発を行います。十分に成熟したトリガイを水槽に並べ、紫外線を照射した海水を掛け流すと、トリガイは精子や卵を放出します(写真2)。その様子を観察した結果を図3に示しました。放精放卵状況は個体ごとに若干異なりますが、そのパターンは放精⇒放卵⇒放精の順で行われ、放精と放卵および放卵と放精との間に2〜6分間の時間差があることが分かります。また、放卵した個体の周辺に別個体が存在する場合は、放卵の刺激により他個体が直ちに放精するということが明らかになっています。このように、トリガイは雌雄同体の貝であっても自分の精子と卵が受精する自家受精の機会をできるだけ少なくしているようです。
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