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4 トリガイの品種改良
(1)新品種の作出方法
それでは、研究方法についてですが、基本的な流れは以下のとおりです。まず、成長・生残が良好で血縁関係が少ない系統を何世代にもわたって選抜します。そして、選抜した系統を交配して、雑種強勢による優良な品種を作出します。なお、雑種強勢というのは両親系統よりも子供の成長・生残等が著しく良好になる現象のことです。
具体的には、こうしたことを効率的に実施するための工夫をしました。まず、選抜する年数を少しでも短縮するために、雌雄同体という特性を利用して自家受精による採卵を行いました(写真3)。少し難しい話になりますが、遺伝的形質が均一になるスピードは、自家受精を行うと通常の交配に比べ著しく早くなり、品種改良期間を大幅に短縮することが可能となります。
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| 写真3 自家受精による採卵風景 |
また反対に雌雄同体のため、交配試験を行った場合でも自家受精が起こる危険性があります。肉眼的には卵だけ放出しているように見えても精子が僅かに混入していたり、最初に放出した精子が貝殻等に付着していてそれらが混入する可能性があるからです。卵と精子を完全に分離して交配に用いることができればその危険性はありません。しかし、卵と精子が混在している中から精子だけを分離することは可能ですが、卵のみを分離することは困難です。卵の直径は約65μm、精子の頭部は約1μmですので、精子より大きく卵より小さい目合のネットを用いることにより、精子だけを取り出すことはできます。しかし、精子は受精前の卵表面に特異的に多く付着しますので卵だけを取り出すことはできません。したがって、交配試験により作出した個体が交配によるものであると断定できません。さらに、作出個体が交配によるものか自家受精によるものかは外観的には厳密に区別できません。そこで、交配が成功したかどうかを簡単に判断するため殻色の黄色形質を利用することにしました。
上述したことを分かりやすくするため、具体的な新品種の作出方法を図4に示し、これをもとに説明します。雌親に用いた殻色黄色個体は、発見してから試験に用いるまで、大きな個体を親に選んで兄妹交配を十数代にわたって繰り返したものです。また雄親には宮津湾で採捕した大型の殻色褐色個体を用い、大きな個体を選んで自家受精による採卵を3世代にわたって行いました。このようにして育成してきた殻色黄色個体の卵に殻色褐色個体の精子をかけ合わせれば、黄色の形質は劣性の遺伝形質であることから、その子供は全て褐色個体になるはずです。しかし、何らかの理由で黄色個体の精子が混入すれば、自家受精によって黄色個体が出現します。つまり、交配種は褐色個体、自家受精種は黄色個体となります。このように、殻色の黄色形質を利用することにより交配が成功したかどうかを簡単に判断することができます。なお、雌親と雄親とを逆にした交配では、交配種と自家受精種との区別が困難となります。
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