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西脇隆俊×山中伸弥 対談企画 ~コロナ後の京都の進む道~

西脇隆俊(京都府知事)×山中伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長/教授)対談企画

~コロナ後の京都の進む道~

京都府のコロナ禍、第1波を振り返って

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西脇:第1波の感染状況を振り返りますと、まず1月30日に1人目の感染者を確認、2月は1人、3月はライブハウスや大学でのクラスターの発生などにより67人の感染者が出て、さらに4月は251人と大幅に増えました。さらには感染経路不明の方が4割に近付き、病床使用率が7割を超え、非常に切迫した状況でしたが、いち早く濃厚接触者を洗い出してPCR検査を実施し、何とか爆発的な感染拡大は抑えることができました。

山中:知事がおっしゃるように、第1波はアメリカやヨーロッパに比べると比較的小さく済んだと思います。ただ、3月〜4月ごろに医療関係者が感じた恐怖といいますか、外来に来られるたくさんの患者さんのどなたが感染されているか分からない状況で「診療するのが恐い」と感じた、あの緊張感は忘れてはいけないと思っています。

西脇:感染拡大防止の観点から、緊急事態宣言とそれに伴う緊急事態措置についてはどのようにお考えでしょうか。

山中:絶対に必要だったと思います。3月ごろまでは、クラスター対策として濃厚接触者を追跡し、何とか広がりを抑え込めていたと思いますが、3月の後半から4月にかけて、感染経路不明の方が増え、街中で誰が感染しているか分からない状況になりました。こうなると、拡大を抑えるには、全員が活動を止め、人との接触を減らすという方法しかありませんでしたから。

西脇:各国から「日本は制限が非常に緩いのにどうして感染者や死者が少ないのか」と言われています。この要因を先生は「ファクターX」と呼んでおられますね。

山中:不思議なんですよね。緊急事態宣言の期間中、日本での外出自粛率はせいぜい6割くらいだったと思うんですよ。一方でニューヨークなどは8割〜9割くらい外出を減らしていましたから、日本はずいぶん緩かった。それでも諸外国のような爆発的な感染拡大には至りませんでした。そこには何か原因があるはずですが、私にはそれが全く分からないので、ファクターXと名付けたんです。でもいろいろ考えると、原因は一つではなく、いくつもの要素が相まっての結果であろうと思っています。しかし何といっても、日本がとった徹底的なクラスター対策がよかったと思います。

西脇:新型コロナウイルスにはまだまだ分からないことが多いです。BCGワクチンの効果であるとか、普通の風邪にもコロナウイルス型もあるから日本人には自然免疫があるなど、いくつか説があるようですね。

山中:確かに、日本ではBCGを含むワクチンの接種率が高いので、ある程度、抵抗力がついているのではないかという考えをお持ちの方もおられます。また、何らかの遺伝子的な原因があるかもしれません。あるいは、最初に中国で流行ったウイルスと、その後ヨーロッパやアメリカで猛威を振るっているウイルスとでは、変異による種類の違いが原因かもしれません。いろいろな可能性があると思います。

きたるべき第2波に備える医療・検査体制

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西脇:第2波については、どういう形でいつ頃やってくると思われますか。

山中:予想は難しいですね。例え新型コロナウイルスの感染者が3月〜4月のように増えなかったとしても、秋冬はそれ以外の風邪やインフルエンザの方が増えますから、体制を整えておく必要があります。一番大切なのは、速やかに検査をすること。希望者全員をやみくもに検査することはできませんが、何らかの症状があって医療機関を受診された方は速やかに検査をして、新型コロナウイルスなのかそれ以外の病気なのかを区別する。これは3月〜4月にはできなかった。だから余計、医療従事者は怖かったのですが、今、時間的余裕のある間にしっかりと対策できるかどうかが一つのポイントだと思っています。

西脇:第1波のときは風邪やインフルエンザが減っていく局面でしたが、秋冬には増えていきますから、我々はそれに備え、医療・検査の体制も整えていきます。また、京都府医師会でも非常に問題意識を持っておられまして、感染が疑われる患者さんの情報を、かかりつけ医が報告し、感染拡大の兆候を早期に発見する「京ころなマップ」というシステムを運用されています。

山中:医師会でも検討されていると思いますが、これからコロナ以外の患者さんも増えていきますので、その対応ができていないと医療崩壊の恐れがあります。油断すると感染者数の割に大きな社会的影響を与えてしまうということになりかねない。

西脇:京都の場合、受入入院病床を431床確保していますが、地域の医療が崩壊しないよう、先日、一旦210床まで縮小して、それ以外は通常医療に戻すことにしました。今後もし感染が拡大した場合、病床使用率が30%くらいになれば、2週間を目処に431床まで戻します。病床の確保は第1波のときになぞらえて、2倍くらいの余裕を持って受け止める形にしますが、医師会等とよく相談して体制を整えたいと思います。

WITHコロナ社会を私たちはどう生きるか

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西脇:医療崩壊を防ぎつつ集団免疫を獲得するまでには、かなりの時間を要します。感染が終息しない、いわば「WITHコロナ」社会をどのように生きていくのか。府民の皆さんのお声を聞くと、不安を感じておられる方が多い一方で、コロナを機に始まった「新しい生活様式」を前向きにとらえている方々もおられます。

山中:京大でもリモートワーク、在宅勤務が始まっています。やってみると、案外いいなということを感じています。先日、学生350人くらいにオンラインで授業をしましたが、むしろ活発に質問が出て、全然違和感がなかったんです。

西脇:今回さまざまな分野においてリモートワークが使えると分かったことで、「改めて東京一極集中を見直し、地方分散の契機に」といった声も挙がっていますね。

山中:いいチャンスだと思っています。私自身の経験でも、リモートで十分に仕事ができると分かりましたから、終息した時に元に戻るのはもったいないです。ずっと東京に人を集めて開いていた会議などが、国のリーダーシップで「リモートでいきましょう」ということになれば、ずいぶん考えが変わるかなと思います。もちろん多くの方がコロナ禍の中で大変な目に遭っておられるのですが、そこで得られた気付きの中から良いところは残せたらと思います。

西脇:一方で、特に京都の場合は、早くから観光に影響が出ました。サプライチェーンも非常に深刻です。WITHコロナ社会における影響についてはどうお考えでしょうか。

山中:普通のウイルスというのは、感染者を苦しめるんですけど、この新型コロナウイルスは社会全体を苦しめています。ただ、今は感染者数がかなり減っている。東京などで2桁の感染者が出る日もありますが、3月〜4月の数字とは意味が違うと思います。あの頃は検査もまだ不十分で、感染が疑われていてもなかなか受けられませんでした。今は症状のない方でも濃厚接触者を積極的に検査していますので、結果的に陽性者数が増えますが、数だけを見てしまうと状況を見誤ると思います。今の東京や北九州は制御できている状態だと思うんですね。もはや街中で誰が感染しているのか分からないという状況ではなくて、かなり限られた範囲で出ている。こういう状況の間は、他の場所、他の業態などは元の状態に近いところまで戻せるんじゃないかと思っています。

西脇:そうですね。例えば観光で言えば、まずは府内、そして国内観光と徐々に戻していこうとしています。今、観光政策で一番重要なのは、訪れる側・迎える側の双方にとっての「安心・安全」です。観光客を受け入れるということは、その方々の感染予防策もするという観点を併せて示す必要があると考えています。

山中:そうですね。仮に観光客の方が京都滞在中に体調が悪くなっても、すぐ診てもらえる場所があるということであれば、安心して京都に来ていただけますからね。

POSTコロナ社会に向けて府民の皆さんへのメッセージ

山中:新型コロナウイルスが襲いかかってきて、もう5カ月近くになります。感染した方はもちろん、国民全体に大変な影響を及ぼしています。おそらく、あと1年、場合によっては2年くらい付き合っていかないといけないと思います。今、一番大切なのは、日本人の得意とする助け合い、支え合い、励まし合うこと。こういう状態が続くと、私もそうですが、イライラしたり不安になったりして、批判したり責めたりしたくなります。それではウイルスの思う壺ですから、ぜひみんなで助け合い、支え合い、励まし合って、この難局を乗り切っていきたいと思います。私も研究者として、自分のできることを一生懸命やっていきます。

西脇:まず、これまでの間、行動自粛、営業自粛にご協力いただきました府民の皆さま、そして事業者の皆さまに心から感謝申し上げます。また、感染のリスクを背負いながら第一線で働かれている医療従事者の方、介護や保育などの社会福祉施設職員の皆さま、そして、府民の生活を支えていただいているエッセンシャルワーカーの皆さまにも、心から感謝を申し上げます。本当に皆さまのおかげで、第1波は何とか収束しておりますが、決してコロナウイルスがいなくなったわけではありません。これからは感染予防に万全を期して第2波に備えながら、段階的に社会経済活動を取り戻していく必要があります。山中先生もおっしゃるように、コロナウイルスとの戦いは非常に長くなると思います。皆さまにも多くの不便をおかけしますけれども、絆の強いこの京都で、皆さまと力を合わせ、この困難を乗り越えてまいりたいと思っております。私も全力を尽くします。どうかよろしくお願いいたします。

 

※6月20日(土曜日)のKBS京都テレビでの放送内容を一部編集し、6月28日(日曜日)の京都新聞に掲載しました。

 

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