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人権口コミ講座 120

「共生社会」に近づくために

公益財団法人 世界人権問題研究センター登録研究員 松波 めぐみ

●共生社会と真逆の事件

 「誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会」(文部科学省)などと定義されるのが「共生社会」という言葉だ。しかし現実は程遠いと痛感する事件が、2016年7月に神奈川県相模原市の障害者施設で起きた。19人が命を奪われ、27人が重軽傷を負った。その残酷さ、また「障害者は不幸しかつくりだせない」などの容疑者の言葉は、社会に大きな衝撃を与えた。
 事件後、「殺されたのは自分(わが子)だったかもしれない」と語り、恐怖に震える障害者や家族が多くいた。その一方で、インターネット上では容疑者に共感するような書き込みが今も続いている。

●関係ない?

 関係者が負った傷はいまだに深い。一方、この事件を「どこか遠くで起こった、自分に関係のないこと」「よく分からない事件」と感じる市民が少なくないように思う。
 関係ないと感じるのは、特に重度の知的障害者が身近におらず、日常的に一緒に学んだり遊んだりした経験に乏しいことと関係するだろう。事件が「よく分からない」のは被害者の名前や生活ぶりが報じられなかったことにも関係しよう。
 遺族はなぜ匿名を望んだのか。おそらく隣近所や親戚を含む世間からの偏見に苦しみ、「親亡き後」に悩んだ経緯があるのだろう。いずれも、障害者を差別し、別の場所へと追いやってきた歴史と切り離せない。共生社会という理念はその逆を目指している。

●一緒にご飯

 6年前からヘルパーの支援を受けて一人暮らしをする知的障害女性宅に、時々私はご飯を食べに行く。たわいもない話をし、笑いながら一緒にご飯を食べる。私のことをよく見ているなあと驚嘆したりもする。
 彼女の親御さんのモットーが「一緒にご飯食べよ」だった。「理解してほしい」と意気込むより、さまざまな機会に娘さんを交えて一緒にご飯を食べることが最も味方を増やせる―という経験に基づく知恵である。今や娘さんは、親御さんも知らないところで新しいつながりを増やしている。私もその一人だ。一緒にご飯を食べる。そんな小さな営みが広がる地域社会であってほしい。

◎ 平成30年3月発行の「人権口コミ講座19」の内容を加筆・修正し、再掲載しています。

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