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人権口コミ講座 126

子どもの声を聴く

公益財団法人
世界人権問題研究センター プロジェクトチーム3リーダー
大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科教授 山野 則子

 「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」、たった5歳の女の子が覚えたばかりの平仮名でつづったメモの存在が明らかになり、日本中が悲しみに震えた、児童虐待死亡事件。現場に花を手向ける人が絶えない。このような事件が起きると必ず、まず親が批判され、地域や所属機関がなぜ気付けなかったのか、専門機関の対応はどうだったのかと繰り返される。批判の前に各人が日常にできることは何か考えてみる必要がある。
 まずは親についていえば、孤立やさらには貧困から児童虐待に移行する悪循環の実態報告と合わせて考えると、児童虐待問題は、社会の問題として認識すべきである。
 地域の課題はといえば、虐待に気付いて通報する国民の義務(児童福祉法第25条)の周知をと言いたいわけではない。発見を重視するあまりに地域住民が監視の目ばかりになるのは、かえって孤立した親を追い込むおそれがある。温かい声を掛け合う地域をどう作るのかが重要であろう。虐待など逆境に立ち向かう力としてリジリエンスという概念がある。子ども個人が持つ回復力として認識されがちであるが、リジリエンスとは、「その人が厳しい逆境の中にあるとき、その人の心理的、社会的、文化的、身体的、物的資源が本人に作用する方向を探し求め、安定した生活を維持する能力であるとともに、これらの資源が自分にとって意味ある方法で提供されるように調整し利用できる能力のこと」と言われる。つまり、日常に接する大人(地域や保育所、学校、居場所などで子どもに関わる人々)は、子どもがこの能力を発揮できるよう作用する資源になることが重要である。これは、一人ひとりが明日からでもできよう。
 また、毎日子どもの姿を見る学校などは、すべての子どもを見渡した中で、「ちょっと気になる子ども」という段階で気軽に情報を校内で共有し、一人で抱え込まずチームで方向性を決定できる体制を明確に作り、そこから地域支援や福祉機関につなぐ安定した仕組みが早急に必要である。子どもの声なき声を聴く(聴く=言葉だけでなく様子全体でキャッチすること)ために何をすべきか、地域、学校などそれぞれにぜひ考えていただきたい。

◎ 平成31年3月発行の「人権口コミ講座20」の内容を加筆・修正し、再掲載しています。

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