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人権口コミ講座 137

ハンセン病家族訴訟判決が問うもの

公益財団法人 世界人権問題研究センター所長、神戸大学名誉教授 坂元 茂樹

認められた家族の訴え

 2019年6月28日、熊本地裁は、ハンセン病の元患者家族が国のハンセン病隔離政策で差別被害を受けたとして訴えた国家賠償訴訟で、原告らの訴えを認め、総額3億7,675万円の賠償を国に命ずる判決を下しました。

 ハンセン病は、らい菌による感染症ですが、感染症の場合、感染を恐れるあまり、その家族も差別の対象となります。療養所でハンセン病元患者が仮名で人生を送ったのも家族への差別を恐れたからであり、今回の家族訴訟で原告560人余りの大半が匿名だったのも家族に対する苛酷な差別の現実があったからです。

 この判決を受けて、2019年11月22日、ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律(以下、補償法)が公布、施行されました。しかし、こうした家族への補償は救済に向けた一歩にすぎず、真の救済はハンセン病に対する偏見や差別の解消です。

ハンセン病の歴史から学ぼう

 人は誰でも病気にかかります。ある特定の病気にかかったからといって、人は差別されてはなりません。一人ひとりが尊厳のある人間として、生きていく価値をもっています。ハンセン病であることで差別されてきた人たちやその家族の苦難や痛みを想像し、日本がこうしたことを二度と繰り返さないようにする必要があります。最近の新型コロナウイルスの蔓(まん)延によるコロナ差別を考えると、われわれがハンセン病の歴史から学ぶべきことがいかに多いかを実感させられます。

◎令和3年3月発行の「人権口コミ講座22」の内容を加筆・修正し、再掲載しています。

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