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書:西脇 隆俊
さかのぼること50余年前、私は毎日毎日、白球を追う中学生でした。高校に進学してからは、当然のように甲子園を目指し、汗と泥にまみれながら猛練習に励んだものです。
約半世紀が過ぎ、かつて高校球児だった私は、2019年の夏、第101回全国高等学校野球選手権京都大会で始球式を務めさせていただくことになりました。心躍るものを感じながら迎えた当日、開会式の挨拶では選手たちを前にこんな話をしました。
「今から46年前、高校3年の夏、真っ白なユニフォームに身を包んだ私も同じように開会式に臨みました。その時、来賓の挨拶で誰がどのような話をされたのかは全く覚えていません。恐らく皆さんも同じだと思う。ただ、スタンドからの応援、苦しかった練習、そして一緒に汗を流した仲間たちのことは昨日のことのように思い出せます。どうか皆さんも仲間との絆を大切にしてほしい。そして悔いのないよう、一つ一つのプレーに全力を尽くしてほしい」
後日、仕事でお目に掛かった森脇健児さんからは、「あの時の知事の挨拶、評判いいですよ。何といっても暑い中、簡潔で短いのが良かった」とお褒めの言葉を頂きました(笑)。
始球式に臨むに当たって、高校時代には使ったことがなかった屋内練習場で硬式球を投げてみました。ボールの感触を確かめ、まず一球。静かな練習場内に心地よく響くミットの音。一瞬にして、気持ちはあの夏に戻りました。
高2の秋季大会、準々決勝で敗れマウンドで肩を落とす自分の姿。悔しさをバネに練習を積み重ね、高3夏の1回戦ではチーム一丸となって借りを返し、勝利をつかんだ瞬間、全員で駆け寄って喜び合ったチームメイトの笑顔。
そんなことを思い返しながら投球練習をしていると、当時の相手チームだった西京商業高校(現・西京高校)の新造(しんぞう)監督が高野連の役員として屋内練習場に来ておられ、声を掛けてくださいました。「いい球や。これなら選手にぶつける心配はいらんな」との言葉が、なぜだかうれしく胸に響きました。
さて投球練習を終えて呼吸を整え、いよいよマウンドへ。
高校時代、投手としてマウンドに立つ西脇知事
第101回全国高等学校野球選手権京都大会の開会式で挨拶に立つ西脇知事(2019年7月6日)
始球式の前に屋内練習場で投球練習
8月号へつづく
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