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人権口コミ講座 139

部落差別解消推進法に基づく実態調査報告書を読む
部落問題を知る手掛かりとは?

静岡大学 人文社会科学部 准教授 山本崇記

現在もなお部落差別が存在する

 2016年12月に公布・施行された部落差別解消推進法の第1条では、「現在もなお部落差別が存在」し、「情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じている」としました。同和問題に関する特別対策が失効した2002年以降、同和問題は解決したと考えられがちでしたが、ネット上での差別投稿や被差別部落名の暴露行為(アウティング)などを踏まえて、議員立法として成立しました。

 同法第6条には、「国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するため、地方公共団体の協力を得て、部落差別の実態に係る調査を行う」としました。2020年6月、法務省人権擁護局より『部落差別の実態に係る調査結果報告書』が公開されました。同法には部落差別の定義がありませんでした。定義も実態把握もないまま、先行して法律ができ、「同和問題」に「部落差別」という表現を唐突に用い、不可解な印象もありました。

部落問題を知るとは

 法務省は、人権相談・人権侵犯事件の推移を踏まえて、部落差別の事案が、「減少傾向にはなく、依然として人権課題の重要な一類型」だとし、特に、結婚・交際とインターネットによる人権侵害(部落差別)を強調しました。一方で、「部落の実態」は調査しないとし、各関係機関から得た情報をもとに、「部落差別の実態」を把握するという消極的な姿勢に終始しました。同時期に兵庫県たつの市で行われた同和地区実態調査とは好対照となりました。顔と地域が見える交流やまちづくりこそが、部落差別解消にとって有効な方法です。私たちが正しく部落問題を知る手掛かりとは何か、改めて一人一人が考えていかなければならないのではないでしょうか。

◎令和3年3月発行の「人権口コミ講座22」の内容を加筆・修正し、再掲載しています。

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