○京都府伝統と文化のものづくり産業振興条例

平成17年10月18日

京都府条例第42号

京都府伝統と文化のものづくり産業振興条例をここに公布する。

京都府伝統と文化のものづくり産業振興条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第5条)

第2章 基本的な施策(第6条―第16条)

第3章 京都府伝統と文化のものづくり産業振興審議会等(第17条・第18条)

第4章 雑則(第19条)

附則

京都の長い歴史と風土の中ではぐくまれ、先人達のたゆまぬ努力と研さんによって磨かれた京都の伝統と文化のものづくり産業は、日本の伝統と文化を支え、世界に誇る府民の貴重な財産であるとともに、きものをはじめとする様々な工芸品や伝統食品などを通じて、四季折々の生活を彩ってきた。また、伝統と文化のものづくり産業は、社会的な分業体制を形成しながら地域とともに発展し、近代産業を生み出す基盤としての機能を果たしてきた。

現在、日々の暮らしの中から伝統的な生活文化が失われつつあり、それと密接に結びついてきた伝統と文化のものづくり産業の多くは、存続が危ぶまれるほど厳しい状況にあるが、一方で、ゆとりや潤いのある生活が求められ、伝統的な日本文化への評価が高まってきている。

こうした状況において、京都の伝統と文化のものづくり産業が、伝統的な技術等の保存や継承をしながら、伝統を生かした生活文化を創造する産業として発展するとともに、伝統的な技術と先端技術等との融合によって時代の変化に適合した新たなものづくりを推進し、より豊かで文化的な社会を実現するために大きな役割を果たしていくことが期待されている。また、伝統と文化のものづくり産業が世界の人々からあこがれの対象であり続けることが、国際社会の中で京都の輝きを増す大きな力となる。

このような認識の下に、府、事業者及び府民が力を合わせて伝統と文化のものづくり産業の振興を図るための基本理念を定めるとともに、その取組を総合的かつ計画的に推進するため、関係市町村との連携を図りつつ、特に伝統と文化のものづくり産業の多くが集積する京都市と協調して、この条例を制定する。

第1章 総則

(定義)

第1条 この条例において、「伝統と文化のものづくり産業」とは、京都の伝統と文化にはぐくまれ、伝統的に使用されてきた素材、技術又は意匠を用いて伝統と文化を支えるものを作り出す産業をいう。

(基本理念)

第2条 伝統と文化のものづくり産業の振興は、府、伝統と文化のものづくり産業にかかわる事業者(以下「事業者」という。)及び府民がそれぞれの役割を果たしながら、次に掲げる事項に関する取組を一体となって推進することを基本としなければならない。

(1) 伝統的な技術等を保存し、及び継承し、並びに伝統と文化のものづくり産業の次代を担う人材を育成すること。

(2) 伝統的な素材、技術又は意匠を生かし、又は先端技術等と融合させることにより、時代の変化に適合した新たなものづくりを推進すること。

(3) 伝統を生かした新たな生活文化を創造し、伝統と文化のものづくり産業の需要基盤を拡大すること。

(府の責務)

第3条 府は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、伝統と文化のものづくり産業の振興に関する総合的な施策を策定し、これを実施するものとする。

 府は、前項の規定による施策の策定及び実施に当たっては、小規模な事業者が多い伝統と文化のものづくり産業の特性並びに伝統的な技術等を保存し、及び継承する技術者の役割の重要性に配慮するものとする。

 府は、伝統と文化のものづくり産業から生み出される工芸品等の活用に努めるものとする。

(事業者の役割)

第4条 事業者は、基本理念にのっとり、伝統と文化のものづくり産業の継承及び発展のため、次に掲げる役割を果たすよう努めるものとする。

(1) 伝統と文化のものづくり産業に必要な技術、人材等の生産基盤を保持すること。

(2) 伝統的な素材、技術又は意匠を生かした新たなものづくりを進めること。

(3) 伝統を生かした新たな生活文化の提案及び普及を行い、現在及び将来の需要基盤を形成すること。

(4) 伝統と文化のものづくり産業が正しく理解されるよう、消費者に対する情報を提供すること。

(府民の役割)

第5条 府民は、基本理念にのっとり、伝統と文化のものづくり産業に対する理解を深めるとともに、伝統と文化のものづくり産業から生み出される工芸品等を日常生活に取り入れるよう努めるものとする。

第2章 基本的な施策

(人材育成の推進等)

第6条 府は、伝統的な技術等を保存し、及び継承し、並びに次代を担う人材を育成することを推進するため、伝統と文化のものづくり産業の生産基盤を保持する取組の推進その他の必要な施策を講じるものとする。

(新たなものづくりの推進)

第7条 府は、事業者による伝統的な素材、技術又は意匠の新分野への活用、先端技術等との融合、既存分野での応用等により伝統を生かした新たなものづくりを推進するため、事業者間の交流又は連携及び事業者と試験研究機関又は大学との連携の促進、事業者に対する情報の提供、伝統と文化のものづくり産業の集積の促進その他の必要な施策を講じるものとする。

(伝統を生かした生活文化の創造の推進等)

第8条 府は、府民が広く伝統と文化のものづくり産業に対する理解を深めることにより伝統を生かした新たな生活文化の創造を推進するため、伝統と文化のものづくり産業に関する教育及び学習の振興並びに知識の普及その他の必要な施策を講じるものとする。

 府は、観光旅行者等の滞在者が広く伝統と文化のものづくり産業に対する関心を高めるため、伝統と文化のものづくり産業に関する啓発、情報の提供その他の必要な施策を講じるものとする。

(京もの指定工芸品)

第9条 知事は、規則で定めるところにより、伝統的な技術等を保存し、及び継承し、並びに次代を担う人材を育成することを推進するため、次の各号の要件のいずれにも該当する京都の工芸品を、京もの指定工芸品として指定することができる。

(1) 製造工程の主要部分が手工業的な方法又は手工業的な方法を応用した方法により製造されるものであること。

(2) 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。

(3) 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、又は伝統的に使用されてきた意匠が用いられ、製造されるものであること。

 知事は、前項の規定による指定を行うときは、第17条第1項に規定する京都府伝統と文化のものづくり産業振興審議会の意見を聴くものとする。

 京もの指定工芸品を製造する者又はその者を構成員とする団体は、第1項の規定により指定を受けた工芸品について、京もの指定工芸品であることを表示することができる。

(京もの技術活用品)

第10条 知事は、規則で定めるところにより、伝統を生かした新たなものづくりを推進するため、京もの指定工芸品に使用されている技術等を活用して新たに生み出される物であって、次の各号の要件のいずれかに該当するものを、京もの技術活用品として指定することができる。

(1) 伝統的な技術又は技法が、製造工程の一部に活用され、製造されるものであること。

(2) 伝統的に使用されてきた原材料又は意匠が用いられ、製造されるものであること。

 前条第2項及び第3項の規定は、京もの技術活用品について準用する。この場合において、同条第2項中「前項」とあるのは「第10条第1項」と、同条第3項中「第1項の規定により指定を受けた工芸品」とあるのは「第10条第1項の規定により指定を受けた物」と読み替えるものとする。

(京もの認定工芸士)

第11条 知事は、規則で定めるところにより、伝統と文化のものづくり産業を支える技術を継承し、次代を担う人材を育成するため、次の各号の要件のいずれにも該当すると認める者に対し、京もの認定工芸士の称号を授与することができる。

(1) 京もの指定工芸品の製造に従事していること。

(2) 京もの指定工芸品の製造に関して、規則で定める実務経験及び技術を有していること。

 第9条第2項の規定は、前項の規定による称号の授与について準用する。この場合において、同条第2項中「前項」とあるのは、「第11条第1項」と読み替えるものとする。

(京の名工)

第12条 知事は、規則で定めるところにより、特に優れた技術を有し、伝統と文化のものづくり産業の振興及び発展に顕著な貢献をした者に対し、京の名工の称号を授与することができる。

 第9条第2項の規定は、前項の規定による称号の授与について準用する。この場合において、同条第2項中「前項」とあるのは、「第12条第1項」と読み替えるものとする。

(表彰)

第13条 知事は、規則で定めるところにより、伝統と文化のものづくり産業の振興及び発展に寄与したものを表彰することができる。

 第9条第2項の規定は、前項の規定による表彰について準用する。この場合において、同条第2項中「前項」とあるのは、「第13条第1項」と読み替えるものとする。

(伝統食品の指定等)

第14条 知事は、第9条から第11条までの規定の例により規則で定めるところに従い、伝統と文化のものづくり産業から生み出される京都の伝統食品等に関して、指定及び称号の授与をすることができる。

(伝統と文化のものづくり産業の集積等による振興を図るための補助金の交付)

第15条 府は、伝統と文化のものづくり産業の集積等によりその振興を図るため、知事が別に定める地域に立地するものの事業の用に供する土地及び設備の取得等に要する経費並びに従業員の雇用に要する経費に対して、予算の範囲内において、補助金を交付することができる。

(財政上の措置)

第16条 府は、伝統と文化のものづくり産業の振興に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講じるものとする。

第3章 京都府伝統と文化のものづくり産業振興審議会等

(京都府伝統と文化のものづくり産業振興審議会)

第17条 この条例の規定に基づく知事の諮問のほか、伝統と文化のものづくり産業に関する重要事項の調査審議を行わせるため、京都府伝統と文化のものづくり産業振興審議会(以下「審議会」という。)を置く。

 審議会は、前項の規定による調査審議のほか、伝統と文化のものづくり産業の振興に関する事項について、知事に建議することができる。

 審議会は、委員15名以内で組織する。

 委員は、学識経験を有する者その他適当と思われる者のうちから、知事が任命する。

 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

(推進組織)

第18条 府は、伝統と文化のものづくり産業から生み出される工芸品等の活用、需要の拡大等により伝統と文化のものづくり産業の振興を図るため、事業者、府民等と一体となった推進組織を整備するものとする。

第4章 雑則

(規則への委任)

第19条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

 この条例は、公布の日から施行する。

〔次のよう〕略

京都府伝統と文化のものづくり産業振興条例

平成17年10月18日 条例第42号

(平成17年10月18日施行)