○京都府景観条例

平成19年3月16日

京都府条例第15号

京都府景観条例をここに公布する。

京都府景観条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第4条)

第2章 良好な景観の形成に関する施策

第1節 良好な景観の形成に関する基本的な施策(第5条―第11条)

第2節 京都府景観資産(第12条・第13条)

第3節 景観府民協定(第14条―第18条)

第3章 景観法の施行に関する事項(第19条―第25条)

第4章 京都府景観審議会(第26条)

第5章 雑則(第27条・第28条)

附則

私たちの京都は、変化に富んだ海岸線、四季折々に様々な表情を見せる山並み、清らかな水をたたえる河川など、豊かな自然に恵まれ、この美しい自然とのかかわりの中で、丹後から山城までの各地域において、人々の営みや歴史と伝統に培われた文化を映しながら、多くの個性豊かな景観が形成されてきた。

先人が守り、育ててきたこれらの良好な景観は、私たちに安らぎのある豊かな生活環境をもたらし、地域への誇りと愛着をはぐくむとともに、京都を訪れる人々をも引きつける私たちの貴重な資産である。

しかし、都市化の進展、産業構造の変化及び価値観の多様化が、景観の形成に密接なかかわりを持つ人々の生活や生業に大きな影響を与え、多くの良好な景観がその姿を変え、失われつつある。

私たちは、一人ひとりが身近にある良好な景観の価値を認識し、府、市町村、府民及び事業者の適切な役割分担と協働の下、良好な景観を保全し、育て、かつ、創造することにより、府民共通の資産として将来の世代に引き継いでいかなければならない。

このような認識の下に、良好な景観の形成についての基本理念を定め、景観法に基づく施策とともに、地域の個性と特色を生かした良好な景観の形成に関する施策を総合的に推進することにより、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図り、もって府民生活の向上並びに地域経済及び地域社会の健全な発展に寄与するため、この条例を制定する。

第1章 総則

(基本理念)

第1条 良好な景観は、府民共通の資産として、受け継ぎ、育て、かつ、創造して、将来に継承されることとなるよう、その整備及び保全が図られなければならない。

 良好な景観は、地域の自然、歴史、文化等とのかかわりの中で、人々の生活、生業、経済活動等と深く結びついて形成されることにかんがみ、これらが調和することとなるよう、その整備及び保全が図られなければならない。

 良好な景観は、観光その他の地域間の交流や産業の振興等に大きな役割を果たすことにかんがみ、景観に関する取組を通じて地域が活性化し、その地域の活性化により、更に良好な景観が形成されることとなるよう、その整備及び保全が図られなければならない。

 良好な景観は、府、市町村、府民及び事業者の適切な役割分担と協働の下、それらの積極的な取組により、その整備及び保全が図られなければならない。

(府の責務)

第2条 府は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、良好な景観の形成に関する総合的かつ計画的な施策を策定し、これを実施するものとする。

 府は、地域の特性に応じた良好な景観の形成に配慮して、公共用又は公用の施設の設置及び管理に関する事業(以下「公共事業」という。)を実施するものとする。

 府は、良好な景観の形成に関する市町村の施策並びに府民及び事業者(以下「府民等」という。)の主体的かつ積極的な取組が促進されるよう必要な支援を行うものとする。

(府民の責務)

第3条 府民は、基本理念にのっとり、良好な景観の形成に関する理解を深め、良好な景観の形成に積極的な役割を果たすよう努めるとともに、府が実施する良好な景観の形成に関する施策に協力しなければならない。

(事業者の責務)

第4条 事業者は、基本理念にのっとり、土地の利用等の事業活動に関し、良好な景観の形成に自ら努めるとともに、地域社会の一員として、府が実施する良好な景観の形成に関する施策に協力しなければならない。

第2章 良好な景観の形成に関する施策

第1節 良好な景観の形成に関する基本的な施策

(景観形成基本方針)

第5条 知事は、府内の良好な景観の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な方針(以下「景観形成基本方針」という。)を定めるものとする。

 景観形成基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 良好な景観の形成に関する施策の目標

(2) 良好な景観の形成に関する施策の体系

(3) 前2号に掲げるもののほか、良好な景観の形成に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

 知事は、景観形成基本方針を定めるに当たっては、府民等の意見を反映させるために必要な措置を講じるものとする。

 知事は、景観形成基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ、市町村及び京都府景観審議会の意見を聴くものとする。

 知事は、景観形成基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

 前3項の規定は、景観形成基本方針の変更について準用する。

(景観計画の策定等)

第6条 府は、次に掲げる地域において、良好な景観の形成を推進するために特に必要と認める土地(水面を含む。)の区域(景観法(平成16年法律第110号。以下「法」という。)第7条第1項に規定する景観行政団体(以下「景観行政団体」という。)である市町村の区域を除く。)について、法第8条第1項に規定する景観計画(以下「景観計画」という。)を策定するものとする。

(1) 複数の市町村の区域にわたる景観を形成している地域

(2) 府を代表する景観を形成している地域

 府は、景観計画を定めようとする区域と景観行政団体である市町村の区域が一体となって良好な景観を形成する必要がある場合は、当該市町村が定める景観計画との整合を図るものとする。

 府は、法及びこの条例のほか、建築物(建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第1号に規定する建築物をいう。以下同じ。)及び屋外広告物(屋外広告物法(昭和24年法律第189号)第2条第1項に規定する屋外広告物をいう。以下同じ。)の規制に関する法令を適切に運用することにより、府が定めた景観計画の区域における良好な景観の形成を図るものとする。

(公共事業景観形成指針)

第7条 知事は、公共事業を実施するに当たっての良好な景観の形成のための指針(以下「公共事業景観形成指針」という。)を定めるものとする。

 知事は、公共事業景観形成指針を定めるに当たっては、あらかじめ、京都府景観審議会の意見を聴くものとする。

 知事は、公共事業景観形成指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

 前2項の規定は、公共事業景観形成指針の変更について準用する。

 府は、公共事業の実施に当たっては、公共事業景観形成指針を遵守するものとする。

(文化的景観の形成)

第8条 府は、文化的景観(文化財保護法(昭和25年法律第274号)第2条第1項第5号に規定する文化的景観をいう。以下同じ。)の保存及び活用を図るための施策を実施することにより、文化的景観の形成を推進するものとする。

(農山漁村における景観の形成)

第9条 府は、農林漁業及び観光の振興等による地域の活性化を図るための施策を実施することにより、農山漁村における良好な景観の形成を推進するものとする。

(景観への理解を深めるための施策等)

第10条 府は、府民等が、良好な景観の形成に関する理解を深めるとともに、良好な景観の形成に関する取組を積極的に進めることができるよう、知識の普及、学習の支援、顕彰その他の必要な施策を実施するものとする。

 府は、府、市町村及び府民等が、連携し、かつ、協働して、良好な景観の形成を推進することができるよう、相互交流の機会の提供その他の必要な施策を実施するものとする。

(市町村への支援)

第11条 府は、地域の個性及び特色を生かした良好な景観の形成を推進する上で市町村が果たす役割の重要性を踏まえ、市町村が景観行政団体として景観計画の策定その他の施策を実施することとなるよう、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

第2節 京都府景観資産

(京都府景観資産の登録)

第12条 知事は、良好な景観の形成に資すると認められる建造物、樹木その他の物件又はこれらを含む区域で規則に定める基準に該当するものを、京都府景観資産として登録することができる。

 知事は、前項の規定により京都府景観資産を登録しようとするときは、あらかじめ、市町村及び京都府景観審議会の意見を聴くものとする。ただし、次項の規定により市町村から提案があった場合においては、当該市町村の意見を聴くことを要しない。

 市町村その他規則で定める者は、規則で定めるところにより、京都府景観資産に係る保存及び活用に関する計画書(以下「保存活用計画書」という。)を添えて、第1項の規定による登録を行うよう、知事に提案することができる。この場合において、当該提案をしようとする者は、保存活用計画書の作成について知事に技術的な助言を求めることができる。

 知事は、前項の規定による提案について、第1項の規則で定める基準に照らし、京都府景観資産として登録する必要がないと判断したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を当該提案をした者に通知するものとする。

 知事は、京都府景観資産を登録したときは、第3項の提案をした者に通知するとともに、遅滞なく、その旨を公表するものとする。

 知事は、必要と認めるときは、京都府景観資産の登録の内容を変更し、又は京都府景観資産の登録を抹消することができる。この場合において、第2項本文及び前項の規定を準用する。

(京都府景観資産に係る支援等)

第13条 府は、京都府景観資産の保存及び活用が図られるよう、助言その他の必要な支援を行うものとする。

 府は、関係市町村及び府民等と連携し、京都府景観資産を活用した地域の活性化が促進されるよう、情報の発信その他の必要な施策を実施するものとする。

第3節 景観府民協定

(景観形成に関する協定)

第14条 一団の土地(法第7条第4項に規定する公共施設の用に供する土地を除く。)の所有者及び建物の所有を目的とする対抗要件を備えた地上権又は賃借権(臨時設備その他一時使用のために設定されたことが明らかなものを除く。以下「借地権」という。)を有する者(土地区画整理法(昭和29年法律第119号)第98条第1項(大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和50年法律第67号)第83条において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地の所有者及び借地権を有する者。以下「土地所有者等」という。)は、その全員の合意により、当該土地の区域における良好な景観の形成に関する協定を締結し、当該協定が適当である旨の知事の認定を受けることができる。ただし、当該土地(土地区画整理法第98条第1項の規定により仮換地として指定された土地にあっては、当該土地に対応する従前の土地)の区域内に借地権の目的となっている土地がある場合においては、当該借地権の目的となっている土地の所有者の合意を要しない。

 前項の規定により認定を受けようとする土地所有者等は、規則で定めるところにより、申請書を知事に提出しなければならない。

 第1項の規定により知事の認定を受けようとする協定には、次に掲げる事項を定めるものとする。

(1) 協定の目的となる土地の区域

(2) 良好な景観の形成のための次に掲げる事項のうち、必要な事項

 建築物の形態又は色彩その他の意匠(以下「形態意匠」という。)に関する基準

 建築物の敷地、位置、規模、構造、用途又は建築設備に関する基準

 工作物の位置、規模、構造、用途又は形態意匠に関する基準

 樹林地、草地等の保全又は緑化に関する事項

 屋外広告物の表示又は屋外広告物を掲出する物件の設置に関する基準

 農用地(農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号)第3条第1号に規定する農用地をいう。)の保全又は利用に関する事項

 その他良好な景観の形成に関する事項

(3) 協定の有効期間

(4) 協定に違反した場合の措置

 知事は、第2項の規定により申請のあった協定が次の各号に掲げる要件のいずれにも該当すると認めるときは、その協定を認定するものとする。

(1) 法令の規定に違反するものでないこと。

(2) 土地、建築物又は工作物の利用を不当に制限するものでないこと。

(3) 前2号に掲げるもののほか、規則で定める基準に適合するものであること。

 知事は、第1項の規定により認定をしようとするときは、あらかじめ、市町村の意見を聴くものとする。

 知事は、第1項の規定により認定をしたときは、遅滞なく、その旨を公表するものとする。

(景観府民協定の変更)

第15条 前条第1項の規定により認定を受けた協定(以下「景観府民協定」という。)の当事者である土地所有者等は、当該景観府民協定において定めた事項を変更しようとするときは、当該景観府民協定のすべての土地所有者等の合意をもってその旨を定め、知事の認定を受けなければならない。

(景観府民協定の承継)

第16条 景観府民協定は、当該景観府民協定の当事者である土地所有者等が死亡し、合併により解散し、又は分割したときは、その包括承継人に対しても、その効力を有する。

 景観府民協定の当事者である土地所有者等は、当該景観府民協定の目的となっている土地の所有権又は借地権を第三者に移転するときは、併せて当該景観府民協定に基づく地位を当該第三者に承継させるよう努めるものとする。

 前2項の規定により景観府民協定の当事者の変更があったときは、当該景観府民協定の当事者である土地所有者等は、規則で定めるところにより、遅滞なく、その旨を知事に届け出なければならない。

(景観府民協定に係る支援)

第17条 知事は、景観府民協定を締結しようとする土地所有者等及び景観府民協定に基づく取組を行う土地所有者等に対して、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(景観府民協定の廃止)

第18条 景観府民協定の当事者である土地所有者等は、景観府民協定を廃止したときは、規則で定めるところにより、遅滞なく、その旨を知事に届け出なければならない。

第3章 景観法の施行に関する事項

(景観計画の策定の手続)

第19条 知事は、景観計画を定めようとするときは、法第9条第1項から第5項までに定める手続のほか、あらかじめ、京都府景観審議会の意見を聴くものとする。

 前項の規定は、景観計画の変更について準用する。

(計画提案を踏まえた景観計画の策定等をしない場合の手続)

第20条 知事は、法第14条第1項の規定による通知をしようとするときは、あらかじめ、当該計画提案に係る景観計画の素案について関係市町村及び京都府景観審議会の意見を聴くものとする。

(届出を要する行為等)

第21条 法第16条第1項第4号の条例で定める行為は、次に掲げる行為のうち景観計画ごとに規則で定める行為とする。

(1) 土地の開墾、土石の採取、鉱物の掘採その他の土地の形質の変更

(2) 木竹の植栽又は伐採

(3) 屋外における土石、廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)第2条第1項に規定する廃棄物をいう。)、再生資源(資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)第2条第4項に規定する再生資源をいう。)その他の物件のたい

(4) 水面の埋立て又は干拓

(5) 夜間において公衆の観覧に供するため、一定の期間継続して建築物その他の工作物又は物件(屋外にあるものに限る。)の外観について行う照明

 法第16条第1項第4号に掲げる行為に係る同項の規定による届出は、同項に規定する事項を記載した届出書を提出して行うものとする。

 前項の届出書には、規則で定める図書を添付しなければならない。

 法第16条第1項第4号に掲げる行為に係る同項の規定により届け出なければならない事項は、行為をしようとする者の氏名及び住所(法人その他の団体にあっては、その名称及び主たる事務所の所在地)並びに行為の完了予定日とする。

 法第16条第1項第4号に掲げる行為に係る同条第2項の規定により届け出なければならない事項は、設計又は施行方法のうち、その変更により同条第1項の届出に係る行為が同条第7項各号に掲げる行為に該当することとなるもの以外のものとする。

(勧告の手続及び公表)

第22条 知事は、法第16条第3項の規定による勧告をしようとするときは、あらかじめ、京都府景観審議会の意見を聴くものとする。

 知事は、法第16条第3項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由なく、その勧告に従わないときは、規則で定めるところにより、その旨を公表することができる。

 知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、当該公表に係る者に意見を述べる機会を与えるものとする。

(届出を要しないその他の行為)

第23条 法第16条第7項第11号の条例で定める行為は、次に掲げる行為とする。

(1) 景観計画の区域における良好な景観の形成に支障を及ぼすおそれがない行為で規則で定めるもの

(2) 法令に基づく許可、認可、届出等を要する行為で規則で定めるもの

(特定届出対象行為)

第24条 法第17条第1項の条例で定める行為は、法第16条第1項第1号及び第2号の届出を要する行為とする。

(変更命令等の手続)

第25条 知事は、法第17条第1項の規定により必要な措置をとることを命じようとするとき又は同条第5項の規定により原状回復若しくはこれに代わるべき必要な措置をとることを命じようとするときは、あらかじめ、京都府景観審議会の意見を聴くものとする。

第4章 京都府景観審議会

(京都府景観審議会)

第26条 この条例に基づく知事による諮問のほか、良好な景観の形成に関する重要事項の調査審議を行わせるため、京都府景観審議会(以下「審議会」という。)を置く。

 審議会は、前項の規定による調査審議のほか、良好な景観の形成の推進に関する事項について、知事に建議することができる。

 審議会は、委員10人以内で組織する。

 審議会において、専門の事項を調査審議するために必要があるときは、前項の規定にかかわらず、専門委員を置くことができる。

 委員及び専門委員は、学識経験を有する者その他適当と思われる者のうちから、知事が任命する。

 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

第5章 雑則

(景観行政団体である市町村との関係)

第27条 府は、この条例に基づく施策の実施に当たっては、景観行政団体である京都市その他の市町村が行う施策を尊重し、当該施策との整合に留意するものとする。

 第2章第2節及び第3節の規定は、景観行政団体である市町村の区域については、当該市町村からの申出により、適用するものとする。この場合において、当該申出に係る市町村の区域に適用する規定は、規則で定める。

(規則への委任)

第28条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、平成19年4月1日から施行する。

京都府景観条例

平成19年3月16日 条例第15号

(平成19年4月1日施行)

体系情報
第9編 土木建築/第7章 都市計画/第2節
沿革情報
平成19年3月16日 条例第15号