○京都府鴨川条例

平成19年7月10日

京都府条例第40号

京都府鴨川条例をここに公布する。

京都府鴨川条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第5条)

第2章 安心・安全の確保(第6条・第7条)

第3章 良好な河川環境の保全

第1節 鴨川環境保全区域(第8条―第12条)

第2節 良好な景観の形成(第13条―第15条)

第4章 快適な利用の確保(第16条―第23条)

第5章 府民協働の推進(第24条―第26条)

第6章 雑則(第27条・第28条)

第7章 罰則(第29条―第34条)

附則

鴨川は、平安京の造営以来、京都の歩みとともに絶え間なく流れ、その歴史の中で人々の集いや遊興の場、芸能発祥の舞台となり、また、その清流は、様々な伝統的な水文化をはぐくんできた。その一方で、鴨川は、時にはん濫して人々に多大な被害をもたらすこともあった。

京都に暮らす人々は、鴨川の猛威を防ぐ工夫を重ねながら、適切にその管理を続けるとともに、水源をかん養する森林の保全に力を注いできた。こうした努力により、鴨川の清流や鴨川と周囲の山々とが織り成す四季の美しい景観が守られ、今に伝えられている。

しかしながら、近年、全国的な集中豪雨による洪水の危険性の増大、社会経済状況の進展に伴う景観の変ぼうや自然環境への負荷要因の増加、更には、人々の意識の変化による河川敷での利用上の問題など、鴨川とこれに合流する高野川には、様々な課題が生じている。

私たちは、脈々と受け継がれてきた鴨川等の良好な河川環境がもたらす恵みを、現在の京都に生きる私たちばかりでなく、将来の世代や京都を訪れる人々、更には下流の淀川水系にかかわる人々が享受できるよう、これらの課題を克服していかなければならない。

このような認識に基づき、流域における土地利用、景観、環境等の分野を所管する京都市と協調し、かつ、府民、事業者等と協働しつつ、鴨川等の安心・安全で良好かつ快適な河川環境を実現するための施策を推進し、もって府民の誇りである鴨川等を後世に引き継ぐため、この条例を制定する。

第1章 総則

(定義)

第1条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 鴨川 河川法(昭和39年法律第167号)第4条第1項の規定により一級河川淀川水系鴨川に指定された河川をいう。

(2) 高野川 河川法第4条第1項の規定により一級河川淀川水系高野川に指定された河川をいう。

(基本理念)

第2条 鴨川及び高野川(以下「鴨川等」という。)の安心・安全で良好かつ快適な河川環境の整備及び保全は、鴨川等の歴史と文化的価値に対する理解の下で、その継承、鴨川等及びその周辺の自然的及び社会的な環境との調和、適正な利用調整並びに府民協働の推進を図ることを旨として、行われなければならない。

(府の責務)

第3条 府は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、鴨川等について、災害の発生の防止等、清流の保持をはじめとする良好な河川環境の保全及び快適な利用の確保を図るため、必要な措置を講じるものとする。

 府は、前項の措置を講じるに当たっては、京都市と協調するとともに、府民、事業者等と協働するものとする。

(府民及び事業者の責務)

第4条 府民及び事業者は、基本理念にのっとり、景観への配慮をはじめとする鴨川等の良好な河川環境の保全に自ら取り組むとともに、府が実施する施策に協力するものとする。

 府民及び事業者は、災害による被害を軽減するために災害に対する知識及び備えが重要であることを踏まえ、自ら鴨川等に係る防災意識の向上に努めなければならない。

(鴨川等の利用者の責務)

第5条 鴨川等の利用者は、基本理念にのっとり、鴨川等を美しく保ち、他の利用者の快適な利用及び近隣の住民の平穏な生活を阻害することがないよう努めるとともに、府が実施する施策に協力するものとする。

 鴨川等の利用者は、鴨川等の河川としての危険性を踏まえ、自ら安全に配慮して鴨川等を利用しなければならない。

第2章 安心・安全の確保

(総合的治水対策の推進)

第6条 府は、鴨川等における洪水等による災害の発生を防止し、及び被害を軽減するため、次に掲げる施策を京都市との協調の下、推進するものとする。

(1) 河川の適切な維持管理及び計画的な改修

(2) 鴨川流域(鴨川に雨水が流入する区域をいう。以下同じ。)の保水及び遊水の機能の保全及び向上

(3) 鴨川流域の森林の適切な管理への支援

(4) 府民、事業者及び鴨川等の利用者に対する防災情報の的確な提供及び防災意識の向上のための啓発

(森林の保水機能の保全等)

第7条 鴨川流域の森林を所有し、又は管理する者は、森林の保水機能を保全し、かつ、洪水時における鴨川等への樹木の流出を防止するため、自ら所有し、又は管理する森林を適切に利用し、及び保全するよう努めなければならない。

第3章 良好な河川環境の保全

第1節 鴨川環境保全区域

(鴨川環境保全区域の指定)

第8条 知事は、鴨川等の清流を守るため、鴨川等の区域(鴨川等に係る河川法第6条第1項に規定する河川区域をいう。以下同じ。)に土石等が流入することを防止する必要があると認めるときは、鴨川等の区域に隣接する一定の区域を鴨川環境保全区域として指定することができる。

 知事は、鴨川環境保全区域を指定するときは、規則で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。

(鴨川環境保全区域内における行為の制限等)

第9条 鴨川環境保全区域内において、次に掲げる行為をしようとする者は、規則で定めるところにより、知事の許可を受けなければならない。ただし、規則で定める行為については、この限りでない。

(1) 土地の掘さく、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為

(2) 工作物の新築又は改築

 相続人、合併又は分割により設立される法人その他の前項の許可を受けた者の一般承継人(分割による承継の場合にあっては、その許可に係る土地若しくは工作物又は当該許可に係る工作物の新築等をすべき土地(以下この条において「許可に係る土地等」という。)を承継する法人に限る。)は、被承継人が有していた前項の規定による許可に基づく地位を承継する。

 第1項の許可を受けた者からその許可に係る土地等を譲り受けた者は、当該許可を受けた者が有していた当該許可に基づく地位を承継する。同項の許可を受けた者から賃貸借その他により当該許可に係る土地等を使用する権利を取得した者についても、当該許可に係る土地等の使用に関しては、同様とする。

 前2項の規定により地位を承継した者は、その承継の日から30日以内に、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。

(中止命令等)

第10条 知事は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、前条第1項の規定により与えた許可を取り消し、変更し、その効力を停止し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の中止、工作物の改築若しくは除却、工事その他の行為若しくは工作物により生じた若しくは生じるべき損害を除去し、若しくは予防するために必要な施設の設置その他の措置をとることを命じることができる。

(1) 前条第1項の規定に違反した者、その者の一般承継人若しくはその者から当該違反に係る土地若しくは工作物を譲り受けた者又は当該違反した者から賃貸借その他により当該違反に係る土地若しくは工作物を使用する権利を取得した者

(2) 前条第1項の規定による許可に付した条件に違反している者

(3) 詐欺その他不正な手段により、前条第1項の規定による許可を受けた者

(報告の徴収及び立入検査)

第11条 知事は、この節の規定の施行に必要な限度において、第9条第1項の規定による許可を受けた者又は前条の規定により工事その他の行為の中止等を命じられた者から当該行為若しくは当該措置の実施状況その他必要な事項について報告を徴し、又はその職員に当該許可若しくは当該措置に係る行為に係る場所若しくは当該許可を受けた者若しくは当該命令を受けた者の事務所若しくは事業場に立ち入り、行為の状況若しくは工作物、帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。

 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のため認められたものと解してはならない。

(調査のための立入り)

第12条 知事又はその命じた者若しくはその委任を受けた者は、鴨川環境保全区域の指定のための調査のためやむを得ない必要がある場合においては、他人の占有する土地に立ち入ることができる。

 前項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする場合においては、あらかじめ、当該土地の占有者にその旨を通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難である場合においては、この限りでない。

 第1項の規定により宅地又は垣、さく等で囲まれた土地に立ち入ろうとする場合においては、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。

 日出前及び日没後においては、占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。

 第1項の規定により土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。

 土地の占有者又は所有者は、正当な理由がない限り、第1項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならない。

 知事は、第1項の規定による立入りにより損失を受けた者がある場合においては、その者に対して、通常生じるべき損失を補償しなければならない。

第2節 良好な景観の形成

(工作物の設置)

第13条 府は、鴨川等の区域において工作物を設置しようとするときは、鴨川等の良好な景観の形成に配慮するものとする。

 鴨川等の区域において工作物を設置しようとする者は、鴨川等の良好な景観の形成に配慮するよう努めなければならない。

(鴨川納涼床に係る審査基準)

第14条 知事は、鴨川納涼床(鴨川の右岸の二条大橋から五条大橋までの区間において、飲食を提供するために設置される高床形式の仮設の工作物をいう。)に係る河川法に基づく許可の審査基準を、鴨川の良好な景観の形成に配慮して定めるものとする。

(鴨川等の区域に隣接する土地における景観配慮)

第15条 知事は、鴨川等の区域のうち知事が別に定める区域に隣接する土地において工作物を設置する者に対し、鴨川等から望む良好な景観の形成に配慮して当該工作物を設置するよう要請することができる。

 知事は、前項の規定により区域を定めるときは、規則で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。

第4章 快適な利用の確保

(自動車等の乗り入れの禁止)

第16条 何人も、鴨川等の区域のうち知事が別に定める区域に、自動車(道路交通法(昭和35年法律第105号)第2条第1項第9号に規定する自動車をいう。)又は原動機付自転車(同項第10号に規定する原動機付自転車をいう。以下同じ。)を乗り入れてはならない。ただし、知事が特に必要があると認める場合は、この限りでない。

(自転車等の放置の禁止)

第17条 何人も、鴨川等の区域のうち知事が別に定める区域において、その利用する自転車(道路交通法第2条第1項第11号の2に規定する自転車をいう。)又は原動機付自転車(以下「自転車等」という。)から離れることにより、当該自転車等を直ちに移動させることができない状態にしてはならない。

 知事は、前項の知事が別に定める区域を明示するために、当該区域の見やすい場所に、規則で定める標識を設置するものとする。

(放置自転車等に対する措置)

第18条 知事は、前条第1項の規定に違反して置かれている自転車等を移動し、かつ、これを保管することができる。

 知事は、前項の規定により自転車等を移動し、かつ、これを保管した場合は、規則で定めるところにより、その旨を公示するとともに、当該自転車等の所有者又は利用者に返還するため必要な措置を講じるものとする。

 知事は、前項の公示の日から相当の期間として規則で定める期間を経過してもなお自転車等の返還の請求がない場合は、規則で定めるところにより、当該自転車等を処分するものとする。

 前3項の規定による自転車等の移動、保管、公示、処分その他の措置に要した費用は、当該自転車等の返還を受けようとする者の負担とする。この場合において、負担すべき金額は、当該費用につき実費を勘案して規則で定める額とする。

 知事は、規則で定める場合においては、前項の規則で定める額の全部又は一部を免除することができる。

(打ち上げ花火等の使用の禁止)

第19条 何人も、鴨川等の区域のうち知事が別に定める区域において、打ち上げ花火等(規則で定める煙火をいう。)を使用してはならない。

(落書きの禁止)

第20条 何人も、鴨川等の区域において、河川管理施設、橋りょうその他の他人の工作物に、みだりに、ペイント、墨、油性フェルトペン等により、文字、図形、模様その他の図画を書いてはならない。

(バーベキュー等の禁止)

第21条 何人も、鴨川等の区域のうち知事が別に定める区域において、火気を用いて食品を焼いてはならない。ただし、河川法に基づく占用の許可を受けた場合において、当該占用の目的の範囲内でこれを行うときは、この限りでない。

(中止命令)

第22条 知事の指定する職員は、第19条又は前条の規定に違反している者に対して、当該行為の中止を命じることができる。

(区域の公示)

第23条 知事は、第16条第17条第1項第19条又は第21条の規定により区域を定めるときは、規則で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。

第5章 府民協働の推進

(鴨川府民会議)

第24条 知事は、鴨川等の河川環境の整備及び保全に関する事項について、府、府民、事業者及び京都市が意見を交換するため、鴨川府民会議を開催するものとする。

 鴨川府民会議の参加者は、鴨川府民会議における議題を提案することができる。

 府は、鴨川府民会議における意見交換の内容を参考として、鴨川等の河川環境の整備及び保全に関する施策を実施するものとする。

(鴨川四季の日)

第25条 府、府民、事業者、京都市その他鴨川等とかかわる者が連携して行う、鴨川等の歴史と文化に関する理解を深める取組、河川愛護意識を醸成する取組及び鴨川等の四季の魅力を全国に発信する取組が促進される契機とするため、鴨川四季の日を設ける。

 鴨川四季の日は、毎年、四季ごとに、知事が別に定める日とする。

(府民等の活動の促進)

第26条 府は、府民及び事業者が行う鴨川等の良好な河川環境の保全に関する自主的かつ自立的な活動を促進するため、必要な支援措置を講じるものとする。

第6章 雑則

(条例の見直し)

第27条 知事は、鴨川等の河川環境の整備及び保全に関する課題について、鴨川府民会議における意見交換の内容等を勘案して検討を加え、必要に応じ、条例の見直しを行うものとする。

(規則への委任)

第28条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

第7章 罰則

(罰則)

第29条 第10条の規定による知事の命令に違反した者は、50万円以下の罰金に処する。

第30条 第9条第1項の規定に違反して、鴨川環境保全区域内において同項各号に該当する行為をした者は、30万円以下の罰金に処する。

第31条 次の各号のいずれかに該当する者は、20万円以下の罰金に処する。

(1) 第11条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、若しくは妨げた者

(2) 第12条第6項の規定に違反して、土地の立入りを拒み、又は妨げた者

第32条 第16条若しくは第20条の規定に違反した者又は第22条の規定による知事の指定する職員の命令に違反した者は、5万円以下の罰金に処する。

(両罰規定)

第33条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第29条から第31条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

(過料)

第34条 第9条第4項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、5万円以下の過料に処する。

 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第8条から第12条まで、第14条から第23条まで及び第7章の規定は、平成20年4月1日から施行する。

 第8条第1項第15条第1項第16条第17条第1項第19条及び第21条の規定による区域の指定及びこれらに関し必要な手続その他の行為は、前項ただし書に掲げる規定の施行の日前においても行うことができる。

京都府鴨川条例

平成19年7月10日 条例第40号

(平成20年4月1日施行)

体系情報
第9編 土木建築/第4章
沿革情報
平成19年7月10日 条例第40号