○災害からの安全な京都づくり条例

平成28年8月4日

京都府条例第41号

災害からの安全な京都づくり条例をここに公布する。

災害からの安全な京都づくり条例

目次

第1章 総則(第1条―第7条)

第2章 災害危険情報の共有

第1節 災害危険情報の整備、公表等(第8条・第9条)

第2節 府民等による災害危険情報の把握等(第10条・第11条)

第3節 宅地建物取引業者に係る特定災害危険情報の提供及び把握(第12条・第13条)

第3章 災害に強いまちづくり

第1節 総合的治水対策(第14条―第31条)

第2節 地震、津波等に関する防災対策(第32条―第37条)

第3節 特定地域防災協議会等(第38条)

第4節 指定施設の指定等(第39条―第43条)

第4章 災害に強い人づくり(第44条―第47条)

第5章 災害発生時の体制づくり(第48条―第51条)

第6章 雑則(第52条―第55条)

第7章 罰則(第56条―第58条)

附則

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、府民の生命、身体及び財産を災害から保護するため、防災対策の実施に関し、基本理念を定め、府の責務及び府民等の役割を明らかにするとともに、これらの者が実施する対策について必要な事項を定めることにより、府、国、市町村及び府民等が一体となって防災対策の推進を図り、もって府民が安全に暮らすことができる京都府の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、地滑りその他の異常な自然現象により生じる被害をいう。

(2) 防災 災害対策基本法(昭和36年法律第223号。以下「法」という。)第2条第2号に規定する防災をいう。

(3) 防災対策 防災に関する対策をいう。

(4) 災害危険情報 次に掲げる情報をいう。

 次に掲げる規定の区分に応じそれぞれ次に定める情報

(ア) 水防法(昭和24年法律第193号)第14条第4項(同条第5項において準用する場合を含む。)、第14条の2第4項(同条第5項において準用する場合を含む。)及び第14条の3第3項(同条第4項において準用する場合を含む。) これらの規定により知事が公表した事項のうち水防法施行規則(平成12年建設省令第44号)第2条第1号及び第2号、第5条第1項第1号及び第2号並びに第8条第1号及び第2号に掲げる事項に関する情報

(イ) 宅地造成及び特定盛土等規制法(昭和36年法律第191号)第45条第3項において準用する同法第10条第4項 同法第45条第3項において準用する同法第10条第4項の規定により知事が公示した造成宅地防災区域に関する情報

(ウ) 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号)第4条第2項 同項の規定により知事が公表した基礎調査の結果のうち土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律施行規則(平成13年国土交通省令第71号)第1条第2項に規定する急傾斜地の崩壊等が発生した場合には住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域に関する情報

(エ) 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第7条第4項 同項の規定により知事が公示した指定の区域及び土砂災害の発生原因となる自然現象に関する情報

(オ) 津波防災地域づくりに関する法律(平成23年法律第123号)第8条第4項(同条第6項において準用する場合を含む。) 同条第4項(同条第6項において準用する場合を含む。)の規定により知事が公表した津波浸水想定に関する情報

(カ) 津波防災地域づくりに関する法律第53条第4項(同条第6項において準用する場合を含む。) 同条第4項(同条第6項において準用する場合を含む。)の規定により知事が公示した指定の区域及び基準水位に関する情報

 想定し得る最大規模の降雨であって規則で定める基準に該当するものにより河川(河川法(昭和39年法律第167号)第9条第2項、第10条第1項又は第11条第1項の規定により知事が管理する河川(以下「知事管理河川」という。)のうち水防法第14条第2項各号に掲げる河川を除いた河川に限る。)が氾濫した場合に、浸水が想定される区域及び当該区域が浸水した場合に想定される水深に関する情報

 及びに掲げる情報以外の情報であって、災害の発生の防止又は災害が発生した場合における被害の軽減を図るために必要な情報として規則で定めるもの

 災害の発生のおそれのある区域に関する情報として国又は市町村が公表した情報

(5) 地域防災力 消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律(平成25年法律第110号)第2条に規定する地域防災力をいう。

(6) 防災関係機関 法第2条第5号に規定する指定公共機関、同条第6号に規定する指定地方公共機関及び公共的団体その他防災上重要な施設の管理者をいう。

(7) 自主防災組織等 法第2条の2第2号に規定する自主防災組織及び自発的に防災活動(防災に関する活動をいう。以下同じ。)に取り組む地縁による団体(地方自治法(昭和22年法律第67号)第260条の2第1項に規定する地縁による団体をいう。)をいう。

(8) 府民等 府民、自主防災組織等及び事業者(企業その他の事業者(国及び地方公共団体を除く。)をいう。以下同じ。)をいう。

(9) 要配慮者 法第8条第2項第15号に規定する要配慮者をいう。

(10) 避難行動要支援者 法第49条の10第1項に規定する避難行動要支援者をいう。

(11) 帰宅困難者等 災害による交通機関の運行の停止等により、帰宅することが困難となった者及び目的地に移動することが困難となった者をいう。

(12) 指定等文化財建造物 文化財保護法(昭和25年法律第214号)及び京都府文化財保護条例(昭和56年京都府条例第27号)の規定に基づき指定され、又は登録された建造物をいう。

(令3条例14・令5条例5・一部改正)

(基本理念)

第3条 防災対策は、府、国、市町村及び府民等が連携し、及び協働して、災害危険情報の共有、防災上の機能を強化するまちづくりの推進、地域防災力の向上及び災害が発生した場合の体制の構築を図ることを旨として行われなければならない。

 防災対策は、要配慮者が置かれている状況及び男女共同参画(京都府男女共同参画推進条例(平成16年京都府条例第10号)第2条第1号に規定する男女共同参画をいう。)の視点を踏まえ、被災者の基本的人権を尊重することを旨として行われなければならない。

(府の責務)

第4条 府は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、地域の実情に応じた防災対策を総合的に推進するものとする。

 府は、防災対策の推進に当たっては、国、市町村及び府民等と連携し、及び協働して取り組むものとする。

(府民の役割)

第5条 府民は、基本理念にのっとり、自らの生命、身体及び財産を守るための防災活動を自発的かつ積極的に実施するよう努めなければならない。

 府民は、地域における防災活動に参加するよう努めるとともに、府、国及び市町村が推進する防災対策に協力するよう努めなければならない。

(自主防災組織等の役割)

第6条 自主防災組織等は、基本理念にのっとり、地域住民の安全を確保するため、地域住民、自主防災組織等、消防団、事業者等と連携し、及び協働して、地域における防災活動を自発的かつ積極的に実施するよう努めなければならない。

 自主防災組織等は、府、国及び市町村が推進する防災対策に協力するよう努めなければならない。

(事業者の役割)

第7条 事業者は、基本理念にのっとり、その従業員及び地域住民(以下「従業員等」という。)の安全を確保するための防災活動を自発的かつ積極的に実施するよう努めなければならない。

 事業者は、地域における防災活動が円滑に進められるよう、地域住民、自主防災組織等、消防団、事業者等と連携し、及び協働するよう努めなければならない。

 事業者は、府、国及び市町村が推進する防災対策に協力するよう努めなければならない。

第2章 災害危険情報の共有

第1節 災害危険情報の整備、公表等

(災害危険情報の整備及び公表)

第8条 知事は、第2条第4号イ及びに掲げる情報を整備するものとする。

 知事は、災害危険情報その他災害に備えるために参考となる情報であって知事が必要と認めるものを公表するものとする。

 前項の規定による公表は、インターネットの利用その他の適切な方法を用いて行うものとする。

(災害発生時等の情報提供体制の整備)

第9条 府は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、府民の迅速かつ円滑な避難を確保するため、災害、気象、府が管理する施設の状況、避難等に関する情報(以下「災害等に関する情報」という。)をインターネットの利用その他の適切な方法により市町村その他防災関係機関及び府民等に提供する体制を整備するものとする。

第2節 府民等による災害危険情報の把握等

(府民及び自主防災組織等による災害危険情報の把握等)

第10条 府民及び自主防災組織等は、災害危険情報を把握するよう努めなければならない。

 府民及び自主防災組織等は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において自ら及び地域住民の安全を確保するため、法第49条の9に規定する印刷物、第44条第1項第3号に規定する地図等を活用して、法第49条の4第1項に規定する指定緊急避難場所、避難路及び避難の方法を確認するよう努めるとともに、災害等に関する情報を収集して、災害に備えるよう努めなければならない。

 府民及び自主防災組織等は、あらゆる機会を通じて、災害危険情報を地域住民と共有するよう努めなければならない。

(事業者による災害危険情報の把握等)

第11条 事業者は、災害危険情報を把握するよう努めなければならない。

 事業者は、災害等に関する情報の収集及び伝達、安全であると認める場所への従業員等の避難誘導、従業員等の救出及び救護その他必要な措置に関する計画を作成するよう努めなければならない。

 事業者は、あらゆる機会を通じて従業員等に対し、災害危険情報及び前項の計画を周知するよう努めなければならない。

第3節 宅地建物取引業者に係る特定災害危険情報の提供及び把握

(特定災害危険情報の提供)

第12条 知事は、府民等の安心・安全を確保する上での宅地建物取引の重要性に鑑み、宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第2条第3号に規定する宅地建物取引業者(以下「宅地建物取引業者」という。)に対して、災害危険情報のうち規則で定めるもの(以下「特定災害危険情報」という。)の提供その他の必要な措置を講じるものとする。

(宅地建物取引業者による特定災害危険情報の把握)

第13条 宅地建物取引業者は、特定災害危険情報を把握しなければならない。

第3章 災害に強いまちづくり

第1節 総合的治水対策

(総合的治水対策)

第14条 府は、国、市町村及び府民等と連携し、及び協働して、降雨による浸水の発生を抑制し、又は浸水による被害を軽減するため、次に掲げる対策を組み合わせた総合的な治水対策を実施するものとする。

(1) 降雨による浸水の発生を防ぐため、河川及び下水道により、雨水を海域まで流下させ、又は一時的に貯留する対策

(2) 降雨による浸水の発生を減少させるため、流域内において雨水を一時的に貯留し、又は地下に浸透させる対策

(3) 降雨による浸水が発生した場合において、浸水による被害を軽減させるため、浸水の発生にあらかじめ適切に備える対策

(知事管理河川の整備及び維持)

第15条 知事は、知事管理河川の安全性の向上を図るため、堤防の整備、河道の拡幅、貯留施設の整備等を効果的に組み合わせ、計画的に実施するとともに、河川法第3条第2項に規定する河川管理施設を適切に維持管理するものとする。

(府管理下水道の整備及び維持)

第16条 府は、府が管理する流域下水道(下水道法(昭和33年法律第79号)第2条第4号に規定する流域下水道をいう。以下同じ。)の雨水を排除し、当該雨水の流量を調節する機能の向上を図るため、流域下水道に係る管きょ、ポンプ施設等を計画的に整備するとともに、これらを適切に維持管理するものとする。

(開発行為に伴う調整池の設置)

第17条 土地の形質を変更する行為(以下「開発行為」という。)をしようとする者は、規則で定める基準に照らし、当該開発行為をしようとする土地の現に有する浸水による被害の防止の機能を考慮して、当該開発行為により当該機能に依存する地域において浸水による被害を発生させる可能性が高まると認められる場合には、雨水を一時的に貯留し、雨水の流出を抑制する調整池であって、当該可能性を低減するために必要かつ相当な機能を有するものを設置するよう努めなければならない。

(重要開発調整池の設置)

第18条 知事管理河川の流域内における規模が1ヘクタール以上の開発行為(規則で定める開発行為を除く。)であって、前条に規定する基準に照らし、当該開発行為をしようとする土地の現に有する浸水による被害の防止の機能を考慮して、当該開発行為により当該機能に依存する地域において浸水による被害を発生させる可能性が高まると認められる開発行為をしようとする者は、あらかじめ、規則で定めるところにより、次に掲げる事項を知事に届け出なければならない。

(1) 氏名及び住所(法人にあっては、その名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)

(2) 開発行為を行う土地の所在地

(3) 開発行為の目的

(4) 開発行為を行う土地の利用の現況及び開発行為を行った後の土地の利用の状況

(5) 前条に規定する基準に照らして想定される雨水が流出する量の変化

(6) 調整池の設置に関する計画

(7) 前各号に掲げるもののほか、規則で定める事項

 前項の開発行為をする者(以下「開発者」という。)は、規則で定める技術的基準に適合する調整池(以下「重要開発調整池」という。)を設置しなければならない。

(開発者への監督処分)

第19条 知事は、前条第1項の規定による届出をしない開発者に対し、当該開発行為の中止を命じることができる。

 知事は、前条第2項の規定に違反して調整池を設置しない開発者に対し、期限を定めて、重要開発調整池の設置を命じることができる。

 知事は、開発者が設置する調整池が、前条第2項に規定する技術的基準に適合しないと認めるときは、当該開発者に対し、期限を定めて、当該調整池を当該技術的基準に適合させるために必要な措置を講じるべきことを命じることができる。

(重要開発調整池の設置の完了の届出等)

第20条 開発者は、第18条第2項の規定による調整池の設置が完了したときは、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。

 知事は、前項の届出に係る調整池について検査を行い、第18条第2項の技術的基準に適合すると認めるときは、規則で定めるところにより、その旨を告示するものとする。

(重要開発調整池所有者等の義務)

第21条 重要開発調整池の所有者(所有者以外に当該重要開発調整池の管理について権原を有する者があるときは、当該権原を有する者。以下「重要開発調整池所有者等」という。)は、当該重要開発調整池の機能を維持するため、適正な管理を行わなければならない。

 重要開発調整池所有者等は、当該重要開発調整池の機能が失われたときは、遅滞なく、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。

 重要開発調整池所有者等を変更したときは、新たに重要開発調整池所有者等となった者は、遅滞なく、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。

(重要開発調整池所有者等に対する措置命令)

第22条 知事は、重要開発調整池所有者等が前条第1項の規定に違反して適正な管理を怠ったときは、当該重要開発調整池所有者等に対し、期限を定めて、当該重要開発調整池に堆積した土砂等の撤去その他当該重要開発調整池の機能を維持するために必要な措置を講じるべきことを命じることができる。

(重要開発調整池所有者等の義務の特例)

第23条 重要開発調整池所有者等は、知事が浸水による被害を発生させるおそれが減少し、又は公益上の理由があると認める場合に限り、第21条第1項の規定にかかわらず、同項に規定する管理を行うことを要しない。

 知事は、前項の規定により、被害を発生させるおそれが減少し、又は公益上の理由があると認めた場合は、規則で定めるところにより、その旨を告示するものとする。

(重要開発調整池以外の調整池の管理)

第24条 重要開発調整池以外の調整池の所有者(所有者以外に当該調整池の管理について権原を有する者があるときは、当該権原を有する者)は、当該調整池が有する雨水の流出を抑制する機能を維持するため、適切に維持管理するよう努めなければならない。

(土地等の雨水貯留浸透機能の確保)

第25条 土地又は施設(以下「土地等」という。)の所有者又は管理者は、降雨による浸水の発生が抑制され、又は浸水による被害が軽減されるよう、当該土地等に雨水貯留浸透機能(雨水を一時的に貯留し、又は地下に浸透させる機能をいう。以下同じ。)を備えるよう努めるとともに、これを維持するよう努めなければならない。

 農地又はため池の所有者又は管理者は、農地又はため池が有する雨水貯留浸透機能を維持するよう努めなければならない。

 府は、国及び市町村と連携して、農地が有する雨水貯留浸透機能に配慮しつつ、農地の整備及び農業者、地域住民等による農地を保全するための共同活動を支援するものとする。

(貯水施設による雨水貯留容量の確保)

第26条 河川の流水を占用して、かんがい用水等の取水の用に供し、又は発電を行う等専ら水の利用を目的として設置されたダムその他の雨水を貯留し、利用する目的で設置された貯水施設の管理者は、降雨により洪水が発生するおそれがある場合に、あらかじめ当該施設の貯水量を減じる等の適切な措置を講じることにより、雨水を貯留する容量を確保するよう努めなければならない。

(森林の雨水貯留浸透機能の確保)

第27条 森林の所有者又は占有者は、その所有し、又は占有する森林が有する雨水貯留浸透機能が維持されることを通じてその森林が健全な状態で保全されるよう適正管理に努めなければならない。

 府は、森林の所有者又は占有者と連携して、森林が有する雨水貯留浸透機能が維持されるよう必要な措置を講じるものとする。

(土地の遊水機能の維持等)

第28条 河川の増水に伴って浸水が生じることにより河川の流水及び雨水を一時的に貯留する機能(以下「遊水機能」という。)を現に有する土地の所有者等は、当該土地の遊水機能を維持し、又はこれに代わるべき措置を講じるよう努めなければならない。

(公共建築物の耐水機能の確保)

第29条 府は、災害危険情報等により、府が所有する公共建築物(公共の用又は公用に供する建築物をいう。以下同じ。)が浸水するおそれがあると認められる場合は、当該公共建築物の床を高くすること、地階への雨水の流入を防ぐこと等により当該公共建築物に浸水による被害を軽減する機能を備えるよう努めるとともに、当該公共建築物の当該機能を維持するよう努めなければならない。

(排水機場等の適切な操作)

第30条 排水機場又はポンプ場(河川法第3条第2項に規定する河川管理施設であるものを除く。)の管理者は、河川の水位に応じた排水機又はポンプの操作方法を定めた計画を作成するよう努めるとともに、当該計画に従い、排水機又はポンプを適切に操作するよう努めなければならない。

(ため池の決壊の防止等)

第31条 ため池の所有者又は管理者は、日常的な点検を実施し、当該ため池の現状を把握するよう努めなければならない。

 ため池の所有者又は管理者は、市町村その他関係機関と連携し、必要に応じて当該ため池の改修に努めるとともに、豪雨等により当該ため池の水が堤体を越えてあふれ出すおそれがある場合は、あらかじめ当該ため池の貯水量を減じる措置を講じるよう努めなければならない。

 府は、府民の生命、身体及び財産をため池の決壊により生じる被害から保護するため、市町村と連携して、ため池の所有者及び管理者に対し、ため池を日常的に点検するよう啓発するとともに、改修の緊急性の高い箇所があるため池の改修を支援するものとする。

第2節 地震、津波等に関する防災対策

(地震、津波等に関する防災対策)

第32条 府は、国、市町村及び府民等と連携し、及び協働して、地震、津波等による被害の発生の防止又は被害の軽減を図るために必要な対策を実施するものとする。

(建築物の安全性の確保)

第33条 建築物(指定等文化財建造物を除く。以下この条において同じ。)の所有者又は管理者は、地震による当該建築物の倒壊、延焼等から自ら及び利用者の安全を確保するため、当該建築物の耐震診断(建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)第2条第1項に規定する耐震診断をいう。)及び当該耐震診断の結果に基づく当該建築物の耐震改修(同条第2項に規定する耐震改修をいう。)、当該建築物の撤去、当該建築物の耐火性能の向上その他の必要な措置を講じるよう努めなければならない。

 建築物の所有者又は管理者は、災害による火災の発生及び延焼の防止又は消火のために必要な用具を設置するよう努めるとともに、適切に維持管理するよう努めなければならない。

 府は、府が所有する公共建築物について、非常用電源設備その他の災害が発生した場合に防災対策を実施するために必要な設備を設けるよう努めなければならない。

(公共施設の安全性の確保)

第34条 府は、地震、津波等による災害の発生の防止又は被害の軽減を図るため、河川、海岸、砂防施設、道路、港湾、漁港、下水道、公園等(これらの施設を構成する建築物を除く。以下「公共施設」という。)であって府が所有するものについて、計画的に整備するよう努めるとともに、当該公共施設を適切に維持管理するよう努めなければならない。

 府は、国、市町村及び防災関係機関に対し、これらが所有する公共施設について、地震、津波等による災害の発生の防止又は被害の軽減を図るために必要な限度において、必要な措置を講じるよう求めることができる。

(屋内における家具等の安全性の確保)

第35条 建築物の所有者又は管理者は、地震発生時における当該建築物の家具の転倒、窓ガラス等の飛散等による被害を防止するために必要な措置を講じるよう努めなければならない。

(工作物等の安全性の確保)

第36条 屋外に落下危険物(広告塔、広告板その他建築物の外部に取り付けられている物をいう。)、ブロック塀等(コンクリートブロック造の塀、れんが造の塀、石造の塀その他これらに類する塀をいう。)その他の工作物及び自動販売機(以下「工作物等」という。)を設置する者は、当該工作物等の落下、倒壊、転倒等により人の生命、身体若しくは財産を害し、又は車両等の通行を妨げるおそれがある場合には、災害に対する安全性を確保するため、当該工作物等の定期的な点検その他の必要な措置を講じるよう努めなければならない。

(指定等文化財建造物の安全性の確保等)

第37条 指定等文化財建造物の所有者又は管理者(以下「指定等文化財建造物所有者等」という。)は、当該指定等文化財建造物の倒壊等により人の生命、身体若しくは財産を害し、又は車両等の通行を妨げるおそれのある場合において、当該指定等文化財建造物について、災害に対する安全性を確保するため、法令又は条例の規定に反しない限りにおいて、改修その他の必要な措置を講じるよう努めなければならない。

 府は、指定等文化財建造物所有者等が前項の措置を講じるに当たり、技術的な助言その他の必要な支援を行うものとする。

 府は、市町村その他関係機関と連携して、指定等文化財建造物所有者等が地域住民と協働して行う防災訓練(防災に関する訓練をいう。以下同じ。)その他防災活動の実施に必要な支援を行うものとする。

第3節 特定地域防災協議会等

(特定地域防災協議会等)

第38条 府は、大規模な災害が想定される地域(津波により生じる被害については、津波防災地域づくりに関する法律第10条第2項に規定する推進計画区域を除く。)について、防災対策を円滑かつ効果的に実施するため、市町村からの申出により、特定地域防災協議会を設置することができる。

 特定地域防災協議会は、府、国、市町村、地域住民等により構成する。

 特定地域防災協議会は、計画的な事業の実施を図るため、災害の種別ごとの事業計画を定めるものとする。

 事業計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 防災対策の基本的な目標に関する事項

(2) 防災対策の実施に関する基本的な方針

(3) 防災に関する基盤整備及び施設整備に関する事項

(4) その他防災対策の実施に必要な事項

 府は、第3項の事業計画が定められたときは、防災対策を行う市町村を支援するため、国と連携して、情報の提供、助言その他の必要な措置を講じるものとする。

第4節 指定施設の指定等

(指定施設の指定)

第39条 知事は、前条第3項に規定する事業計画を踏まえ、建築物、工作物等その他施設(土地を含む。以下「建築物等」という。)の所有者又は管理者が、当該建築物等に雨水貯留浸透機能を備え、又は維持することその他の規則で定める防災対策(以下「特定防災対策」という。)を実施することが特に必要と認める場合には、当該建築物等を指定施設として指定することができる。

 知事は、前項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ、当該指定しようとする施設の所有者又は管理者の同意を得るものとする。

 知事は、第1項の規定による指定をするときは、規則で定めるところにより、その旨及び当該指定施設に係る特定防災対策を告示するものとする。

 知事は、第1項の規定による指定が促進されるよう、指定施設の所有者又は管理者(以下「指定施設所有者等」という。)の認証制度その他の必要な施策を実施するものとする。

(指定排水機等の排水計画の策定)

第40条 指定施設の排水機又はポンプ(以下この条において「指定排水機等」という。)の管理者は、当該指定排水機等が排水する河川が増水している場合における当該指定排水機等の計画的な操作を行うため、河川の水位に応じた適切な指定排水機等の操作を定めた計画(以下「排水計画」という。)を作成しなければならない。

 指定排水機等の管理者は、排水計画の作成に当たっては、あらかじめ、河川管理者に協議の上、規則で定めるところにより、知事に協議し、その同意を得なければならない。

 知事は、前項の同意をするに当たっては、当該指定排水機等が存する市町村の長の意見を聴くものとする。

(指定施設所有者等の義務)

第41条 指定施設所有者等は、当該指定施設について特定防災対策を講じなければならない。

 指定施設所有者等は、特定防災対策を講じたときは、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。

(指定施設所有者等の届出)

第42条 指定施設所有者等は、指定施設について災害に対する安全性が損なわれたとき又は用途を廃止したときは、遅滞なく、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。

 指定施設所有者等を変更したときは、新たに指定施設所有者等となった者は、遅滞なく、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。

(指定の解除)

第43条 知事は、指定施設について用途の廃止その他指定施設所有者等が特定防災対策を実施することができない正当な理由があるときは、当該指定施設の指定を解除することができる。

 知事は、前項の規定により指定を解除したときは、規則で定めるところにより、その旨を告示するものとする。

第4章 災害に強い人づくり

(自主防災組織等の活動促進)

第44条 自主防災組織等は、市町村、消防団等と連携し、及び協働して、次に掲げる取組を実施するよう努めなければならない。

(1) 災害危険情報に基づき、地域において災害が発生する危険のある場所を把握すること。

(2) 災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において有用な情報を調査すること。

(3) 第1号の規定により把握した場所及び前号の情報が掲載された地図を作成し、当該地域住民に提供すること。

(4) 前号の地図を活用した防災訓練を実施すること。

(5) 法第42条の2第1項に規定する地区防災計画の素案を作成すること。

 府は、市町村と連携し、及び協働して、前項に規定する取組を支援するものとする。

(自主防災組織等及び消防団への参加促進等)

第45条 府民は、自主防災組織等を結成するよう努めるとともに、その活動に積極的に参加するよう努めなければならない。

 府民は、消防団に積極的に参加し、又はその活動に協力するよう努めなければならない。

 府は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において府民が助け合うことができる地域社会を形成するため、市町村と連携し、及び協働して、自主防災組織等及び消防団による防災活動を支援するものとする。

(教育、訓練等の実施)

第46条 府民は、災害の発生の防止又は災害が発生した場合における被害の軽減を図るために、一人ひとりが迅速かつ適切な行動をとることが重要であることを認識するよう努め、防災学習(災害及び防災対策に関する学習をいう。以下同じ。)に取り組むよう努め、及び府、市町村、自主防災組織等、事業者等が実施する防災訓練に参加するよう努めなければならない。

 府は、府民が防災に関する理解を深め、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、自らの安全を確保するために迅速かつ適切な行動をとることができるよう、市町村、自主防災組織等、事業者等と連携し、及び協働して、防災学習の支援並びに災害及び防災対策に関する教育を行うとともに、防災訓練を実施するものとする。

(人材の育成)

第47条 府は、自主防災組織等による防災活動が効果的に行われるよう、自主防災組織等において中核的な役割を果たす人材を育成するため、市町村その他関係機関と連携して、講習会の開催その他の必要な施策を実施するものとする。

 府は、ボランティアの受入れに関し専門的な知識及び経験を有し、ボランティアによる防災活動が円滑に行われるようボランティア相互間の情報交換及び連絡調整を行う者を育成するため、講習会の開催その他の必要な施策を実施するものとする。

第5章 災害発生時の体制づくり

(備蓄の推進、物資の輸送)

第48条 府民は、災害の発生に備えて、3日分(災害が発生した場合に外部との交通が途絶するおそれが高い地域に居住する府民は、必要に応じて7日分)以上の食料、飲料水等を備蓄するよう努め、災害等に関する情報を収集することができる機器を確保するよう努め、及び避難の際に必要な物資を持ち出すための準備をしておくよう努めなければならない。

 自主防災組織等及び事業者は、災害の発生に備えて、あらかじめ、次に掲げる事項を実施するよう努めなければならない。

(1) 被災者の避難、救出、救護等(以下「避難等」という。)に必要な物資の備蓄及び点検

(2) 被災者の避難等に必要な資材及び機材の整備及び点検

 府は、前2項に規定する府民等の備蓄を補完するため、食料、飲料水その他の生命及び健康の維持に必要な物資(以下「必要物資」という。)を確保するとともに、災害が発生した場合に国、他の都道府県等から輸送される救援に必要な物資並びに資材及び機材(以下「救援物資等」という。)を受け入れる体制を整備するものとする。

 府は、防災関係機関等と連携し、必要物資及び救援物資等を迅速かつ的確に避難所等に輸送する体制を整備するものとする。

(避難行動要支援者への支援等)

第49条 府は、市町村が行う避難行動要支援者への支援等に関する体制の整備に必要な支援を行うものとする。

 民生委員法(昭和23年法律第198号)に基づく民生委員、児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基づく児童委員その他の関係者及び自主防災組織等、消防機関、京都府警察、社会福祉法(昭和26年法律第45号)第109条第1項に規定する市町村社会福祉協議会その他の関係団体は、避難行動要支援者の避難の支援を円滑に行うため、市町村と連携し、避難行動要支援者の避難の支援を円滑に行うための体制を整備するよう努めなければならない。

 避難行動要支援者は、法第49条の10第1項に規定する避難行動要支援者名簿の作成に協力するよう努めなければならない。

(帰宅困難者等に対する措置等)

第50条 府は、帰宅困難者等による混乱の発生等(災害が発生した場合において帰宅困難者等が一斉に帰宅し、若しくは目的地に移動しようとすること(以下「一斉帰宅等」という。)又は駅周辺等で滞留することによる混乱、事故の発生等をいう。以下同じ。)を防止するため、市町村と連携し、一斉帰宅等の抑制に関する周知、帰宅困難者等を一時的に受け入れるための施設の確保その他の必要な措置を講じるものとする。

 府は、前項の措置を講じるに当たっては、観光旅行者、日本語を理解することが困難な外国人等に配慮するものとする。

 災害が発生した場合において通常用いる方法による帰宅が困難になるおそれがある者は、徒歩により帰宅する場合の経路及び家族等との連絡方法の確認その他円滑に帰宅することができるために必要な準備を行うよう努めなければならない。

 事業者は、災害が発生した場合において帰宅困難者等による混乱の発生等の防止に資するため、その従業員及び事業所に来所する者等の一斉帰宅等の抑制のために必要な措置を講じるよう努めなければならない。

(事業継続計画等)

第51条 事業者は、災害の発生に備えて、あらかじめ、事業活動の継続又は早期の再開に必要な事項を定めた計画(以下「事業継続計画」という。)を作成するよう努めるとともに、当該事業継続計画を改善して的確に実施するための体制を整備するよう努めなければならない。

 府は、事業継続計画を作成し、又は作成しようとする事業者に対し、事業継続計画の作成に必要な情報の提供その他の必要な支援を行うものとする。

 府は、大規模な災害が発生した場合において、京都の活力の維持及び向上のため、国、市町村、事業者、ボランティア等と連携して、災害からの迅速な復旧及び復興を図る体制を構築するものとする。

第6章 雑則

(財政上の措置)

第52条 府は、防災対策を推進するため、必要な財政上の措置を講じるものとする。

(立入検査)

第53条 知事は、第19条から第23条までの規定の施行に必要な限度において、その職員に開発行為の対象である土地、重要開発調整池その他の場所に立ち入り、開発行為をしようとする者、重要開発調整池所有者等その他の者の帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は関係者に質問をさせることができる。

 前項の規定による立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(市町村の条例との関係)

第54条 市町村がこの条例に定める手続その他の内容に関して条例を制定した場合において、当該条例の規定で、この条例の規定と同等以上の効果を有するものとして規則で定めるものが適用される市町村の区域については、当該規定に相当する規則で定める規定は、適用しない。

(規則への委任)

第55条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

第7章 罰則

(罰則)

第56条 第19条又は第22条の規定による知事の命令に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

第57条 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。

(1) 第18条第1項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

(2) 第53条第1項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

(両罰規定)

第58条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この条において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前2条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

 この条例は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

(1) 第13条の規定 平成28年12月1日

(2) 第18条から第23条まで、第53条及び第7章の規定 平成29年7月1日

 前項第2号に規定する日前において、開発行為を行うにつき法令上の許可又は認可を必要とする者が当該許可又は認可を求める申請を行った場合における当該申請に係る開発行為については、第18条から第20条までの規定は、適用しない。

(令和3年条例第14号)

この条例は、公布の日又は特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律(令和3年法律第31号)の施行の日のいずれか遅い日から施行する。ただし、第2条の規定は、公布の日又は同法附則第1条第2号に規定する政令で定める日のいずれか遅い日から施行する。

(政令で定める日=令和3年7月15日)

(令和5年条例第5号)

(施行期日)

 この条例は、令和5年5月26日から施行する。ただし、第3条中災害からの安全な京都づくり条例第2条第4号ア(ア)の改正規定は、公布の日から施行する。

災害からの安全な京都づくり条例

平成28年8月4日 条例第41号

(令和5年5月26日施行)

体系情報
第1編 規/第9章 消防防災
沿革情報
平成28年8月4日 条例第41号
令和3年7月7日 条例第14号
令和5年3月17日 条例第5号