○社会福祉法に基づく無料低額宿泊所の設備等の基準に関する条例

令和2年3月23日

京都府条例第9号

社会福祉法に基づく無料低額宿泊所の設備等の基準に関する条例をここに公布する。

社会福祉法に基づく無料低額宿泊所の設備等の基準に関する条例

目次

第1章 総則(第1条・第2条)

第2章 基本方針(第3条)

第3章 設備及び運営に関する基準(第4条―第31条)

第4章 雑則(第32条)

附則

第1章 総則

(趣旨)

第1条 この条例は、社会福祉法(昭和26年法律第45号。以下「法」という。)第68条の5第1項の規定により、法第2条第3項第8号に規定する生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業を行う施設(以下「無料低額宿泊所」という。)の設備及び運営に関する基準を定めるものとする。

(無料低額宿泊所の範囲)

第2条 無料低額宿泊所は、次の各号に掲げる要件を満たすものとする。ただし、他の法令により必要な規制が行われている等事業の主たる目的が、生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させるものでないことが明らかである場合は、この限りでない。

(1) 次に掲げるいずれかの要件を満たすものであること。

 入居の対象者を生計困難者に限定していること(明示的に限定していない場合であっても、生計困難者に限定して入居を勧誘していると認められる場合を含む。)

 入居者の総数に占める生活保護法(昭和25年法律第144号)第6条第1項に規定する被保護者(以下「被保護者」という。)の数の割合がおおむね50パーセント以上であり、居室の利用に係る契約が建物の賃貸借契約以外の契約であること。

 入居者の総数に占める被保護者の数の割合がおおむね50パーセント以上であり、利用料(居室使用料及び共益費を除く。)を受領してサービスを提供していること(サービスを提供する事業者が人的関係、資本関係等において当該施設と密接な関係を有する場合を含む。)

(2) 居室使用料が無料又は生活保護法第8条に規定する厚生労働大臣の定める基準(同法第11条第3号に規定する住宅扶助に係るものに限る。)に基づく額以下であること。

第2章 基本方針

(基本方針)

第3条 無料低額宿泊所は、入居者が地域において自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、現に住居を求めている生計困難者につき、無料又は低額な料金で、居室その他の設備を利用させるとともに、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう必要なサービスを適切かつ効果的に行うものでなければならない。

 無料低額宿泊所は、入居者の意思及び人格を尊重して、常に当該入居者の立場に立ったサービスの提供に努めなければならない。

 無料低額宿泊所は、基本的に一時的な居住の場であることに鑑み、入居者の心身の状況、その置かれている環境等に照らし、当該入居者が独立して日常生活を営むことができるか常に把握しなければならない。

 無料低額宿泊所は、独立して日常生活を営むことができると認められる入居者に対し、当該入居者の希望、退居後に置かれることとなる環境等を勘案し、当該入居者の円滑な退居のための必要な援助に努めなければならない。

 無料低額宿泊所は、地域との結び付きを重視した運営を行い、都道府県、市町村、生計困難者の福祉を増進することを目的とする事業を行う者その他の保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携に努めなければならない。

 無料低額宿泊所は、入居者の人権の擁護、虐待の防止等のため、責任者を設置すること等必要な体制の整備を行うとともに、その職員に対し、研修を実施すること等の措置を講じるよう努めなければならない。

第3章 設備及び運営に関する基準

(構造設備等の一般原則)

第4条 無料低額宿泊所の配置、構造及び設備は、日照、採光、換気等入居者の保健衛生に関する事項及び防災について十分考慮されたものでなければならない。

(設備の専用)

第5条 無料低額宿泊所の設備は、専ら当該無料低額宿泊所の用に供するものでなければならない。ただし、入居者に提供するサービスに支障がない場合には、この限りでない。

(職員の資格要件等)

第6条 無料低額宿泊所の長(以下「施設長」という。)は、法第19条第1項各号のいずれかに該当する者若しくは社会福祉事業等に2年以上従事した者又はこれらと同等以上の能力を有すると認められる者でなければならない。

 無料低額宿泊所は、当該無料低額宿泊所の職員(施設長を除く。)を、できる限り法第19条第1項各号のいずれかに該当する者とするよう努めるものとする。

 無料低額宿泊所の職員(施設長を含む。第21条を除き、以下同じ。)その他の無料低額宿泊所の運営に携わる者は、京都府暴力団排除条例(平成22年京都府条例第23号)第2条第3号に掲げる暴力団員又は同号に掲げる暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者であってはならない。

 無料低額宿泊所は、その運営について、京都府暴力団排除条例第2条第4号に掲げる暴力団員等又は同号に掲げる暴力団員等でなくなった日から5年を経過しない者の支配を受けてはならない。

(運営規程)

第7条 無料低額宿泊所は、施設の運営についての規則で定める重要事項に関する規程(以下「運営規程」という。)を定めておかなければならない。

 無料低額宿泊所は、前項に規定する運営規程を定め、又は変更したときは、府に届け出なければならない。

(非常災害対策)

第8条 無料低額宿泊所は、消火設備その他の非常災害に際して必要な設備を設けるとともに、非常災害に対する具体的計画を立て、非常災害時の関係機関への通報及び関係機関との連絡の体制を整備し、それらを定期的に職員に周知しなければならない。

 無料低額宿泊所は、非常災害に備えるため、少なくとも1年に1回以上、かつ、定期的に、避難又は救出の訓練その他必要な訓練を行わなければならない。

(記録の整備)

第9条 無料低額宿泊所は、設備、職員及び会計に関する諸記録を整備しておかなければならない。

 無料低額宿泊所は、入居者に提供するサービスの状況に関する規則で定める記録を整備し、その完結の日から5年間保存しなければならない。

(規模)

第10条 無料低額宿泊所は、5人以上の人員を入居させることができる規模を有するものでなければならない。

(サテライト型住居の設置)

第11条 無料低額宿泊所は、本体となる施設(入居定員が5人以上10人以下のものに限る。以下この条において「本体施設」という。)と一体的に運営される附属施設であって、利用期間が原則として1年以下のもの(入居定員が4人以下のものに限る。以下「サテライト型住居」という。)を設置することができる。

 サテライト型住居は、本体施設からおおむね20分で移動することができる範囲に設置する等、入居者へのサービス提供に支障がないものとする。

 一の本体施設に附属することができるサテライト型住居の数は、規則で定める数以下であることとする。

 無料低額宿泊所(サテライト型住居を設置するものに限る。)の入居定員の合計は、規則で定める数以下であることとする。

 無料低額宿泊所(サテライト型住居を設置するものに限る。)は、サテライト型住居について、第9条各項に規定する記録のほか、第20条の規定による状況把握の実施に係る記録を整備し、その完結の日から5年間保存しなければならない。

(設備)

第12条 無料低額宿泊所の建物は、建築基準法(昭和25年法律第201号)の規定に適合するものでなければならない。

 無料低額宿泊所の建物は、消防法(昭和23年法律第186号)の規定に適合するものでなければならない。

 無料低額宿泊所は、消火器、自動火災報知設備その他の防火に係る設備の整備に努めなければならない。

 無料低額宿泊所には、次に掲げる設備を設けなければならない。ただし、法第62条第1項に規定する社会福祉施設その他の施設の設備を利用することにより、当該無料低額宿泊所の効果的な運営を期待することができる場合であって、入居者に提供するサービスに支障がないときは、設備の一部を設けないことができる。

(1) 居室

(2) 炊事設備

(3) 洗面所

(4) 便所

(5) 浴室

(6) 洗濯室又は洗濯場

 無料低額宿泊所には、必要に応じ、次に掲げる設備その他の施設の円滑な運営に資する設備を設けなければならない。

(1) 共用室

(2) 相談室

(3) 食堂

 第4項各号に掲げる設備の設置の場所、床面積等の基準は、規則で定める。

 第3項から第5項までの規定は、サテライト型住居ごとに適用する。

(職員配置の基準)

第13条 無料低額宿泊所に置くべき職員の員数は、入居者の数及び提供するサービスの内容に応じた適当数とし、そのうち1人は施設長としなければならない。

 当該無料低額宿泊所が生活保護法第30条第1項ただし書に規定する日常生活支援住居施設(以下「日常生活支援住居施設」という。)に該当する場合は、前項の規定にかかわらず、日常生活支援住居施設としての職員配置の要件を満たさなければならない。

(入居申込者に対する説明、契約等)

第14条 無料低額宿泊所は、居室の利用その他のサービスの提供の開始に際しては、あらかじめ、入居申込者に対し、運営規程の概要、職員の勤務の体制、当該サービスの内容及び費用その他の入居申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行うとともに、居室の利用に係る契約とそれ以外のサービスの提供に係る契約をそれぞれ文書により締結しなければならない。

 無料低額宿泊所は、前項の契約又は当該契約の更新において、契約期間(1年以内(居室の利用に係る契約については、建物の賃貸借契約(借地借家法(平成3年法律第90号)第38条第1項の規定による建物賃貸借を除く。)の場合は、1年とする。)のものに限る。)及び解約に関する事項を定めなければならない。

 無料低額宿泊所は、前項の契約期間の満了前に、あらかじめ入居者の意向を確認するとともに、法第14条の規定により都道府県又は市町村が設置する福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)等都道府県又は市町村の関係機関と、当該入居者が継続して無料低額宿泊所を利用する必要性について協議しなければならない。

 無料低額宿泊所は、第2項の解約に関する事項において、入居者の権利を不当に狭めるような条件を定めてはならない。

 無料低額宿泊所は、第2項の解約に関する事項において、入居者が解約を申し入れたときは、速やかに当該契約を終了する旨を定めなければならない。

 無料低額宿泊所は、第1項の契約又は当該契約の更新において、入居申込者に対し、保証人を立てさせてはならない。

 無料低額宿泊所は、入居申込者からの申出があった場合には、第1項の規定による文書の交付に代えて、規則で定めるところにより、当該入居申込者の承諾を得て、当該文書に記すべき重要事項及び第2項の事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって規則で定めるもの(以下この条において「電磁的方法」という。)により提供することができる。この場合において、当該無料低額宿泊所は、当該文書を交付したものとみなす。

 前項の規定による承諾を得た無料低額宿泊所は、当該入居申込者から文書又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、当該入居申込者に対し、第1項の重要事項及び第2項の事項の提供を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該入居申込者が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。

(入退居)

第15条 無料低額宿泊所は、入居予定者の入居に際しては、その者の心身の状況、生活の状況等の把握に努めなければならない。

 無料低額宿泊所は、入居者の心身の状況、入居中に提供することができるサービスの内容等に照らし、無料低額宿泊所において日常生活を営むことが困難となったと認められる入居者に対し、その者の希望、その者が退居後に置かれることとなる環境等を勘案し、その者の状態に適合するサービスに関する情報の提供を行うとともに、適切な他のサービスを受けることができるよう必要な援助に努めなければならない。

 無料低額宿泊所は、入居者の退居に係る援助に際しては、福祉事務所等都道府県又は市町村の関係機関、相談等の支援を行う保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者等との密接な連携に努めなければならない。

(利用料の受領)

第16条 無料低額宿泊所は、入居者から利用料として、次に掲げる費用(第7号については、当該無料低額宿泊所が日常生活支援住居施設である場合に限る。)を受領することができる。

(1) 食事の提供に要する費用

(2) 居室使用料

(3) 共益費

(4) 光熱水費

(5) 日用品費

(6) 基本サービス費

(7) 入居者が選定する日常生活上の支援に関するサービスの提供に要する費用

 前項各号に掲げる利用料の基準は、規則で定める。

(サービス提供の方針)

第17条 無料低額宿泊所は、入居者の健康保持に努めるほか、当該入居者が安心して生き生きと明るく生活することができるよう、その心身の状況又は希望に応じたサービスの提供を行うとともに、生きがいをもって生活することができるようにするための機会を適切に提供しなければならない。

 無料低額宿泊所は、入居者にとって当該無料低額宿泊所全体が一つの住居であることに鑑み、入居者が共用部分を円滑に使用することができるよう配慮した運営を行わなければならない。

 無料低額宿泊所は、プライバシーの確保に配慮した運営を行わなければならない。

 無料低額宿泊所の職員は、入居者に対するサービスの提供に当たっては、懇切丁寧に行うことを旨とし、当該入居者に対し、サービスの提供を行う上で必要な事項について、理解しやすいように説明を行わなければならない。

(食事)

第18条 無料低額宿泊所は、入居者に食事を提供する場合は、量及び栄養並びに当該入居者の心身の状況及び好を考慮した食事を、適切な時間に提供しなければならない。

(入浴)

第19条 無料低額宿泊所は、入居者に対し1日に1回以上入浴の機会を提供しなければならない。ただし、やむを得ない事情があるときは、あらかじめ、当該入居者に対し当該事情の説明を行うことにより、1週間に3日以上とすることができる。

(状況把握)

第20条 無料低額宿泊所は、原則として1日に1回以上、入居者に対し居室への訪問等の方法による状況把握を行わなければならない。

(施設長の責務)

第21条 施設長は、無料低額宿泊所の職員の管理、入退居に係る調整、業務の実施状況の把握その他の管理を一元的に行わなければならない。

 施設長は、職員にこの章の規定を遵守させるために必要な指揮命令を行うものとする。

(職員の責務)

第22条 無料低額宿泊所の職員は、入居者からの相談に応じるとともに、適切な助言及び必要な支援を行わなければならない。

(勤務体制の確保等)

第23条 無料低額宿泊所は、入居者に対し、適切なサービスを提供することができるよう、職員の勤務体制を整備しておかなければならない。

 無料低額宿泊所は、職員に対し、その資質の向上のための研修の機会を確保しなければならない。

 無料低額宿泊所は、職員の処遇について、労働に関する法令の規定を遵守するとともに、職員の待遇の向上に努めなければならない。

(定員の遵守)

第24条 無料低額宿泊所は、入居定員及び居室の定員を超えて入居させてはならない。ただし、災害その他のやむを得ない事情がある場合は、この限りでない。

(衛生管理等)

第25条 無料低額宿泊所は、入居者の使用する設備、食器等及び飲用に供する水について、衛生的な管理に努め、又は衛生上必要な措置を講じなければならない。

 無料低額宿泊所は、当該無料低額宿泊所において感染症、食中毒又は害虫が発生し、又はまん延しないように必要な措置を講じるよう努めなければならない。

(日常生活に係る金銭管理)

第26条 入居者の金銭の管理は、当該入居者本人が行うことを原則とする。ただし、金銭の適切な管理を行うことに支障がある入居者であって、無料低額宿泊所による金銭の管理を希望するものに対し、規則で定めるところにより無料低額宿泊所が、日常生活に係る金銭を管理することを妨げない。

(掲示及び公表)

第27条 無料低額宿泊所は、入居者の見やすい場所に、運営規程の概要、職員の勤務の体制その他入居者のサービスの選択に資すると認められる事項を掲示しなければならない。

 無料低額宿泊所は、運営規程を公表するとともに、毎会計年度終了後3月以内に、貸借対照表、損益計算書等の収支の状況に係る書類を公表しなければならない。

(秘密保持等)

第28条 無料低額宿泊所の職員は、正当な理由なく、その業務上知り得た入居者の秘密を漏らしてはならない。

 無料低額宿泊所は、当該無料低額宿泊所の職員であった者が、正当な理由なく、その業務上知り得た入居者の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない。

(広告)

第29条 無料低額宿泊所は、当該無料低額宿泊所について広告をする場合は、その内容が虚偽又は誇大なものであってはならない。

(苦情への対応)

第30条 無料低額宿泊所は、その提供したサービスに関する入居者の苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口の設置その他の必要な措置を講じなければならない。

 無料低額宿泊所は、前項の苦情を受け付けた場合は、当該苦情の内容等を記録しなければならない。

 無料低額宿泊所は、その提供したサービスに関し、府から指導又は助言を受けた場合は、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。

 無料低額宿泊所は、府からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を府に報告しなければならない。

 無料低額宿泊所は、法第83条に規定する運営適正化委員会が行う法第85条第1項の規定による調査にできる限り協力しなければならない。

(事故発生時の対応)

第31条 無料低額宿泊所は、入居者に対するサービスの提供により事故が発生した場合は、速やかに府、当該入居者の家族等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。

 無料低額宿泊所は、前項の事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しなければならない。

 無料低額宿泊所は、入居者に対するサービスの提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない。

第4章 雑則

(規則への委任)

第32条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、令和2年4月1日から施行する。ただし、第11条及び第12条第7項の規定は、令和4年4月1日から施行する。

社会福祉法に基づく無料低額宿泊所の設備等の基準に関する条例

令和2年3月23日 条例第9号

(令和4年4月1日施行)

体系情報
第4編 生/第2章 低所得者対策
沿革情報
令和2年3月23日 条例第9号