○京都府府内産木材の利用等の促進に関する条例

令和4年3月18日

京都府条例第16号

京都府府内産木材の利用等の促進に関する条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第6条)

第2章 府内産木材の利用の促進に関する施策(第7条―第12条)

第3章 その他森林資源の活用に関する施策(第13条・第14条)

第4章 推進体制等(第15条―第19条)

附則

京都府内の森林から産出される樹木や木材は、いにしえより、家屋や神社仏閣等の建築をはじめ、伝統工芸や生活用品等の資材に幅広く利用されることで、私たちの暮らしや木の文化に大きく寄与するとともに、府内各地域において、木の文化をはじめとする特徴ある文化や産業が発展することで、森林には、常に人の手が入り、美しい自然景観の形成に大きな役割を果たしてきた。

しかしながら、近年の都市化の進展は、これまで木の文化に根ざしてきた私たちの生活や産業に大きな影響を与え、併せて、外国産木材の輸入の拡大等により、木の文化と森林を支えてきた府内産木材の利用量は、大幅に減少してきた。最近では、関係者の努力により、府内産木材の利用量は増加しつつあるとはいえ、府内の木材需要に応え得る府内産木材の供給がなされているとはいえない状況にある。

こうした中、私たちは、今一度先人が育んできた木の文化を見つめ直し、府内産木材の新たな需要の開拓を図るなど、その利用を促進することで、木の文化とこれを支える林業・木材産業等を持続的に発展させることにより、森林の公益的機能を将来にわたって発揮させ、府民共通の貴重な財産として森林を次代の府民に引き継いでいく必要がある。

ここに、私たちが京都の木や森を利用することの意義を共有するとともに、それぞれの日常生活や事業活動における府内産木材の利用等を総合的に促進することにより、林業・木材産業等の更なる発展、地域の活性化、森林の公益的機能の持続的な発揮、木の文化の継承及び快適で癒やしをもたらす府民生活の実現に寄与するため、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、府内産木材の利用等の促進に関し、基本理念を定め、府の責務並びに府民等及び森林資源関連事業者の役割を明らかにするとともに、府内産木材の利用等の促進に関する施策の基本的な事項を定めることにより、府内産木材の利用等の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって林業・木材産業等の更なる発展、地域の活性化、森林の公益的機能の持続的な発揮、木の文化の継承及び快適で癒やしをもたらす府民生活の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次に掲げる用語の意義は、それぞれに定めるところによる。

(1) 府内産木材 府内の森林において法令に適合して伐採された樹木を材料とする木材をいう。

(2) 府内産木材の利用等 次に掲げる行為をいう。

 府内産木材の利用(建築材料、工作物の資材又は製品の原材料として府内産木材又はその製品を使用することをいう。以下同じ。)

 木質バイオマス(動植物に由来する有機物である資源(化石資源を除く。)のうち木に由来するものであって、エネルギー源として消費するものに限る。以下同じ。)を消費すること。

 特用林産物(森林原野を起源とする生産物のうち、一般に用いられる木材を除いたものをいう。以下同じ。)をそれぞれの用途に応じて使用し、又は消費すること。

(3) 住宅、商業・観光施設、福祉施設等への府内産木材の利用 次に掲げる府内産木材の利用をいう。

 住宅の用途に供される建築物の建築等に係る府内産木材の利用(以下「住宅への府内産木材の利用」という。)

 商業や観光事業又は福祉事業の用に供される施設等の住宅以外の用途に供される建築物その他の工作物の建築等に係る府内産木材の利用(以下「商業・観光施設、福祉施設等への府内産木材の利用」という。)

(4) 森林の公益的機能 土砂の流出又は崩壊の防止、水害の防止、水源のかん養、地球温暖化の防止、健康の増進、良好な景観の形成その他の森林が有する公益的な機能をいう。

(5) 林業・木材産業等 林業並びに木材産業その他の林産物の加工及び流通の事業をいう。

(6) 府民等 府民及び府内において事業を行う者をいう。

(7) 木材関連事業者 府内において森林の施業、木材(木質バイオマスとして消費される木材を除く。)の生産若しくは流通又は建築物その他の工作物の設計若しくは施工に関する事業を行う者をいう。

(8) 森林資源関連事業者 木材関連事業者及び府内において木質バイオマス又は特用林産物の生産、加工又は流通に関する事業を行う者をいう。

(基本理念)

第3条 府内産木材の利用等の促進は、府内産木材の利用等の更なる増大が林業・木材産業等の発展や雇用の創出による地域の活性化に貢献するものであることに鑑み、府内産木材その他の府内で産出される森林資源の経済的価値の向上が図られることを旨として、行われなければならない。

 府内産木材の利用等の促進は、府内産木材の利用等が府内の各地域の造林、間伐及び保育並びに林道の開設等による森林の整備や森林資源の循環利用を促し、その整備された森林は、樹木が根を張り巡らすことによる土砂の流出又は崩壊の防止、脱炭素社会の実現等による地球温暖化の防止その他の森林の公益的機能の持続的な発揮に資するものであることに鑑み、森林を府民共通の財産として次代に継承することを旨として、行われなければならない。

 府内産木材の利用等の促進は、府民等において木や森を利用することの意義の共有を図りながら、木材の優れた特性を生かすことが府民の快適な居住環境の形成と府民に癒やしをもたらす生活環境の創造に資するものであることに鑑み、府民等のこれらの理解と意識の高揚を図ることで府内産木材の利用等に係る自発的な取組が一層推進されることを旨として、行われなければならない。

(府の責務)

第4条 府は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、府内産木材の利用等の促進に関する施策を総合的に実施する。

 府は、府内産木材の利用等の促進に関する施策の策定及び実施に当たっては、府民等と協働するとともに、森林資源関連事業者、国及び市町村との緊密な連携に努めるものとする。

(府民等の役割)

第5条 府民等は、基本理念にのっとり、森林の公益的機能の重要性、木や森を利用することの意義及び府内産木材の利用等の促進の重要性に対する理解を深めるとともに、それぞれの日常生活又は事業活動を通じて、積極的な府内産木材の利用等に努めるものとする。

 府民等は、府及び市町村が実施する府内産木材の利用等の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(森林資源関連事業者の役割)

第6条 森林資源関連事業者は、基本理念にのっとり、府内産木材の利用等を促進するため、自らの事業活動を通じて、相互に緊密な連携を図るよう努めるものとする。

 森林資源関連事業者は、府及び市町村が実施する府内産木材の利用等の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

第2章 府内産木材の利用の促進に関する施策

(府の公共建築物等の府内産木材による木造化等)

第7条 府は、府が整備する建築物その他の工作物であって、公共の用又は公用に供するもの(以下「公共建築物等」という。)の整備に当たっては、知事が定めるところにより、府内産木材の利用による木造化を行うものとする。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

(1) 当該公共建築物等の整備(木造化を含む整備の部分に限る。)に関し、地方公共団体の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令(平成7年政令第372号)第4条に規定する特定調達契約として当該整備に係る契約を締結することが見込まれる場合

(2) 当該公共建築物等に係る建築物その他の工作物に求められる用途、機能等の観点から、当該公共建築物等が木造化になじまず、又はその木造化を図ることが困難である場合として知事が定める場合

 府は、前項に定めるもののほか、公共建築物等の整備に当たっては、府内産木材の利用による木質化に努めるものとする。

(住宅、商業・観光施設、福祉施設等への府内産木材の利用の促進)

第8条 府は、住宅への府内産木材の利用のみならず、商業・観光施設、福祉施設等への府内産木材の利用を促進するため、その需要の開拓その他の必要な施策を実施するものとする。

 府は、前項の施策の実施に当たっては、大規模な木造建築物及び中高層の木造建築物の建築等における住宅、商業・観光施設、福祉施設等への府内産木材の利用が積極的に促進されるよう、次条に定める施策と相まって、これを効果的に行うよう努めるものとする。

(木造建築物の設計及び施工に係る人材の確保及び育成)

第9条 府は、住宅、商業・観光施設、福祉施設等への府内産木材の利用の促進に当たっては、木造の建築物の設計及び施工に関する事業を行う者を育成することが重要であることに鑑み、これらの者において必要な知識及び技術の習得が図られるよう必要な施策の実施に努めるものとする。

(府内産木材の安定供給の促進等)

第10条 府は、府内産木材の安定的な供給の促進並びに生産性及び品質の向上を図るため、林業・木材産業等を担う人材の確保及び育成に必要な施策を実施するものとする。

 府は、府内産木材の安定的な供給の促進並びに生産性及び品質の向上を図るため、府内産木材の生産から販売及び使用に至る一連の過程において木材関連事業者がそれぞれ行う生産、加工、流通、備蓄等について、府内産木材の需要及び供給の状況又はその見通しに応じ、必要な調整を的確に行うことができる体制の整備その他必要な施策を実施するものとする。

(調査研究等)

第11条 府は、府内産木材の利用を促進するため、大学その他の研究機関等と連携し、多様な用途への利用の拡大等の府内産木材の需要の開拓に資する新たな技術等の調査研究並びに府内産木材に関する指標、規格その他の必要な情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。

(相談体制の整備等)

第12条 府は、府内産木材の利用を促進するため、木材関連事業者と連携し、多様な用途への府内産木材の利用に資するよう、必要な情報の提供等の相談体制の整備その他必要な施策を実施するよう努めるものとする。

第3章 その他森林資源の活用に関する施策

(未利用間伐材等の有効活用)

第13条 府は、府内の森林の施業に伴って発生する未利用間伐材等の有効利用を促進するため、木質バイオマスとしての活用その他必要な施策を実施するよう努めるものとする。

(特用林産物の振興)

第14条 府は、府内の特用林産物の生産の振興を図るため、生産体制の強化、新たな販路及び需要の開拓その他必要な施策を実施するよう努めるものとする。

第4章 推進体制等

(府民会議)

第15条 知事は、府、府民等、森林資源関連事業者、市町村等が府内産木材の利用等及びその促進に関する意見を相互に交換することにより、府内産木材の利用等を積極的に行おうとする府民等の気運が醸成され、府内産木材の利用等の促進が図られるよう、府民会議を設置するものとする。

 府は、必要な体制を整備し、関係機関相互の緊密な連携の下、前項の府民会議における意見を参考として、府内産木材の利用等の促進に関する施策を実施するものとする。

(普及啓発)

第16条 府は、木や森を利用することの意義及び府内産木材の利用等の促進の重要性に対する府民等の理解を深めるため、木育(木と森や府内産木材の利用等について、その重要性や意義を府民等が広く学ぶことをいう。)の機会を確保するよう努めるとともに、府内産木材の利用等に関する情報の発信等を通じてその普及啓発を図るものとする。

(顕彰)

第17条 府は、府内産木材の利用等の促進に関し、特に優れた取組を行った者の顕彰を行うものとする。

(財政上の措置)

第18条 府は、府内産木材の利用等の促進に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講じるものとする。

(雑則)

第19条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関して必要な事項は、知事が定める。

(施行期日)

 この条例は、令和4年4月1日から施行する。ただし、第7条第1項及び次項の規定は、同年10月1日から施行する。

(経過措置)

 第7条第1項の規定の施行の際現に府が公共建築物等の整備に係る工事その他の行為に着手しているときは、当該整備については、同項の規定は、適用しない。

 前項に定めるもののほか、第7条第1項の規定の施行に関し必要な経過措置は、知事が定める。

京都府府内産木材の利用等の促進に関する条例

令和4年3月18日 条例第16号

(令和4年10月1日施行)