○京都府人権尊重の共生社会づくり条例

令和7年3月24日

京都府条例第8号

京都府人権尊重の共生社会づくり条例をここに公布する。

京都府人権尊重の共生社会づくり条例

日本国憲法においては、国民が全ての基本的人権の享有を妨げられないものとされ、基本的人権を侵すことのできない永久の権利として保障するとともに、国民は不断の努力によって憲法で保障される自由及び権利を保持しなければならず、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うことを定めている。

我が国においては、この憲法の下に、国際的な人権に関する諸条約等にものっとり、人権に関する諸制度の整備や諸施策の推進が図られてきたところであり、近年においても、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律、部落差別の解消の推進に関する法律、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律等、個別の人権課題に関する法律が相次いで制定施行されている。

京都府においても、これら人権尊重に関する現行法制の下に、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律に基づき、人権尊重の精神のかん養を図るとともに人権尊重の理念を広く府民に普及させるための施策を定め、実施するなど、国、市町村その他の関係機関等と連携して地域の実情を踏まえた取組を進めてきた。

しかしながら、現状をみるに、人権課題の生起がやむことはなく、人種、信条、性別、社会的身分、門地等による不当な差別その他の人権侵害が存在しているといわざるを得ない。特に、近年の急速な情報通信技術の進展に伴うインターネット上の人権侵害については、その匿名性や情報発信の容易さ等の特性から、誰もが加害者にも被害者にもなり得る状況が生じており、被害者の救済を図る施策の一層の推進が強く求められる実情にある。

また、府民が全ての人権の享有を妨げられず、平和で心豊かな社会を実現するためには、府民一人ひとりの尊厳と人権が共に尊重される必要があるが、そのためには、人権尊重の基盤となる社会の秩序が適正に保持されるとともに、全ての府民が自己の権利の行使に伴う責任を自覚し、自己の人権と同様に他人の人権をも尊重すべきであるという意識がより一層府民に浸透されることが必要である。

こうした状況において、私たちは、府民一人ひとりの尊厳と人権が共に尊重され、全ての府民が、地域等の社会において「守られている」、「包み込まれている」等といった社会からの温かさを感じることができるようにするとともに、誰もが主体的に社会に参画し、自らの可能性を伸ばすことができる人権尊重の共生社会づくりを推進しなければならない。

このような認識の下に、私たちは、府民一人ひとりの尊厳と人権の重要性を認識するとともに、それぞれの個性の違いを認め合い、つながり、支え合うことができる人権尊重の共生社会づくりにたゆまぬ努力を続けることを決意し、この条例を制定する。

(定義)

第1条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 人権尊重の共生社会づくり 府民一人ひとりが、人種、信条、性別、社会的身分、門地等により不当に差別されることなく、かけがえのない個人として相互に人権を尊重し合いながら支え合う共生社会を形成することをいう。

(2) 人権尊重の共生社会づくり施策 人権尊重の共生社会づくりのために行う人権教育及び人権啓発並びに相談体制の整備に関する施策をいう。

(3) 推進計画 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号。以下「人権教育・啓発推進法」という。)第5条の規定による施策を策定し、及び実施するために府が策定する人権教育及び人権啓発に関する計画をいう。

(基本理念)

第2条 人権尊重の共生社会づくりは、人権教育・啓発推進法第3条に定める基本理念を踏まえつつ、次に掲げる事項を基本として推進されなければならない。

(1) 府民一人ひとりが、相互に人権の意義並びにその尊重及び共存の重要性について、理性及び感性の両面から理解を深め合うとともに、自己の権利の行使に伴う責任を自覚し、及び自己の人権と同様に他人の人権をも尊重するものであること。

(2) 府民一人ひとりが、それぞれの個性が認められる寛容な社会の一員として、つながり、支え合うものであること。

(3) 府民一人ひとりが、生涯にわたりあらゆる機会を通じて人権について学ぶことができるものであること。

(4) 情報化の進展等社会情勢の変化に的確に対応するものであること。

(5) 人権に関する相談に的確に対応するものであること。

(府の責務)

第3条 府は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、人権尊重の共生社会づくり施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施するものとする。

 府は、人権尊重の共生社会づくり施策の策定及び実施に当たっては、国、市町村その他の関係機関等と連携し、及び協働して取り組むものとする。

(市町村への協力)

第4条 府は、人権尊重の共生社会づくりの推進のため、人権尊重の共生社会づくり施策を実施する市町村に対し、情報の提供その他の必要な協力を行うものとする。

(府民及び事業者の責務)

第5条 府民及び事業者は、基本理念にのっとり、人権尊重の共生社会づくりに関する理解を深めるよう努めるものとする。

 府民及び事業者は、府が実施する人権尊重の共生社会づくり施策に協力するよう努めるものとする。

(推進計画)

第6条 知事は、人権尊重の共生社会づくり施策を総合的かつ計画的に実施するため、推進計画において、次に掲げる事項(以下「基本的事項」という。)を定めるものとする。

(1) 人権尊重の共生社会づくりに関する基本的な考え方

(2) 人権尊重の共生社会づくり施策の目標

(3) 人権尊重の共生社会づくり施策を総合的かつ計画的に実施するために必要な事項

(4) その他必要な事項

 知事は、基本的事項を推進計画に定めるに当たっては、次条第1項の規定による懇話会における意見交換を行うほか、府民の意見を反映させるために必要な措置を講じるものとする。

 知事は、基本的事項を推進計画に定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

 前2項の規定は、推進計画に定められた基本的事項を変更する場合について準用する。

(懇話会)

第7条 知事は、人権尊重の共生社会づくり施策の策定及び効果的な実施に関する事項について専門的な知見を有する者と府とが意見を交換するための懇話会を開催するものとする。

 府は、前項の規定による懇話会における意見交換の内容を参考として、人権尊重の共生社会づくり施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。

 この条例は、令和7年4月1日から施行する。

 この条例の施行の際現に推進計画に基本的事項が定められている場合において、当該推進計画が基本理念に即し、かつ、その策定について第6条第2項及び第3項に規定する措置に準じる措置が講じられたものとして知事の指定を受けたものであるときは、当該指定に係る推進計画は、同条第1項から第3項までの規定により基本的事項が定められたものとみなす。

京都府人権尊重の共生社会づくり条例

令和7年3月24日 条例第8号

(令和7年4月1日施行)