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第2回次世代の文化創造研究会開催結果

日時

平成15年12月25日(木曜) 午前9時30分から12時まで

場所

京都府公館

出席者

小暮宣雄委員、鈴木千鶴子委員、瀧口宣男委員、中島裕規子委員、
水本邦彦副座長、鷲田清一座長
(五十音順、敬称略)

議題

  1. 文化にふれる環境づくりについて
  2. 後継者育成の課題について

委員意見の要旨

  • 生活文化と芸術文化を繋げるものとして地域文化があり、人と人を繋げる地域文化を戦略的に考えることが重要。
  • 芸術系大学と一般大学のクラブのそれぞれが京都のアートを支えている。このような寛容さが京都にはあり、それが京都の「風(ふう)」である。そのような環境の中で、生活文化と芸術文化が交じり合い、日本の文化といえる京都の文化をつくりだしている。
  • 学生の卒業研究のテーマをみると、子どものための文化の研究やホールにおけるトイレのあり方、居酒屋の空間デザインなど様々な内容で、それぞれが今の若者の文化に対する視点である。
  • 今輝いている人(アーティスト)に一般の人をどう出会わせるかが重要。トヨタ自動車は、子どもとアーティストを出会わせる取組に理解を示し、支援してくれる。
  • 学校で伝統芸能にふれる取り組みが増えており、文化を生産する人と消費する人の橋渡しをするコーディネート機能を行政に期待したい。
  • 予算がない中でもできることであり、他力を活用すべし。NPO法人のように自発的に活動している人も多くおり、各地域のコーディネーターの養成も大切である。
  • 文化は楽しく暮らすためのものというと、今の子どもたちは楽して暮らすことを考え、何もしなくなる。文化は個性や特性に伴い苦痛を乗り越えて到達するものだということを教えないといけない。
  • 次世代の育成とは、文化をつくる人をつくることであり、そのためには文化との出合いが大事であり、出合い(間口)を広げることにより興味が広がる。例えば「読み聞かせ」などの取組も非常に有効であり、また、家庭環境(テレビゲーム等)を意識的に変えていくことも大切である。
  • 小学校で社会人講師を招いて「読み聞かせ」を行ったところ、皆真剣に聞き入っている。また、「京小紋」の作成に取り組んだ学年が、寺小まつりという学校全体の行事の際に他の学年の子供たちに自分たちが学んだことを紹介するといったこともあった。
  • 特に中・高生、20代に文化をどう伝えていくのかが課題と考える。
  • 京都らしい取組の一つに地蔵盆があるが、少子化などで縮小してきている所も見られる。このような地域の生活における文化活動を育成するなど、地域社会のまちづくりという視点も必要である。
  • ここ数年来、NPO等の社会的認知が高まり、民間団体の活動の場が広がってきている。行政の認識も変わり、意見を求められることも多くなった。
  • NPOの代表と非常勤講師という2つの立場から音楽の授業にかかわっているが、外部講師の立場で教えた時の方が子供たちの反応がよい。社会人講師を有効に使う必要がある。
  • 文化を広く捉えると、工夫やなりわい(古くは農業にはじまる人間の生産活動)など人間の営み全てが文化といえる。生活文化が一番広い概念だろう。
  • 歴史を研究する立場からいうと、地域文化や芸術文化について、現在の「粋」に到達する営みのプロセスを時間軸で確認することが必要で、それが本研究会で次世代について考える手立てとなろう。
  • 以前、精華町史の編纂に関わった際に現地調査を行ったところ、平安仏がいくつもあり、歴史と文化が堆積しているなど、府内には歴史的蓄積が多い。
  • 文化にはパトロネージが必要で、以前は、パトロンがお金を出し、口も出すことにより、レベルの向上にもなった。現代は行政がパトロン役にならざるを得ないが、行政がそれを担うと平等性や公平性は保てるが、批評性が低下するため、質の向上は難しい。こうした現状を認識した上で議論する必要がある。
  • 政治、科学等々全て文化であり、文化の領域を考えないと広がりすぎる。文化を「風(ふう)」(=京都流のやり方)と考えた方がよい。
  • 京都には、茶碗、箸ひとつをとっても「粋」を極めた文化がある。生活文化の「風」を極めたものが芸術文化ともいえる。
  • 本研究会では、「府民一人一人が輝くように支援すること」を検討してはどうか。芸術家は輝きを持っていて、人にもそれを与える。一般の人もそれぞれ個性を持っているが、それを楽しむだけでなく、輝くための修練と、苦をのりこえて楽しむことで輝きを増し、それを極めたのが芸術家である。とするならば、行政の公平性にとらわれない施策も可能となるのではないか。
  • 次世代の育成を考える場合、教育は、共通のスタンダードのもとで行われるが、文化は教育と違う視点で一人ずつの個性をみて育成しなければならず、行政はそれを恒常的なしくみとしてやる必要がある。
  • 着物文化は着せ合う文化(母と娘など)であり、衰退の原因は、核家族化の進行など生活形態の変化と考えられる。
  • 学校に侵入して生徒に危害を加える事件が続いたが、対策は管理を厳重にするなど規制の方向に向いている。根本的には学校が孤立しないよう、地域に開放するなど、社会全体で考えないといけない。
  • 青少年対策も規制ではなく、これもできるあれもできると世界を広げることが大事であり、行政は派生するリスクをどうサポートするかを考えることが必要。
  • 教育を語ると大人は熱くなるが、自分が子どもの頃にできなかったことを次世代に期待するからである。教育の問題は大人の問題であり、現世代がどう輝けるか、まずは大人がいきいきとして、子どもの見本にならなくてはいけない。
  • 次回は、教育の場も含め、おどろきのある出会いのため、こういう試みはどうかという議論もしていきたい。

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