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京都府では、人権という普遍的文化を構築することを目標に、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号)に基づく施策として「京都府人権教育・啓発推進計画(第2次)(以下、「第2次推進計画」という。)」を策定している。
同計画に基づき、平成29年度の人権教育・啓発の取組を推進する上での重点事項を明らかにするため、この実施方針を定める。
国内外における制度規範等の動きとして、国際連合総会において、拉致被害者の即時帰国等により、全ての人権侵害を終わらせるための措置を早急にとることを要求する北朝鮮人権状況決議が採択された(12年連続12回目)。
国内では、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、「障害者差別解消法」という。)」、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(以下、「ヘイトスピーチ解消法」という。)」、「部落差別の解消の推進に関する法律(以下、「部落差別解消法」という。)」をはじめ、多くの人権に関わる法律が成立または施行された。
法律の名称 |
主な内容 |
備考 |
---|---|---|
障害者差別解消法 |
障害を理由とする差別の解消 |
4月1日施行 |
改正自殺対策基本法 |
目的、理念、基本的施策等の拡充 |
4月1日施行 |
改正刑事訴訟法 |
取調べの録音・録画や司法取引の導入 |
6月3日公布 |
改正児童福祉法 |
児童虐待対策の強化 |
6月3日公布 |
改正発達障害者支援法 |
個々の特性に応じた教育・就労の支援充実 |
6月3日公布、8月1日施行 |
改正障害者総合支援法 |
生活・就労支援の強化等 |
6月3日公布 |
ヘイトスピーチ解消法 |
本邦外出身者への不当な差別的言動の解消 |
6月3日公布・施行 |
改正民法 |
女性の再婚禁止期間を100日に短縮 |
6月7日公布・施行 |
改正公職選挙法 |
選挙権年齢を18歳以上に引き下げ |
6月19日施行 |
外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律 |
外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護(技能実習生に対する人権侵害行為等の禁止) |
11月28日公布・施行 |
改正ストーカー規制法 |
会員制交流サイト(SNS)での付きまといを新たに規制対象に追加し、罰則を強化 |
12月14日公布、1月3日施行 |
再犯の防止等の推進に関する法律 |
犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進する等、再犯防止施策を推進 |
12月14日公布・施行 |
義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律 |
不登校児童生徒に対する教育機会の確保、夜間等に授業を行う学校における就学の機会の提供等 |
12月14日公布、2月14日施行 |
部落差別解消法 |
部落差別の解消に向けた教育・啓発、相談体制の充実、実態調査の実施 |
12月16日公布・施行 |
国内の人権をめぐる状況をみると、学校でのいじめ・体罰の問題、社会的に弱い立場にある子ども、女性、高齢者、障害のある人が被害者となる暴行・虐待等の事件、インターネットを悪用した人権侵害、自殺の問題、子どもの貧困、認知症高齢者等の問題、長時間労働や過労死、様々なハラスメント、メンタルへルスなど働き方や労働環境に関わる問題等、様々な課題が顕在化しており、あらためて、一人ひとりの尊厳と人権の大切さについて、社会全体で共有していくことが強く求められている。
こうした中、個別の人権問題に関しては、ハンセン病患者の裁判に関する特別法廷の設置手続き等について最高裁判所が謝罪したほか、「不当な差別的言動は許されない」とするヘイトスピーチ解消法の理念を踏まえ、デモ禁止の仮処分が行われるなどの状況が見られた。また、昨年度に引き続き、同性カップルを人生のパートナーと認める公的文書の交付が一部の自治体で広まるとともに、民間企業が福利厚生において同性カップルに結婚と同等の取扱いを導入するなど、性的指向の違いや、性同一性障害の人、同性愛者、両性愛者等の性的少数者(LGBT)の人権に対する認識の広がりが見られる。
京都府では、こうした状況も踏まえながら、「明日の京都」で人権尊重の重要性をすべての施策の基本に位置付け、人が大切にされるために、つながり、支え合う、人にやさしい社会の実現に向けて、第2次推進計画に基づき、関係機関や関係団体等とも連携し、人権問題の解決に向けた施策を推進している。
個別分野に関する計画や主な動きとしては、「KYOのあけぼのプラン(第3次)後期施策-男女共同参画計画-」の策定、女性活躍支援拠点「京都ウィメンズベース」の開設、「オール京都で子どもを守るインターネット利用対策協議会」の設立などが挙げられる。
また、ヘイトスピーチ解消法が施行されたことを踏まえ、京都府人権教育・啓発施策推進懇話会に専門委員会を設置して、外部の有識者から専門的意見を聴取し、府としての取組の検討を進めているところである。
府民等への啓発の取組としては、新聞、ラジオ番組等の広報媒体や府政広報誌「府民だより」を通じて、さまざまな人権問題についての情報を府民に提供するとともに、人権問題に取り組むNPOとの協働の下に「京都ヒューマンフェスタ」などの啓発イベントを開催し、府民が人権問題を「自分のこと」として捉え、主体的な行動につなげる機会とした。さらに、京都府人権啓発イメージソングについては、「世界がひとつの家族のように」に加えて、新たに子ども向け人権啓発サブソング「えがおのおくりもの」を制作し、多くの府民が人権について考えるきっかけとなるよう様々な機会での活用を図っている。
また、府庁内の人権教育・啓発の指導者を支援するため、平成28年1月にスタートした第2次推進計画の趣旨・要点等をまとめた研修資料を作成し、府職員研修・研究支援センターの研修や、各部局の人権研修で活用を図るとともに、人権教育・啓発や人権問題に関する国内外の情報を一元的に整理した人権情報ポータルサイト「京都人権ナビ」を開設した。
「一人ひとりの尊厳と人権が尊重され、だれもが自分らしく生きることができる社会」の実現に向けて、人権という普遍的文化を京都府において構築するため、一人ひとりがお互いの個性や価値観の違いを認め、支え合い、だれもがいきいきと地域で生活できる「共生社会」を実現する視点から、引き続き、学校・地域社会等、現場の状況をしっかり踏まえ、あらゆる場を通じた人権教育・啓発や、人権に特に関係する職業従事者に対する研修等の施策を、国や市町村などの関係機関や、NPO等民間団体と連携を図って推進する。
平成26年度に実施した府民調査結果によると「人権がさらに尊重された社会になっている」と感じる人は増加しているが、「一人ひとりの人権意識が高くなっている」と感じる人の割合は横ばい又はやや減少の傾向となっている。これは、近年、個別の人権問題について、障害者差別解消法やいじめ防止対策推進法、子どもの貧困対策法などに基づく新たな枠組の整備が進む一方で、ヘイトスピーチの問題やインターネット社会の急速な進展の中での匿名性を悪用した表現の蔓延や個人情報の流出、子ども、高齢者、障害のある人などの虐待問題の顕在化などにより、人権意識が向上したという実感が薄いのではないか、という調査分析がある。
また、同和問題について、京都府では、平成8年の地域改善対策協議会意見具申に示された基本認識を踏まえ、人権問題の重要な柱として、早期解決を目指して取り組んできたところである。しかし、インターネット上で差別を助長・拡散させるような書込みが見られる状況もあり、部落差別解消法が施行されたことを受け、国や市町村とも連携を図って、改めて相談体制の充実や教育・啓発等の施策に取り組む必要がある。
こうした認識に立って、「共生社会」の実現を目指し、多様化・複雑化する人権問題への対応とともに、さらなる人権意識の向上に向け、これまで人権研修を受ける機会が少なかった人も含めた、効果的な人権教育・啓発を推進する。
〔教職員〕
〔社会教育関係職員〕
〔府職員〕
〔市町村職員〕
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