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京都府では、人権という普遍的文化を構築することを目標としている。この目標の実現に向けて、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号)に基づき、「京都府人権教育・啓発推進計画(第2次)(以下、「第2次推進計画」という。)」を策定しているところである。
人権に関する法律における地方公共団体の責務も踏まえるとともに、同計画に基づき、令和2年度の人権教育・啓発の取組を推進する上での重点事項を明らかにするため、この実施方針を定める。
平成31年度・令和元年度における国内外の制度規範等の動きを概観すると、国連においては、6月に、国際労働機関(ILO)の総会で仕事の世界における暴力と嫌がらせ(ハラスメント)を扱う初の国際労働基準である「仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約(仮訳)」が採択され、仕事の世界における暴力とハラスメントを定義し禁止する法令の制定などを通じて暴力とハラスメントのない仕事の世界に対するあらゆる人の権利を尊重、促進、実現することが批准国に求められており、12月には、総会で15年連続15回目となる北朝鮮人権状況決議が採択され、拉致問題を含む北朝鮮の組織的かつ広範で深刻な人権侵害を非難し、その終結が北朝鮮に強く要求されている。
また、平成31年・令和元年は、「人権教育のための世界計画」におけるメディア専門職とジャーナリストへの研修を重点領域とした第3フェーズ行動計画(平成27年~平成31年・令和元年)の最終年に当たっており、令和2年からは、重点領域を「若者」として、特に平等、人権と非差別、包摂的で平和な社会のための包摂と多様性の尊重に力点を置くこととした第4フェーズ行動計画(令和2年~令和6年)が進められている。
さらに、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、国連人権高等弁務官事務所は、この重大な脅威に対して、国際的な指針「COVID-19ガイダンス」を提言している。
国内においては、同和問題をはじめ、女性、子ども、高齢者、障害のある人、外国人等の様々な人権問題が依然として存在している状況である。具体的な事象としては、土地や結婚に関する部落差別、女性に対する差別的取扱い、セクハラ・パワハラ等のハラスメント、子ども・女性・高齢者・障害のある人への暴行・虐待、学校でのいじめ・体罰、子どもの貧困、認知症高齢者等の問題、ヘイトスピーチ、自殺の問題などが挙げられるが、これらに加え、時代の変化に伴い、インターネット上での人権侵害、長時間労働・過労死など働き方や労働環境に関わる問題、LGBT等、性的少数者が直面する困難などの新たな人権課題も顕在化している。
こうした中で、下表のとおり、人権に関わる多くの法律が成立または施行されている。こうした法律に基づき、人権が尊重される社会の実現が一層図られるとともに、改めて、一人ひとりの尊厳と人権の大切さを、社会全体で共有していくことが強く求められている。
法律の名称 |
主な内容 |
備考 |
---|---|---|
旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律 | 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対して一時金を支給 |
4月24日公布・施行 |
アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律 |
アイヌ施策を総合的かつ継続的に実施するための支援措置 民族共生象徴空間の管理に関する措置 |
4月26日公布、5月24日施行 |
民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律 | 債務者以外の第三者からの情報取得手続を新設(民事執行法)
国内の子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化(民事執行法) 国際的な子の返還の強制執行に関する規律の見直し(ハーグ条約実施法) |
5月17日公布(施行R2年4月1日) |
子ども・子育て支援法の一部を改正する法律 | 子育てのための施設等利用給付の創設 |
5月17日公布、10月1日施行 |
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律 |
一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大(女性活躍推進法) ハラスメント対策の強化(労働施策総合推進法等) |
6月5日公布(施行R2年6月1日等) |
障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律 |
障害者の活躍の場の拡大に関する措置 国及び地方公共団体における障害者の雇用状況についての的確な把握等に関する措置 |
6月14日公布(施行R2年4月1日) |
子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律 | 目的、基本理念の充実、大綱の記載事項の拡充等、市町村による貧困対策計画の策定、具体的施策の趣旨の明確化等 |
6月19日公布(施行R1年9月7日) |
児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律 | 児童の権利擁護、児童相談所の体制強化及び関係機関間の連携強化等の所要の措置 |
6月26日公布(施行R2年4月1日等) |
日本語教育の推進に関する法律
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我が国に居住する外国人に対する日本語教育の推進について、国及び地方公共団体の責務等を規定 | 6月28日公布・施行 |
ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律 | ハンセン病元患者家族に対して補償金を支給 | 11月22日公布・施行 |
ハンセン病問題の解決の促進に関する法律の一部を改正する法律 |
名誉の回復等の規定の対象にハンセン病の患者であった者等の「家族」を新たに追加 | 11月22日公布・施行 |
京都府では、「京都府行政運営の基本理念・原則となる条例」(以下「条例」という。)において「府民一人ひとりの尊厳や人権の尊重」を基盤として、人が大切にされるために、つながり、支え合う、人にやさしい社会の実現に向け、いわゆる人権三法(障害者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消法)や第2次推進計画に基づき、国内外の状況も踏まえながら、関係機関や関係団体等とも連携して、人権問題の解決に向けた施策を推進している。
平成31年度・令和元年度においては、条例第4条の規定により、京都府のめざす方向性を明らかにする「京都府総合計画(京都夢実現プラン)」を策定した。同計画は、「一人ひとりの夢や希望が全ての地域で実現できる京都府をめざして」を掲げ、概ね20年後の2040年に実現したい京都府の将来像を示した「将来構想」、将来構想の実現を目指し概ね4年間で取り組む「基本計画」、そして、4つの広域振興局ごとの「地域振興計画」で構成している。
「将来構想」で示した京都府の将来像の一つとして「人とコミュニティを大切にする共生の京都府」を掲げ、一人ひとりの尊厳と人権が尊重され、男性も女性も、子どもも高齢者も障害者も、外国人も、全ての人が地域で「守られている」、「包み込まれている」と感じ、誰もが持つ能力を発揮し、参画することのできる社会づくりを目指すとしている。
また、「基本計画」では、行政、府民、地域、企業など、あらゆる主体の総力を結集し、「子育て」の視点から社会の変革を目指す「子育て環境日本一」、人生100年時代を見据え、府民の誰もが生きがいを感じることができる共生社会づくりを進める「府民躍動」など5つの「府民協働で取り組むきょうとチャレンジ」や、20の分野ごとに「20年後に実現したい姿」と「4年間の対応方向・具体方策」等を示した「分野別基本施策」で構成している。分野別基本施策の1つである「人権が尊重される社会」では、「人権が尊重され誰もが自分らしく生きることのできる社会」及び「ユニバーサルデザインが当たり前の社会」の実現を目指し、「府民が人権について学び、交流できる機会の拡充、相談体制の充実」及び「ユニバーサルデザインによるまちづくりの推進」を「4年間の対応方向」として定めている。その他に、児童虐待の未然防止が進んでいる社会等を目指した「希望あふれる子育て」をはじめ、「安心できる健康・医療と人生100年時代」、「安心できる介護・福祉の実現」、「男性も女性も誰もが活躍できる社会」、「障害者が暮らしやすい社会」、「留学生・外国人が生き生きと暮らせる社会」、「犯罪や事故のない暮らし」など、各分野の中にも、人権課題の解決に向けた方策等を盛り込んでいる。
さらに4つの「地域振興計画」のいずれにおいても、施策の基本方向に「人権尊重」を掲げている。
また、子どもが社会の宝として、地域の中であたたかく見守られ、健やかに育ち、子どもの生き活きとした姿と明るい声が響き渡る社会の実現を目指す「京都府子育て環境日本一推進戦略」を策定した。
ヘイトスピーチの防止に関しては、府が管理する公の施設等において、「京都府公の施設等におけるヘイトスピーチ防止のための使用手続に関するガイドライン」に沿った運用を開始しているところであり、また、市町村での同様の取組に向けた支援や企業等への働きかけも行い、17市町で同様のガイドラインによる運用の取組が始められている。
LGBT等、性的少数者に関する取組については、引き続き、関係機関と連携した「性的指向と性自認の理解促進等に関する研究会」において必要な取組を研究するとともに、性の多様性をテーマとした人権フォーラムを開催するなど啓発に取り組んできている。
同和問題をはじめとする各種人権問題に係る府民啓発の取組としては、引き続き、新聞、ラジオ等の広報媒体や府政広報誌「きょうと府民だより」を通じた情報提供、人権問題に取り組むNPOとの協働による「京都ヒューマンフェスタ」の開催や各種イベントへの参画等を通じて、府民が人権問題を「自分のこと」として捉え、主体的な行動につなげる機会としたところである。
さらに、京都府人権啓発イメージソングを様々な機会に活用し、啓発の裾野を広げ、より多くの府民が人権について考えるきっかけを得られるよう取り組んでいる。
京都府では、「一人ひとりの尊厳と人権が尊重され、だれもが自分らしく生き、参画することのできる社会」の実現に向けて、人権という普遍的文化を構築するため、一人ひとりがお互いの個性や価値観の違いを認め、支え合い、だれもがいきいきと地域で生活できる「共生社会」を実現するための施策を推進している。
一方で、今日、少子高齢化や情報化、国際化が進み、家族の形態も含め社会の多様化が進展する中で、地域の力が低下していることや、様々な格差の問題、孤立社会といわれる無関心時代の到来も指摘されている。また、差別や貧困などの困難に直面している人々に対して、そうした困難への直面が本人の責任であり、また、その解消に向けた施策についても優遇であり不公平であるとするなど、他人を排斥する不寛容な言説が目立つ時代になってきているところである。
そのため、社会的弱者の人権を尊重することが、社会全体の、ひいては自分の人権の尊重にもつながるといった関わりから、一人ひとりが自分の問題として認識していけるようにするとともに、異なる文化や価値観を認め合う意識を醸成していけるよう、創意工夫した教育・啓発に取り組む。また、国や市町村などの関係機関や、NPO等民間団体と連携を図り、人権問題が複雑・多様化し、その要因が複合化している状況はもとより、学校、地域社会といった現場の状況、差別を助長・拡散させる書込等が見られるインターネットの状況等をしっかりと踏まえ、偏見や差別等による深刻な権利侵害はもとより、生きづらさを抱えた人々に係る様々な人権問題に対応していく。令和元年10月に策定した「京都府総合計画(京都夢実現プラン)」においても、様々な人権問題の解決に向けた取組の着実な推進を図り、府民が人権について学び、交流できる機会の拡充や相談体制の充実、ユニバーサルデザインによるまちづくり等を推進する。
更に、近年、いわゆる「人権三法」など、個別の人権問題に関する法整備が進んできていることを踏まえ、引き続き、相談体制の充実と、府民が人権について学び、交流できる機会の拡充に取り組むとともに、公務員、教職員等の人権に特に関係する職業従事者の研修に取り組む。
また、新型コロナウイルス感染症の全国的な感染拡大に伴い、感染が判明した人(感染が疑われた人を含む。)やその家族、治療に当たる医療従事者等に対する誹謗中傷や心ない書き込み、営業自粛要請等に従わない事業所等への行き過ぎた非難が、SNS(会員制交流サイト)等で見られる状況等があることから、今後のwithコロナ社会(新型コロナウイルスと共存・共生する社会)を見据え、学校や地域社会、職場など、さまざまな場を通じて、人権に配慮した行動に努めるよう、教育・啓発に取り組む。
新型コロナウイルス感染の状況を鑑みて、海外から帰国した人、外国人、感染者や濃厚接触者とその家族、新型コロナウイルス感染症の対策や治療にあたる医療従事者や社会機能の維持にあたる方とその家族等の人権侵害防止に向けた研修等の実施
〔教職員〕
〔社会教育関係職員〕
〔府職員〕
〔市町村職員〕
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