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京都府では、人権という普遍的文化を構築することを目標としている。この目標の実現に向けて、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号)に基づき、「京都府人権教育・啓発推進計画(第2次)(以下、「第2次推進計画」という。)」を策定したところであるが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、憶測によるデマや誤った情報の拡散、大学や個人への誹謗中傷、インターネット上での心ない書き込みなど、さまざまな事象が社会問題化したことから、2021年(令和3年)3月に「第2次推進計画」を改定したところである。
人権に関する法律における地方公共団体の責務も踏まえるとともに、同計画に基づき、2021年度(令和3年度)の人権教育・啓発の取組を推進する上での重点事項を明らかにするため、この実施方針を定める。
2020年度(令和2年度)における国内外の制度規範等の動きを概観すると、世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大は、保健・医療の危機のみならず、瞬く間に社会・経済・人権・人道というあらゆる側面に大打撃を与える「人類の危機」に発展した。国連人権高等弁務官事務所は、この重大な脅威に対して、国際的な指針「COVID-19ガイダンス」を提言し、国連人権理事会は、2020年(令和2年)5月に議長声明で、このガイダンスと国連事務総長報告書「COVID-19と人権」に留意し、「パンデミックとの闘いにおいてすべての人権が尊重され、保護されかつ充足されること、及び、COVID-19パンデミックへの各国への対応において、人権に関する義務及びコミットメントが全面的に遵守されることを確保する」ことを各国に要請している。2020年(令和2年)12月には、国連総会で16年連続16回目となる北朝鮮人権状況決議が採択され、拉致問題を含む北朝鮮の組織的かつ広範で深刻な人権侵害を非難し、その終結が北朝鮮に強く要求されている。
また、2020年(令和2年)から、「人権教育のための世界計画」における第4フェーズ行動計画(2020年~2025年)(令和2年~6年)が進められ、重点領域を「若者」として、特に平等、人権と非差別、包摂的で平和な社会のための包摂と多様性の尊重に力点を置くこととしている。
国内においては、2020年(令和2年)10月に企業活動における人権尊重の促進を図るため「ビジネスと人権に関する行動計画」が策定され、SDGsの達成に寄与することが期待されている。また、12月には、「第5次男女共同参画基本計画」が閣議決定され、政策・方針決定過程への女性の参画拡大、女性に対するあらゆる暴力の根絶や貧困等生活上の困難に対する支援と多様性の尊重を掲げている。
人権をめぐる状況をみると、同和問題(部落差別)や女性、子ども、高齢者、障害のある人、外国人等の様々な人権問題が依然として存在している。更に、新型コロナウイルス感染症による人権問題、インターネット上での人権侵害、長時間労働・過労死など働き方や労働環境に関わる問題、自然災害が頻発する中で、災害弱者への情報保障を含む配慮や感染症対策を講じた避難所運営のあり方、LGBT等性的少数者が直面する困難などの新たな人権課題も顕在化している。
また、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、これら社会的に立場の弱い人々への影響が懸念される。
こうした中で、下表のとおり、人権に関わる多くの法律が成立又は施行されている。こうした法律に基づき、人権が尊重される社会の実現が一層図られるとともに、改めて、一人ひとりの尊厳と人権の大切さを、社会全体で共有していくことが強く求められている。
法律の名称 | 主な内容 | 備考 |
---|---|---|
民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律 |
債務者以外の第三者からの情報取得手続きを新設(民事執行法) 国内の子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化(民事執行法) 国際的な子の返還の強制執行に関する規律の見直し(ハーグ条約実施法) |
R1.5.17公布 R2.4.1施行 |
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律 |
一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大(女性活躍推進法) ハラスメント対策の強化(労働者施策総合推進法等) |
R1.6.5公布 R2.6.1施行等 |
障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律 |
障害者の活躍の場の拡大に関する措置 国及び地方公共団体における障害者の雇用状況についての適格な把握等に関する措置 |
R1.6.14公布 R2.4.1施行 |
児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律 | 児童の権利擁護、児童相談所の体制強化及び関係機関間の連携強化等の所要の措置 |
R1.6.26公布 R2.4.1等施行 |
母子保健法の一部を改正する法律 |
産後ケア等を母子保健法に位置づけ、安心して子育てができる支援体制の確保 |
R1.12.6公布 R3.4.1施行 |
労働基準法の一部を改正する法律 | 労働基準法における賃金請求権の消滅時効期間等を延長 |
R2.3.31公布 R2.4.1施行 |
雇用保険法等の一部を改正する法律 | 高齢者、複数就業者等に対応したセーフティネットの整備、就業機会の確保等を図るため、雇用保険法、高年齢者雇用安定法、労災保険法等において必要な措置を講ずる。 |
R2.3.31公布 R2.4.1施行 |
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律 | ユニバーサル社会実現のため、教育啓発特定事業を追加する等、国民の理解の増進及び協力の確保を図る制度整備 |
R2.5.2公布 R2.6.19及び R3.4.1施行 |
個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律 | 自身の個人情報に対する意識の高まり、技術革新を踏まえた保護と利活用のバランス、越境データの流通増大に伴う新たなリスクへの対応等 |
R2.6.12公布 R2.12.12法定刑の引き上げ部分施行 (ほか、公布日から起算し2年を超えない範囲で政令で定める) |
地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律 | 地域共生社会の実現を図るため、地域特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の追伸、社会福祉連携推進法人制度の創設等 |
R2.6.12公布 R3.4.1施行 |
新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例に関する法律 | 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金を支給する事業等を行うことを可能にし、雇用保険の基本手当給付日数を延長する特例措置等 | R2.6.12公布・施行 |
新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律 | 差別の防止に係る国及び地方公共団体の責務を規定 |
R3.2.3公布 R3.2.13施行 |
京都府では、2019年(令和元年)10月に策定した府政運営の指針である「京都府総合計画(京都夢実現プラン)」において、20年後に実現したい京都府の将来像の一つとしてとして誰もが生き生きと暮らし、幸せを実現できる、「人とコミュニティを大切にする共生の京都府」を掲げ、一人ひとりの尊厳と人権が尊重され、男性も女性も、子どもも高齢者も障害者も、外国人も、全ての人が地域で「守られている」「包み込まれている」と感じ、誰もが持つ能力を発揮し、参画することのできる社会の実現に向け、いわゆる人権三法(障害者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消法)や「第2次推進計画」に基づき、国内外の状況も踏まえながら、関係機関や関係団体等とも連携して、人権問題の解決に向けた施策を推進してきたところである。
2021年(令和3年)3月には、「第2次推進計画」を改定し、感染症に対する正確な知識の普及と偏見・差別の防止、人権相談窓口の充実強化と積極的な周知、インターネット上の差別や誹謗中傷の書き込みへの対応を行うとともに、府民のネットリテラシー向上に資する取組を進めるとしたところである。
なお、2020年(令和2年)に実施した「第2次推進計画」に関する府民調査では、2014年(平成26年)調査と比較して、「府民一人ひとりの人権意識は、10年前と比べて高くなっている」と感じる人の割合や「最近5年間に人権啓発に関する研修会に参加した人の割合が増加するなど、府民の中に人権教育・啓発の取組が浸透してきている一方で、「京都府は、人権が尊重された豊かな社会になっている」と感じる人の割合が減少しており、今後も引き続き、府民の人権意識の高揚や新たな人権課題などを踏まえた人権教育・啓発に取り組むことが必要である。
また、2021年(令和3年)3月に、第2期京都府教育振興プランが策定され、京都府教育の基本理念として、目指す人間像を「めまぐるしい変化していく社会において、変化を前向きにとらえて、主体的に行動し、よりよい社会と幸福な人生を創り出せる人」とし、主体的に学び考える力、多様な人とつながる力、新たな価値を生み出す力をはぐくみ、すべての子どもが愛情や信頼、期待などに「包み込まれているという感覚」を土台にして、「自己肯定感」をはぐくむことができるように、学校で、家庭で、地域で、教育に関わるすべての人々が、等しくこの想いを旨に、子どもたちに接していくこととしている。
人権教育は、推進方策2の「豊かな人間性の育成と多様性の尊重」に位置づけられ、一人一人が大切にされる共生社会の実現、豊かな人間性をはぐくむ教育、障害の有無にかかわりなく学べる教育、子どもの未来の礎をはぐくむ教育、いじめや暴力を許さない学校づくり、不登校の子どもたちに寄り添う教育を目指す姿として位置づけている。
さらに、2021年(令和3年)3月に策定のKYOのあけぼのプラン(第4次)-京都府男女共同参画計画-では、男女の人権が平等に尊重され、固定的性別役割分担意識に捕らわれず、個人が尊厳をもって生きることのできる社会の実現のため、あらゆる分野における女性の参画拡大、安心・安全な暮らしの実現、男女共同参画社会の実現に向けた基盤の整備を図ることとしている。人権課題の解決に向けた主な取組としては、生活の場(家庭・地域)における男女共同参画の推進と就労、雇用などにおける男女共同参画の推進と仕事と生活の調和、男性の意識改革・働き方改革と男性の課題への対応、貧困、高齢、障害等により困難を抱えた女性等が安心して暮らせる環境の整備、女性に対するあらゆる暴力の根絶、災害等非常時における男女共同参画の推進などを重点分野としている。
そのほか、2021年(令和3年)3月に、若者の自殺対策の強化や自殺対策に取り組む民間団体の人材確保等の支援、一人で悩みを抱え込ませない体制づくり、コロナ禍における自殺対策の推進を重点施策として掲げる「第2次京都府自殺対策推進計画」、「第6期京都府障害者福祉計画及び第2期京都府障害児福祉計画」「第9次京都府高齢者健康福祉計画」が策定された。
ヘイトスピーチの防止に関しては、府が管理する公の施設等において、「京都府公の施設等におけるヘイトスピーチ防止のための使用手続に関するガイドライン」に沿った運用を開始しているところであり、また、市町村での同様の取組に向けた支援等も行い、2020年(令和2年)8月には府内全市町村で同様のガイドラインが策定された。
LGBT等性的少数者に関する取組については、引き続き、関係機関と連携した「性的指向と性自認の理解促進等に関する研究会」において必要な取組を進めてきている。
2020年度(令和2年度)は、年間を通じ新型コロナウイルス感染症に関する人権啓発の取組を国や府内市町村、関係団体、大学等と協力し、府内公共施設や公共交通機関、サンガスタジアム by KYOCERA等で行った。
同和問題(部落差別)や障害のある人、外国人などの各種人権問題に係る府民啓発の取組としては、新聞、ラジオ等の広報媒体や府政広報誌「きょうと府民だより」を通じた取組を進めた他、感染症対策を講じつつ、「京都ヒューマンフェスタ」では、「SNSと誹謗中傷」をテーマにトークセッション、国、人権擁護機関等の紹介、人権問題に取り組むNPO等との協働作品、同和問題(部落差別)や外国人差別、LGBT等性的少数者の当事者や研究者の報告やディスカッションを行った人権フォーラム「誰もが自分らしく生きることができる社会の実現を目指して~様々な生きづらさの解消~」の動画配信等を通じて、インターネットを活用した府民啓発の取組を実施し、府民が人権問題を「自分のこと」として捉え、主体的な行動につなげる機会としたところである。
さらに、京都府人権啓発イメージソング広め隊の活動が制約を受ける中、府内市町村と連携のもと、各地でイメージソング紹介動画を作成し、京都人権ナビの動画コンテンツとして啓発の裾野を広げ、より多くの府民が人権について考えるきっかけを得られるよう取り組んでいる。
京都府では、「一人ひとりの尊厳と人権が尊重され、だれもが自分らしく生き、参画することのできる社会」の実現に向けて、人権という普遍的文化を構築するため、一人ひとりがお互いの個性や価値観の違いを認め、支え合い、だれもがいきいきと地域で生活できる「共生社会」を実現するための施策を推進している。
一方で、今日、少子高齢化や情報化、国際化が進み、家族の形態も含め社会の多様化が進展する中で、地域の力が低下していることや、様々な格差の問題、孤立社会といわれる無関心時代の到来も指摘されている。また、差別や貧困などの困難に直面している人々に対して、そうした困難への直面が本人の責任であり、また、その解消に向けた施策についても優遇であり不公平であるとするなど、他人を排斥する不寛容な言説が目立つ時代になってきているところである。
人権教育・啓発は、府民一人ひとりが人権尊重の理念に関する理解を深めることによって、自分の人権とともに他人の人権を守るという意識を身につけ、社会的に弱い立場におかれた当事者が、差別・排除の対象とされることなく社会参加していくという視点と、当事者が、自身の権利を学び、権利の実現を要求する力を高めていくという視点が重要であり、一人ひとりが自分の問題として認識していけるようにするとともに、異なる文化や価値観を認め合う意識を醸成していけるよう、創意工夫した教育・啓発に取り組む。
また、国や市町村などの関係機関や、NPO等民間団体と連携を図り、人権問題が複雑・多様化し、その要因が複合化している状況はもとより、学校、地域社会といった現場の状況、差別を助長・拡散させる書込等が見られるインターネットの状況等をしっかりと踏まえ、偏見や差別等による深刻な権利侵害はもとより、生きづらさを抱えた人々に係る様々な人権問題に対応していく。「京都府総合計画(京都夢実現プラン)」においても触れている、様々な人権問題の解決に向けた取組の着実な推進を図り、府民が人権について学び、交流できる機会の拡充や相談体制の充実、ユニバーサルデザインによるまちづくり等を推進する。
なお、府民調査の結果から、「人権三法」に関わる領域への関心度は、「障害のある人」「外国人」「被差別部落出身者」の順に9割~7割程度と関心が高かったものの、「障害者差別解消法」「ヘイトスピーチ解消法」「部落差別解消法」いずれも、一部でも法律の内容など知っていると答えた割合は2割前後に留まっており、「人権三法」の周知をより一層図るとともに、引き続き、相談体制の充実と、府民が人権について学び、交流できる機会の拡充を推進する他、公務員、教職員等の人権に特に関係する職業従事者の研修に取り組む。
また、新型コロナウイルス感染症に関する質問では、感染した人を特定しようとする行為について、約半数が「許されない行為であり、感染拡大に支障が生じる」と答える一方、約1/4が「身近な地域で感染が判明した場合、やむを得ない」と答えている。全国的な感染拡大に伴い、感染が判明した人(感染が疑われた人を含む。)やその家族、治療に当たる医療従事者等に対する誹謗中傷や心ない書き込み、営業自粛要請等に従わない事業所等への行き過ぎた非難が、SNS(会員制交流サイト)等で見られる状況等があることから、今後のWITHコロナ社会(新型コロナウイルスと共存・共生する社会)を見据え、学校や地域社会、職場など、さまざまな場を通じて、人権に配慮した行動に努めるよう、教育・啓発に取り組む。
センシティブ情報:思想、信条及び信教に関する個人情報、個人の特質を規定する身体に関する個人情報並びに社会的差別の原因となるおそれのある個人情報
ゲートキーパー:死にたいほど深刻な悩みを抱えている人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る人
新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みて、海外から帰国した人、外国人、感染者や濃厚接触者とその家族、新型コロナウイルス感染症の対策や治療にあたる医療従事者や社会機能の維持にあたる方とその家族等の人権侵害防止に向けた研修等の実施
〔教職員〕
〔社会教育関係職員〕
〔府職員〕
〔市町村職員〕
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