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蒲入漁港内防波堤

場所

伊根町蒲入地先本庄漁港

みられる海藻

みられる海藻

堤防の垂直面のクロメと水平面のノコギリモク

 蒲入地先の離岸堤防にはクロメやノコギリモクの群落がみられますが、クロメは垂直面に多く(図1)、ノコギリモクは水平面に多い(図2)という違いがあります。この違いはおそらく生殖細胞の付着しやすさや光をめぐる競争の結果であると考えられます。
 クロメはコンブ類に属し、運動性のある遊走子によって新しい場所に付着しますが、ノコギリモクはホンダワラ類に属し、運動性の無い幼胚によって、新しい場所に付着します。ホンダワラ類の幼胚は、水流に巻き上げられなければ一方的に沈降するうえに、凹凸の無い斜面では転がり落ちて付着できないそうです。そのため、ノコギリモクが垂直面に付着するのは難しいと考えられます。またクロメの付着部(図3)が放射状に広がり、しっかりと基質をつかんでいることも、垂直面で生育を可能にしている要素かもしれません。水平面でクロメが少ないのは、光をめぐる競争で背丈が高いノコギリモクに負けてしまうためではないかと考えています。
 クロメは垂直面の水深1.5〜3.5mに多く、平均個体密度は16個体/u、平均湿重量は約4kg/uで、3歳以上の高齢個体が中心でした。クロメの下草として、有節サンゴモや無節サンゴモが多く、ところどころにシマオオギ(図4)が見られました。また、ちぎれたクロメの葉状部は岩の隙間に生息するウニやサザエの餌となっていました(図5)。クロメには、抗アレルギー物質や抗酸化物質が含れていることが分かり、医薬品や健康食品への開発が進められています。

堤防の垂直面に生育しているクロメ
図1 堤防の垂直面に生育しているクロメ(2006年8月23日調査)

堤防の基盤となる水平部ではノコギリモクが優占していた
図2 堤防の基盤となる水平部ではノコギリモクが優占していた(2006年8月23日調査)

クロメの付着部位の拡大写真
図3 クロメの付着部位の拡大写真(図1の地点で撮影)

クロメの下草として、シマオオギ(褐藻類)と有節・無節サンゴモが生育している
図4 クロメの下草として、シマオオギ(褐藻類)と有節・無節サンゴモが生育している(図1の地点で撮影)

脱落したクロメ葉状部は、ブロックの割れ目の中にいるウニやサザエに食べられていた 
図5 脱落したクロメ葉状部は、ブロックの割れ目の中にいるウニやサザエに食べられていた(2006年8月23日調査)

ノコギリモクに擬態(?)しているアナハゼの仲間
図6 ノコギリモクに擬態(?)しているアナハゼの仲間(図2の地点で撮影)


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