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京都府自然環境目録2015

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淡水魚類のロゴマーク淡水魚類の概要

京都府は、北は日本海に面し、南は大阪湾に連絡する宇治川が占め、東には琵琶湖を控え、生物地理学的にもきわめて興味深い地域となっている。河川、池沼などの淡水域には系統や起源の異なる魚種が混在し、多様な淡水魚類相を構成している。現在までのところ、外来魚も含め京都府全体で28科116種(亜種を含む)が記録されている。この数はわが国の淡水魚全体のおよそ30%に相当する。

府内の淡水魚類相は若狭湾・日本海へ注ぐ河川の魚類相と、琵琶湖・淀川水系に属する河川の魚類相に大別される。

若狭湾・日本海へ注ぐ河川では丹後半島に位置する小河川群がその典型で、各種ハゼ類、コチ、イシガレイ、クサフグなど海洋起源の魚種、およびカワヤツメ、サケ、イトヨなどの北方系の通し回遊性淡水魚により特徴づけられる。さらに近年、未記載のタンゴスジシマドジョウが発見されるなど、純淡水魚においても固有性が認められる。由良川はこのような魚種と、過去に瀬戸内地方から侵入したと考えられる魚種を併せ持ち、日本海側ではオヤニラミの分布の東限であるとともにアジメドジョウの西限にもなっている。

琵琶湖・淀川水系の河川には宇治川、木津川、桂川がある。その魚類相は主にコイ目、ナマズ目などの純淡水魚からなり、アジア大陸と密接な類縁関係にある魚種が多い。種のレベルに限れば、ムギツク、カワヒガイ、カワバタモロコ、ズナガニゴイ、コウライモロコ、イトモロコなど、濃尾平野・瀬戸内地方・九州北西部と共通する小型のコイ科魚類が目立つ。宇治川ではハス、ワタカ、ニゴロブナ、ビワコオオナマズなど琵琶湖水系の固有種が加わり、一段と多様になっている。

また、宇治川、木津川、桂川の三川合流地点周辺には、かつて畿内では琵琶湖に次ぐ開水面積を持つ巨椋池が広がっていた。巨椋池にはイタセンパラ、アユモドキ、ヨドゼゼラなど、この地域に局在する種が多数生息していた。したがって、現在の京都府南部の淡水魚類相は単に琵琶湖の下流に見られる個体群であると言うだけでなく、巨椋池に生息していた魚類相の名残りと見なすこともできる。

京都府に固有な淡水魚はないが、京都府南部地域と兵庫県柏原町・氷上町に不連続分布していたミナミトミヨはそれに準じる。本種はトミヨ属魚類の中でもっとも南に分布し、典型的な遺存種(relict)と言える。また、鰭棘(ききょく)が短くて鰭膜(きまく)が黒ずむといった淡水適応が進んだ体勢を備えていたことから、現在北陸地方に分布する、鰭棘が長くて鰭膜が透明なトミヨ類にくらべて早い時期に陸封されたものと考えられる。学術上、その絶滅は惜しまれる。

一方、わが国の内水面では水産資源の増殖を目的に淡水魚の移殖放流も活発に行われてきた。京都府においても同様で、現在までのところ、ニジマス、ソウギョ、ハクレン、コクレン、タイリクバラタナゴ、カダヤシ、タイワンドジョウ、カムルチー、オオクチバス、コクチバス、ブルーギル、タウナギなどの国外外来種12種に加え、イワナ、ヤマメ・アマゴ、ヌマチチブのような、国内の他地域に由来する国内外来種4種が記録されており、あるものは在来淡水魚への脅威となっている。

特に、北米原産で魚食性のオオクチバスとブルーギルによる影響は甚大で、深泥池で見られるように、京都府中・南部地域の池沼では小型の在来魚がほぼ壊滅状態にある。両種はセットで密放流(違法放流)されることが多い。京都府での分布域は1970年代以降、徐々に拡大し、さらに近年ではコクチバスも一部の水域に出現し始めており(小西、川瀬 2014)、これらの特定外来生物が府内の全止水域を席巻するのは時間の問題である。

京都府の淡水魚類相は多様で固有性が高い。在来の淡水魚には、京都府のみならずわが国の自然史的遺産としての価値がある。それを保護するためには、生息環境を整備・保全することはもとより、外来種問題など生物多様性をめぐる課題について府民の理解を深めることが強く望まれる。

執筆者 細谷和海

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