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京都府自然環境目録2015

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地域生態系のロゴマーク地域生態系の概要

京都府の地形地質と気候

京都府は日本列島のほぼ中央部に位置し、日本海側から内陸部にいたる南北に細長い形態をしており、その長さはおよそ150㎞に達する。

北部は日本海に面して、比較的狭い平野部をもって山地に至っており、海岸部は複雑なリアス式海岸が多く、日本海に突出した丹後半島がかかえこむ若狭湾には宮津や舞鶴などの小湾が発達している。日本海に流れ込む数本の河川は、それぞれその中流部に沖積盆地を形作り、また上流部では山地で急峻な渓谷を形成している。

中央部は丹波高原と呼ばれる山地で、日本列島の脊梁山脈の一部であり、京都府域を日本海側と太平洋側とに区分している。その中には亀岡、福知山などの小盆地が点在し、また桂川や由良川の源流となる河川の河岸段丘などが各地に発達している。この丹波高原は老年期の高原状山地であり、西側はなだらかに兵庫県の山地に続き、東側では安曇川の断層谷で終わる。この丹波高原では、1,000mを越える山地はなく、滋賀県との境に近い京都府中央部の東側に皆子山(972m)、峰床山(970m)、三国岳(959m)、鎌倉山(951m)などの京都府では最も高い山が集中している。また丹波高原の南側も京都北山連峰として愛宕山(924m)や竜ケ岳(921)、桟敷ケ岳(896m)などの山地が見られる。

京都府南部は、桂川、宇治川、木津川の三つの河川の扇状地がひろく広がり、山城盆地となって広い平野部が形作られており、これを取り囲む山地と丘陵地で構成されている。これらの三つの河川は、この山城盆地に達する前には、周辺の山地に深い渓谷を形成している。

気候的には、北部は日本海側気候に属し、また南部は太平洋側の気候区、特に瀬戸内気候区に属し、中央部はその中間的な気候を持ち、同時に山地帯の気候を併せ持つ。

北部の丹後地域と中丹地域では、対馬海流が近くを流れるために、その影響を受けて年間の気温の格差は少なく、特に冬はかなり温暖になる事が特徴であり、南部とくらべても1~2℃程度しか差がない。しかしこの暖かい対馬海流の影響で冬の積雪は多く、この地域を日本全体の中でも豪雪地帯となっている。

中部の南丹地域では、日本海型と太平洋型の中間的な気候であるが、高原上では内陸的な気候を持つために、夏の高温と冬の低温が特徴的である。

南部の京都市・乙訓地域と山城地域では、気候区としては太平洋側の瀬戸内気候区に属しているとされているが、併せて内陸的な気候の影響も強く、京都盆地の底冷えや酷暑はよく知られている。

選定群落の概要

上述のような気候や地形を反映して、京都府の植生が形作られている。すでに府内の植生図などもつくられており、その詳細は明らかになっているが、大きくは海岸から低地、丘陵、低山まで、およそ海抜500m程度までをシイ・カシ帯(照葉樹林帯)であり、そのシイ・カシ帯を、シイ帯(下部照葉樹林帯)とカシ帯(上部照葉樹林帯)とに分けている。また、そのシイ・カシ帯の上部をブナ帯(夏緑広葉樹林帯)が占めている。京都府下の山地は標高1,000mに満たないため、亜高山帯以上の植生は見られない。

また内陸性の気候を持つ地域があることもあって、いわゆる中間温帯と考えられるモミ林などが見られる部分がある。

このような原植生に対して、人の定住、伐採などの影響を受けて、二次林や草原が成立し、また地形的な原因で湿地性の植生や水生生物が優占する環境等が成立している。

丹後地域と中丹地域

比較的海岸近くでタブ林、舞鶴市冠島や伊根町の青島のような海岸線から内陸に至るまでかなり広い範囲でシイ林が見られる。カシ林については、福知山市毛原や綾部市君尾山にアカガシ林が見られる。福知山市大江町の岩戸神社には原生状態のウラジロガシ林が分布している。アカガシ、ツクバネガシ、ウラジロガシは、個体は広く見られるが、群落単位で残っている場所は少ない。夏緑広葉樹林では、各地にブナ林が点在している。ブナ林は、本来標高500m以上では、広く見られるものではあるが、現在ではまとまった面積のブナ林は非常に少なくなっている。そしてブナ林と隣接して数箇所のミズナラ林が見られる。ミズナラ林はブナ林の代償植生(二次林)であるとされている林であり、府内では、二次林とはいうものの、ブナ林に移行するであろう原植生にごく近い林であり、場所によっては、立地的な原植生である場合もある。しかし、近年のカシノナガキクイムシの加害によって、大径木の多くが枯損した。

ブナ帯からシイ・カシ帯にかけての群落として、シデ林、ケヤキ林、コナラ林があげられる。シデ林、ケヤキ林は、その植生帯の土地的な極相としての原植生であると考えられ、コナラ林についてはシイ林の代償植生であろう。モミ林は一般的には中間温帯の群落といわれているが、海抜のかなり低いところまで広く見られるようである。

針葉樹の自然林ではスギ林が見られる。宮津市上宮津には、巨大なアシウスギが林立する天然林が広域にわたって見られる。その他、スギとヒノキの植林地があげられているが、同じく社寺林が多い。社寺林は保護されてきた場所であるために、その地域の原植生の要素を残したものであるといわれている。しかし同時に社寺の周囲に植林してその林を守ってきた社寺も多く、そのような植林地は、スギやヒノキだけの林ではなく、やはり地域の林内に生育する多くの植物を含む林として成立しており、植林であっても、地域の生態系としては価値の高いものと言える。

アカマツとクロマツの林も、乾燥した立地の林、及び海岸の林として典型的な林としてあげられるが、1980年代からのマツ材線虫病によって、多くの場所で枯損し、現在では、やや標高の高い尾根部などに、アカマツ林は残っている。クロマツ林は、天橋立などで、マツ材線虫病の防除が徹底されている地域で保全されているが、それ以外では衰退が目立っている。そのほか、モウソウチク、ササ草原、水性植物群落、砂丘植生などが見られる。近年、モウソウチク林が管理放棄によって、広葉樹林や人工林へ侵入し、急速に分布を拡大している。

南丹地域

京都府の中部地域は、急俊な山地は少ないために古くから人為が加えられており、原植生に近いような自然林は非常に少なく、広くスギやヒノキの植林が行われている。

高原地形であるということもあって、シイ林はごく少なく、リスト化された林も二箇所のみである。落葉広葉樹の林はさまざまなタイプがあげられている。ブナとスギが混じった針広混交林がこの地域を代表する群落の一つであり、日本海側のブナ林の特徴を示している。またブナ林もコハウチワカエデなどのカエデ類やイヌシデなどのシデ類など、様々な種類の落葉樹を含んだ群落をつくり、ブナなどの特定の樹種がきわだって優占するような群落ではないということが特徴のようである。したがってこの地域の落葉樹林は、さまざまな名前で表現されていても、その種構成などについては連続している場合が多い。

モミ林とツガ林は中間温帯林であるが、この地域では上述の落葉樹林に対して、より尾根筋の岩場などに成立する事が多い。また、スギの植林地が幾つかリスト化されている。北部地域と同様に社寺林が大半であり、林業の対象としてばかりではなく、地域で大切に保全されてきた林である。そのほかにはアカマツ林と竹林があげられているが、アカマツ林は北部と同様に、マツ材線虫病の蔓延によって枯損している林分が多く、竹林も、北部同様に、管理放棄によって分布拡大している。おり、また非常に特殊な水生植物群落として亀岡盆地のオニバス群落があげられている。

京都市・乙訓地域と山城地域

この地域は、右京区(旧京北町)と左京区が、丹波高地の北部にまで達し、1,000m近い標高の地域まで含んでいるが、多くは低山地から扇状地起源の平野部である。そのため注目すべき植物群落としてリスト化されている群落の多くが社寺林であり、古くから都とその周辺の地域として強い人手が加えられている地域であり、また同時に信仰の地として各神社仏閣に所属している林が大切に保全されてきたものと考えられる。

シイ林は京都盆地を取り囲む三山において、近年分布を拡大している。従来、社寺林周辺にシイ林がまとまって見られたが、1960年代以降、人手が入らなくなった山地斜面のアカマツ、コナラなどからなる二次林の下層植生として拡大し、アカマツの枯損後、急速に分布を拡大した。常緑広葉樹については、ウラジロガシ、アカガシ、アラカシ、シリブカガシ、ツクバネガシと多くの樹種が優占する群落が見られる。それぞれ種の好む気候や立地などの適地に対応した分布であるが、特にシリブカガシはこの群落が日本の北限にあたるものと考えられている。クスノキ林は、その起源は人の植栽によるものであろう。

ブナ林は北部の久多、八丁平周辺の600mから900mにわたる二箇所で、天然スギと混生しているが、群落としては小面積である。落葉樹林はミズナラ、コナラ、クリ、イヌブナ、アカシデ、イヌシデ、リョウブ、カエデ類と様々な組み合わせで群落が表現されている。これらは、それぞれの種が年間の気温などに対応して分布をしており、それらの種が特に優占している林でもなく、種の組合せが変わりながら移行的な林を作っていると考えられる。ここでも、ミズナラ、コナラ、クリなどのブナ科樹木はカシノナガキクイムシの加害によって大径木が枯損している。

針葉樹林では、片波の天然スギ林では、巨木が多く、さらにヒメコマツ、ヒノキが優占しホンシャクナゲ群落も見られる。モミ林もこの地域の山地部で広く見ることができる。左京区北部の北山にはアスナロ群落も認められている。

竹林は京都盆地の周辺部で、広く栽培されてきたが、管理不十分で、山地斜面にまで地下茎による分布拡大が急速に起こっている。

このほか、八丁平湿原や深泥池の水生植物群落のような府内全域の中でも特異な植物群落や、幾つかの河川の水生植物群落等があげられている。またオニバス群落もそういう中での特に絶滅のおそれのある種による群落としてあげられている。

京都府レッドリスト(地域生態系)のカテゴリー

植物群落は、基本的にはその場所の気候と地質・地形によって強く影響を受けて成立し、さらにその群落に対して人が手を加えることで変化をしていく。したがって、もともとの自然の状態を考え、その量がいちじるしく減少している群落が保存すべき対象であると考えると、もともとのその場所の群落であったものが最も貴重な群落であるということになる。さらに現在のように身近なところに自然が残っていない場合が多い時代では、そのようなもともとの群落ではなくても、人手が入って成立した群落でも貴重で、管理をしながら現在のままにしておくことが必要という考えかたができるであろう。このように群落が人との関わりの中で存在するものであるために、その価値づけであるカテゴリー化は非常に複雑な問題を含むことになる。原植生と二次群落とを同じ範疇で評価することはできないであろう。

人が荒した結果として存在するアカマツ群落すら、現在では見られなくなりつつあり、京都のアカマツ群落を維持するために、最も自然度が高いことになっているもともとの群落、コジイ群落を伐採するという計画をどう評価するのか、ということは評価するために基準を決めて、それに従う以外はないわけである。

また植物の群落の場合には、はっきりとした生育立地が決まっており、その場所の特定の群落は、日常的に人との関わりの中にあるものであり、極端にいうならば、今現在はまったく周囲に変化が起こるようなことは考えられない群落であっても、ごく近い将来には、急な変化が起こる可能性もある。

このような問題点はあるものの、現在の管理状態が基本的には維持され続けるということを前提としたうえで、京都府内で貴重な群落としてリスト化された群落を以下の三つのカテゴリーに区分した。

要特別対策

群落を維持するためには、ごく緊急に特別な対策が必要

要保全対策

現状以外に保全の対策が必要

管理維持

現状の管理を維持することが必要

執筆者 布谷知夫、高原光

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