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京都府レッドデータブック2015

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双翅(ハエ)目 ハナアブ科

トゲミケハラブトハナアブ

Mallota tricolor Loew, 1871
京都府カテゴリー

絶滅寸前種 新規

2002年版 リスト外
環境省カテゴリー なし
トゲミケハラブトハナアブ

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選定理由

大型で森林性の種、幼虫は水生で大木の樹洞に生息する。近縁の種が数種が知られているが、たがいによく似ていて生態も同様と考えられる。これらの種はいずれも個体数はさほど多いものではないが、顕著な種でかつ研究者も増加していて近年分布の記録自体は各地で増加している。にもかかわらずこの種のみは減少が著しく、全国的に見ても1960年代以降、特に本州での記録がほとんど見られなくなった。樹洞という環境は捕食者から保護されている反面、樹洞自体が多く存在しない上に、幼虫は密集して生息できない。したがってこれらの種は他の食性の昆虫に比較して、個体数も多くなく繁殖も旺盛ではないと考えられる。さらに本種は、とくに大木の樹洞を好むらしく、近年本種が生息できるような大木を含む自然林が減少するとともに、各地で急速に消滅していったようである。事実、現在唯一の確実な産地を見ても、この種は原生林に生息していてそのように判断される。一定規模以上の自然林が長く維持され、常に自然な循環が行われている環境にのみ生育できるとみなされるので、この種はとくにこうした森林自体の履歴も含めた環境の指標としての意義がある。

形態

大型で、外見はマルハナバチに擬態する顕著な種。翅脈R4+5が強く曲がり、体に長毛を密生する。顕著な一群であるが、酷似した近似種が多くしかも斑紋も似通っていて判別が難しい。ただしこの種は後脚の基節に(見つけにくいが)棘状突起(正確には毛束)をもつことで他種から容易に区別される。

分布

北海道、本州、旧北区。60年代以降特に本州中部以南での記録が激減し、現在近畿地方では奈良県春日山が唯一の確実な生息地。

◎府内の分布区域 かつては大文字山でも記録されたが、1990年代の瑞穂町の記録を最後に再発見されていない。京都府はこの2例のみ。

生態的特性

森林性の種で、成虫は各種の木本の花に飛来する。幼虫は水生で大木の樹洞の水中に生息し、尾端に非常に長い呼吸管をもち先端を水面に出して呼吸する。他種での飼育の経験ではあるが、高密度で飼育すると呼吸器が絡まり、窒息死する。

生息地の現状

大文字山ではすでに絶滅したと思われる。しかし芦生の原生林など北部の山地ではなお局所的に残存している可能性がある。

生存に対する脅威

生息可能な自然林の減少、特に樹洞のあるような大木の減少。

必要な保全対策

再発見のための調査が重要である。生態からみて種の存続のためには、相当な規模の自然林を確保することが必要である。

改訂の理由

2002年版レッドデータブック作成時には、参照できる資料がほとんどなかったため、ひかえめな判断とせざるをえなかった。しかしその後の京都における調査および近隣地区の資料が増加したため、現時点において妥当と思われる評価に変更した。

文献 大石(2002b)

執筆者 大石久志

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