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京都府レッドデータブック2015

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地衣類のロゴマーク地衣類の概要

京都府の地衣類相

京都府は地理的には暖帯から温帯に位置し、ほとんどの地域が照葉樹林帯に属し、ブナ帯は府北部の山地に存在するだけである。2006年に発行された京都府地衣類チェックリスト(山本2006)では127種が収載されている。その後の報告などを含め、現在では163種(目録)が京都府に分布している。京都府における地衣類調査は、京都市高雄(坂東ほか2003)と京都市大原(山本ほか2006)の2か所であり、その他特定の種のモノグラフ作成のため、鞍馬山や貴船、比叡山、芦生で調査がされている。地域区分における出現種数の割合は京都市・乙訓84%、南丹16%、中丹9%、丹後7%、山城 1%と圧倒的に京都市とその周辺に偏っている。また、近畿地方全体でも地衣相の調査地はそれほど多くはないので、希少種であるかどうかの判断は大変難しい。

京都府は、アジアの熱帯や亜熱帯に広く分布し日本まで分布を広げている南方系の種と、温帯から亜寒帯に分布し府北部のブナ帯まで降りてきている北方系の種の交差点に当たるので、報告された種も北方系と南方系が混在する。また、亜熱帯から冷温帯や亜寒帯まで広く分布する(ここでは広汎系とする)種も含まれる。

例えば、南方系の種としては、ハナゴケ科のキゾメコアカミゴケ、タイワンレンゲゴケ、ヒメヤグラゴケ、ウメノキゴケ科シラチャウメノキゴケ、タナカウメノキゴケ、マニラゴンゲンゴケ、タカハシゴンゲンゴケ、ゴンゲンゴケ、ウメノキゴケ、ナミガタウメノキゴケ、トリハダゴケ科モエギトリハダゴケ、オリーブトリハダゴケ、モジゴケ科ニセモジゴケ、クロモジゴケ、カバイロイワモジゴケ、シロコナモジゴケ、ナマリモジゴケなどをあげることができる。

北方系の種としては、ウメノキゴケ科のセンシゴケ、ビホロサルオガセ、ムカデゴケ科ラッパゲジゲジゴケ、ピンゴケ科ピンゴケモドキ、イワノリ科カラフトカワキノリ、カブトゴケ科ウスバエビラゴケ、ウラミゴケ科チヂレウラミゴケ、ツメゴケ科イヌツメゴケ、トリハダゴケ科オリーブトリハダゴケモドキ、ワタトリハダゴケ、ホソクチトリハダゴケ、ウオノメゴケ、フジゴケ科キンチャクゴケ、オオフジゴケ、ホソフジゴケなどをあげることができる。広汎系の種としてモジゴケ科のセスジモジゴケ、ヘリトリゴケ科ヘリトリゴケ、カブトゴケ科ヘラガタカブトゴケなどを挙げることができる。

環境的に見た時、地衣類は渓流沿いの湿った岩や樹、土の上によく生育する。暖温帯林ではアカサルオガセ、コフキカラタチゴケ、カブトゴケモドキ、ヘリゲセンスゴケ、コフキツメゴケ、カバイロイワモジゴケが生育する。冷温帯林ではカラフトカワキノリ、ピンゴケモドキ、ウスバエビラゴケなどの希少種やナメラカラクサゴケが見られる。社寺林の岩や樹、土の上にはシラチャウメノキゴケ、ウメノキゴケ、ナミガタウメノキゴケ、モエギトリハダゴケ、オリーブトリハダゴケがよく見られる。京都市内の社寺林は自然環境がよく保全されており、今後もそのような種は保存されると考える。

地域的な観点では、京都市では出現種数は大変多い。東山、北山、西山山麓の社寺林はもとより中心部の社寺で地衣類が見られるのは、京都市のような100万人を超える人口を擁する大都会では希有である。また、京都市周辺部は有名な北山杉の産地であり、スギ林周辺に生育する地衣類が、市内中心部の社寺林同様に、今後も保存される可能性は高い。府北部での調査が全く進んでいないので、今後この方面での調査が行われれば出現種数の増大、選定種の選定確度の向上が期待できる。

種の選定基準

地衣類の場合、絶滅危惧種の判定に利用できるような過去の報告例や採集データが決定的に不足しているため、またそれぞれの種の府内での分布の状態についての情報もきわめて乏しいため、絶滅のおそれがあるかどうかという観点からの選定はきわめて困難である。そのため、今回の調査によって判明した希少種を下記のような基準でランクづけをして選定した。

カテゴリーランクと選定基準

カテゴリーランク 選定基準
絶滅寸前種 環境省レッドリストに絶滅危惧I類(CR+EN)と絶滅危惧II類(VU)としてあげられているもの。
絶滅危惧種 環境省のレッドリストにはあげられていないが、全国(産地が5か所以内)で産地が少ないもの。ただし、種としての認識が最近のものを除く。
準絶滅危惧種 環境省のレッドリストにはあげられていないが、近畿地方(産地が5か所以内)で産地が少ないもの。ただし、種としての認識が最近のものを除く。
要注目種 上記の三つのカテゴリーにはあてはまらないが、生態的あるいは学術的に注目に値する事項を有する種を要注目種として、その注目すべき事項とともに記述した。

選定に際しては希少の程度を主要な基準としたが、それ以外にも次の事項を選定の基準として考慮した。

1)環境省のレッドリストに選定されているかどうか。

2)特殊な環境(水生、石灰岩、葉上着生など)に生育しているものについては、その環境状態の変化と生育状況。

3)分布上注目に値するもの(隔離分布、分布の北限や南限、日本海側に分布する南方系の種など)。

4)学術的な意味において特記すべきもの(タイプ標本産地など)。

選定種とその概要

163種のうち、総計23(14%)が絶滅危惧種、準絶滅危惧種として選定された。絶滅寸前種は報告になかった。内訳は、絶滅危惧種が1種(ナリアイウメノキゴケ)、準絶滅危惧種が22種(キゾメコアカミゴケ、ナカジイワボシゴケ、カワラキゴケ、マニラゴンゲンゴケ、タカハシゴンゲンゴケ、ビホロサルオガセ、ワタゲサルオガセ、ホンドサルオガセ、ラッパゲジゲジゴケ、ピンゴケモドキ、カラフトカワキノリ、ウスバエビラゴケ、チヂレウラミゴケ、オリーブトリハダゴケモドキ、ワタトリハダゴケ、ホソクチトリハダゴケ、ウオノメゴケ、シロコナモジゴケ、ナマリモジゴケ、キンチャクゴケ、オオフジゴケ、ホソフジゴケ)である。

選定種は、ウメノキゴケ科、トリハダゴケ科、モジゴケ科、フジゴケ科など多岐にわたる。選定された種は北方系の種が多いが南方系の種も存在する。例えば、北方系の種としてカラフトカワキノリ、ウスバエビラゴケなどが挙げられ、南方系の種にはタカハシウメノキゴケ、シロコナモジゴケがある。特定の基物、例えば、朽木、石灰岩や葉、川中の石などの上で生育する種については情報が少なく選定に至らなかった。また、担子菌綱に属する種についても情報がなく、選定に至らなかった。

選定種の地域的な観点では地域区分における選定種の出現種数に対する割合は丹後27%、中丹21%、南丹15%、京都市・乙訓11%、山城0%であり、北上するほど高くなっている。このことは、府北部の調査が進んでいないことが原因と考えられる。

執筆者 山本好和

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