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地質

おおろふきんのぺぐまたいときげんそこうぶつ

大路付近のペグマタイト希元素鉱物

京都府カテゴリー

消滅寸前

2002年版 消滅寸前 2002年版を参照する
京丹後市峰山町鱒留大路

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分類

鉱物

細分

希元素鉱物

時代区分

新生代古第三紀

地域

京丹後市峰山町鱒留大路

選定理由

国内における重要なペグマタイト鉱物産地の一つで、世界的にも珍しい希元素鉱物が黒雲母花崗岩中のペグマタイトに産する。ペグマタイトは花崗岩体の浅所に分布することが多く、露頭消滅の可能性が高い。

分布

ペグマタイトは日本各地の花崗岩体に見られるが産出する鉱物の種類や組み合わせは地域ごとに特徴がある(例えば、滋賀県田上山のトパズ、岐阜県苗木のサファイア、福島県水晶山のフェルグソン石など)。府内では京都市左京区の比叡花崗岩、亀岡市畑野の剣尾花崗岩など各地の花崗岩体に小規模なペグマタイトが見られる。

特徴(特異性)

ペグマタイトを胚胎する黒雲母花崗岩はこの地域に広く分布する宮津花崗岩を貫き、小岩体をなす。大路のペグマタイトの露頭は2か所で認められる。北西~南東方向に延び、最大幅20mのレンズ状をなすペグマタイトは長石と石英を主とし、かつて珪石を目的に採掘された(旧大成鉱山、現在は磯砂鉱山)。このペグマタイトの長石帯にトルトベイト石、バストネス石、フェルグソン石、ジルコンが見られる。近傍の黒雲母を特徴的に含むペグマタイトでは磁鉄鉱をともなう長石中にフェルグソン石、ジルコン、褐れん石、バストネス石、パイロクス鉄石、チタン鉄鉱、閃亜鉛鉱などが見られる。トルトベイト石は世界的に稀な鉱物で、日本では他に京都府京丹後市河辺白石山でわずかに産するだけである。単斜晶系で化学組成は(Sc,Y)2Si2O7である。長石中に径1~8mm、長さ10cm以下の柱状結晶をなす。特徴的な双晶を示す。帯緑灰~灰緑色、透明~半透明で、ガラス光沢を示す。バストネス石は日本初産、化学組成は(Ce,La) (CO3)F、六方晶系で径1.5mm以下の六角柱状結晶をなす。淡黄褐~赤褐色、透明~半透明である。日本初産のフッ化セリウム石(Ce,La)F3をともなう。パイロクス鉄石は1970年アポロ11号により月で発見された鉱物で(Fe, Mn)7Si7O21の化学組成を示す。日本では本地域以外に大路の東方12kmに位置する当時の岩滝町男山のペグマタイトから見出されている。(益富、内山1940、山田ほか 1980)

現状 希元素鉱物を多産するペグマタイトの石英は珪石原料として採掘されていた。1978年に磯砂鉱山として再開されたが、わずか2年で閉山した。付近の花崗岩中には小規模なペグマタイトが多く胚胎していると考えられるが、石英、長石以外にどのような鉱物が含まれているのかは不明である。宮津花崗岩中のペグマタイトにはフェルグソン石やジルコン、含チタン鉱物が普遍的に含まれているものと思われる。
保存に対する脅威

鉱山の再開や建設工事などによってすでに露頭の破壊ははじまっている。丹後半島の山間部の土地開発や道路建設によってさらに露頭が失われる危険性がある。

必要な保存対策

鉱山再開の折には地下部分の長石帯や石英帯から希元素鉱物が発見される可能性がある。また、近傍の山中にも同様なペグマタイトが存在する可能性があり、土地開発の際には鉱物を多く含む、北西方向に延びる石英脈の分布を保護する必要がある。

特記事項

大路はかつて大呂と呼ばれていた。本地域のペグマタイトからはチタン鉄鉱、板チタン石、鋭錐石、ルチルといった同質異像のチタン酸化物も多産する。

地質文献一覧

執筆者 貴治康夫

大路のトルトベイト石(益富地学会館標本)

与謝野町男山のパイロクス鉄石(益富地学会館標本)

峰山町大路鉱山の鉱物 トルトベイト石(写真は高田雅介氏提供)

峰山町大路鉱山の鉱物 トルトベイト石(写真は高田雅介氏提供)

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