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3 自然と人間との共生の確保【環境基本計画】

気候や地理的条件、歴史的背景、人為的影響の度合いなどにより形成された原生的な自然や、継続的な管理により維持されてきた二次的な自然など、多様な形態の自然環境に恵まれており、これらは様々な野生動植物の生息・生育の場となっています。これらを包括的に保全するためには、それぞれの自然特性に応じた保全対策を行う必要があることから、次に示す自然の形態別 保全の方針に沿って、総合的、計画的な保全を行います。

【自然の形態別 保全方針】

(自然林など、原生的な自然環境)

  • 人の手がほとんど加わっていない原生的な自然環境は、河川源流部や海岸部、山稜部の他、湿地など、府内の一部にのみ残る貴重な存在です。これらは、多様な生物種を保存し、自然の精妙なメカニズムを人類に教えるなどかけがえのないものであることから、厳正に保全し、核となる自然生態系として維持します。

(社寺林など、歴史的な自然環境)

  • 京都府には、文化的遺産と一体となって歴史的風土を形成した文化的歴史的に高い価値を持つ自然環境が多く点在しています。これらは府民の財産として、次代に継承しなければならないものであることから、厳正に保全を図ります。

(里山やため池など、二次的な自然環境)

  • 人との関わりを通じて形成・維持されてきた、里山やため池などの二次的な自然環境は、ライフスタイルの変化や過疎化、開発などのために維持していくことが次第に困難な状況になっています。しかしこれらは、農山村地域や都市近郊林の原風景であるほか、希少動植物をはじめとする野生動植物の生息・生育地などとして重要であるため、適正に保全します。
  • 特に、多様な動植物の生息・生育地として重要な地域や優れた自然景観を形成している地域、自然とのふれあいの場となっている地域については、その機能を維持します。一方、遷移により優れた自然環境への移行が期待できる場合には、自然の状態に委ねて、原生的な自然環境へ回復させます。

(農地や植林地など、生産の場としての自然環境)

  • 農林業等が営まれる地域の自然環境は、生産の場としての機能とともに、水資源のかん養、環境浄化、野生動植物の生息・生育地等としての多面 的な機能を持っています。これらの機能を維持するため、農林業の振興や農山村の整備、担い手対策を推進するなどにより、生産の場としての自然環境を保全します。

(湿地、河川、水辺地など、内陸性水域の自然環境)

  • 湿地、河川、水辺地などの内陸性水域は、多様な野生動植物の生息・生育地となっているなど、重要な自然環境です。これらを保全するため、自然生態系を維持しつつ、資源を持続的に利活用する「賢明な利用」の基本原則に基づいて保護・管理します。 また、これらは常に人々の生活と深く関わりながら存在していることから、良好な水辺空間としての機能が維持できるよう、適正に保全・整備します。

(自然海岸、半自然海岸など、海辺の自然環境)

  • 海辺の自然環境は、多様な自然生態系や豊かな水産資源に恵まれるなど、野生動植物の貴重な生息・生育地となっています。これらの自然環境を保全するため、車両の乗り入れ規制や立ち入り制限のほか各種保全対策により、特に藻場や希少な海浜性植物群落等の保護、海岸の良好な自然景観などを維持します。
  • また、海辺の自然環境とのふれあいの場として、適正に利用します。

(野生動植物の重要な生息・生育地など、優れた自然環境)

  • 野生動植物の重要な生息・生育地、ぜい弱性、固有性を有する希少な自然環境、巨樹・巨木林などの地域の人々に大切に守られてきた身近な自然の他、良好な自然の風景地などは、人と自然との関係において欠くことのできない優れた自然環境であるため、適正に保全し、良好な自然生態系を維持します。
  • なお、保全すべき自然環境の維持が困難な場合においては、自然性を回復するための取組を進めるほか、優れた自然風景や野生動植物とのふれあいの場、学術研究の場としての利用を推進します。

(1)生物多様性の保全・活用

ア 多様な自然の保全

 生物の多様性は、人間の生存基盤ともなっている自然生態系を健全に保持し、生物資源の持続的な利用を図っていくための基本的な要素であり、個々の生物種や地域における個体群が維持され、全体として生態系が保全されていくことにより確保されています。このため、生態系・種・遺伝子の各レベルの生物多様性を確保する取組として、科学的データに基づき、生物の生息・生育地の確保、希少な野生動植物をはじめとする種の保全や多様な自然生態系の保全、生息状況に応じた適正な野生鳥獣の保護管理、逸出によるものなど移入種による影響対策、ビオトープ・ネットワークによる自然の保全や復元、創造などの施策を推進することにより、自然の特性に応じた多様な生物相を確保していきます。
  また、基本的な自然的要素である地形・地質は、表層地質や土壌の分布、地下水の状況や動植物の生息・生育環境と密接に関連しており、その破壊は生態系の破壊につながるという側面 があります。一方、土壌は保水機能のほか、物質循環の要ともなっています。なかでも、貴重な地形・地質や土壌については、一旦失われると再生は困難であることから、適正な保全対策を推進します。さらに、貴重な天然資源である温泉についても、その適正利用などにより保護対策を推進します。

施策体系

多様な自然の保全 (1)希少な野生動植物種などの保全
(2)多様な自然生態系の保全
(3)野生動植物の保護管理
(4)移入種による影響対策
(5)自然の保全・復元・創造
(6)貴重な地形・地質や土壌の保全及び温泉の保護

イ 自然環境の体系的な保全

野生動植物の生存基盤となっている多様な自然環境を保全し、生物の多様性を確保していくため、自然環境保全地域、歴史的自然環境保全地域、自然公園、鳥獣保護区、天然記念物、緑地保全地区、保安林等の各種制度を活用し、行為規制等を行う取組を推進します。さらに、森林や農地、緑地、ため池や河川などの水辺環境とそれらと一体となった中洲や河畔林などの周辺地域、藻場などの海浜環境等を適正に保全し、渡り鳥の集団渡来地を含む野生動植物の生息・生育空間や繁殖場所を確保します。
 このため、特に土地利用の変更を伴う開発事業等を行うに当たっては、生物の生息・生育地や自然景観に配慮するとともに、自然生態系に配慮した工法や郷土種の採用などにより「環境にやさしい公共事業」を推進します。
 併せて、自然環境との密接な関係を維持しながら進められる農林水産業においても、生産性の向上を図りながら、農薬や化学肥料等の使用量 の制限により、自然環境への負荷軽減に配慮した「環境にやさしい農業(環境保全型農業)」を推進するほか、複層林施業などの生物の多様性に配慮した林業、森林計画や保安林制度の運用による森林資源の適正な保全整備などを推進します。
 さらに、自然環境の保全施策を策定し、保全の手法等を確立するため、自然環境に関する府内の野生動植物、自然生態系、地形・地質、歴史的風土等に関する基礎的データの収集やモニタリング調査を行うとともに、これらを活用して自然環境の保全技術に関する調査研究を推進します。特に、府内における絶滅のおそれのある野生動植物の現状については、常に新しい情報を収集し状況に応じた保護対策を推進します。
  また、府内の自然の現状や変遷、さらには自然生態系のメカニズムや人と自然との適正な関係などについて調査・研究し、その情報を広く府民に提供するとともに、ボランティアの活動拠点などの機能を持つ自然系博物館などの中核拠点づくりを推進します。
  さらに、自然環境の保全対策の実施に当たっては、地域住民に過度の負担がかからないよう、住民活動の支援や、貴重な自然環境の公有地化などの軽減策を検討します。

施策体系

自然環境の
体系的な保全対策
(1)各種制度による自然保護地域の指定推進と保全、管理
(2)開発事業における自然環境への配慮
(3)「環境にやさしい農業」等自然環境に配慮した農林水産業の推進
(4)基礎的データの収集・分析、保全技術の調査研究
(5)自然環境保全の中核拠点づくり
(6)地域住民活動の支援と、その負担軽減策の検討

ウ 自然とのふれあいの推進

 「京都の自然200選」に代表される人々に親しまれている多様な自然を守り育てていくためには、自然や良好な環境に対する豊かな感性を醸成し、自然への理解を深めていく必要があることから、日常生活や余暇等の様々な場面 において、豊かな自然とふれあう機会を設けるなど、自然の恵みを実感する取組を推進します。特に、幼い頃からの自然体験は人格形成の上からも重要であるため、重点的に取組を推進します。
 また、自然とのふれあいの場や機会の確保を図るなど、自然と人との間に豊かな交流を保つための取組が求められていることから、自然観察や散策、ネイチャーゲームなどの手法を取り入れた、自然と楽しくふれあえる機会を創出するとともに、都市と農山漁村の交流拠点の整備、グリーンツーリズムやブルーツーリズムなどの振興を図るなど、都市部と農山漁村の住民との交流を推進します。さらに、地域の特性を活かして自然そのものを博物館として見立てたフィールドミュージアムのほか、散策路や誘導標識、休憩施設などの施設の整備など、自然とのふれあいの場の整備を市町村等と協力して推進するとともに、さらに、身体等に障害のある人もない人も、誰もが楽しく自然とふれあえるよう、バリアフリー整備やネイチャーフィーリングによる観察会の開催を推進します。
  なお、自然とのふれあいを進めるに当たっては、同時にごみやし尿による環境への負荷や植生の踏み荒らしによる被害を防ぐため、自然への影響を最小限に抑えるオーバーユース対策を推進します。 また、地域における自然環境保全等の自主的活動の支援やインタープリテーションを行うボランティア等の人材を育成するほか、民間団体等や地元住民と協力した取組やナショナルトラストなどを推進します。21世紀を担う子供たちに対しては、豊かな人格形成を図る上で自然への理解や認識を深めることがますます大切になっていることから、学校教育の場などを通 じて自然環境教育・学習の充実を図ります。
 さらに、子供たちは豊かな自然の中で生き生きと遊び、その仕組みやふれあい方を学び、体験することにより自然を愛する心が養われることから、地域社会の場において子供たちの活動の輪を広げる機会の提供やボランティアリーダーの養成を推進します。

施策体系

自然とのふれあいの推進 (1)自然とふれあう機会の提供
(2)自然とのふれあいの場の確保
(3)自然環境の特性を活かした地域づくり
(4)自主的活動の支援及び人材の育成
(5)自然環境教育・学習の充実

現状

  • 京都府は、南北に細長く、北部地域は日本海型気候の特色を示し、冬期にはかなりの積雪があるのに対し、中・南部の丹波の山間部や京都盆地は内陸性気候の特色を併せ持ち、寒暖の差が大きいという特色があります。また、標高1,000m未満の比較的低い山地部が大部分を占めており、平野部の面 積は非常に少なくなっています。
  • 府内の植生は、大部分が人為的影響を受けて形成されたアカマツ、コナラ等により構成された里山で、これら代償植生の占める割合は、全国平均よりも高くなっています。一方、人の手がほとんど加わっていない自然植生は、河川源流部や海岸部、山稜部のほか、湿地などに局地的に残存しているもののほか、神社、仏閣等の歴史的遺産と一体となって守られてきた社寺林などにみることができますが、その占める割合はわずかで、将来に伝えていくべき貴重な存在となっています。
  • 自然環境は、生態系維持の基盤であるのみならず、農林水産業などの生産基盤の提供、水源かん養、治山・治水などの国土の保全、環境の浄化、学術研究などの公益的機能に加え、私たちの生活に安らぎとうるおいをもたらすなど多様な機能を有しています。また、近年、自然林や里山の減少、身近な自然の喪失、野生動植物の減少、過疎化・高齢化が著しい農山村地域における農地・森林等の有する環境保全機能の低下などが指摘されており、人と自然との共生が重要視されています。
  • 自然環境保全の問題は、地域的な取組によるものだけでなく、国際的な取組の中でも課題とされています。特に生物多様性の確保や野生動植物の種の保存、生態系の保全などの問題については、「生物の多様性に関する条約(生物多様性条約)」や「絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約(ワシントン条約)」、「ラムサール条約」、「二国間の渡り鳥等保護条約・協定」などが締結され、各国における取組の強化が求められています。さらに、森林保全の問題は、国際的な森林資源の枯渇や地球の温暖化(二酸化炭素の吸収等)とも密接に関連しています。
  • 近年、外因性内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の野生動物の生態系への影響が懸念されています。

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