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第5回研究会の結果要旨

出席者

高見 茂委員(京都大学大学院教育学研究科教授)【座長】
上子秋生委員(立命館大学政策科学部長)
竹廣良司委員(同志社大学経済学部教授)
新川達郎委員(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授) 
野田 崇委員(関西学院大学法学部 准教授)
(欠席)鈴木晶子委員(京都大学大学院教育学研究科教授)
藤井 聡委員(京都大学大学院工学研究科教授)
山田礼子委員(同志社大学社会学部教授)
[京都府]山下企画理事、黒瀬総務部長、井上政策企画部長、本田企画監 等 

結果要旨

報告

竹廣良司  同志社大学経済学部 教授
   テーマ: 京都の産業と労働

  • 産業・労働の変化が価値観の変化をもたらしている。長期的な安心感よりも、短期的な成果を求めるようになっており、この変化が産業組織や企業間の関係を変えてしまった。これまでは、企業グループが外部の金融変動の影響を吸収して、グループ全体で生産を高める仕組み(=金融のバッファ)と企業グループ内の他の企業で雇用を吸収するという雇用調整(=雇用のバッファ)があったが、それができなくなったことで、企業と企業、企業と人の関係が変化し、長期的な関係が保てなくなっている。
  • 日本の企業らしさ、日本のものづくりについて考えると、長期雇用の中でのスキルアップを目指すよりも、他の企業でもすぐに働けるようにという汎用的な能力が必要となってきた。企業の特殊的な能力形成を目指さないのであれば、社内でのトレーニングは意味を持たなくなる。
  • 企業としてもこれまでのように人材育成にコストをかけることができなくなり、即戦力に頼らざるを得なくなったが、即戦力では、その企業らしさは維持できなくなる。
  • また、小学校に経済学を教えに行った際に、競争についてはなるべく教えないでほしいと言われ、当惑したという大学教員の話を聞いた。競争よりも融合の中で何となく暮らしていくような人が大半になったとき、この社会はどうなるだろうかが、懸念される。
  • 今後の検討の可能性としては次のことが考えられる。
    ・行政は多元的な方向性をサポートするための財源確保が必要であり、従来の産業や職業に置き換わり、高付加価値を生み出すものを作り出すことが必要。
    ・文化やコンテンツの集積等といった京都の資産が活用できる等、京都に立地することでメリットのある企業の集積の検討。
    ・労働の質の向上には、行政が場を提供することが必要。また、企業のニーズに応えられる労働者を育成するためには、求められるスキルを明らかにすることが必要。
    ・京都に何度も再訪するのではなく、市内だけでなく近隣に住む「住むこと」をめざし「暮らしたい京都」づくりを進める。 

 主な議論

  • 府として産業基盤への直接投資は難しく、行政がどこまでかかわるのがよいのかという質問に対し、顕在化していないニーズにどこまで投資するかは行政として難しいと考えるが、人づくりや産業の新しい形を作るのは行政の役割ではないか。ただ、京都単独でやる必要はないが、京都は場所としてはふさわしいとの意見があった。
  • 職業教育はどの段階からとの質問に対し、当然小中学校からすべきであり、大学で本来すべきことではなく、大学は場の提供等、あくまでもプラットホームであるとの意見があった。
  • 秩序と労働力と資本が入れば、世界のどこでも平均まで上がることは簡単だが、先進国であり続けるためには、行政は弱者救済の役割を果たすだけでなく、見方を変えることが必要との意見があった。
  • 京都で多くの人に暮らしてもらうには、集合住宅が必要となるが、京都らしい景観がなくなるのではないかという恐れがある。また、京都らしいとは何かとの質問に対し、京都市の近隣に計画的に住宅等を確保して、1時間以内で行き来できる範囲内に住んで、週末に市内散策に訪ずれ、自然を満喫しながら生活し、文化や歴史を堪能することも考えられるのではないかとの意見があった。さらに、京都らしさについて、イメージが固定化されていることが問題であり、文化のエリアを広げていくことが必要との意見があった。
  • 職業教育についてイギリスのギャプイヤーの実現について、大学で実施すると卒業時期がずれ学生が不利になるので、高校での実施がよいのではないかとの意見があった。
  • 産業が低迷し、就労する人が減る中で、個人所得が下がれば税は取れない。今の暮らしでいいという人に合わせると、産業が育たないとの意見があった。
  • リーマンショックという西洋流の競争社会の破綻を受け、米国式競争社会が日本の国民性にとってよいものか考え直して、新しい競争社会をつくる必要があるとの意見があった。
  • 大学生の割合が多いことは、人的資源、リソースがあるということだが、いかに活用するか、フローをストックとしてどう確保するか、戦略を考える必要あるとの意見があった。
  • 今の進路指導はどの学校に行くのかに限られ、職業指導の面が弱い。職業指導をどう進路指導に組み込むかが課題であるとの意見があった。

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