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第6回研究会の結果要旨

出席者

高見 茂委員(京都大学大学院教育学研究科教授)【座長】
上子秋生委員(立命館大学政策科学部長)
新川達郎委員(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授) 
野田 崇 委員(関西学院大学法学部 准教授)
山田礼子委員(同志社大学社会学部教授)
(欠席) 鈴木晶子委員(京都大学大学院教育学研究科教授)
竹廣良司委員(同志社大学経済学部教授)
藤井 聡委員(京都大学大学院工学研究科教授)
[京都府] 黒瀬総務部長、本田企画監 等

 

結果要旨

報告

野田 崇  関西学院大学法学部 准教授
テーマ: 都市計画マスタープランの今後 

  • 行政サービスは人口が減少しても今後も必要であるが、生活を支える諸機能は集積するしかない。しかし、市町村間の広域調整をしないと市街地の中心は空洞化する。地域経済の活性化に府県がどんな役割が担えるかを検討することが必要。
  • マスタープラン(以下MPという)には、府県と市町村の2種類があり、現行制度の問題点として、次の3点がある。(1)府県と市町村のMPに空間的範囲の違いがない。(2)広域的事項と地域密着的事項について違いがなく役割分担が不明。(3)府県MPの市町村MPに対する誘導機能がなく、また、実態上はともかく、法規上の拘束力はあるが、担保力が弱い。
  • 府県が市町村をコントロールできるかの問題について、府県事務の地方自治法上の権限は、広域調整・連絡調整・補完。広域MPは広域的機能を担うと考えるが、広域調整機能に当たるとしても、広域MPの捉え方は2つある。MPは府県独自の発展構想・ビジョンであり、垂直調整であるという考え方と、あくまでも調整の指針であり、市町村間の水平調整であるという考え方。
  • 市町村のMPには、課題への近接性や充実した市民参加があり、住民参加の高い市町村MPは高い正統性(=legitimacy)を有しており、第一義的に市町村に委ねるべきであり、府県が市町村をコントロールすべき理由として、広域的見地から市町村のMPに相当する正統性を持っていることが大事である。
  • 住民参加の観点から言えば、府県は市町村に匹敵することが難しく、別の補完を考えることが必要となる。広域的な最善を定めることは市町村では無理であるといったことや府県は局地的な利害対立から離れているといった利点の証明が必要となる。
  • 府県のMPが市町村を拘束することの正統性は、広域的視点が必要であり、説得力あるものとして市町村が受け入れることが必要。そのためには市町村の参加が必須となる。 

 主な議論

  • MPにおいて府県と市町村の具体的な役割分担をどう考えるかという意見に対し、広域的機能をもつ施設の配置場所を府県が決定するといった役割分担が考えられるといった意見があった。
  • 広域的交通基盤の問題等、府県を超えた広域的計画と府県、市町村との計画をどう整合させればよいのかとの意見に対し、各市町村・府県の計画は府県を超えた広域的計画に即していないと意味がなく、都市計画が決まれば総合計画に取り入れていくべきとの意見があった。
  • 府県や市が設置した高等教育機関を統合する場合、設置主体の違うものの統合の正統性をどう考えるべきかとの意見に対し、教育行政は典型的な「給付行政」であり、必要性・効率性を重視すべきで、正統性の問題は議会の議決で足りるのではないかとの意見があった。
  • 都市計画区域とそれ以外の地域のバランスを考えることが必要だが、従来の枠組みでは動かしにくい現状をどう考えるかとの意見に対し、都市計画法、土地利用法、農振法等の土地利用規制の制度は一本化すべきであるとの意見があった。
  • 日本は“対等”が分権だと思っているが、例えばイギリスでは法規上、county(行政州)がdistrict(行政区)をコントロールする正統性を与えられているなど、先進国では対等でないということが当然の世界。国と府県のあり方についても、どの府県にも普遍的に一つ以上あるもの以外は持たしてはいけないというルールをつくるべき。府県にも市町村にも与えられる権限を絞り込んで整理することが正統性につながるのではないかと考えるがどうかとの意見があった。
  • 自治権への上からの介入、不足するところを上から補完するのも補完性の原理と言えるかとの意見に対し、広域的課題も上から介入するので、補完的な部分であり、広域的機能の配分も補完的なものであるとの意見があった。
  • 主体間調整で利用規制がかかる場合、合併をした大規模市町村の僻地の方がメリットがあるのか。小さい市町村のままの方がメリットがあるのかとの意見に対し、大規模市町村の方が効率性は高いが、外国では小規模市町村は組合をつくって課題に応じた規模で事務を処理するなど工夫しており、小規模だから必ずしもデメリットがあるということではないとの意見があった。
  • 市民参加のプロセスは正統性を担保するかとの意見に対し、正統性はあるが、民主主義と言えるかは疑問である。議会は平等な参加であるが、市民参加など決定への個別の参加は平等な参加ではなく、民主主義ではないとも考えられるとの意見があった。

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