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第7回研究会の結果要旨

出席者 

高見 茂委員(京都大学大学院教育学研究科教授)【座長】
上子秋生委員(立命館大学政策科学部長)
野田 崇 委員(関西学院大学法学部 准教授) 
(欠席)
鈴木晶子委員(京都大学大学院教育学研究科教授)
竹廣良司委員(同志社大学経済学部教授)
新川達郎委員(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授)
藤井 聡委員(京都大学大学院工学研究科教授) 
山田礼子委員(同志社大学社会学部教授)
[京都府]
 黒瀬総務部長、本田企画監 等

結果要旨

報告

高見 茂  京都大学大学院教育学研究科 教授
 テーマ:  「教育の時代」と教育政策の新展開

  • 日本における教育ガバナンスの方向性としては、機関委任事務の廃止、教育長承認制度の廃止等、国から地方への権限委譲、関与の縮減・廃止といういわゆる典型的な地方分権の流れ(垂直的な分権)と、自治体合併や、教育委員会の共同設置等に伴う教育委員会規模の拡大という流れ(水平的統合)がある。一方でスポーツや文化の分野における個別自治体内での教育委員会業務の首長部局への一部移管という流れもある。
  • 米国や英国では教育改革が進んでいる。米国の「Takeover」という改革には、State Takeover(州直轄管理)とMayoral Takeover(市長直轄管理)とがある。State Takeoverは、財政的に破綻した等で自前で運営できなくなった地方学区や学校を州が議会の承認を得て直轄で管理する制度。
  • Mayoral Takeoverは、教育委員会の有する権限を部分的、全面的に市長に委譲する制度。その背景には、都市独特の教育問題は地域環境、家庭環境の劣悪さに根源があり、教育分野単独では対処できず、教育以外の都市機能を掌握する市長による各種サービスの一体的運用が必要という議論の高まりがあった。実際、ニューヨークはジュリア-二市長の頃から教育に力を入れていたが、ブルームバーグ市長になってMayoral Takeoverを実施し、教育環境が極めて良くなった。
  • 英国は教育における市場原理の導入を推進。市場原理の導入には、(1)公共事業の一部を民間へ委託する。(2)公共事業に民間部門が参入する。という2パターンがある。(1)の例は、国が実施する第三者評価のための学校査察を民間のコンサルティング会社へ委託するというもの。(2)の例は英国の「アカデミー政策」で、公立学校の一形態であるが、民間のスポンサーによる地方自治体管理外の学校であり、授業カリキュラム、教員雇用条件などにおいて自由裁量が認められている。運営費は、中央政府から直接提供されている。
  • 教育に係る都市固有の問題は、教育委員会だけではなかなか解決することが難しいのが現実であり、子供の利益の視点から考えることが大切。 
     

主な議論

  • 義務教育は中央政府に統制されている方がよいと住民は思っているのではないかとの意見に対し、義務教育国庫負担金は府県1/2、国1/2の負担割合であるが、なぜ半分ずつかと言うと、国が丸抱えすると教育に国民が親しみを感じない。地方だけにさせると全体のことが考えられない。お互いに協力、興味関心を持つよう半分となった。国と地方の両方のバランスをどう考えていくかが大事であり、国の関与・責任が必要という意識があるとの意見があった。
  • 米国と英国を比較すると、米国のMayoral Takeoverは首長直結制度であり、英国のアカデミーは地方自治体内の競争、米国は都市への権力の集中であり、英国は地方分権であるとの意見に対し、米国では教育は連邦に権限がなく、州に権限があるが、州によってはこうした制度に批判がある。英国は競争原理で民間の力を活かし、中央政府の思いを実現させるもので、米国と英国では処方箋が違う。日本でも実験的にはアカデミー的取組が出てきているが、民間に管理権限を任せることは日本では思いつかないとの意見があった。
  • 教育の中立性とは何か。政治色が明確であったとしてもそれが民意であり、民意に反した教育ができるかとの意見に対し、教育の中立制は、政治的中立・宗教的中立・経済的中立の3つ。教育委員会の必要性は、安定・中立・継続的。現在の教育委員会制度においては、民意を反映することは難しいのではないかとの意見があった。
  • アカデミーの教育水準はどう保障されるのか。また、失敗のリスクは子供に行くのか。責任は誰が負うかとの意見に対し、失敗はスポンサーの責任であり、スポンサーは地方の教育委員会と同じ役割を果たしている。教育監査教育監査がチェックをし、改善勧告をしても変わらなければスポンサーの入れ替えや閉鎖となるとの意見があった。

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