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第8回研究会の結果要旨

出席者

高見 茂委員(京都大学大学院教育学研究科教授)【座長】
上子秋生委員(立命館大学政策科学部長) 
野田 崇 委員(関西学院大学法学部 准教授) 
竹廣良司委員(同志社大学経済学部教授)
新川達郎委員(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授)
山田礼子委員(同志社大学社会学部教授) 
(欠席)
鈴木晶子委員(京都大学大学院教育学研究科教授) 
藤井 聡委員(京都大学大学院工学研究科教授)
[京都府] 
本田企画監、倉石戦略企画課長 等

結果要旨

報告

山田 礼子 同志社大学社会学部 教授
テーマ : 『高等教育の新しい国際化の動向:国際観光都市京都への示唆』 

  • 高等教育の国際間の競争は思っている以上に進んでおり、留学生の多い国も米国から英国やオーストラリアに移っているが、日本は海外への留学生も海外からの留学生も減少している。
  • 財務省が「人材の育成・活用に関する研究会」を設置。若年層の基礎的能力不足、内向き志向とグローバルに対応可能な人材の不足について、産業界がかなり危機意識を持っていることが判明。
  • 日本の英語教育の特徴は底上げ重視だが、韓国は中~上級の学生をより伸ばそうという方向。日本では上級レベルの学生は増えない。韓国は英語教育に力を入れており、高校を卒業すると米国やオーストラリアの大学へ留学する学生も多く教育上の貿易赤字が40億ドルと巨額。それを改善するために松島(ソンド)に、グローバル・ユニバーシティ・キャンパス(SGUC)を造成しているところ。外国大学の分校が10校程度入居する計画で、総事業費762億円、完成時のキャンパス全体の学生数1万~1万2000人という規模。学生確保の面からの経営の課題等があるが、今後の動向を注視する必要がある。
  • 「キャンパス・アジア」のようにアジアの中で高等教育圏を作る取組が進むとともに、ヨーロッパではEUの大学間における質の保証と共通化を進めてきた。具体的には、比較可能な学位制度の構築、学士課程と大学院課程の2段階制の構築などである。
  • ヨーロッパやアジアにおいて「高等教育圏」の取組が進められる中、グローバルな大学間競争においてグローバルな人材育成が求められる中、大学が多く国際観光都市で文化的魅力もある京都を活かした戦略を活かした取組が必要と考えられる。
  • 高等教育圏の考え方が当たり前の時代において、個々の大学の1つ1つの小さな積み重ねでは克服出来ない段階にきていると考えている。 
     

主な議論

  • 「キャンパスアジア」構想の可能性はどうかとの意見に対し、デュアルディグリーで4校の大学院で質保証や学位そのものを互換でとれるよう進めており、質保証の枠組の構築は進んでいるとの意見があった。また、EUのように他国へ必ず留学することを指導しているところもあるが、日本あるいはアジアでの制度的な構築についてどう考えるかとの意見に対し、就活問題等があり、ショートビジットで学生を留学させていくというプログラムもあるので、そういったものを活用していくことが必要との意見があった。
  • 日本の英語教育は底上げをしている時代ではなく、教育や産業振興も公平に引き上げるのではなく、がんばっているところを助けるという発想の転換が必要ではないかとの意見に対し、そうした発想を持った人間が出てきてくれないと、その閉塞感を打ち破れないといった意見や、高等教育は、初等教育・中等教育とは違い、高等教育というのは伸ばすところを伸ばすことがなければ難しいといった意見があった。
  • 中東で海外の有名大学の分校の設立が進むのは留学よりも西洋文化の影響を受けずに海外の大学の教育が受けられるためと考えられるが、京都の学研都市あたりに外国の大学を招聘し日本の京都をしっかりと理解して、その地で外国の文化を身につけるという発想も考えられるのではないかという意見もあった。
  • 国際化については、入管政策と関連してくるため、日本社会の人種構成まで変えるという覚悟が伴っているのかという不安があり、留学生増加には人種構成が激変してもよいと決断する必要があるのかといった意見に対し、どの国もワーキングビザは簡単には出ず、制限できると思われるとの意見があった。
  • 学士力があることによって大学のあり方というのが今、変わってしまったような気がする。勉強以外の要素が重視され勉強は二の次で、日本の経済力や競争力を考えると、マイナス要素を持っている気がするという意見に対し、18歳以上で4年制大学に進学する割合が日本では56%というのは大学の大衆化の問題。高校の頃しっかりとした勉強をして卒業をしているかに起因するところもある。教養教育をEUでは中等教育でやっているが日本は高等教育でしかできないといった意見があった。
  • 大学は出口をどう考えているのか。ものすごく高度なものを求めているのか、企業人を輩出したいのかという意見に対し、大学を1つの高等教育として論じることが難しくなってきているという意見があった。
  • 日本では大学は4年制だと思っているが、米国等はどうかとの意見に対して、米国の州立大学は4年制。市立大学は2年制の短期大学で、職業教育と4年制大学への編入、生涯学習しかない。1960年代にカリフォルニア州が高等教育マスタープランを策定し4年制の州立大学に関して人材育成の方向性を定めたのが基本にある。米国では高等教育の権限は州にあるとの意見があった。

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