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第10回 新しい地方行政の未来研究会

第10回研究会の結果要旨

出席者

高見 茂委員(京都大学大学院教育学研究科教授)【座長】 
上子秋生委員(立命館大学政策科学部長)
竹廣良司委員(同志社大学経済学部教授)
新川達郎委員(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授) 

(欠席)  
鈴木晶子委員(京都大学大学院教育学研究科教授)
野田 崇委員(関西学院大学法学部 准教授)
藤井 聡委員(京都大学大学院工学研究科教授)
山田礼子委員(同志社大学社会学部教授)
[京都府]
 山田知事、本田企画監、 等

結果要旨

報告

上子秋生  立命館大学政策科学部長 
テーマ : 1 カンボジアにおける地方分権化努力
       2 「中間まとめ」に係る提案

1 カンボジアにおける地方分権化努力

  • カンボジアの地方行政組織は3層。上2層のプロヴィンス(以下Pと表記)とディストリク(以下Dと表記)は国の地方機関であり、その下にコミューンがある。
  • 2002年に内戦後初の地方選挙がコミューン(地方機関の3層目)で実施。コミューンが上手く行っているのは初歩の住民自治を実施しているため。5~11名の評議員を直接選挙で選出し、仕事は3つ。(1)住民登録 (2)住民間のもめごと調整 (3)中央政府の予算100万円程度の使途決定。道路・用水・小学校施設整備に充当。100万円の使途決定権限により評議員の権威は高まりつつある。
  • 第2段階として、分権及び地方への権限移譲を実施するため、地方政府組織法(2008年)を成立した。知事に権限を集めて知事の下に各省庁を置くことを目的としたが、知事の力を強めることは各省庁の地方政府のコントロール力を弱めることになり実現できなかった。PとDでもコミューン議員による間接選挙を実施。大きな前進はこれのみ。予算は国から来るものであり、地方税はない。
  • カンボジアの取組が教えるものは、住民に身近なシステムはわかりやすいということ。分権は受益と負担が明確でなくとも機能しうるということ。
  • 日本は府県が最大の総合行政機関であり、国も建前そうだが省庁縦割りであり、身動きがとれない。

主な議論

  • (1)首都プノンペンの行政制度はどうか。(2)政党と行政の関係はどうか。(3)公務員の研修はどうかとの意見に対し、(1)特別市的なものであり、国の直轄地みたいなもの。(2)一つの党が政治を動かしているが官僚組織は官僚組織として動いている。(3)研修を実施しており、毎年40人ほど卒業生を輩出との意見があった。
  • (1)国の課題の優先順位はどうか。(2)若者の都市への流入による農村部の疲弊について政府はどう考えているかとの意見に対し、(1)経済復興が第一。ただ、教育を大事にしないと国の将来はないと思っている。(2)今は経済優先。伸びるところを伸ばすとの考えとの意見があった。
  • 途上国への教育支援として、タイ等を受け皿とした間接援助が効果があるとの意見に対し、第三国経由は難しいとの意見があった。
  • コミューンが100万円を配る正統性はどこにあるかとの意見に対し、100万円は、住民がやりたいことを議会で多数決により決定配分している。議会が執行権をもっているイギリスに近い制度であり、住民に投票したらいいことがあると教えている段階。

2 「中間まとめ」について

(上子委員提案)

  • 各回の基調報告で提起された事柄について報告。これまで提起されたことの共通項として、次の点が考えられる。
    一般論・制度論としては、
    ○ 従来の価値を変える。成長を内的・幸福的なものとして捉えることも考えられる。
    ○ 府県の役割と正統性の検討。近接原理と言われるが広域調整が必要なものあり。府県の市町村における新たな補完の方法を検討することが必要
    京都の特性を踏まえたものとしては、
    ○ 大学集積地の京都としての問いかけをすることが必要
    ○ 伝統文化を体現するものとして京都の将来像を考える。「文化首都」の構築
    ○ 日本海国土軸の形成
  • 今後の論点としては次の3つが考えられる。
    ○ 分野ごとのニーズ・ビジョンを踏まえた上での府県の役割と正統性の検討
    ○ 府県がその役割を担うための形態・規模の検討
    ○ それを踏まえた京都の将来像の構築

(事務局提案)

  • 不足分野(環境・新しい公共・農業等)については1月以降、ゲストスピーカーとして招聘またはヒアリングにより対応
  • 今後、年度末に向けて、1、観光・教育など分野ごとのビジョンと課題等の整理、2、京都府の将来像の構築についての中間提言骨子をとりまとめるべく議論を進める。

主な議論等

  • 知事から、以下の視点を踏まえた上で、研究会としての提言をまとめてほしいとの発言があった。
    (1)府県も所与のものでないという前提で、既存の基礎的公共団体だけでは自治はできないという限界を迎えた時の自治の姿とは何か(国・広域的自治体・基礎的自治体間の連携等)。
    (2)地方行政の未来として「自立」を担うための自治体としての基礎づくりや、自治・自治体としての成長とは何か。
    (3)全国一律の分権ではなく、意欲と責任ある自治体がそれぞれ権限移譲を求め、自立を目指す「ハイパー地方自治」の時代に、京都の環境や歴史・文化的背景を踏まえた京都ならではの突破口とは何か。
    (4)制度論ありきの議論は必ず行き詰まるとの前提で、自治を阻害している地域間格差の不具合を是正していくための具体的議論を展開することが必要である。(例:環日本海ベルトの形成など)
  • 府県の役割は補完機能が大きい。新しい補完の方法を京都発で出すのは興味深い。研究会で検討していきたいとの意見や、新しい京都の関西での位置づけも検討してもいいのではないかといった意見や、経済分野も付加願いたいとの意見があり、今後検討していくこととなった。
  • これまでの分野ごとの議論を踏まえ、京都の状況や府民の生活実態を踏まえた具体的な現実から、「中間まとめ」案に向けた議論を進めることとなった。 

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