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第11回 新しい地方行政の未来研究会

第11回研究会の結果要旨

出席者

高見 茂委員(京都大学大学院教育学研究科教授)【座長】
鈴木晶子委員(京都大学大学院教育学研究科教授) 
野田 崇委員(関西学院大学法学部 准教授)
竹廣良司委員(同志社大学経済学部教授)
新川達郎委員(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授)
(欠席)
上子秋生委員(立命館大学政策科学部長)
藤井 聡委員(京都大学大学院工学研究科教授)
山田礼子委員(同志社大学社会学部教授) 
[京都府]
 本田企画監、倉石戦略企画課長  等

結果要旨

(1)ゲストスピーカー報告

中村伊知哉 慶應義塾大学メディアデザイン研究科教授 
テーマ :『未来の情報社会』 

  • 30年前、メディア発達の大きなきっかけが任天堂によるファミリーコンピュータの発明。これにより世界の家庭で「映像で遊ぶ」ことができるようになった。ITが世界をどう変えるかは技術ではなくユーザーの問題。技術をどのように使うかということ。
  • アメリカの5年前の調査によると、世界中のブログで使われている言語の37%は日本語(英語は36%)。現時点で調査すると増加していると思われる。これは今後、世界中で日本から発信される情報が伝えられていくことを意味する。
  • 2011年は、ITの世界にとっても歴史に残る大きな年。スマートフォン、電子書籍リーダー、デジタルサイネージ(電子看板)など、新型のデジタル・デバイスが一斉に普及した。テレビ、PC、ケータイに次ぐ「第4のメディア」が登場した年である。単にマルチスクリーンが登場しただけでなく、クラウドネットワークなど、ネットワーク網の刷新もあった。
  • コンテンツ産業が縮小傾向にある一方、それをネタにコミュニケーションを図るソーシャルサービスは増加傾向にある。その土地ならではのデジタルサイネージの活用、子ども一人につき1台の端末を持たせるデジタル教科書の活用がある。
  • 「クールジャパン」はアニメ等のコンテンツだけでなくコンテンツ、マッサージチェア、宅配サービス、ママチャリ、給食当番、何百年も続く老舗、イチロー、車、ファッション、化粧など、日本が丸ごと評価されているということ。こうした中、ものづくり(技術)・デザイン(文化)・ITの3つがつながっているところは強い。
  • 10年後、情報量の拡大に伴い、世界で1億人が映像で情報発信する「テレビ局」になる。自動翻訳の機能が発達し、世界中の人たちとコミュニケーションが取れるようになるだろう。
  •  IT利活用の課題は3つ。(1)あまり深刻ではないが、著作権関係等制度化の問題。(2)利用者の世代間格差。今回の震災でも分かったように、若い人の方が情報リテラシーが高い。また、日本では世界に比べて教育、医療、行政など、パブリックな分野でのITの利用が少ない。(3)日本に蔓延する自粛ムードである。数年前から、危ないことは止めておこうというムードになっている。無理矢理にでも元気を出して、何かやろうとすることが必要ではないか。

主な議論

  • 電子教科書の普及等について具体的にどう考えるか、次世代に向けてどう考えていけばよいか。基盤整備については個人で考えることか、公共で考えることかという意見に対し、情報端末を子供も持てることが必要だが、コスト負担の議論はまだ始まっていない。知恵の使いどころで教科書なら無償。ランドセルなら購入である。公的負担を伴いながらコストを下げることが必要。全員に配付しないと教育にならない。全員が携帯端末を持って勉強できるようにする。利用料の問題は大きく、家庭もつないで光の道をつくるとなると、全国でつないでいくことが必要。
  • 震災等の時にネットワークが維持できて、どんな状況でも活用できるシステムをどうつくっていくべきかという意見に対し、阪神大震災の時はケータイが活躍したが、それは利用者が少なかったため。東日本大震災ではケータイが役に立たずインターネットが活躍。今度大震災があった時、現在のインターネットは1億人総放送局の時代には活躍できない。次世代のインターネットは日本が防災の観点から地震に備えてどんなインターネット列島にするか考えるべきであり、デジタルとアナログ、バーチャルとリアルといった情報の重層構造をつくることが大事といった意見があった。
  • 次世代の情報リテラシーをどう高めていくかが課題であるが、悪いことも起こりうる。教育で大切なことは電子教科書よりも人間性をどうつくるかであり、子どもたちから携帯等を遠ざけるべきではないという意見に対し、情報リテラシーにおいて教育が大事であるが、機械の使い方よりも勝手にこんなことを載せたらあかん、こんなことを載せたらどう思うかといったことを教えるべきといった意見があった。
  • 単に技術・文化・ITを単にくっつけるだけでなく、京都ならどういうくっつけ方が効果的かという意見に対し、京都のものづくりはデザイン・司令塔があるわけでなく、各自が持っているものが縦・横・自在につながり、ものをつくっている。インターネット的である。西陣は世界に情報発信しようと思っていないが、世界に発信できればすごいと思う。アメリカはスピードの経済であり、400年続いている老舗は世界にも例がないとの意見があった。 

(2)「中間まとめ」に係る議論・検討

野田委員「広域自治体の担うべき機能」

  • あるべき姿は、国の行政に対して自治行政があるとすれば、現行の二層性をとった方がよいが、担う役割を区別しないと二重行政の批判となる。
  • 府県の正統性は住民参加を踏まえたというより、個別利害から離れている、専門性が高いことになるであろう。別の表現をすると、課題処理能力、課題に対する適切性が正統性の一つの根拠。
  • 課題は広域的な関心事と狭域的な関心事を切り分けること、国と自治体の観点からも国の関心事と自治体の関心事は明確に分けることはできない。事務の削減は二重行政批判回避のためにも必要。ただ、同じ公共施設があると無駄と言うが、利用されているなら無駄ではない。誰から見た無駄かを考えることが必要。
  • 府県の役割は各市町村のネットワークづくり、代表されにくい利益を考慮する各団体のネットワークづくりである。 
     

竹廣委員「産業・労働」

  • これまでの蓄積を集積化することで、産業の集積化効果というものがあり、人が集まることが大きく、コンテンツ産業を集積させるような土地として京都は適している。再集積の拠点という意味でもグローバルな観点で産業拠点になるような大きな問題を考えるのが良いのではないか。
  • 雇用についても、集積によりスキルを形成する仕組みがつくりやすい。産業スキルの形成は、関西の中で京都が役割を担う。京都は大学の集積地点でもあり、大学生の人口が非常に高い地域。次世代を担う若者を育成するという責任が特にあると考える。
  • 課題・問題点は良い物でも売れない、後継者不足。北部を中心に若年労働力が流出し地場産業の維持が困難なこと。観光についても府内の様々な良さが知られてなく、維持できない。新産業の育成の保持がビジョンが不明確であるためにできない。
  • 方向性は、京都のブランドというのも上手く利用しながら、上手く付加価値を高めるようなビジネススタイルを模索。中小企業の技術とかスキルの仲介サービスが上手くできる仕組みの構築。職業教育のプラットフォームに大学がなり、京都が関西の拠点になっていくことも必要。

 主な議論

  • 大学と産業や職業教育を結びつけ、産業のイノベーションのようなことを考えた時、府立大学や職業訓練校等といった府の資産の活用について考えることが必要との意見があった。
  • 人々の移動距離が長くなり、一都市の消費行動が他の地域にまで影響を及ぼす時代に、何でも権限を移譲すればいいというものではないという意見に対し、権限を移譲していいものと、そうでないもの議論して決めていく時代がきているとの意見があった。

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