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第13回 新しい地方行政の未来研究会

 第13回研究会の結果要旨

出席者

高見 茂委員(京都大学大学院教育学研究科教授)【座長】
上子秋生委員(立命館大学政策科学部長)
竹廣良司委員(同志社大学経済学部教授)
(欠席)
新川達郎委員(同志社大学大学院総合政策科学研究科教授)
野田 崇委員(関西学院大学法学部准教授)
藤井 聡委員(京都大学大学院工学研究科教授)
山田礼子委員(同志社大学社会学部教授)
[京都府]
 黒瀬総務部長、倉石戦略企画課長 等

(1)ヒアリング報告

一方井 誠治 京都大学特定教授
テーマ :環境経済の国際的現状と国の役割、自治体の役割 
※ 事務局よりヒアリング内容を報告

  • 環境がよくなれば経済がよくなる。経済がよくなれば環境がよくなる。こういった社会経済システムがビルトインされる仕組みが必要。例えば、経済が発展し雇用が増加すると同時に更に緑が増え、空気がよくなるといった目にみえる効果が重要である。そのためには、(1)炭素価格を政策的に市場に組み込む。(2)炭素税や排出量取引などの市場メカニズムを活用した政策の導入。(3)環境と経済をつなぐ政策統合が必要。政策統合とは、縦割り組織からの脱却であり、例えば、炭素税などで徴収した税収を雇用等に充当したり、エネルギー政策と気候変動政策を設計の段階から統合すること。
  • ドイツでは1998年に、「エコロジー税制改革」を実施。エネルギー使用を抑制する税制の導入とその税収を雇用等を拡大する政策に充当。具体的には、企業に雇用者の年金負担分の一部を補助し正規の払い込み料を減額し、企業は炭素税を徴収されてもコストの一定部分は相殺される仕組みを構築。徴収したものを雇用や福祉に使うといった発想。また、EUでは、2013年から排出量取引制度にかかる排出クレジットのオークション(有償割当)を本格実施する予定であり、巨額の税収が見込まれるが、半分は気候変動政策に半分は一般政策に充当予定。
  • EUでは、現在は国別に温室効果ガスの削減計画を策定しているが、2013年からは、EUで一本の排出キャップとなる予定である。つまり、国としてEUとしての全体の削減計画はあるが、地方自治体等は個別の計画は策定していない。日本では地方が個別に削減計画を策定しているが、国が全体の削減計画を策定しない現状では限界がある。東京都はキャップ付の排出量取引制度を導入しているが、他の地方自治体で厳しいキャップを導入すればそこでの工場立地等が減少しかねない。国レベルでキャップをかけることが重要。
  • ドイツのカッセル市等では、公共施設や公共交通に率先して再生可能エネルギーを使用。市民や旅行者向けの自転車の貸し出しや、旅行者等滞在者に対しトラムの乗り放題券を発行し、公共交通機関の利用を促進。住民への情報提供・普及も重要な役割であり、フライブルグでは、節電用電球の配布といった具体的な取組を実施。自治体の役割として、京都でもカッセル市のように京都市営の公共交通機関を再生可能エネルギーでまかなうといったことや、京都府や京都市が当事者として電力自由化を推進することがある。京都府が再生可能エネルギーを確保するといえば、アピールできるし、年次計画を策定し確保できれば原子力に頼らないアピールになる。
  • ドイツでは、再生可能エネルギーについて、農民等が銀行から融資を受けて風力発電を実施したり、太陽光パネルで発電し、電力会社に売電しているが、10年かからず着実に元がとれる仕組みになっている。国の補助金はなく、コストは一般の電気料金に上乗せしている。一方で、技術が上昇して再生可能エネルギーのコストが下がれば、電気の買取価格を下げて儲かりすぎない仕組みとすることにより制度が長続きする工夫をしている。再生可能エネルギーの普及にしても、政府が単に補助金を入れる仕組みをつくると制度は財政的にもたなくなる。スペインは政府の補助金を入れて再生可能エネルギーが一時急速に普及したが制度が続かなかった。
  • 環境と経済をつなぐ社会システムの構築に当たっては、府と市等立場の違いで規制が違ったりすることは避けるべき。 
     

塩見 直紀  半農半X研究所代表、半農半Xパブリッシング代表
テーマ :農業と北部地域振興の京都府の目指すべき姿
       
※ 事務局よりヒアリング内容を報告

  • 今後の地域振興のために必要だと考えることは、北部の情報発信の強化。そのためには、発信力をもつ人(ブロガー、SNSなど利用)を100人、1000人、10000人と育てること重要。そのためには、いい写真といいブログ(文章)が必要であり、資源の「見える化」をすすめることが重要。
  • 行政(基礎自治体・広域行政)に対する要望・期待としては、各集落(綾部市で約200集落)へ担当地域を決め、職員をはり付けて意見収集や(補助金等の)情報提供を行うこと。府に対しては、1市町村・1大学協定締結できるよう平等に府がコーディネートをすること。市町村の資源の見える化、リストアップ化は今後大きな意味を持つ。空き店舗や空き家の活用もバンク化。とがったコンセプトを打ち出す。府民の3割の人が「ことおこし」できるようになると発信力を持った地となり、都道府県間競争においても優位となる。
  • 綾部(京都府北部)地域については、プロデューサー数が課題。最低10人の昼間、動ける人が必要。ローカル社会企業家が必要であり、誘致したい。府内の人材交流が進めば、大学の多い京都市の大学生とコラボしたり、共創することができる。特に感性豊かな芸術系の学生の力、デザイン力の強化が必要。
  • 新たな観光の可能性としては、環境に関心のある若い世代に響く、「半農半X」を府公認のコンセプトにし、半農半Xツーリズムを開発する(中国、台湾、欧米など海外も視野に)。ブックツーリズム(本と観光と風景の融合、座右の書を集めたカフェなど)というニューツーリズムがあるが、京都府を「哲学のメッカ」と位置付け、「哲学ツーリズム」で打ち出すことも可能。
  • 自分で自分を売る。自分のまちを売っていく。まちや集落のブランディングを学生にさせてもおもしろい。

主な議論

  • 環境と経済はこれまでは両立が困難と言われてきたが、環境がよくなれば経済がよくなるという具体的な策への落とし込みはどのようなものか。また、新技術・新産業・ビジネスモデルの創出はどの程度可能かとの意見があった。
  • 環境経済について、こうすべきというのはわかるが、自由化のままでは短期的にはいいが、長期的には困難。炭素税の導入等により、環境と経済が両立してよくなるようなシステムをつくるべきとの意見があった。
  • 地域振興について大学が平等にと言われても、行政が全体をコーディネートする必要があるのかとの意見があった。

 (2)「中間まとめ」に係る主な議論

※事務局からWGでの検討内容を報告・「中間まとめ(案)」を説明

  • 純粋な制度論を取り上げるならば、なぜそれをという理由づけがしにくい。京都らしい突破口、京都から見た制度論とするのが、一番議論しやすく、納得されやすいと考える。その場合、次の視点が重要ではないか。(1)京都は京都議定書締結の地として環境に注力してきた。環境政策をするためにこういう制度が必要という提案ができれば京都らしいのではないか。(2)京都は大都市を持って、過疎地も持っているという京都の特徴からみた制度どんなものか。(3)大学の集積地である京都の強みから見た制度とはどんなものかとの意見があった。
  • 「京都の未来を考える懇話会」の第一次提案での示されたビジョン等と具体的な制度論をどうつなげるかが問題。京都に根付いた将来構想と制度論をどう関連づけていくかが重要であるとの意見があった。
  • 論点としては、京都的な特徴・事情に照らしてみて、どの制度が一番をふさわしいかを考えることだが、制度というつぶれない家をたてて、その上にどんなライフスタイルにするかを考えかということになるのではないか。最終のとりまとめの時は、京都のビジョンを踏まえて、それにふさわしい制度を考えるとして、中間まとめでは、一番ベーシックな部分をおさえることになるとの意見があった。
  • 制度から行くと、今まであるものからはみだすことは難しい。制度的アプローチ以外のアプローチを考えてはどうかとの意見があった。
  • 全国一律の制度でよいのか。京都とは何か。何を目指し、そこからどんな制度を選択するか。京都にとってよい制度とはどんなものがあるのかをまとめるのが主眼であり、まとめの最初に一定の示唆が必要。京都から見たメリット・デメリットが必要であるとの意見があった。

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