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株式会社AFURIKA DOGS(京都企業紹介)

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体験型ファッションで、みんなが笑って過ごせる世界に

(掲載日:令和2年11月2日、ものづくり振興課 中原)

株式会社AFURIKA DOGS(外部リンク)の中須代表取締役社長に、常設店オープンに際しお話をお伺いしました。

 

数字に表れない価値

--この度、常設店舗をオープンされるということで、おめでとうございます!!afurikadogs2

中須)ありがとうございます。

--創業は2018年とのことですが、そこに至るまでの経緯からお伺いしてもよろしいでしょうか。

中須)以前は京都信用金庫で4年ほど働いていて、そのときの出会いが今に繋がっています。

--人生を変える出会いですね。どのような方だったのですか。

中須)当時の顧客の一人として先輩から引き継いだ、嵐山の梅津地区の染色職人さんでした。ご存知かもしれませんが、着物の生産工程は分業化されていて、生地屋、染屋、蒸屋、仕上屋といったように、工程毎に専門の職人がいます。各工程に特化して技術を磨いているため、非常に洗練されていて、レベルが高い。その染色職人さんもその一人でした。

お世辞でも綺麗とは言えない工房でしたが、23メートルにも及ぶ一反の布をフリーハンドで染めるその技術は、他に類を見ず、誰もが知っている高級ブティックが、その職人にオーダーするために、ヨーロッパからはるばる訪れる程でした。

--なんと、世界から注目される技術をお持ちの方だったのですね。

中須)そうなんです。しかし、この事実は何度もお会いする中で、初めてわかったことでした。僕ら金融機関が目にする財務諸表からは読み取れない価値がそこにはありました。
--財務諸表上からは世界的な「人気職人」であるということは読み取れなかったということでしょうか。

中須)そうです。パリコレでも重宝される唯一無二の技術が、かなり安価で取引されていました。なぜ、光が当たらないのか、疑問というより悔しい気持ちが溢れてきました。
お金が全てではないですが、良い仕事には良い対価や評価がされるべきではないのかと。

--なるほど。

中須)「良いもの」や「素晴らしい技術」が財務指標には現れてこないことを知ったこの経験は、僕のバンカーとしての限界を感じさせるものでした。金融機関としてできることもあったとは思いますが、目の前の事務に追われ、100パーセントの力で一社一社の企業に向き合えない悔しさもありました。これでいいのかと自問自答し、職人世界をはじめ、数字にあらわれない価値にたいして世の中の目線を変えていくようなことをしたいと、起業を決意しました。

地域の中での豊かな関係性を事業に活かす

--そこから、現在の事業へと歩みを進められたのですね。

中須)はい。ですが、僕の事業を語る上で、もう一つ大きな経験があります。

--どういったものでしょう。

 

中須)学生時代、それも就活をすべき時期に、思い立ってアフリカに渡り、トーゴという国のラジオ局で働いた経験です。

--えっ!そもそも「トーゴ」って、どこにあるんですか?

中須)ガーナの東隣にあります。しかし西アフリカ地域の経済大国であるガーナとは異なり、まだまだ都市化が進んでいません。

--知り合いがいたのですか。

中須)全くいません(笑)。むしろ、日本人が僕以外に2人くらいしかいませんでした。そこでラジオ局のジャーナリストの仕事を募集していたのを見つけ、応募したのです。

--すごい環境に飛び込みましたね。

中須)ここが僕の強さかもしれませんが、だからこそ地域の中で豊かな関係性を築くということを大切にしました。同じように海外からトーゴへ来ている海外の方々は、国連で働いた経験を持つ方や、国境なき医師団の方もいて、語学が堪能な方が多くいましたが、あまり現地の方と交流を持っていませんでした。しかし僕は、語学は苦手でしたが、地域の方と積極的に関わったことで、噂話からご近所で起こった事件などの情報が自然に入ってくるようになり、このような話のネタが集まったことで、結果的に4つくらい番組を担当することができました。

--トーゴの人気ラジオDJですね!

中須)この経験から、「地域の中で関係性を築くこと」の延長線上にしか、良い仕事はないと確信しました。

体験をデザイン

--そろそろ今の事業内容が気になってきました(笑)

中須)前置きが長くなり申し訳ありません(笑)
金融機関を辞め、アフリカでの経験、京都での経験を踏まえ、それぞれで感じたことを繋ぎながら、自分だからこそ生み出せるものを考えました。

--ええ。

中須)まずは、京都の職人さんとの出会いから、染色業界のサプライチェーンになんとか変化を起こせないかと考えましたが、アパレル業界自体は飽和状態で、今からそこに参入するのは事業戦略としてはあまり得策ではないことはわかっていました。

--なるほど。

中須)その中で、よくよく考えてみると、自分自身が、「アパレルをしたい、服を売りたい」という訳ではないということに気がつきました。

--確かに、中須さんは、ご自身の技術を高めることより、素晴らしい技術や文化の価値がきちんと評価され、「消費」されることなく大切にされる世の中を望んでおられるように感じます。

中須)はい。そのためには、商品を「モノ」としてだけではなく「コト」ととしても捉え、体験を通して価値を感じてもらうこと、「体験をデザインする」ということこそが、自分がやりたいことだと思い至りました。

--体験とともに「モノ」を手にすることで、大切な思い出(「コト」)になり、その方の価値観を構成する一つの要素となる。それが集まり、文化の醸成へと繋がっていく、ということですね。

 

中須)そうなんです。そこで、まずは僕がこれまでの経験を活かし、京都の素晴らしい染織職人の技術と、ある「アフリカの文化」を融合した、“体験型のファッション”を世界に届ける事業に挑戦することとしました。

 

--アフリカの文化、気になります。

中須)僕がアフリカに渡ったときに、まちを歩いていて気付いたのは、「マルシェ」で多くのテキスタイル(布地)が売られているということでした。アフリカでは、いわゆる「ハレ」の日に、庶民であっても、お気に入りの布を買い、仕立屋へ持ち込んで、自分用の衣服を仕立ててもらう、オーダーメイドの文化が日常に根付いていたのです。

--素敵な文化ですね。

中須)僕もそう思います。そこで、カジュアルに自分1着のものを楽しむという「新しいカルチャーを持ってくる」ということにチャレンジしようと決め、京都の職人さんが染めた生地を、一人一人にあわせて仕立てる、京都の技術とアフリカの文化が融合したものづくりをはじめることにしました。

京都の技術とアフリカの文化の融合拠点がオープン

 

--起業から今回の常設店のオープンまでちょうど2年くらいでしょうか。afurikadogs1

中須)そうですね。今までもポップアップ店舗を出すことはありましたが、興味を持っていただいたものの、タイミングが合わず「体験」してもらえない、ということが度々あり、常設店を置くことを考えるようになりました。しかし、これというきっかけがないまま2年経っていたという状況です。

--ということは、今回のオープンにあたり、「きっかけ」が生まれた、と。

中須)そのとおり!なんと、奇跡的なことに、僕の事務所のすぐ近くに仕立てが出来るトーゴ出身の方が住んでたんです!

--そんな奇跡あるんですか!?

中須)びっくりですよね。今年、『Go to Togo 一着の服を旅してつくる』という書籍を出版したのですが、市内の書店で出版イベントに参加してくださった方の友人の旦那さんがそのトーゴの方だったのです。アフリカでは、伝統的な衣服からファッショナブルなフランス人から気に入られるデザインまで、幅広く仕立てられる、腕利きでとても人気の仕立職人さんだったようなのですが、青年海外協力隊の方とのご結婚を機に来日したものの、なかなか職がなく、運送業者で仕事をしているというお話を伺いました。

--せっかくの技術を活かすことができない状況になっていたのですね。

中須)そのトーゴの方に実際にお会いしてみると、日本でも仕立ての仕事にチャレンジしたいという気持ちを持っておられることがわかりました。そもそも金融機関で働いていたときもお客さんの仕事を後押しすることをやっていました。そのときの気持ちを思い出して、なんとか実現したいとアツくなりました。いまの自分たちの事業となら、トーゴの仕立職人さんとパートナーシップを組めるかもしれないと、奇跡的な出会いが、一本の線で繋がるのを感じました。

--運命の出会いが再び訪れた、と。

中須)はい。この出会いが7月で、8月にはその仕立職人さんと新商品をつくり、そこから9月に店舗用の物件を見つけ、10月に出店準備、そしてこのたび11月にオープン、とトントン拍子で話が進みました。

--半年前には考えておられなかった展開ですね。

中須)そのとおりです。さらに、この常設店の店長をしてくれるのは、現役大学生なのですが、この方との出会いも今年の7月です。コロナ禍により経済の先行きが不透明になった際に、多数の学生から就職相談を受けたのですが、その中の一人でした。
やりたいことは何か、またそれにどう向き合っていくかを一緒に話し考えている中で、仲間として一緒にチャレンジをする形になりました。

出会いから生まれる新たな一歩

--出会いが紡がれ、一本の糸になっていっている感じですね。
さらに半年後は、また新たな展開があるかもしれませんが、現時点で考えておられる、今後の構想などはあるのでしょうか。

中須)金額や数字に現れない価値をどう伝えるか、ということが自分の天命だと思っていますが、さらに進んで、目に見えないものの価値についても考えています。

--例えばどのようなものでしょうか。

中須)光を失った人でも「体験」をすることができる、「香り」に注目しています。

--確かに、香りは一度嗅ぐとその瞬間記憶とともに思い出しますよね。

中須)そうなんです。想いを馳せるスイッチになる。「アフリカ」の香りというのもよいかもしれないし、僕の店舗で体験してもらったアフリカの文化や京友禅の職人技術を香りとともに思い出してもらい、その人その人にきちんと残るようなものになるとよいと思っています。

--素晴らしいです。

中須)今後も、様々な方法で、「体験をデザイン」していきたいと思っています。
「コトづくり」をしていきたいということではありますが、「モノがあってのコト」「コトがあってのモノ」という側面もありますので、モノ(商品)とコト(体験)の良さの両方を目指していきたいと思っています。
服を売ることにこだわっているということでもありませんので、培ったノウハウを活かして、様々な業種でプロデュース展開などもしていければと思っています。

--いいですね。

中須)もうひとつ、「長期的」なビジネスモデルにも挑戦もしていきたいと思っています。従来、長い時間軸で、親から子へ、子から孫へと続いてく業種も多かったのですが、現在は、短期的なビジネスモデルが増えていると感じます。

--長期的なビジネスモデルのメリットは何でしょうか。

中須)「長期的」の方が長い人生を歩む上で、バランスがとりやすいのではないかと思っています。人って、頑張りたくても頑張れない期間があったりします。ずっと全速力で進んでいける訳ではありません。人生は長い距離、時間をかけて歩むもの、その長い時間軸の中で、営みがある。そういうものとして自分の事業の捉えたいと思っています。

--自分にあった、人生、暮らし方、仕事の位置づけを考える上でも、起業という選択はメリットがありますね。今後生まれてくる起業家へ、何かアドバイスはありますか。

中須)まずは「やってみる」ということが大切かなと思います。小さくアウトプットをしてみると、自分が大事にしている価値観がわかる。
次に「話してみる」ということが大事です。自分がやりたいこと、やろうとしてみることを、実際に言葉にしてみると、初めのうちは全然相手に伝わらないことに気づきます。その中でも、相手が「なるほど」と言ってくれたポイントがあればメモをする、「ここがわからない」と言われたことは改善する、「ここがよかった」と言われたことはもっと磨く、といったことを繰り返すことで、事業をより良いものに練り上げていくのではないかと思っています。
最後に、自分の中に諦めない理由をつくることです。起業前後は、多かれ少なかれ失敗するタイミングがあります。挫けます。でも、自分は諦めたくない理由をどんどんつくって、事業を進めたいという思いを強く持つことができました。

--勉強になります。

中須)今後成長していくために、ぼく自身も大切にしていきたいと思っているのが、「人と出会う」ということです。人との出会いが自分を前進させてくれたという経験から、自社としても、今年度は「ひと月に100人と出会う」ことを目標に掲げ、取り組んでいます。

--実際に、その出会いが今回の店舗オープンにも繋がっていますし、これから中須さんがどのような方と出会って、どのような展開をされるのか、私も楽しみにしています。

 

<常設店舗について>

11月8日(日曜日)オープン

営業日時:土曜・日曜の11時00分~18時00分、月曜の11時00分〜20時00分
※オープン記念として11月8日(日曜日)~11月15日(日曜日)は毎日営業

店舗での事業内容

  • シャツやアウター、スカート・ワンピースなどのオーダーメイドの仕立て(布は店舗でご用意していますが、持ち込むこともできます)
  • アパレル・アパレル小物などの既製品の販売

お問い合わせ

商工労働観光部ものづくり振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

monozukuri@pref.kyoto.lg.jp