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株式会社アクス(京都企業紹介)

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京都品質QOL向上支援新商品サービス提供企業群

循環資源と腐植土・フルボ酸パワーで手軽に野菜栽培―野菜栽培ボックス&「TODAY VEGE」

(掲載日:平成29年2月10日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

 平成28年度経営革新企業・株式会社アクス(宇治田原町)の山田代表取締役様にお話をおうかがいしました。

障がい者雇用30年― 社員も会社も成長できる好循環

―まず、会社の概要を教えてください。

山田) 従業員32名、うち障がい者22名で、リサイクル事業、アグリ事業、障がい者雇用に関する講演やコンサルティング等を行っています。リサイクル事業は具体的には、城南衛星管理組合の業務受託事業として、エコ・ポート長谷山において、缶・ビン・ペットボトルの選別、ペットボトルの圧縮の業務を行っています。トマト等の野菜を試験栽培し、障害者施設が運営しているショップに卸しています。野菜の栽培から梱包、配送の過程の補助的作業で障がい者雇用を推進しています。

写真:リサイクル事業写真:野菜栽培の様子

―障がいをお持ちの方を多く雇用されてらっしゃいます。その経緯はどういったことだったのですか?

山田) 私は2010年に事業承継した2代目社長で、創業は1986年なのです。創業当初は非鉄金属卸売業で主にスクラップの選別事業を行っていましたが、人出不足でしたので、養護学校を卒業した方2名に来ていただいたのがきっかけで、1年後には障がい者の雇用が10名に増えていました。

―こうした御社のお取り組みに関心の高い企業様もたくさんいらっしゃいます。実際、障がいをお持ちの方を雇用されて、いかがですか?

山田) 楽ですよ。みんなとてもまじめですから。本当にありがたいです。それに、会社にとって様々な良い効果があります。まず、指導者、管理者がよく育ちます。職場環境、安全管理、衛生面などへの配慮が特に必要ですから。そしてそれは、会社全体にとっても同じことが言えまして、障がい者の方が働きやすい環境を整えるということは、健常者にとっても働きやすい環境であるということです。更には、先ほど言いましたように、みんなまじめに頑張ってくれますから、健常者もまじめに頑張るわけです。社内全体に好影響が広がるという好循環が生まれるわけです。

循環資源を用いて「軽い」野菜栽培ボックスキット

―素晴らしいですね。さて、新規事業にも取り組んでらっしゃいますね。

山田) 「野菜栽培ボックスキット」ですね。従来の障がい者施設では、箱折り、シール貼りなどの室内における単純作業が障がい者の主な作業でしたが、近年は農作業を採り入れる施設が増加しています。農業は障がいの特性に応じた作業が可能であること、一般就労に向けた体力・精神面での訓練が可能であること、地域とのつながりも生まれやすいといったメリットがあり、障がい者の訓練・雇用の場として注目を集めているのです。当社でも精神障がいを持っている社員がアグリ事業で働いていますが、土いじりで精神安定につながっていると思います。

―なるほど。

山田) そこで、農地を確保することも、トラクターや草刈機等の農機具を用いることも不要で、障がい者本人が自ら栽培作業ができる、お手軽な野菜ボックスキットを提供しようというものです。もちろん水耕栽培の野菜工場のような大掛かりな設備も不要で、ローコストで導入できますし、コンクリートや整地されたところに置いておくことができるので、例えば車いすの方でも栽培できるわけです。

―他の栽培キット等と比べての優位性はどういったところでしょうか?

山田) ボックス当たりの値段については、だいたい他も同じような価格帯のものです。しかし、当社製品は土を使っていませんので、まず1つ目の特長として「軽い」ということが挙げられます。軽いので作業負担が軽減されます。

―「土」ではない?!

山田) はい。木材チップや競馬場を走るサラブレットの馬ふんなど、農林業の廃棄物から作った堆肥をブレンドして用いています。

腐植土パワーで「臭いや虫の発生を抑えた堆肥」

―循環型社会形成という観点からも素晴らしいことですが、臭いや虫が発生したりしませんか?

山田) 大丈夫です。それが2つ目の特長ですが、廃棄物に、脱臭効果、病原菌の抑制効果等がある腐植土を加えており、臭いもほとんどなく、虫の大量発生もありません。

―「腐植土」?!

山田) 土壌微生物の活動により動植物遺体が分解・変質した物質の総称です。土の中の有機物(炭素原子が基本構造を作る化合物)が微生物により分解されると、無機物だけになってしまうわけではなく、成分等が再合成され別の構造を持った有機物が生成されるということが起こり、その土壌に特有の有機物が作られることがあり、これを腐植(土)と呼ぶのです。国内では諫早湾等が有名ですが、基本的に土の中でどこにどれだけの量があるか、掘削してみないと分からないものですから、国産腐植土は多くありません。そんな中、当社は国産メーカー、エンザイム社と提携し、落葉樹の落ち葉と動物由来の分解・生合成物が8000年間地中に埋蔵されて腐植土になった良質の腐植土を用いています。

フルボ酸を低価格で提供―「野菜本来の味」を取り戻す

―なるほど。

山田) 更に3つ目として、腐植土から抽出したフルボ酸抽出液をスプレーすることにより、「野菜嫌いの人でも食べられる」と好評をいただくほど、育成する野菜は本来の味を取り戻します。有機栽培特有の日持ちの良さなど高い評価を得ているところです。この水菜、一口食べてみてください。

―あっ、何も調味料をつけてないですが、そのままでむちゃくちゃ美味しいですね!

山田) 焼肉でよく出てくるサンチュなんかも、食べた方から「肉いらないね」と冗談を言われますよ(笑)

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―ははは(笑) ところで、フルボ酸とは何ですか?

山田) 腐植土を構成する腐食物質の1つです。消臭・抗菌機能のほか、抗酸化機能もあると認められており、ミネラル類、アミノ酸、有機酸、ビタミン、生理活性物質を多く含み美容面でもよいということで、最近は化粧品やシャンプーの成分等にも使われるなど話題にもなっており、抽出技術は存在しますが、まだまだ生産システムが確立されていないものです。そうした中、当社は腐植土からの抽出も内製化しており、通常高額なフルボ酸抽出液を、相当低価格で提供できる体制を整えています。堆肥と混ぜている腐植土そのものもフルボ酸のパワーがあるわけですが、抽出液スプレーを用いて、野菜そのものにも吹きかけ、生育を助けるわけです。

―素晴らしい。

山田) このように、当社では腐植土と廃棄物から、堆肥・植物活性液、スプレーなど一貫生産ができるとともに、自社農園も持っておりますから、商品提供だけでなくシステムとして提供し、フォローもできるわけです。

おしゃれな「TODAY VEGE」

―販路はいかがでしょうか?

山田) 今説明してきました野菜栽培ボックスキットは、障がい者福祉施設や障がい者雇用を推進している企業向けに展開していきたいと考えています。そして、もう1つは「TODAY VEGE」という商品ラインナップで、一般家庭向けに、簡単に京野菜等が育てられるキットとして展開していこうと思っています。セレクトショップ、雑貨店、カタログギフト等で扱っていただきたいですね。

―とてもおしゃれですね!

山田) 信楽焼ポッドとフェルトポッドの2種類があります。信楽焼ポッドは、「器しかやらない」という、こだわりの窯元に無理を頼んで協力をしてもらいました。信楽は障害者が地域で生活したり、働いたりすることが普通のことであることを目指し先駆的な取り組みを行ってきた地域だったというのもあったと思います。

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―そうなのですね。

山田) このセットさえあれば、肥料や病気に気を遣うことも少なく、家の中で簡単に旬の京野菜も楽しめます。キッチンに置いておけば、「あっ、育ってる!今日の料理に使っちゃおう!」なんてこともありましょう。使い終わった腐植土は、そのまま燃えるごみとして捨てていただけます。こういうシーンにちなんでの「TODAY VEGE」というネーミングですが、「今日の野菜」「京野菜」とも掛けてあります(笑)。

―なるほど!さて、最後に今後の展望はいかがでしょう。

山田) 当社の社名アクス(AKS)は、思いやりの愛のA、協調のK、進歩のSをなぞらえています。これからも障がい者の働く場を提供し、社会参加、社会貢献できるよう事業を展開してまいります。

 

大変すばらしい同社のお取り組み。ますますの発展に期待ですね!

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