ホーム > 産業・しごと > 商工業 > 京都府の産業支援について > 株式会社糖鎖工学研究所(京都企業紹介)

ここから本文です。

株式会社糖鎖工学研究所(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

京都企業紹介(業種別) 京都企業紹介(五十音順) QoLLife2 京都府の産業支援情報

新たな創薬へ― 世界唯一の「糖鎖工学」

(掲載日:平成30年7月11日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

株式会社糖鎖工学研究所(京都市)の朝井代表取締役社長にお話をおうかがいしました。

血液型もインフルエンザウイルスも― 第三の生命鎖「糖鎖」

-お恥ずかしいのですが「糖鎖」とは何ですか?

朝井) 糖鎖とは、文字通り、お砂糖が鎖状につながった化合物の総称でして、私たちの体を構成しているほとんどの細胞に存在しています。また、体の中で機能している半分以上のタンパク質に結合していて、細胞やタンパク質は、その表面に付いている糖鎖を目印にして、結合したり情報交換したりしている場合も多くあります。例えば、ABO式のヒトの血液型も糖鎖によって決っています。

-そうなのですか?赤血球の種類で決まるのではないのですか?

朝井) その通りです。赤血球の表面に付いた糖鎖の種類で決まるのです。O型の糖鎖(H抗原糖鎖)に、N-アセチルガラクトサミンが結合しているのがA型、ガラクトースが結合しているのがB型です。O型の血液が、どの血液型にも輸血可能な理由は、基本となる糖鎖しかついていないためです。

-なるほど、そうだったのですね!

朝井) 糖鎖をうまく使うと、疾患を治す薬も作れます。例えば、インフルエンザウイルスは、細胞の表面糖鎖にあるシアル酸という特殊な糖と結合して、細胞の中に進入します。やがて細胞内で増殖したウイルスが細胞の外へと飛び出して、別の細胞に進入して増殖を繰り返します。その結果、インフルエンザの症状が悪化します。しかし、このウイルスが増殖してその細胞から出ていく際にシアル酸が出ていくのを邪魔してしまいます。そこでインフルエンザウイルスは、シアル酸を分解する酵素を使って細胞から脱出します。抗インフルエンザ薬のタミフルやリレンザは、ウイルスのシアル酸を切り離す酵素を阻害する働きがあり、ウイルスが細胞の外に出ていくのを防ぐ薬です。

-そうだったのですか!

朝井) 糖鎖は、細胞分化、老化、免疫応答などの生命現象や、がんの転移、ウイルス感染、炎症などの疾患にも関係していることが少しずつ明らかになってきました。生命活動に重要な役割を果たすものでして、遺伝情報を貯蔵、伝達する「核酸」、その遺伝情報に基づいて合成され、細胞の構造・機能を決定する働きをもつ「タンパク質」に続き、「糖鎖」は「第三の生命鎖」と言われています。しかし、その機能の多くはまだ未解明なのです。

糖鎖の課題- 思い通りの位置に付与できない、大量生産できない、とても高い

-それはどうしてですか?

朝井) 糖鎖の構造があまりにも多様で複雑なために、極めて扱いにくいからです。タンパク質は今の遺伝子工学を使えば、ほぼ100%思い通りに製造できます。ところが、糖鎖については、200種類の酵素をはじめとしていろいろな物質が関わってくるため、試験管内でシンプルに作ることができません。バイオ医薬品を構成するタンパク質は人工的に合成できても、薬効を出すために付ける糖鎖を思い通りの位置に付加するのは極めて難しいのです。

-そうなのですね。

朝井) こうしたことですから、当然、高純度の糖鎖は、通常は大量生産できないのです。それ故、お値段も高いですよ。実験用に市販されている試薬で1mg5000ドルぐらいです。つまり、1kg50億円です。

世界で唯一、糖鎖の大量生産、思い通りの位置への付与技術を実現

-えーーー!!!(笑)

朝井) しかし、当社では、高純度の糖鎖の大量生産に世界で初めて成功しました。 

-すごいじゃないですか!ということは、お値段も?!

朝井) 公表できませんが(笑)、従来と比べれば驚くほど安価ですよ。そうでないと産業利用できませんから。

-おおー! 

朝井) それに、糖鎖をタンパク質のどこにでも組み込める技術も開発済みです。糖鎖を製造し、タンパク質に自由に付加する技術を持っていて、商業実用化できるのは、今のところ当社だけです。

-素晴らしいですね!しかし、誰もできなかった大量生産や位置制御はどうやって?

朝井) バイオ医薬品はごくわずかな量で効力を発揮しますから、大量生産と言いましても、糖鎖の必要量はせいぜいキロ単位なのですが、年間数10kgぐらいを作れる体制を整えました。糖でありますから、水にすごく溶けます。溶け過ぎるくらいなので扱いが難しいのですが、そこに油を結合させると扱いやすくなるのです。この原理はみんな知っていましたが、誰も実行する人がいなかった。それを当社が実行したということです。ハイテクではなく、ローテクです。しかし、世界中で特許も得て、純度99%以上の糖鎖ライブラリーを用意しています。

-そうなのですね。

朝井) また、糖鎖の付加技術についても、純然たる有機合成、つまり、低分子医薬品の手法と同じです。化学反応の連続であり、自動合成機でできます。実際の製造に関しては、ファブレスで外注生産しています。

-なるほど。

朝井) こうしたことにより、例えば、細胞発現でしか合成できなかった糖タンパク質を、化学合成により糖鎖構造が均一な糖タンパク質として合成することが可能となりました。糖鎖構造が均一であることをアドバンテージとして、研究材料から医薬品として幅広い用途展開を見込んでおります。また、動物細胞では産生できない様な糖タンパクを試験管で自由自在に作ることもできるので、次世代型バイオ医薬品の創生も可能になっています。

-用途展開が進むと例えばどういったことが可能になるのでしょうか?

朝井) そうですね。例えば成長ホルモンの分泌抑制作用を持つホルモンにヒト型糖鎖を結合することで、腫瘍から分泌される過剰なホルモンの働きを抑え、ホルモンによる異常な症状を改善し、腫瘍を小さくする効果が期待されています。あるいは、ペプチドは、半減期が短く体内ですぐに分解されたり、水に溶けにくい物が多く、医薬品としての開発が難しい側面があります。水に溶けないと注射薬として利用できないという課題がありますが、ここに糖鎖を付加すると、ペプチドの活性を長く保つと同時にペプチドを水溶性に変えられ、しかも、試行錯誤せずに思い通りの場所に制御できるようになるため、新薬の開発に期待ができるようになります。

海外からも人材が集積- 糖鎖の可能性を追求う

-御社のビジネスモデルはどんな感じですか?

朝井) まず、研究材料や医薬品への展開に係る受託合成、受託研究をお受けしています。そして、その研究が成就した際には、その原薬(薬そのもの)が必要になります。大量の糖鎖とその糖鎖を組み込む技術は。当社の技術ですので、糖鎖や原薬の製造販売へとつなげていくというモデルです。

-もともとの経過はどういったものですか?

朝井) 前職は大塚化学なのですが、2009年に同社内に設立された糖鎖工学研究所の所長となりました。そして、2012年に研究所が分社化された際に社長となり、翌2013年にマネジメント・バイアウト(自社買収)により大塚グループから独立しました。

-糖鎖とのご縁は?

朝井) 長く研究開発や営業職をしていたのですが、社内で新規事業の立ち上げを命じられ、いろいろとネタを探し、いくつか提案した中で、経営陣で検討された結果、2002年に、「糖鎖」にゴーサインが出たというわけです。当時、横浜市立大学にいた梶原康宏先生(現・大阪大学大学院理学研究科・有機生物化学研究室教授)の開発された技術を導入し、その後もご指導も仰ぎながら進めてまいりました。

-今後の展開はいかがでしょうか?

朝井) 現在、様々な研究の依頼が飛び込んできています。中には特定のがんを対象に独自に研究を進めている素材で、臨床研究まで進んでいるテーマもあり、更に先の開発へ進める予定です。また、従業員は20名超で、中には糖鎖の魅力に魅かれて海外から来た研究者もいます。創薬をはじめヘルスケア産業全般、その他さまざまな分野への応用も視野に入れ、糖鎖の可能性を追求してまいります。

 

今後の展開がますます楽しみです!

お問い合わせ

商工労働観光部ものづくり振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

monozukuri@pref.kyoto.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?