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株式会社Jiksak Bioengineering(京都企業紹介)

『ALS創薬に挑む!』神経難病の解決にオルガノイドで貢献するベンチャーの挑戦

ALS ― 筋萎縮性側索硬化症は、神経難病のひとつ。手足や舌の筋肉、呼吸に必要な筋肉などが痩せて力がなくなっていく病気である。著名人も参加した「アイスバケツチャレンジ」がSNSで話題となったが、この難病は、原因が未だ解明されておらず、完治する治療法は現在存在しない。
この難病を、iPS細胞を使った独自の細胞培養法「Nerve organoid」で解決を目指すベンチャー企業「Jiksak Bioengineering」代表の川田社長にお話を伺った。

ALSの怖さ。少しでも早く産業応用を

まずは、起業のきっかけ、ALSを研究されることとなった経緯を教えてください。

川田)元々は、治療や再生医療というよりは、細胞を用いたマイクロ流体デバイスの研究をしていました。在学中に米国へ留学したことがひとつの契機になりました。そこで目の当たりにしたのは、アメリカでは研究者がどんどんベンチャー企業を立ち上げてチャレンジしている。数も日本とは比べ物にならない。これでは日本は本当に危険というか、どんどん世界に置いていかれるなと思い、いち早く自身の研究を産業展開したいと思ったことが起業のきっかけです。

留学中に運動神経の研究に取り組んだこともあり、ALSの病気のことを知る機会がありました。ALSは、本当に怖ろしい病気です。患者さんや研究者の本をきっかけに、ALSが想像以上に辛くおそろしい病気だと知りました。「ALSという難病の解決に貢献したい」と考えるようになり、日本に戻ってからはALS研究に没頭しました。

川田社長にとってALS(の怖さ)とはどのようなものでしょうか。

川田)「閉じ込められる」という表現があっているかどうかはわかりませんが、私はそう感じました。ALSは、手足や舌などの筋肉の力がだんだんなくなっていきます。しかし、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、運動をつかさどる神経(運動ニューロン)だけが障害をうけます。その一方で、体の感覚、視力や聴力などは保たれることが普通です。つまり、「運動神経は使えなくなるが、感覚や感情は今まで通り」です。意識があるのにそれを誰かに伝えたり、表情やジェスチャーを含めて表現できない、本当に怖い難病です。研究が進み、ALSの原因については様々な仮説の論文が出てきましたが、明確な原因がわかっておらず、根治療法もありません。

ベンチャーの創業には資金を含めて様々な課題・ハードルがあると聞きますが、川田社長はどのようにそれを乗り越えたのでしょうか。

川田)ポスドク(博士後研究員)時代には、本業の研究の傍らで、産業への展開を目指して動いていました。たくさんの方とお会いする中で、出資をいただけるVCがようやく見つかった。こうしたパートナー探しは、ベンチャー創業にとって、とても重要です。そして、NEDOのSUI採択案件(研究開発型ベンチャー支援事業)にも選ばれたことで、ベンチャー企業の創業に踏み切ったのが、2017年の2月です。

 

人体構造を再現する。従来の細胞培養ではない革新的な手法

御社のコア技術である「Nerve organoid」とは、どのような技術でしょうか。

川田)人工的に、人体と同じような神経をつくることができたら、ALSの治療法や薬の探索が進むだろうなと考え、チャレンジしたのがNerve organoidです。患者さんの体の中の病態再現、ALSの運動神経そのものをつくるというものです。

  
【Nerve organoidの写真(Jiksak Bioengineering HPより)】

もう少し詳しく教えてください。近年は様々なバイオベンチャーが立ち上がり、心筋や神経細胞を作製する企業も多くなってきました。他社との差別化要素はどのあたりにあるのでしょうか。

川田)神経の作製方法です。我々の技術では、神経の細胞体と軸索(神経繊維)をきちんと分けて観察することができます。そもそも、人間の運動神経は、軸索が束になってまとまって延びています。しかし、従来の細胞培養では、細胞体と軸索が混ざっており、体内をきちんと再現できていないので、細胞体や軸索を分けてタンパク質やRNAを詳細に測定できません。

元々研究していたマイクロ流体デバイスの仕組みを活用し、iPS細胞から作製したこの神経組織とかけあわせて、細胞体と軸索が分かれた“模擬神経デバイス”を自社独自の技術として確立したことが強みだと思います。

  
【軸索解析に特化した神経組織(Jiksak Bioengineering HPより)】

 

いわゆる 「organ on a chip(人工臓器チップ)」の考え方ですね。

川田)私自身はマイクロデバイスの研究者なので、「人工臓器チップ」には注目しています。これは、チップの中に心筋や神経、肝臓など様々な細胞組織を詰めて流路で繋げる技術で、チップを連結していわば模擬人体をつくるという考えです。日本でも、世界でも、人工臓器チップを用いた研究が既に少なからず進んでいますし、今後は創薬や化合物のテストなどで活用されていくと思います。


【Nerve Organoid chip】

 

この技術を用いることで、新たにできるようになった研究などはあるのでしょうか。

川田)様々なことができるようになりました。先ほど、従来の細胞培養は「何もかもが混在している」という話をしましたが、細胞体と軸索を分けて観察できることで、軸索だけを取り出してその変化を分析したり、軸索と他の細胞組織をミックスさせることで、より人体に近い分析ができると思います。例えば、現在社内では軸索の先に骨格筋細胞を置いて、神経筋接合部を作製するプロジェクトを行なっています。

また、三次元的な分析も可能になります。例えば、軸索を切ってみて、その断面部分や、軸索にストレスをかけた時の影響を数値的に分析することもできると思います。

 

そういう意味では、改めてiPS細胞の偉大さを実感します。

川田)脳や脊髄にある神経は本来、患者さんから生きたまま抽出して研究に使うことことはできません。iPS細胞を活用することで、患者さんの遺伝子を持った細胞を使って体内と似たような細胞組織を「作ることができる」というところがiPS技術のすごさです。

改めて整理しますが、人体に近い環境を作製できることで、明確になるメリットは2つあります。1つは、例えば薬の薬効試験の場合、その成功度があがること。もうひとつは基礎研究の段階から、人体に近い環境で実験ができることです。

従来でしたら、研究は、細胞での探索を経て、動物実験、人での臨床試験という順に進んでいきます。ただ、人間と動物、人間と細胞は全然環境も違い、結果も違ってくる場合もあるため、動物や細胞でOKだったとしても、最終的に人間への試験で失敗し、何百億円、何千億円の開発費が無駄になるケースもあります。我々の技術は、このプロセス自体を変革できる可能性があると思っています。

 

若き研究者がどんどんチャレンジする時代へ。

今後の展望について教えてください。

川田)Nerve organoidの技術を用いて開発したチップを製薬企業や大学へ販売し、ビジネス面での収益を確保しつつ、ALSの原因探索研究を進めていきたいと思っています。ベンチャー企業が事業を進める上で、サスティナブルな事業展開は極めて重要だと思っています。

また、私自身がそうでしたが、もっと若手の研究者には、研究室の外に出て活躍してもらいたいと思っています。4月まで社員は私一人でしたが、最近若手研究者数名がチームに加わり、研究もさらに加速していきます。まだまだ若手の研究者の採用を積極的に行っておりますので、興味がある方はぜひ連絡をお願いします!

 

お問い合わせ

商工労働観光部ものづくり振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

monozukuri@pref.kyoto.lg.jp

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