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株式会社KOYO熱錬(京都企業紹介)

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少量から量産まで対応できるオンリーワン熱処理企業

(掲載日:平成28年7月7日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

 株式会社 KOYO熱錬(京都市南区)の杉本専務樣にお話をおうかがいしました。

少量多品種・量産品双方の熱処理に対応できるオンリーワン企業

まず、事業の概要を教えてください。

杉本) 自動車、航空機、建機、産業機械向けに、浸炭、窒化、真空熱処理などの熱処理加工を行っています。熱処理とは、鋼そのものを強くするために加熱冷却や、炭素・窒素などを付加したりすることで、性質を変化させ、素材としての特性を高めるものです。例えば、自動車のエンジン部品やCVT(無段変速機)部品などの耐摩耗性向上のために真空浸炭処理を施したり、ばねなどの疲労強度の改善のために窒化処理を施したりします。液体窒素を利用して深冷温(マイナス70℃以下)で冷却する処理設備も揃え、焼入れ後の強度向上や経年変化を抑えるサブゼロ処理なども行っています。

  

―御社の特長はいかがですか?

杉本) まず、当社のように、少量多品種と量産品の両方に対応しているところは、全国にも見当たりません。また、加工処理だけでなく、加工品の硬さや金属組織の客観的評価など製品の品質検査もワンストップでできるというのも顧客企業樣にはメリットです。

 

内陸の京都で熱処理専業―「挑戦」を続ける「100年企業」

―少量多品種と量産品の両方に対応しているところがないというのはどういうことですか?御社はなぜできるのですか?

杉本) 実は、当社の創業者は山口県の刀鍛冶屋で、「鳥羽伏見の戦」の際に上洛、定住し、明治になって武士の世が終わったため、鉄工所として創業したもので、現在141周年を迎えた老舗企業なのです。大正、昭和にかけては伸銅機等の製造を担いながら熱処理や鋳造の技術を培いました。第2次大戦後は得意分野に特化しようということで、当時の京都では珍しい熱処理加工を専業としました。しかし、本来、鋼を相手にする仕事ですから、内陸の京都には仕事が少なかったわけです。そこで、京都に多い電子部品を中心に仕事をしていく中で、少量多品種対応のノウハウを身につけました。今はもうありませんが、テレビのブラウン管等の熱処理も行っていました。やがて、京都にある自動車メーカー樣から、今度は量産品の受注をいただくようになり、安全を重視する業界とのお付き合いで「標準化」のノウハウを身につけました。自動車メーカー向けに量産対応ですとか、産業機械向けの少量対応ですとかに特化されているところはありますが、当社のように自動車、航空機、建機、産業機械など幅広く対応しているところは見当たりません。

―しかし、人材育成が大変ではないですか?

杉本) はい。大手企業様と比べて人材の「確保」の面は簡単ではありません。一方、「育成」の面で重視しているのは、難しいことに挑戦して、乗り越えることで達成感を感じていくということです。まず1つは、従業員には若いうちから「試作案件」に積極的に関わってもらい、自分で考えて試行錯誤する機会を多く作っています。OBの熟練技能者に今でも指導のため来てもらって「勘どころ」を伝承してもらっていますし、一方で最新の管理機器を導入し、受注から納品までを「見える化」するなどデータベース化も進めています。こうした結果、熱処理技能士2級は全員が保有し、4名は特級を保有しています。

世界的航空機メーカーの認定工場

―なるほど。

杉本) 2つ目が、「航空機」への挑戦です。1990年当時、島津製作所樣が従来の「防衛品」に加えて「民航品」も受けられることとなり、外注を求められました。「標準化」ノウハウを身につけてきたことが生きていると思いますが、島津製作所様のサポートを頂きながら、1993年に米国エンジンメーカーの認定を頂き、航空機事業を開始することができました。設備を整備するとともに、有名企業様と直接取引するなど、従業員が家族に誇れる場面も多くなったと思います。この業界では「9.11」直後、受注が大きく落ち込みました。その上、事業を継続するには当時日本にはなかった世界で唯一の国際認証「Nadcap」の取得をせねばならなくなりました。中小企業にとっては高いハードルでしたが、オンリーワン企業を目指そうと思ったことが原動力で「Nadcap」を取得し、更に希少な、米国やカナダの世界的航空機メーカーの認定工場となることができました。今では、彼らが直接監査に来られます。

 
写真:世界的航空機メーカーの認定証等

顧客が驚く工場内― その原点は「茶道」にあり!

―工場内が大変整理整頓が行き届いてらっしゃって、きれいですね。

杉本) 決められた場所以外に不要なものも一切置かず、ここまできれいにしているところは見たことがないと、よくお客様に驚かれます。「標準化」し、皆がルールを守ってくれているおかげです。

―どうして御社にはここまでできるのですか?

杉本) 現社長、その先代は茶道をしておりまして、その影響でしょうか。畳が汚れておれば着物が汚れる、作法には無駄な動きがない、などといった世界観が元だと思います。京都らしさと言えばそうかもしれません。なにより従業員全員が一致団結して清掃活動を持続させていることだと思います。

―今後の展望はいかがでしょう。

杉本) まず1つは、鋼以外の素材、ニッケルやチタンなどの熱処理にチャレンジし、先端分野対応、高付加価値化を目指したいです。もう1つは、このたび京都企業7社で結成した「京都航空宇宙産業ネットワーク(愛称:KAIN、カイン)」を大事にしていきたいですね。いつか、共同受注なんかにも取り組めたらいいなとも思いますね。

 

―今後のますますの飛躍が楽しみです。

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