トップページ > 特区活用インタビュー

ここから本文です。

特区活用インタビュー

『10年後、20年後の社会を見据えた「しなやかほっこり社会」の実現』
―京都大学COI拠点研究推進機構 部門長 奥澤 将行さん―

 

(掲載日:令和2年2月17日)
京都大学COI拠点研究推進機構の奥澤部門長に特区活用の背景やメリットなどをお伺いしました。

京都大学の知を企業との実用化により、社会に貢献を

-京都大学「活力ある生涯のためのLast 5Xイノベーション拠点」の取り組みや、研究開発のコンセプト、特徴などを教えてくださいますか。

平成25年より開始された「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」において、京都大学は「活力ある生涯のためのLast 5Xイノベーション拠点」としてJSTから採択され、平成31年(令和元年)からは最終のフェーズ3において社会実装を目指した研究開発を進めています。(~令和4年3月)

本プログラムは、企業・大学・行政が、実現すべき社会構造のビジョンを共有し、“ありたい姿・あるべき姿”から“いま”を考える「バックキャスト型」と言われる社会に必要とされる研究開発を行うことで、新たな産業を創生するイノベーションを引き起こすことが特徴です。

京都大学、京都工芸繊維大学など、のべ約80の参画企業、京都府、京都市、精華町が、大学や企業の壁にとらわれることなく一体となって研究開発に取り組むアンダーワンルーフ体制で進めてきました。

この間、多くの成果が得られ、一部は、社会実装として、巣立っていきました。

本拠点の目指すべきテーマは「しなやかほっこり社会」の実現です。

人が生涯にわたって尊厳を保ち、社会の一員として充実感を得ながら挑戦できる社会を「しなやかほっこり社会」と位置づけ、本拠点のキーテクノロジーである「コードレス電力伝送・高度ICT」を活用しながら、女性・子どもの健康管理と見える化を行う「女性・子育て支援」、どこでもつながる健康の見守りと科学的評価を行う「ヘルスケア」、自然災害時のエネルギー供給と安心確保を行う「災害インフラ」の3つの重点分野について、大学と企業が専門分野を超えて垂直・水平に連携し、社会実装に向けた研究開発が進められています。

中でも、本拠点のキーワードでもある「Last 5X」のイノベーション創出を目指し、関係者が全力で取り組んでいます。

「Last 5X」とは、人、情報、エネルギー、健康、環境の5つを同時につなぎ合わせる5つの技術(送電・通信・センシング・デバイス・ICT)を用いて、家庭での壁からの5mのコードレス化、屋外における50mから5kmの見守り、遠く500km離れて暮らす家族・仲間との日常の共有を可能にする、というもので、こうした取り組みを進めることで、あらゆる人々に”安心”をもたらす社会の実現を目指しています。
1

-これまでの研究開発により、数多くの社会実装に結びつけてこられたと思います。研究成果の社会実装を実現するためのポイントや課題はどのようなところにありますか。

社会実装・事業化を進める上で一番重要だと考えるのは「適切な実証実験を進められる環境と体制の構築」だと考えています。

どんなに素晴らしい技術を使い、画期的な製品を生み出したとしても、それは本当に社会に必要とされるものなのか、ユーザー側が求めているニーズを満たすものなのか、一般市民にも受け入れられるものなのか、といった「ユーザーの視点」を研究開発においてどう取り入れていくのかをしっかり検討する必要があると考えています。

本拠点は、平成29年7月に京都府精華町と連携協力包括協定を締結し、住民が最先端技術を体験したり、活用できる機会を創出することで、ユーザーの視点をフィードバックし、社会実装に反映できる体制を構築しました。

文化学術研究都市にある精華町だからこそ、新しい技術や環境に敏感な住民意識と風土がそれを可能にしたのだと思います。既に精華町において様々な実証実験がスタートしており、事業化に向けてデータ取得等を行っています。

 

国家戦略特区活用による研究開発のスピードアップ

-そのような中、国家戦略特区を活用した背景や規制緩和の提案を行った背景について教えてくださいますか。

本拠点のキーテクノロジー「コードレス電力伝送」の事業にもかかわりますが、日本では、電波法の規制により、特定の周波数を利用する電波や一定の出力を超える電波については、電波法に基づく許認可(免許申請)が必要になっています。

実証実験でこうした規制を超える電波を利活用する場合には、必要な手続を行う必要がありますが、通常これらの手続に2週間程度が必要なため、こうした手続が簡素化できないかと考えたのがきっかけです。

京都府に相談したところ、「国家戦略特区で規制緩和の提案をしてみませんか」とアドバイスがあり、特区活用の提案を行いました。

その後、総務省が国家戦略特区において「特定実験試験局の特例」を措置し、我々の要望が認められました。簡単に特例の内容を説明すると、「電波に係る免許発給までの手続きを大幅に短縮する」というものです。

電波を使用した実験に係る簡易な免許手続きとして「特定実験試験局制度」は広く活用されていますが、特区内では、区域会議の下で、更に円滑な調整が可能になり、免許の申請から発給についても通常2週間程度必要なところが、原則「即日」で行われます。

-特区提案というと「ハードルが高い」と思われる方も多いと思いますが、提案から事業実施まではいかがでしたか。

特定実験試験局の特例については、要望後、総務省がすぐに規制緩和の検討をしていただいたおかげで、既に国家戦略特区として規制緩和が可能な項目にリストアップされていたことから、我々の特区活用にあたって事務手続はほとんどありませんでした。

特区計画の作成や特区ごとに設置される区域会議での計画合意、内閣総理大臣の認定まで必要な手続はすべて京都府と内閣府が行うため、事業者である我々に事務的な作業はほとんど発生しなかったという点も、メリットだと思います。

そういう意味では、「法令に基づく手続きが大変」「法令の規制があり事業が行えない」等とお考えの事業者は、まずは京都府へ特区提案について相談されてみるのが良いと思います。本特例のおかげで、精華町においてマイクロ波無線給電を活用した実証実験が昨年度無事に終えることができました。今後は、社会実装に向けてさらなる研究開発を進めているところです。

お問い合わせ

商工労働観光部産業振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

monozukuri@pref.kyoto.lg.jp