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株式会社ニッシン(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

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京都品質QOL向上支援新商品サービス提供企業群

企業連携だからこそ実現--「口腔保湿剤”keora”シリーズ」

keora商品

(掲載日:令和2年2月18日、ものづくり振興課 足利・足立・岩橋)

株式会社ナールスコーポレーション(外部リンク)(本社:京都市西京区)の松本代表取締役会長、川崎代表取締役社長執行役員と、株式会社ニッシン(外部リンク)(本社:亀岡市)の横江代表取締役社長、佐々木取締役開発本部長に、このたび、両社が共同で、「企業の森」推進事業ヘルスケア産業創出事業も活用し、開発、発売開始されました口腔保湿剤「keora」シリーズについて、お話をおうかがいしました。

--まずニッシン様におうかがいします。2社で連携された「背景」は?

横江)はい。株式会社ニッシン(外部リンク)は、長年、歯科教育用模型・歯科模型、歯科材料・義歯洗浄剤等で、口腔の現場に携わってまいりまして、国外においても50か国以上で取り扱っていただいており、中国、インド、ブラジルなど歯科教育機関の数が多い有望国もたくさんあります。一方で、国内においては、人口減少時代、高齢時代に突入し、従来のように歯科教育という若い方々向けの取組だけでなく、高齢者、嚥下等といった分野も視野に入れていかねばらないと考えてきました。

ニッシン商品 デンタロイド
2万種類以上の商品を取り扱うニッシン。訓練に用いる患者ロボット「デンタロイド」は、まばたきもすれば、
咳をしたり、話したりもする精巧なロボットで、京都のロボット企業も関わる。

--なるほど。

佐々木)そうした一環として「keora」の開発に着手しました。30代から40代になると、唾液の分泌量が減り、口腔内が乾きやすくなります。高齢の方でドライマウスがひどくなると、口から食事がとれなくなり、咀嚼機能や嚥下機能が低下していく、といった事態にも繋がっていきます。

--そこでナールスゲンですか。γ-グルタミルトランスペプチダーゼを阻害し、表皮細胞の活性を掌るグルタチオン(タンパク質)等の産生、そして、コラーゲンそのもの、コラーゲンどうしを結び付けるエラスチン等の産生を促進するアミノ酸化合物でしたね。それが口の中でも?

松本)皮膚に効くなら、口腔内の粘膜にも、という発想です。もともと京都大学の平竹潤教授らは、発見された2005年当時はがんの治療にと考えてらっしゃいましたが、その実現には膨大な年数がかかりますので、私は農薬への活用を勧めました。しかし、残念ながら農薬では結果が出ませんでした。勧めた責任を感じ必死で他の用途を探している中で、私の知り合いの縁で試してみた、コラーゲン活性でたまたま結果が出たというのが実態です。いわゆる「セレンディピティ」というものです。

ナールスゲン模型 ナールスゲン
合成成分、条件などノウハウが詰まったナースルゲン

--なるほど。「強み」と、それを活かす「発想力」も重要だったのですね。

川崎)これまでの口腔保湿材とは全く違う発想で、粘膜の細胞そのものに働きかけ、口の中もお肌と同じように保湿ケアをということですね。口の渇き、ねばつき、口臭などのお悩みが少しずつ出てくる世代のための口腔化粧品に仕上げていただきました。

--こだわられた点は?

佐々木)30代、40代の方がターゲットということで、まず、そうした世代の方々が手に取りやすいデザイン、携帯してもらいやすい大きさ・形状、そして、ミント感も甘さもある爽やかな味ですね。大学等での性能評価、使用感評価を行うとともに、当社でも開発メンバーの女性社員が中心となり、特に女性の利用者・患者様の口腔管理に主眼を置いて、使用感、性能の完成度を高めてまいりました。企画から、開発、営業、アフターフォローまで一貫して対応しており、本業界のルート、すなわち、歯科医で販売いただくものですが、「受付でも置きやすい」「勧めやすい」と好評です。

女性社員たち

--いいですね!新しい「ターゲットに適合」することは不可欠ということですね。

横江)まあ、開発には4年かかってしまいましたが(笑)、引き続き「Keora」のラインナップを充実させていきたいですね。

--ナールスコーポレーション様はいかがですか?

川崎)「皮膚」、「口腔粘膜」と来れば、次は「爪」ですね。研究開発は尽きませんよ!

 

 

詳細は、同社ホームページ(外部リンク)へ。

keora(外部リンク)

 

歯科模型シリーズ「INVICTUS」、義歯洗浄剤「キラリ。」株式会社ニッシン

写真:歯科模型 写真;義歯洗浄剤

(掲載日:平成28年3月25日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

 平成27年度知恵の経営企業・株式会社ニッシン(外部リンク)の佐々木取締役開発本部長、加藤主任にお話をおうかがいしました。

歯科模型 国内シェア90%以上

―まず、御社の事業概要を教えてください。

佐々木) まず1つは、歯科大学、歯科衛生士学校、歯科技工士学校等の医療専門学校向けの歯科教育用模型、歯科医院が患者へのインフォームドコンセント用のコミュニケーションツールとして用いる視説用模型などの歯科模型、2つ目は、口腔内の型を取るための印象材、人工歯(天然歯を再現)、義歯床用レジン(粘膜等の歯茎を再現)をはじめとする歯科材料・義歯洗浄剤、3つ目は、ネイルサロン、ネイルスクール向けの人工爪材料などの高付加価値ネイル製品の開発・製造を行っています。事業区分としては、歯科事業に関わる製品とネイル事業に関わる製品、薬事分類として、薬事対象となる医療機器と化粧品、薬事対象外となる歯科教育教材、義歯洗浄剤等々の開発、製造、販売を事業としています。製造については、ISO9001(品質)、ISO13485(医療機器品質)の国際規格を取得しています。

―歯科模型とは、大変珍しいですね。

佐々木) 国内ではシェア90%以上であるほか、海外でも徐々に広がりを見せており、デンタルシミュレーター、インプラント実習用模型、根管長測定用顎模型など様々なものがあります。

  

幅広い専門知識と技術が織りなすリアルさと多品種少量生産

―どうしてそれだけの高いシェアを獲得されてらっしゃるのですか?

佐々木) リアルさのレベルの高さ、性能の高さなど、一言で言えば「品質」です。模型の歯を削る際に、実際の歯と同様に、歯の層の違いに応じて固さが違うということですとか、模型の歯茎にメスを入れた際の「切開感」のリアルさですとか、様々な工夫があるのです。もともと当社は昭和23年の創業時、歯科材料・義歯床用樹脂「ナチュラルレジン」の開発・販売からスタートし、歯科材料の品質の高さは評判だったようで、昭和32年頃から各歯科大学等から模型制作の依頼が来るようになったそうです。それまでは、模型はせいぜい学生や教授等が自ら作ったものしかなく、臨床実習まで実習ができない状況だったようです。そうした積み重ねにより、一朝一夕ではできない技術・ノウハウを獲得してきました。これが他社には真似のできない当社の固有技術になっています。

―「INVICTUS」シリーズはその象徴ですね?

佐々木) 当社の技術・ノウハウに加え、外部の専門家のアイデア、アドバイスもいただき、数年かけて完成させた新ブランドです。歯冠部から歯頸部、歯根に連なる形態が、天然歯の解剖学的な形態にほぼ完璧に再現できており、口腔内をイメージしながら削ることができるなどのお声をいただくなど、好評です。

 

―なるほど。業界特有の難しさという点ではどうでしょう?

佐々木) 例えば歯科大学は国内に29校あります。いずれにおいても、歯を削る、詰め物をする、クラウンやブリッジ等の補綴物で修復するとかインプラントをするとか、非常に幅広い技術を実習されるのですが、各大学によって、また教える先生によって、違った模型が必要なのです。歯科知識や技術を教える指導者個々の考え方を具現化した教育教材が望まれます。ですので、典型的な少量多品種対応であり、大学等とのパイプ(共同開発含めた良好な協力関係)はもちろん、生産面では手作業工程が多く職人技が必要です。

―従業員の皆さんは、専門知識も必要なのですか?

佐々木) 開発部門は半数以上が歯科技工士の資格を持っていますし、営業部門も専門知識が必要なので、資格を持っている者が多数います。特に、歯科大学や歯科衛生士学校、歯科技工学校等の教育機関の先生方とお話をする機会が多く、歯科に関する専門知識を有する者が多いのも事実です。生産部門では手先の技術も必要ですので、伝統工芸を学んできた者も入社しています。材料ひとつとっても金属、セラミックス、プラスチック、複合材料など様々であり、創業者が「鍛冶屋と瀬戸物屋とゴム屋を一緒にしたようなものだ」と言っていたくらい、幅広く学んでいくことも必要です。
 最近では、先端技術であるデジタル技術特に3Dプリンターを利用した“もの創り”技術にも挑戦しています。よりリアルな構造、形状をもつ人間の歯を忠実に再現するために、3Dプリンターを活用しています。

 

義歯洗浄剤 歯科医院流通トップシェア― 高齢者施設への展開も

―歯科材料・義歯洗浄剤事業では新しい動きとしてどんなことがございますか?

加藤) 歯周病等の予防のみならず誤嚥性肺炎との関係も合わせ、口腔ケアの重要性が高まっています。歯科医院流通ではトップシェアである義歯洗浄剤「フィジオクリーンキラリ」などに加え、様々な菌の繁殖の原因となる歯石の除去を目的とした新しい義歯洗浄剤の上市を予定しています。特に高齢者施設、介護施設等向けの展開も図っていきたいと考えています。

 写真:歯石くりん

ネイル事業― 人工爪材料の日本の先駆け

―ネイル事業は、歯科材料等との関連性があるのですよね?

佐々木) 実は、ネイリストという言葉が日本でまだ知られていなかった約30年前から実施しています。ネイルイクステンション(爪の造形)には人工爪を作る技術がありますが、それは入れ歯を作る技術から派生してきたもので、アメリカから始まり、それを知った当時の社長が開始しました。当社の場合はサロン向けのプロ用であり、アクリルの粉末製品ではネイルスクールやネイルサロンでシェアトップクラスの高い評価を受けています。今後は市場の大きいジェルネイル製品の市場においても、より顧客満足度の高い製品を提供していきたいと考えています。

職人技とデジタルの融合へ

―さて、今後の事業展開についてはいかがでしょう?

佐々木) そうですね。まず1つは海外展開の強化ですね。歯科教育用模型では、世界各国の国を挙げた、すなわち歯科医師になるための標準化された歯科医師国家試験への当社歯科模型の採用に向けた取り組みを行なっています。現在、各国、各大学の先生との協力、協調体制を強化しています。今後、当社が培ってきた様々な歯科教育システムをパッケージ化して途上国向けに輸出していきたいとも考えています。

―他には?

佐々木)デジタルネットワーク化ですね。現在、デジタル技術を利用した新しい歯科技術が急速な勢いで進歩しています。患者様の口腔内の印象(型どり)をとり、その後模型材により患者様の口の中を精密に再現した模型を作製し、更にその模型をスキャナー装置を用いてスキャン、パソコン画面上で失った歯の箇所にクラウンやブリッジを設計する。(CAD)。その設計データを加工機に送信しすると、クラウンやブリッジが自動的に加工されます(CAM)。
 更に、最先端技術では、口腔内を直接専用のスキャナーでスキャンしデータをCAD/CAMシステム装置に飛ばして、クラウンやブリッジを加工する技術への取り組みが始まっている。当社も、このようなデジタル技術に対応した装置や材料の開発を進めるとともに、システムを利用した高精度、短納期で患者様に満足頂ける補綴物(歯科疾患の修復物)を提供できるような技術構築に貢献していきます。
 また、このようなデジタル技術を利用することにより、教育機関、大学の先生等から要望される教育教材をデータ化することにより、何処に居ても、短納期で高精度の教育教材を提供できるようになります。従来の“もの創り”とは異なり、職人技にだけに頼らないで、お客様が要望する作品を短時間で創り、これを教育現場で確認していただくとか、様々な展開が考えられます。

 

「日々進取の気性」から名付けられたという社名どおり、あくなき前進を続けられる同社の展開が楽しみです。

お問い合わせ

商工労働観光部産業振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

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