ここから本文です。

株式会社OFFICE SAWAMURA(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

京都企業紹介(業種別) 京都企業紹介(五十音順) 京都府の産業支援情報

クリエイティブ・ディレクターが贈る新事業「知のスペシャリスト」

(掲載日:平成29年4月6日、聞き手・文:ものづくり振興課 足利)

 株式会社OFFICE SAWAMURA(京都市)の澤村栄治代表取締役様にお話をおうかがいしました。

お客様に寄り添う広報プロデューサー

―冒頭からすみません。まず、澤村栄治さんというお名前がやはり気になります。

澤村) 父親が若い頃、野球をやっていたので、長男の名前は「栄治」にしようと決めていたようです。なにしろ伝説の名投手と同姓同名、しかも京都生まれということで、会う人会う人から「親戚ですか?」と聞かれてたいへんでした。しかし、独立してオフィスを構えるようになって、お客様にすぐに名前を覚えてもらえるし、初めての人でも名前をネタに会話が広がっていく。今さらですが父親に感謝ですよ。

―そうだったのですね。では改めまして、御社の業務内容を教えてください。

澤村) ひとことで言うと「広報戦略、広報物制作」です。広報誌や研究誌、パンフレット、チラシ、Webサイトの企画・制作、そして動画の企画・制作・配信などを手がけています。国や自治体の事業の広報戦略を考えたり、中小企業と一緒にブランド戦略を企画・立案することもあります。京阪神を中心とした企業、大学、自治体、産業支援機関などが主なお客様ですね。ありがたいことに、ほとんどの仕事が口コミで広がり、わざわざ「OFFICE SAWAMURAに!」とご指名いただくことが多いですね。

 

―特徴はどういったところでしょうか?

澤村) まず1つは、企画から制作(取材、コピーライティング、デザイン、カメラワーク、編集、印刷等)までワンストップで対応できるということです。でも、それは他の会社でもやっていますよね。私の仕事は、お客様の持っている「価値」を掘り起こし、最も効果的な方法で伝えることだと考えています。その企業や大学が持っている強みや魅力は一つひとつ違います。それらを画一的に情報発信するのではなく、どうすれば伝えたい相手の心に響くのか、あるいは感動や共感を呼ぶにはどんな方法が良いかを考え、お客様に企画・提案しています。だから、伝える手段に制限はありません。先ほど挙げた広報誌やパンフレット、映像だけでなく、絵本やポエム、また歴史コラムの連載なども行っています。

潜在ニーズを炙り出し、新たな価値を創出するクリエイター

―絵本ですか?!

澤村) 絵の部分は外注していますが、企画やストーリーは当社で考えます。例えば、ある企業から「友情」「思いやり」をテーマにした作品を作りたい…というリクエストがあり、「ふしぎなてんこうせい」という絵本を創作しました。小学校のクラスに、お下げ髪のティラノサウルスの女の子が転校してくると…いう話ですが、クラスの子どもや周りの人たちは、誰も女の子がティラノサウルスだとは気づいていないんです。でも主人公の「わたし」だけは、女の子が実はティラノサウルスだと気づいています。その女の子は鋭い爪のせいで、風船遊びをすると風船を割ってしまうし、体が大きいからかくれんぼしてもすぐに見つかってしまう。落ち込む女の子にわたしは「爪を使って砂遊びができるし、大きな体は滑り台になるよ」と個性を認めて声をかけると、いつの間にか周りに友だちが集まってくるのです。ある日のこと、「小学校にティラノサウルスがいる」と、大人たちが心配して小学校にやってきます。しかし、子どもたちは「この子は私たちの仲間だ!」と団結して、大人たちの誤解を解くのです。

 

―なんかすごく良い話じゃないですか!胸が熱くなりますね。

澤村) 余韻を残す・・・と言うんでしょうか。読んでもらった後に「何を残す」のか、これが最も重要です。それが、結果として「広報」として結びつき、お客様にとって何らかの利益につながっていく・・・。ここに私の仕事の真価があります。この価値をどう創造していくのか、それが最も重要です。絵本であれ、パンフレットであれ、映像であれ、一度見て終わりではなく、何度も繰り返し見てもらえるもの、見たいと思っていただけるものを提供しています。

―また、コラムというのはどういうものですか?京都でコラムニストは珍しいのではないかと思います。

澤村) 「歴史ソムリエ」という肩書で、歴史に関するコラムを数多く書いています。例えば、ある経済誌では、歴史と経済をテーマにコラムを連載しています。ちょっと紹介しましょう。昔、京都に桔梗屋という染物屋がありましたが、余りに貧しいので、店の主人は妙なことを始めました。人の嫌う貧乏神を神棚に祀ったのです。ある夜のこと、貧乏神が主人の枕元に現れ、「この恩義は忘れ難し。柳はみどり、花は紅(くれない)」と言いました。主人はお告げの意味を一生懸命考え、柳の意匠に紅色が映える染物を作って売り出したところ、その染物は大当たり。誰も作ったことがない、オリジナル商品の開発で大金持ちになれたのです。「日本永代蔵」で紹介されている話ですが、単に「人と違う視点やアイデアが大切ですよ」と叫んでも、あまり心に響かない。先人が残した歴史エピソードを軽妙なタッチで紹介することで、読み手の関心が高まり、心に余韻として残るんです。

―しかし、単なる広報の枠を超えた、クリエイティブな仕事ですね。

澤村) 広報一貫対応、各種広報媒体を組み合わせた提案を行う「プロデューサー」の仕事と、市場や人々の心の中にある、潜在的なニーズを炙り出して、価値を創出する「クリエイター」の仕事の両方を行っています。「こんなことを伝えたいけれど、何かいい方法ない?」という要望に応えることができる。だから、お客様にとって、便利で有用な存在なのだと思います。お客様が当たり前だと思っている技術やサービスが、俯瞰的に見れば必ずしも当たり前でないことも多い。お客様が気付かない強みや魅力を引き出し、クリエイティブな方法で伝えるということでしょうか。

―潜在的なニーズを見える化して価値を作っていくというのは、まさに行政でも必要なことで、私どもも日々苦心しているところです。どうやってそのノウハウを磨いてらっしゃるのですか?

澤村) 今まで、1,000件以上の企業や大学を取材してきた経験が活きていますね。まずは、物事を俯瞰的に見るように心掛けています。そのために、常にアンテナを張り巡らせ、多くの周辺情報に気を配っています。日頃から多くの書籍に目を通し、仕事の中で役立てています。もう何十年も前になりますが、この仕事を始める以前は、学生の就職支援を手掛ける大手企業で、毎日、多くの企業を取材して回り、企業の魅力を学生さんに伝える仕事をしていました。その時、先輩から「マンガを読め、若い子と話せ」と言われたのですが、これは常に最先端の環境に身を置き、感性を研ぎ澄ませという教えで、今も守っています。

知のスペシャリスト

―さて、新しい事業を始められましたね。

澤村) はい、「知のスペシャリスト」のWebサイトのことですね。大学で最先端の研究開発に取り組む“知のスペシャリスト”たちをトピックス動画で紹介するもので、大学発の知的シーズの魅力や特色、研究者のユニークな横顔を余すことなく伝えています。産官学連携活動の推進や大学のブランド力向上、また高校生や受験生の関心を高めるツールとして、同志社大学や関西学院大学、東京大学など錚々たる大学が参画されています。

―研究者の動画ポータルサイトですね。言われてみると、あるようでなかったものですね。

澤村) 研究シーズに関する動画配信は、意外と少ないですね。大学のサイトに動画が用意されていても、それは見たい人が目的を持って訪れるもので、新規開拓につながるものではありません。しかし、「知のスペシャリスト」のWebサイトにはいろんな大学があって、有名な先生の動画を見たついでに、その隣に異なる大学、異なる分野の先生の動画が掲載されているので、若手の研究者にも情報発信のチャンスが広がります。研究者の方々も、実は自分の研究内容を発表したい、自分のシーズを世の中で役立てたいと強く願っておられるので、嬉々としてサイトに協力してくださっています。

―なるほど。

澤村) また、企業の皆さんも研究者との繋がりを求めてらっしゃる方々がたくさんいらっしゃいます。そこで、文字や写真だけでは伝わりにくい、研究者の人柄なども動画でお伝えして、両者の接点を作っていこうと考えています。特に今、新市場・新技術創出のために、産官学連携の取り組みに再びスポットが当てられています。また、国のプロジェクトなどでも動画を使った申請が取り入れられるようになりました。大学が培ってきた知的シーズや研究成果の発信を通じて、新たな社会価値を生み出していきたいと考えています。

―素晴らしい。では、最後に今後の展望についてはいかがでしょう?

澤村) 広報支援の仕事に携わりながら、私どもの仕事の価値がなかなか上手く伝わらないもどかしさがあります。しかし、「知のスペシャリスト」のような、研究者と企業の互いのニーズを繋ぐ、ソーシャルプラットフォームづくりなど、新しい取り組みを展開することで、認知度を高めていきたいと思います。もちろん、当社1社だけでは限界がありますし、当社自身も様々な企業様や異分野の皆様とコラボレーションしていきたいと思っています。

 

今後の展開が楽しみですね!

お問い合わせ

商工労働観光部産業振興課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4842

monozukuri@pref.kyoto.lg.jp