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株式会社服部製作所(京都企業紹介)

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SENVEC どんなものでも選別します

(掲載日:令和2年12月25日 聞き手・文:ものづくり振興課 宮﨑)

株式会社服部製作所(外部リンク)(宇治市)代表取締役社長 服部 勝洋 様にお話を伺いました。

茶葉と茎の帯電現象を発見

―まずは、御社の事業概要を教えてください。

 弊社は、色彩選別機や食品用異物選別機、製茶機械の製造・販売を行っている企業です。創業者で、私の祖父である服部善一が1935年(昭和10年)に静電気を利用した茶葉の選別機を発明の上、特許を取得し、それと同時に弊社を創業しました。

―御社が茶葉の選別機を開発するまでは、どのようにして選別を行っていたのですか?

 「選り子」と呼ばれる女性達が、手作業で茶葉から茎を取り除き、製品にする作業を行っていました。大変な作業ですし、非常に多くの人手が必要でした。

【当時の製茶工場の様子】

【選り分けられた茶葉と茎】

 当時18歳だった祖父は、家業の製茶業を手伝いながら、選別作業を何とか楽にできないかと考えていたようです。茶葉は、冬場になって空気が乾燥すると、静電気を帯びて作業者泣かせであることは昔から知られていましたが、ある時茶葉ではなく、茎の方が樹脂製の容器に付着している様子を見て、乾燥後の茶葉と茎をお互いによく擦り合わせると、茶葉はマイナスに、茎はプラスに帯電する特性を発見しました。これが、静電気を利用して茎を除去する選別機の開発に繋がりました。

【服部善一氏が開発した当時の茶葉選別機】

ユーザーの声を聴き、常に進化を続ける選別機業界のパイオニア

―御社は、いち早く選別機を世に生み出したパイオニア的存在なのですね。創業以来、80年以上にわたり選別機を造り続けておられますが、現在はどのような製品をラインナップされているのでしょうか。

 現在は、静電選別機から色で選別する色彩選別機に主力製品が変わり、重さで選別する風力選別機も加えて、様々な選別機を茶業用、各種食品用、医薬品用、工業用等様々な分野に向けてラインナップしています。創業以来、着実にシェアを拡大し続け、現在では茶葉の選別機で国内シェア90%を獲得するまでになりました。

 また、弊社の選別機は全て「SENVEC」を商標として使用していますが、これは日本語の選別(せんべつ)から作った造語で、日本発の選別技術を世界に広めるとの想いを表現しています。

―すごいですね。選ばれ続ける製品を生み出す、御社の強みを教えてください。

 創業以来、常にユーザーのニーズを取り入れ、挑戦を続けることで培ってきた製品開発力が弊社の強みです。例えば、1975年には、「色彩選別機は、選別の精度は高いものの、処理量が静電選別機や風力選別機と比べて極端に少ない。何とか精度と処理量を両立した選別機を開発できないか」という取引先からの要望に応え、多列のV字断面のシュート(滑り台)上に茶葉を自然落下させて一層に整列させた後、検査部において光を照射して、フォトセンサで異物を検知する方式を確立し、色彩選別機の処理能力の大幅な向上を実現しました。

 また、2000年にはフォトセンサに代わりイメージセンサー(CCDカメラ)を搭載し、シュートをV字からフラット(平面)に変更した選別機を開発しました。溝の無い、急勾配のシュート上を選別対象物が流れることで、静電気の作用でシュートに付着して滑落しない問題が解消し、選別可能な対象物の幅が広がったほか、シュートを平面にしたことで一度に処理できる量が増加したため、処理能力がさらに向上しました。

【2000年当時のCCDカメラを搭載した選別機シリーズ】

―なるほど。

 また、この技術を活用して、スリランカやインドの顧客から寄せられた「よりリーズナブルで、処理量の多い選別機が欲しい」という要望に答えるため、紅茶用選別機等の開発も手掛けました。シュートを平面にしたこと、選別対象物がシュートに付着することを防ぐ技術を確立したことで、メンテナンスコストの削減に成功し、前述の要望に応えることができました。

―常に改良を重ねてこられたのですね。近年ではどのような選別機を開発されたのでしょうか。

 大手惣菜メーカーの要望に応え、ひじき等の水産物用の選別機を開発しました。従来から、ひじきへの漁網の混入が問題となっていたのですが、漁網の色がひじきと同じ黒色であるため、色彩選別機での選別はもとより、手作業による選別も非常に困難でした。

 そこで弊社は、目に見えない光の反射率に着目し、ひじきと異物(漁網)を選別する選別機を開発しました。ひじき製造会社に納品したところ、「何十年にもわたる業界の課題が解決した」と大変喜んでいただきました。

高い商品開発力を活かして開発された「粉体・軽比重物用異物除去装置」

―今まで培われた技術を活かして開発された製品「粉体・軽比重物用異物除去装置」で令和2年度技術大賞優秀技術賞を受賞されました。受賞の技術はどのような特徴がありますか。

 本装置は、粉体や発泡ビーズ等の非常に軽い素材を選別するために開発したものです。従来の選別機は、前述の通り選別する素材をシュートの上で自由落下させて一層に整列させた後、CCDカメラで異物を検知していましたが、粉体や発泡ビーズは非常に軽いため、重力のみでは上手くシュートの上を落下せず、検査することが困難でした。そのため、取引先の大手化学メーカーから何とか発泡ビーズ用の選別機を作ってくれないかと依頼を受け、本装置の開発に取り組むこととなりました。

  

【粉体・軽比重物用異物除去装置(左)、黒いビーズ(中)から除去された青、白、ピンクのビーズ(右)】

―なるほど。御社ではその課題をどのように克服されたのでしょうか。

 内部にブロワー(吸引装置)を組み込み、シュートの出口側から吸引を行うことで先の課題を克服しました。この技術は、もともと弊社が持っていた風力選別機の技術から着想を得て応用したものです。ブロワーから発生する気流により、粉体や発砲ビーズをシュートの上で高速で流し、一層に整列させることに成功しました。

 開発の過程では、製品を吸引するブロワーの吸引力が強すぎたため、除去した不良品を製品側に吸い戻してしまったり、流速が速すぎてカメラによる検出とエアガンによる不良品除去のタイミングが合わなかったりと、目に見えない気流が選別結果に様々な影響を及ぼし、2年にわたって試行錯誤を繰り返しましたが、コンピュータ上でのシミュレーションによる気流の解析や、カメラの走査速度の高速化により、最終的に43cmの検査幅で、比重0.02g/㎤の発泡ビーズを毎時300kg処理する装置が完成しました。

―多くの選別機開発を手掛けてきた御社だからこその閃きだったのですね。今回開発された装置はどのような場所で採用されているのでしょうか。

 本装置の開発依頼元である大手化学メーカーの他、粉体の異物除去用に大手食品メーカーにも採用されています。1時間あたり約4tの粉体の異物除去が可能な本装置は、従来品と比較して10倍以上の処理能力を持ち、少ないスペースで大量の製品の全品検査が可能になったと大変お喜びいただいています。

―大変画期的な装置のご紹介をありがとうございました。最後に、今後の展望をお聞かせください。

 茶葉用の選別機開発からスタートした弊社ですが、穀物や水産物、粉体などあらゆるものを選別するため日々開発を続けてきました。現在も多くのお客様から引き合いを受けるとともに、様々なお悩みの相談をいただいており、選別という仕事は際限無く存在すると実感しております。

 これからも、どこにもない装置を創り出し、展示会等で販路開拓を進めながら、選別機業界の最後の砦として、お客様の期待に応えていきたいと考えています。

―今後のますますのご活躍が楽しみですね!

お問い合わせ

商工労働観光部ものづくり振興課

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