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株式会社YOKOITO(京都企業紹介)

知恵の経営元気印経営革新チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。

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全てのアイデアを形にする、デジタルファブリケーション

(掲載日:平成29年5月1日(インタビュー:平成28年秋) ものづくり振興課)

株式会社YOKOITO (本店:神奈川県、京都拠点:京都市下京区)の中島取締役様にお話をおうかがいしました。

「京都」バリューを発揮する「工房のデジタル化」支援

―横浜国立大学在籍中の中島さんが、起業の仲間を求めてらっしゃった中で、2014年に代表の大谷様らと立ち上げられた会社ということですが、何をなさっている会社ですか?

中島) まず、「工房のデジタル化」のソリューション、機器を提供する事業を行っています。工房とは、伝統産業であったり、歯科技工であったり、フィギアであったり、いわゆる「職人技」により支えられている業界をイメージしていただいたらいいと思います。そうした職人技をデジタルでリプレイスするお手伝いです。

―どんな事例がありますか?

中島) 手織りの西陣織で、当社の名前にもなっています、緯糸(よこいと)を通すために使われる道具、「杼(ひ)」。これを作れる職人さんは、現在お一人だけなのです。70歳代後半で跡継ぎもいらっしゃいません。この方がいなくなれば、手織りの西陣織全体の存足が危ぶまれます。織元や染元など、いわゆる、表(おもて)さんはともかく、それを支える道具を作る方など、表に出ない、2次的な方々は少なくなってきており厳しい状態であったりします。そこで、職人さんが作られている杼を採寸して3D-CAD、3Dプリンタを使って復元しました。デジタルデータとして蓄積しておくことで後に引き継いでいけるとともに、形状を変更したりアップデートもできるわけです。ほかにも、京鹿(か)の子絞(しぼり)や、滋賀県近江八幡市の伝統的な八幡靴等も支援してきました。

―素晴らしいですね。どうして今までこうした事業がなかったのだろうとも思えますが、どうしてでしょう?

中島) デジタル機器が低価格化してきたということですね。今までも、CAD/CAM、NCなどデジタルデータを使ったものづくりは普通に存在してきました。しかし、それらは大掛かりで、高価で、専門知識も必要なものでした。しかし、ここ数年、個人でも習得可能なレベルの知識で扱うことができる工作機器、3Dソフトウェアが、しかもオフィスのデスクの上におけるほど小型化されたものが登場してきました。こうした専門家でなくても扱える、デジタルファブリケーションツールの登場が要因です。

―同業他社はあるのですか?

中島) 東京には増えていますね。京都ではまだ珍しいと思います。「工房のデジタル化」は、職人さんのお仕事をデジタル化し、他の人にできることはしてもらい、職人さんにはもっと職人さんにしかできない高度なことをしてもらおうという意図もあるわけですが、当社にとっても、「京都」で独自色を出し、バリューに繋がっていくものだと捉えています。

先駆者としての「スピード&オープン」

―御社ご自身も商品開発されていますね。

中島) デジタルカメラ向けトイカメラレンズ「FAB-LENS」などを開発してきました。わざとぼかしたり、ゆがめたりするトイカメラレンズで、マウント、絞り、レンズ部、フードなど3Dプリンタで出力して作っています。

―各モジュールのデータをオープンソースとして公開されていますが、それは何故ですか?

中島) これも当社の独自性に関係するのですが、一言でいえば「スピード」を重視しているということです。優れた技術も一夜にして真似されかねない世の中です。インターネットがこれだけ発達していますので、情報の拡散も、その気になれば瞬時に全世界に向かって行うことも可能です。むしろ隠したらスピードで負けかねません。誤解を恐れず言えば、たいていの場合は、先に出した者勝ちのように思うのです。

―なるほど。

中島) ですので、まず、特許や意匠権をとるよりも、早く世に製品を出すことを重視しています。そして、創業間もない小さな会社ですから、オープンにして様々なコラボレーション先を求めたり、あるいは当社製品のファンを求めたりという意図があります。たとえ真似されても、オープンにした記録はインターネット上にも残りますので、世の中の人たちにはどちらが先駆けか分かっていただけるわけです。

―ベンチャーならではの発想ですね。

中島) 私たちがそういう世代なのかもしれません。

「ものづくりコミュニティ」を創造

―そして、このコミュニティラボ「N5.5」も運営されていますね。

中島) デジタルファブリケーションツールの代表的なもの、3Dプリンタ、レーザー加工機、モデリングマシンなどを取り揃えています。京都のKTCさんの道具箱もありますよ。3D-CADのセミナーなども始めています。

―どういう目的があるのですか?

中島) いろいろありますが、「ものづくりコミュニティ」を作りたいのです。デジタルファブリケーションを使いこなせる人たちが集まって、そのネットワーク力、コミュニティ力で、世の中の人たちの思いを解決していく、そのためのコミュニティです。

―なるほど。それが御社の(ネットワークの)強みということにもなっていくわけですね。コミュニティのメンバーはどういった人を想定していますか?

中島) これも様々な人が集まってきていただければと思っていますが、デザイナー系、エンジニア系の方などを特に想定していますね。

全てのアイデアを形にする

―最終到達点と言うと言い過ぎですが、目指すところはどういったところでしょうか?

中島) 全てのアイデアを形にすることができる社会を作りたいのです。これまでは大規模資本がないとできなかったことが、個人やベンチャーでもできるようになってきました。京都の町家一軒一軒でそれぞれ違うものを作っている、そんな風景をイメージしています。

―大学生でありながら「起業」をされました。

中島) 以前から、「大学でもみんなちゃんと勉強しているのに、それが生かされていないのじゃないか」とか「やっている人が更にうまく軌道修正できるようになればいいのに」とか、そんなことを思っていましたね。そして幸いにも早い段階でエンジェル企業からの投資もいただけ、比較的自由に事業展開できる状況を作っていただき感謝しています。

―大学に入られる前から起業を意識されていたとお聞きしました。いつ頃くらいからですか?

中島) 高校までの一貫教育の校風や、父親がサラリーマンですがデザイナーであったことも影響しているかもしれませんが、中学生の頃には、「すべての人がやりたいことを実現できる場」を作りたいと思っていましたね。

 

同社の今後の発展がとても楽しみですね!

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