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第2回/2023.5.24【けいはんな住人】

会場全体

けいはんな住人

リアルに最先端の研究に触れられる街・けいはんな

場所
  • 株式会社島津製作所 基盤技術研究所(けいはんな)
参加者
聞き手

共同研究、CVC

--お忙しい皆さんに時間をいただいておきながら恐縮ですが、この「けいはんな住人」の主旨は、学研都市で研究者、企業人の横のつながりを作りましょうというものですので、「知り合いになりましたー!」というのが今日の目指すゴールです。

藤澤)さきほど、基盤技術研究所の中を見学させていただいて、大変素晴らしかったです。けいはんなに、こんなすごいものがあるとは全然知らなかったです。

--開発効率を上げる、開発の質を高めるというのが目的なのですか?

井上)まず目指したのは、社内外のオープンイノベーション、共創を促進するため、お客様を招き入れる施設であるとともに、社員どうしの交流も高めることも目指しています。当社の特徴として物理、化学、生物など様々な専門エンジニアがいますが、蛸壷化してはもったいないので、分野を超えた連携を構築していくことが必要です。ですから、若手メンバーを集めてワークショップを開催し、3年後、5年後、10年後に自分たちの研究にどういう施設が必要か、どういう施設だったらワクワクするかなど、出てきた意見を全部集めて、建設コンペの資料にも採り入れました。

藤澤)そうすると、働いてらっしゃる方の意見を集約された形ということですか?

西本)そうです。研究員がアイデアを出して作り上げるというプロセスを経ながら実現したというのは、社内的にも大きかったと思います。でも、社内からは「立派なものができた。後は中身だな」と言われます(笑)。研究員にはプレッシャーですね。

--「中身だな」と言われるということですが、どういう成果指標の設定がなされているのですか?

西本)研究のテーマ、領域別に目標を立て、計画的に走っていく部分だけでなく、「共創」と言いましたように、社外の研究機関、企業の方とも一緒に進めて成果を出す部分があります。産学、産産の共創はぜひ進めていきたいです。また、海外との連携も新しいプランとして打ち出していこうとしているところです。

藤澤)共同研究という枠組みだけでなく、投資ということもあるということでしょうか。

西本)まさにおっしゃっていただいたとおり、今年4月からコーポレートベンチャーキャピタルCVCの仕組みを立ち上げました。素早く社内の意思決定をして主に事業戦略的なリターンを狙って投資を行っていく仕組みが必要だというアイデアは以前からありました。

--それもこちらですか?

西本)基盤技術研究所の一部が京都市内の本社にあり、CVCのメンバーは本社です。やはり、経営層や事業部とのやりとりがあるので、これは本社の方がいいだろうと。

--なるほど。

西本)研究だけでなく新事業を立ち上げていくというミッションが基盤技術研究所にはあるものの、自社の研究シーズを使ってとか、共同研究で獲得した技術を元にいったことが多かったのですが、投資という手段ができることで、また変わってくると思います。

笑顔の3人

データ、コラボレーション

塚本)私の会社は蓄電池を作っていますので、エネルギーで何かコラボできることがあればと思います。

西本)グリーン分野は広く注力していきたい分野です。分析計測を中心にお役に立てる事業を進めて行ければと考えています。

藤澤)私は、もともと太陽光発電の管理システムに携わってたのですが、当時、発電所の収益性を上げるため、気象条件と合わせてどれくらい発電するかといったシミュレーション・ソフトを作ったりもしていました。現在は、センサーを繋いで測るシステムをクラウド上に構築したり、集めたデータを解析するサポートをしたりといった仕事をしています。

--解析ですか。

藤澤)東京の大きなビルなどでも、空調のデータを集めてみると、こっちは暖房してるけどこっちが冷房してるみたいな無駄があることがわかりますし、実際のところはまだまだ手動でデータを集めていますというところも多いです。ですので、まず集まったデータをどう分析して、じゃあ次に建てるビルのときはどうするかというところを、一緒に考えさせていただいたりしていますね。

--データ集めて分析・予測して「予防保全」とか言われるケースがあります。それが発展して、10分後のことを、5分後に計算できたら「未来予測」あるいは「タイムマシン」のように見えるんじゃないかと思うのですが、そうなるためには何か、どれぐらいのデータ量というか、リアルさがあったらいいのでしょうかね?

藤澤)解析技術はいろいろ進んでると思うんですけど、一般的によくデータサイエンティストの方とかがおっしゃるのは、圧倒的に故障データが少ないということ。島津製作所さんもそうですけど。ちゃんと動くもの、故障しないものを作ってらっしゃるじゃないですか。だから、計測はしているのですが、壊れたデータが現場にないという、データ量の問題が立ちはだかっていると思います。

-そうですよね。

藤澤)太陽光発電のケースでは、データ結構持っていたのは、システムの保守メンテをする会社さんですね。いろんな発電所の保守を請負っておられるので。どのメーカーのパワーコンディショナーはどういう条件ならどのぐらいの年数もつかというのも、だいたいわかっておられました。しかし、私どものお客さんの場合、単独の工場工場ではそうしたデータが手に入らないので、なかなか難しいところです。まだまだ課題は多いと思います。

ロボット

人と文化の理解

西本)今のお話は、物が壊れるって話ですけど、人の場合も多分同じではないでしょうか。特に難しいのは、数少ない疾患ですね、例えばある体の中の成分を見て、病気の予測をします、あるいは超早期診断しますって言っても、病気の方はごくわずかなので、実際には難しい課題です。。必要な因子が抜けてるということでしょうね。そういう意味で、大変ありがたいのはコホート研究です。たくさんの人に対して、いろんな健康データだとか生体成分データを採取しながら、何年、十何年という長いスパンで追跡し、結果としてこういう変化をした人はもともとどうだったというものですね。ただ、じゃあそれを適用した時に予測ができるのか?

藤澤)そうですね。病気のケースでも、ある程度想定をして、どういう因子を集めればいいのかっていうのを考えた上で、そういう実証なりを始められると思うんですけども、結局5年10年かかって追跡した後に、実は調べていないこの因子が必要だったのでは?というのは往々にしてあってですね、その辺が難しさだとは思います。何で測ってなかったのか?となりますよね。

--コホート研究って言ったら、京都の丹後が有名ですね。長寿だそうです。若い人たちが出ているから同居人が少なく、自分でなんでもしなければいけないといったことが要因ではないかと。

塚本)それは、日本全国の過疎地域が同じではないですかねえ。

--あとは、社会活動にかける時間が長い、友人との個人的会話時間も長いといったことも言われていたと思います。

塚本)コロナでも、引きこもることで調子悪くなるケースもある。コミュニケーションの問題ですね。コロナ前もよくありましたよね。病院の待合室におじいちゃん、おばあちゃんがいっぱいいて、「今日は誰々さんいないけど、調子悪いのかな」みたいな。調子の悪い人が来るところが病院なのに(笑)。コロナでも、人と話す機会がなくなるので。健康を害するというケースも多かったと思います。

--病気は治療室で治すんじゃなくて、待合室で治す?!(笑)

塚本)そういう因子も結構あるんじゃないでしょうか。コロナ禍の3年間でコミュニケーション重要さが再認識されましたよね。

藤澤)弊社ではないですけど、確かお医者さんが社長さんをなさってる、ある会社が、社員さんの日々の出退勤の時にちょっと簡単な質問をしたり、ちょっとしたゲームというか反応速度の速さを図るなど、毎日続けていくと、その人の時系列から調子の良し悪しがわかるとのことでした。データを組み合わせていくと、何かトラブルが起こりやすいとか、パフォーマンスが今は出にくいとかが見えるそうです。そういう社員さんのパフォーマンスをどのように向上させていくかというところは経営者的には知りたいところです。

塚本)社員の健康は本当に大事なテーマですよ。朝礼で確認している会社もありますよね。

藤澤)社内ポータルで今日の気分をつけさせるところもありますよね。

生体計測

--最近、京都在住の外国人に話を聞いて回っています。各国、当然様々な違いがあるのですが、どの国の方も異口同音におっしゃるのが、日本の組織風土の難しさについてです。例えば、例えば、分からないことを上司に尋ねるにも、タイミングを間違うと怒られる(笑)、顔色を見て尋ねないといけないとか。あるいは、交渉の席で上司がしゃべってると部下はしゃべったらあかん、上司を立てなあかんとか。あるいは「お前は優秀なやつやから、社内ミーティングで自由にしゃべってええぞ」と社長が言うから、本当に自由にしゃべったら「でしゃばるな」って怒られるとか。こういうことは、どうも日本だけらしいんです。見えないルールに困っていると。

藤澤)随分以前のことですが、ドイツに駐在していたことがあって、名刺交換の仕方が全然違うのでカルチャーショックを受けたことがあります。ドイツでは、こう、名刺が横から出てくる!(笑)。こういうものからして全然違いますし、あまり上下関係っていう感覚がですね。

塚本)アメリカで会社を経営していた時のことですが、ある社内会議で「安全衛生をもっとちゃんとせなあかん」とかって、20人ぐらいで話をしていたんですよ。そうしたら、秘書の人が「私がそのリーダーやります!」って。「いやいやいや、何も専門知識ないでしょ!」と思ったのですが(笑)、そういう積極性がありますよね。逆に、何もしゃべらんかったら、なんかもうそこにいる必要ないじゃないかっていう雰囲気ですよね。会議に出る意味がないと。みんな本当によくしゃべる。

--外国の方から「日本の大企業の意思決定が遅い」とも言われました。「いや、大企業っていっぱい人がいるから遅くて当たり前でしょう」って言ったら、「海外はほとんど現場のマネージャーに任されていますよ」って。「本当か?!」と。

藤澤)判断が早いっていうのはあるかもしれません。これも聞いた話ですけど、日本のベンチャーキャピタルに事業内容を説明すると、だいたい、前例とか、既にどれぐらいの評価が出てるのかとか、そういうところを聞かれると。しかし、本当に新しいことって前例とかないんで、そこがなかなか日本の場合は風土的に難しいと。

--海外の方とオープンイノベーションを進めていくなら、こうした文化の違いを理解しなければあきませんね。

塚本)当社は、インド人研究者を2名採用しましたし、この夏は、3人のインターンが来ます。2人はアメリカ、1人はカナダからね。

巨大デジタルパネル

理論と実物、デジタルとリアル、頭でなく手で覚える

--おお

塚本)全然話変わるんですけど、この島津製作所さんの基盤技術研究所、今日見せていただいて、誰が見ても先進的ですし、万博に来た人のうち、小学生だけを連れてきて、サイエンスキャンプみたいなことをしてもいいんじゃないですか?高校生とか大学生とかよりも、小学生!スポーツ界でもね、幼稚園や小学生の頃からですしね。科学でもそういうのがあってもいいのかもしれません。世の中変えるとかならね。

井上)地元の小学校の4年生が社会見学で来られましたよ。もう「わー!!」って、あちこち行ったり来たりする(笑)。小学生でこういうとこ見たら、本当に科学者を目指すと思いますね。どちらというと高校生ぐらいじゃ文系か理系かとか、バイオサイエンスのかロボティクスみたいなところで悩んでるけれど、小学生はもうちょっとふわっとしているし、そういうタイミングの方がいいかなという印象です。

--高校生の2年生に上がるときぐらいに、文系理系を選択するじゃないですか。だからもう2年3年でこれ面白いなと思ってももう遅いっていうのがありますからね。

藤澤)ちょうど先日、家で、地球の地表面と上空で、地表とスカイツリーの上で、時間の流れの速さが変わるという相対性理論の話をしていたんですよ。それを実際に計測したものが、この研究所にあったのには驚きました!子どもたちも、実物を目の前で見るとすごく刺激を受けると思うんですよね。「聞いていたのが、これか!」って。

スカイツリー模型

塚本)理論として聞いているのと、実際に計測してみて差が出るっていうのは、全然印象が違うよね。リアリティがある。

--しますか!!島津さんのここで。子供向けのなんか。

塚本)他にも他社の研究所もたくさんありますし、それらを、ぐるっとまとめて回ったら、もうすごく面白そうだけど。

--「アインシュタインツアー」とかなんか名前つけて。

塚本)ただ、ここに集めて、できるだけ子どもたちが自分で活動するようにして。

--いいんじゃないすかね。だってKICKに入ってるロボット競技チームなんて、中学生が自分でスポンサー集めしてますからね。ここに見学に来たい小学生が自分でクラウドファンディングをして、「僕こんな研究したいからお金ください」とかいうようなとこからやってもいいし。「僕はあの相対性理論を理解したいから島津製作所の研究所に行きたいんです」と。今度企画します!

藤澤)子どもたちにとって、最先端の技術っていうのは、テレビやYouTubeで「見る」ことはあっても、「触れる」機会は多分ないんじゃないかなと思います。今の子どもたちがまだ「青少年科学センター」なんかに行っているかどうか存じ上げないですが。

塚本)インターネットとかiPadで、どんどん調べられるじゃないですか。でも、リアルがないんですよ。その状態で大学まで行って、大学でもやっぱり実験していない。電気系とか機械系とか言っても機械を触ったりしてるわけではないっていう学生が増えて、ちょっとメーカーとしては危機感を覚えているんです。

藤澤)そうですよね。

塚本)インド人を採用したんですけど、彼は、こっち来てめちゃくちゃ実験してるんですよ。普通の日本人の研究員がやる量の3倍ぐらい。それを見て、そういえば我々はこんなんやったなと思い出しました。頭じゃなくて、手で感じる、覚える、というようなところが研究には必要なんです。その辺は大学に期待できるか?今はむしろ高専が、実物と理論のバランスをうまくとっていますよね。

藤澤)そうですね。高専はそういう意味で、今、企業からすごく注目されています。

塚本)量をこなさないいけない、たくさんデータがないの頭だけで考えても仕方がない、って古いかもしれませんけど、やっぱり、ある時期ある量をこなすっていうのは大事だと思います。さっきのデータ分析の話と人間の経験も同じで、ある時期ある量をこなさないと、人間も学習できないので、経験という意味でもそれはいいと思います。

素敵な会場

出会い、快適さ

--島津製作所さんの基盤技術研究所の使命としてオープンイノベーションがあるとのことですが、この学研地区の他の研究機関、あるいはスタートアップ企業の皆さんとかに対する期待とかって何かお持ちでいらっしゃる?

西本)魅力的な技術を持っていらっしゃるところがたくさんあるのかなと思うのですが、なかなか今日のような、出会う機会があまりないと言いますか、深く話すことがないのですよね。自分たちも出ていかないといけないんですけれど。

--見学会とかないんですかね。今日みたいな。いろんなとこ回るようなの。

塚本)これだけたくさん研究所とかがあるんだから、見せたらあかんのですかね。

--そう思って「けいはんな住人」を始めてるたんですよね、とりあえず。ちょっとずつ横の人と友達になろうと。今日は島津さんですけど、次回また違うところでできたらいいなと。

塚本)以前、堀場製作所さんの研究所に行ったことあるんです、琵琶湖の。あちらもコンセプトがあるんですね。なんか階段とかで出会うような、エレベーター使わずにね。偶然の出会いを生み出すような。

--「偶然の出会い」で言ったら、少子化を防ぐためには、社会自体がその偶然の出会いを増すような仕組みを作った方がいいのかもしれません。今の若い子は、インターネットとか婚活で知り合うじゃないですか。それはそれでいいんですけど、一方で、京都駅の階段とかでも偶然の出会いがあるとか、今日のテーマじゃないけど、リアルでもそういう工夫がいるかもしれませんね。

藤澤)オフィスビル関連の企業さんが言ってたのですが、コロナ前は、100平米当たり何人収容できるかみたいな、効率性がビルの売りだったそうです。しかし、コロナで一気にリモートワークになってしまって、オフィスは、どう快適に過ごせて、そこでイノベーションを起こしてもらえるかっていう考え方に変わってきているのだそうです。共有スペースをどう作っていくかっていうところを、新たに提案していかないと戦えなくなってきてるそうですよ。

--へー!

藤澤)先ほど、各研究所への子どもの見学の話がありましたが、このけいはんな地域では、メッセ、展示会を結構たくさん開催していますよね。そういうところに、子ども連れてくるっていうのもアリなんじゃないかなと思っています。小学生の方がいいかもしれませんけど、中学生とか高校生とかでもいいと思います。今は、例えば中学生が1人でメッセに行こうってならないですよね。自分だったら行けないですね、ちょっと怖いと言うか。だから、そういうところに子どもを連れて来られないかと画策しているんです。地元の商工会の集まりで、今年の秋のメッセの出展に関して、どう人を呼んでこようか、。子ども連れてくるっていうのも面白いなあと。

塚本)島津さんのような先進の技術に触れていただいて、そこを目指す子供たちも出てくるでしょうし、この辺の工場とか、建築系の会社さんでもいいんですし、見ればそういうところで働いてみようかなっていう子たちも出てくるかもしれないし。

藤澤)私、この辺に住んでて、この辺に仕事があるっていう認識がそもそもなかったです。大学出て就職は大阪、東京か、どっちかなっていうイメージで就職活動する。この辺にあるのはあるんですけど。そういうイメージがなかなか湧いてないんじゃないかと思いますね。

塚本)アメリカで会社を経営している時、オープンハウスをしましてね。従業員が家族みんな来るんです。子どももそうですけど従業員もみんな喜んでね。「お父さんはこれを作ってる、こんな仕事をやってる」って子どもにも分かってもらってね。それが結構よかったんで、今の会社でもやろうと思ったんですけど、みんな賛成しなかったですね(笑)

--今、飲み会とかも誘いにくいじゃないですか、特に上司からは。だけど若い子でも誘って欲しいと思ってる人も、どうも結構いるのではないかとも思います。

藤澤)コロナの時に就職した子なんかは、やっぱり交流の機会がなかったことを、ちょっと損だと思ってて、つき合いがないから呼ばれたら行く気でいるんですけども、そういう空気がどうかもわからないんですよ。

--ですよね。ですから、もう1回聞いてみられては?!(笑)

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