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令和5年度京都府起業支援事業費補助金【ハプキタス株式会社】

心の痛みを可視化する疼痛診断補助システムの開発

(令和5年11月28日、ものづくり振興課 濵田・白石)

令和5年度起業支援事業費補助金を活用して起業を目指す和田さんが、原因不明の体の痛み「痛覚変調性疼痛」の早期診断を可能にする補助システムのプロトタイプを試作し、臨床現場での活用に向けて準備しておられます。

全国に1,400万人の患者がいる痛覚変調性疼痛(とうつう)とは・・?

――痛覚変調性疼痛ってどういった症状なのでしょうか。

和田)組織損傷や神経損傷がないにもかかわらず、原因不明の体の痛みを抱えている方は、もしかすると痛覚変調性疼痛かもしれません。

痛覚変調性疼痛とは、中枢神経系の可塑性変化によってもたらされる新しい痛みの概念です。国際疼痛学会が「第3の痛みのしくみ」として提唱し、日本疼痛学会など痛み専門の国内8学会の連合が2021年秋に「痛覚変調性疼痛」と呼ぶことを決定しました。

痛みの発生は従来2つで分類されていました。1つは「傷や炎症による痛み」、2つは「傷ついたり圧迫されたりした神経の障害による痛み」です。その2つに当てはまらない痛みとして、脳の神経回路の変化が関係している「痛覚変調性疼痛」が新しく加わりました。線維筋痛症や過敏性腸症候群もその1つです。

――第3の痛み、原因不明だった痛みが解明しつつあるのですね。

和田)近年、コロナ禍や生活環境の変化などが起因としたストレスなどの社会心理的不安により、患者数の増加の一途をたどる「痛覚変調性疼痛」患者は全国に1,400万人と推定されております。身体の様々な部位で痛みや不快感、感覚過敏を生じることから、日常生活への影響が大きく、QOL(生活の質)が阻害され、ウェルビーイングが損なわれています。

痛覚変調性疼痛では、脳の異常が原因と言われており、通常の検査では、疼痛確定のための、異常所見に対する明確な診断方法は、問診を中心とした愁訴の聞き取りを主とした診断に止まっており、定量的なデータに基づく診断がないのが現状です。そのため、適切な診断がなされず、患者の治療に対する満足度は低いままとなっています。

サーマルグリル錯覚に着目した温冷覚刺激装置の開発!

――サーマルグリル錯覚とは?

和田)単独では熱いとは感じない温かい物体(40℃程度)と冷たい物体(15℃程度)に同時に触れると、熱い物体に触れたような感覚や痛みを感じたりする錯覚現象のことです。痛覚変調性疼痛患者は、サーマルグリル錯覚を一般の健常者より鋭敏に感じるといわれております。その錯覚を生じさせる機能を搭載した診断補助デバイス装置および痛覚または不快感をアンケート形式で回答する問診アプリの開発をしており、医療現場の医師や痛みに対するペインリハビリテーションを行う理学療法士の意見をとりいれながら、2024年にはクラス2.の医療機器承認を目指して、臨床評価を実施に向けて取り組んでおります。

――素晴らしいですね。

いつでも、どこでも、だれでも使ってもらえるデバイス開発を通じて、必要とするすべての人々の手元に届けたい

和田)会社名は『ハプキタス株式会社』にしました。【HAPTIC:パプティック(触覚)】と【UBIQUTOUS:ユビキタス(いつでも・どこでも)】の造語です。前職では触覚計測システムの開発を担っており、本事業でも触覚を通じて医療・リハビリテーションの業界への親和性を高め、必要とするすべての人々の手元に届ける製品になればと思っております。

――製品が完成するのが待ち遠しく、今後の展開がとても楽しみですね。

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