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自然観察路ガイド るり渓を歩こう


京都の自然200選「るり渓」

JR園部駅-南丹市営バス(八田乗り換え)-「るり渓」バス停-約1.5キロメートル(徒歩約20分)-「榎」バス停-約3キロメートル(徒歩約80分、渓流歩道)-通天湖

るり渓は南丹市園部町の南西端で、大阪府、兵庫県に隣接するところにあります。この谷は、東に半国山 (標高774メートル) 、西に深山(標高791メートル)をひかえ、標高340メートル~530メートルほどで起伏の緩やかな高原状の山地にできた全長約4キロメートルの浸食谷です。谷の流れは園部川に注ぎ、やがて桂川となります。
渓谷を囲む山々は、スギなどの植林やアカマツ・コナラを主体とする雑木林からなっています。
渓谷をつくる岩石には、京都府内では珍しい溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)という火成岩が見られます。この岩石は、白亜紀(約1億3千5百万年前から7千万年前)の火山活動によってできたものとされています。

コースに沿って歩こう

るり渓は既にこの辺りから渓流となっており、車道をしばらく行くと、「鳴爆(めいばく)」という字が書かれた案内板があります。大岩がいくつも重なり、流れは辺りに音を響かせています。川に沿って進むと、やがて視界が開け、榎(えのき)の集落があります。流れをさらに進むと、渓流歩道の入口に着きます。これから先は流れも急になり、岩盤が露出した渓谷となってきます。周囲はコナラやアカマツの林で、その下にネジキやツツジの類があります。

歩道入口付近の大きな岩は、ほとんどがチャートと呼ばれ、川底に見られる黒っぽい粘板岩などとともに中・古生層を形成している岩石です。さらに歩道を進みながら流れの中を注意して見てみると、少し緑がかった石を発見します。これは溶結凝灰岩で、火山噴火現象のーつである火砕流によってできたものです。

やがて歩道は二つに分かれ、川の両岸を歩けるようになっています。この付近では、3月末から4月上旬にコウヤミズキが淡黄色の花を咲かせます。
4月の中旬には、コナラやリョウブの若芽も出て、新緑がまぶしくなります。谷道のところどころでは、ショウジョウバカマが薄紫色の花を咲かせます。
5月の中旬、渡り鳥のホトトギスの声が遠くに聞かれ、谷ではオオルリがさえずり始めます。ちょうどこのころ、渓谷の住人、カワセミが繁殖期を迎えます。流れが広くよどんだところでは、ヒスイ色をしたこの鳥が飛び立つのを観察できます。
このるり渓一帯では、90種以上の野鳥が確認されています。

渓谷の両側のコースのどちらを進んでも、やがて小さな鉄の橋が見えてきます。この上流に「双龍渕(そうりょうえん)」という滝があります。
この滝をつくっている岩石を見てみると、黒い層と灰色の層が数ミリ幅で交互に見られ、しま模様をつくっているのがわかります。これは、かつてこの辺りが湖底であったときにたまった火山灰が固まったものです。
夏には、谷を吹きぬける涼風にのって、カジカガエルの声が聞こえてきます。両生類の仲間では、オオサンショウウオも生息しています。

岩間にひっそりと生える渓谷の植物を観察していると、ダイモンジソウのようなかれんな植物にも出会うでしょう。

ダイモンジソウと会仙厳付近 

さらに進むと、「玉走盤(ぎょくそうばん)」と呼ばれる川床の岩石が廊下のように平らになったところを通ります。この辺りの岩石は、下流と同じ凝灰岩なのですが、やや白っぽい感じがします。川床に転がる石を取ってみると、直径1ミリメートルぐらいの赤い結晶が見つかります。これはガーネットで別名ザクロ石ともいいます。
川の流れはこの上流で分岐します。右(支流)に行けば、「水晶簾(すいしょうれん)」と呼ばれる小さな滝があります。ここから上流の本流では、川床にも白っぽい花こう岩が現れます。
水の流れは、やや広くなり、周囲がやや明るく開けて、秋に紅葉の美しいところです。

渓流歩道を上りつめたところが、ダムのえん提です。このダム湖は通天湖と呼ばれ、治水、かんがい用に造られたものです。
通天湖をさらに奥に行くと、奥るり渓です。さまざまな公共施設が建ち、近くに笹に覆われた深山を望むことができます。

観察ポイント

1 火砕流と溶結凝灰岩

ここで見られる溶結凝灰岩というのは、火山から噴き出した火山灰や軽石、噴き飛ばされた山体の岩片などが固まってできた岩石です。よく見ると、灰色の岩石の中に細長く引き伸ばされた岩片や軽石が見られます。火山から噴出したときは高温ですから、軽石や火山灰は一部溶けてつながって、圧縮され、横に細長く引き伸ばされて固まっているのです。
この岩石は、地下のマグマが噴出して固まった溶岩とは違って、火砕流として噴出したものです。火砕流は、火口から噴出した数百度以上の高温の火山灰や軽石が火山ガスと混ざって、秒速数十メートル~百メートル近い速さで、山腹斜面を流れ下る現象です。

2 渓谷の両生類

カジカガエルは、日本固有のカエルで、主に山地の渓流に住んでいます。川原の大きい石の間や、コケの生えた岩の上などで生活し、6月~8月ごろ、よどみの石の下や草の根元などに卵を産みます。オタマジャクシは大きく、灰色で、体や尾には黒いはん点があります。雄の鳴き声は美しく、キュルル、キュルルといったぐあいに聞こえます。
同じ両生類で、サンショウウオの伸間も,この渓谷には生息しています。特別天然記念物のオオサンショウウオも数は減ったものの、健在です。オオサンショウウオは、世界最大の両生類といわれ、体長60センチメートル~70センチメートルに及び、岐阜県以西に分布しています。川岸の木の根元などに堀られた深さ2メートル~3メートルもある穴の奥に潜み、夜間に穴から出てえさをあさります。動物性のものは何でも食べ、どん欲です。目にすることはめったにありませんが、産卵は8月下旬から9月下旬です。

オオサンショウウオ

3 るり渓の花こう岩

この「水晶簾」といわれるところまでが溶結凝灰岩で、ここから上流に花こう岩が現れます。少し上流の「欄柯石(らんかいし)」という表示のあるところには、川の中央に、直方体の花こう岩が横たわり、方形に割れ目が入っています。この辺りの花こう岩は互いに直交する3方向に割れ目(方状節理)が入っています。
花こう岩とは、ごま塩のおにぎりのような岩石です。手に取ってみると、黒いぴかぴか光った鉱物(黒雲母)や、透明な鉱物(石英)、陶器のかけらのような白い鉱物(長石)などの大きな結晶体からできていることがわかります。

この岩石は、地下数十キロメートルの深いところでマグマが数十万年をかけてゆっくり冷えて固まったものです。ゆっくり冷えて固まったために、マグマの中で、それぞれの鉱物がじゅうぶんに成長し、このように肉眼でも結晶が見えるような岩石になったのです。マグマが地上に直接噴火すると火山となりますが、花こう岩は地下深くでマグマが固まってしまったものですから、花こう岩があるからといってそこに火山があったということにはなりません。花こう岩が地表で見られることから、その地域が隆起したことがわかるのです。

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