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第3回生活部会の開催結果

日時

平成30年11月16日(金曜日)午前10時00分から午前12時00分まで

場所

京都府職員福利厚生センター第2・3会議室

出席者

委員

松井部会長、伊豆田委員、伊藤委員、伊庭委員、佐竹委員、鳥屋尾委員

ゲストスピーカー

関根千佳氏
(同志社大学大学院政策学部総合政策科学研究科 ソーシャルイノベーションコース客員教授)
(株式会社ユーディット(情報のユニバーサルデザイン研究所)会長)

事務局

松本企画理事、石澤計画推進課長
松村健康福祉部長、山口高齢社会対策監、青木健康福祉部副部長、吉田健康福祉総務課長、松村健康福祉総務課参事、福田福祉・援護課長、吉田生活・就労一体型支援担当課長、佐藤自殺対策推進担当推進課長、鎌部精神・社会参加担当課長、高野家庭支援課長、下村生活衛生課長、横田薬務課長
河島総合就業支援室長

配布資料

議事内容

ゲストスピーチ

(注)UD:ユニバーサルデザインの略

  • ユニバーサルデザインは、年齢、性別、能力、体力などに関わらず、より多くの人ができるだけ使えるように、最初から考慮して、まち、もの、情報、サービスなどを作るという考え方と、それを作り出すプロセスと定義されています。よく「障害の有無に関わらず」と書いてありますが、どちらかというと「能力」です。また、UDは誰もが使えるように最初から考えて作ることです。遠くを回るようなスロープを後付けするのではなく、初めからベビーカーが一緒に通れる環境をつくるということです。
  • 京都を初め、様々な自治体の基本理念として、UDに取り組んできました。また、高齢社会に対応させるということで、企業もUDを前提としたものづくりに取り組んでいます。最初から多様な人が使えるデザインのほうが、コストもかからずデザインも美しいです。UDは若くて元気な皆さんも対象です。障害者、高齢者、子どもにも使えるということは、若い人にも使いやすいということなので、結果として、まちの活性化や企業のブランド力アップにつながり、行政や企業にはメリットが増えます。諸外国では、公共調達の要件で、ヨーロッパでは去年からUD以外のものを買ったりつくったりすると行政担当者が処罰される上に罰金がある刑事罰、民事罰ができるくらい厳しくなっていますが、日本にはそういう法律はありません。
  • 日本は、2005年に世界最高齢国家になり、高齢者が外に出られるようなまちづくり、家の中で快適に暮らしていけるようなものづくりが大事ということで、UDが必要だと言われはじめました。当然、子育てしやすい町という概念でもあります。また、2016年に障害者差別解消法が施行され、行政の窓口や病院や図書館などの公的機関等で、障害があるということを理由に来庁を断ることができなくなり、UDへの理解が必要になりました。世界的にも子どもの数は減り高齢者が増えていくので、私たちの意識を変えないと、2050年には世界が成り立たなくなります。
  • 京都府の施策では、私も関わり、おもいやり駐車場やパーキングパーミットを熱心に進めました。他にも、避難所のUDガイドラインを作ったり、京都UDおもてなし手帖を作って観光のUDにも取り組んだりしています。同志社大学の学生も府民向けの小冊子を作っています。病院で、言葉が分からない外国人の子どもが発熱したときのために、多言語でサポートするというスマホのアプリも人気です。また、私が単著をつくるときには、私の会社の重度障害の職員が描いた絵を表紙に使うということをルール化しています。彼らがICTを使いながら仕事をすることをずっと支援しており、全盲の知り合いが、大手の会社の広報でホームページをつくったりしています。
  • 日本でUDが進まない問題は、二つあります。教育と就労がインクルーシブではないからです。例えば、日本には、障害のある優秀な子どもたちを一緒に教育して大学に進めるというルートがほとんど存在せず、大学担当者は、技術や法律を知る優秀な障害者を育成するということができていませんでした。結果として、企業や自治体に、上級管理職として障害者を雇っていくというルートが存在しません。在宅勤務もできていません。米国政府は16%の障害者雇用率ですが、日本は1%も行ってないという状態です。大学側も反省し、障害のある学生が大学に行きやすい環境をつくろうと思っています。欧米に行けば、世界的に有名な大学にも、聴覚、視覚、肢体不自由、発達、精神などの障害のある学生がいます。障害は医学モデルではなく、環境が整っていないからその人が受け入れられないだけです。
  • UDのもの以外は買わない、売らない、つくらないという京都にしてほしいと思います。UDを前提として誰もが暮らしやすい町にしなければいけません。誰でも、いつ障害を持つかわからないので、自分が障害を持ったときのロールモデルとして、障害者がそこに存在してくれていると理解すると、障害者に対する概念が変わってくると思います。

各委員からの主な意見

(注)UD:ユニバーサルデザインの略

【障害者支援関係】

  • 福祉施設を回っていますが、障害の種類や程度が異なり、長期ビジョンの「全ての人が障害のある人の特性を正しく理解し」というのはできないと思います。また、「障害のある人たちが創作する、競技する」というところも、誰もが活躍できる社会の構築というテーマですが、極端に絞られている施策に見えます。「重症心身障害児の医療助成」も書いてありますが、家族へのサポートなど地域がその人たちを当たり前に支えるまちにするのにはどうしたら良いかという視点が必要だと思います。
  • 今までの障害者福祉は、検討シートの表現のとおり、障害をいかに克服するか、障害に何らかの手だてを打って社会適応していただくにはどうしたら良いかという医療モデルとして障害者を捉えてきました。しかし、UDの発想は社会モデルで、社会をどう変えるかということであって、20年後を目指すために、真逆の取組を始めようということだと思います。
  • 大阪はインクルージョンを進める方向で、教育も就労も進めています。京都は、伝統的に障害の特性に応じてその子たちの教育を保障しようという考え方なので、養護学校のニーズがすごく高いです。この考え方を変えないと京都でUDは進みません。
  • (幼稚園や保育園の)年中さんのスクリーニングで発達障害だと言われると、親御さんは必ず特別支援学校に入れたがります。しかし、外国では、発達障害の子が普通の学校に行くのは当たり前です。
  • 障害者差別解消法ができるのに応じて条例をつくっていますが、会議では障害当事者の声を引き上げるということで、一生懸命取り組んでいたと思います。20年後のビジョンにはその、当事者の意見を聞くシステムづくりを入れるべきだと思います。そうすると、UDやインクルージョンの方向に変えないといけないという機運が生まれると思います。
  • 神経難病だけで何百種類もあり、それぞれの障害特性も全部違います。UD研修のときには「理解しようと思わず、その人にどうしたらいいかを聞いてください」という教育をします。見え方も動き方もみんな違うので、この人が心地よくなるためにはどうしたらいいかという聞き方を学ぶことが一番大事な理解だと思います。それを聞けるような京都が20年後のあるべき姿だと思います。
  • 普通の大学でこういう勉強をしたいと思ったときに、その学部が、学生を障害の有無に関わらず入れてくれるというのがインクルージョンです。分離教育ではなく、統合教育です。障害があってもなくても関係なく一定の学力が必要で、障害があるということでリジェクトされることはないという意味です。点字受験や、発達障害の場合には別室受験のように配慮は必要ですが、同じように試験を受けます。
  • 地域の観光ガイドにUDの視点を入れる取組をした際に、それまで身体障害のある方のガイドの経験がなく、「何か聞いたら失礼かな」と勝手に考えてしまい、余計に距離ができていましたが、「同じです」「ただ安全だけを見てもらったらいいです」と教わり、自分の視点が変わり、色々なことに役に立つようになりました。誰にとっても暮らしやすく、誰にとっても安全で、誰にとっても居心地がいいということに、気持ちが変わることが大事だと思います。「全ての人」や「正しく」という言葉を入れると、難しい、無理という話になりますが、「配慮」ではなく「前提」とみんなが気付くような機会が多くあると、20年後は変わっていくと思います。障害に対しても、高齢者に対しても、みんなが住みやすい町こそが、目指すべき京都府だと思います。
  • 当事者の支援というよりも、周りの理解の支援の意味の正しく理解するという、周りに理解をしてもらうための場を書き加えたらいいと思います。
  • 子どもの居場所には発達障害の子どもが来ることが多いです。私たちは専門家ではないので、対応に悩みます。ですから、私たちが理解するような勉強会をしてほしいです。
  • 障害のある方と一緒に働いていますが、その方たちとのセミナーにおいて、今までは障害のある方だけを集めて会社のルールなどを学んでもらっていましたが、今年は障害のある方とその周りにいる職場の方にも参加をしてもらう形式に変えました。自分が何を悩んでいるのか、どうしてほしいのかということを聞き合う、話し合える場づくりのような内容でした。これは、双方からすごく好評で、自分たちも言いたかったし、こっちも聞きたかったという会話が生まれ、良かったと思っています。このようなことが色々なところで起こるといいと思います。
  • 大阪に、発達障害や様々な何らかの情緒障害を持っている子が普通の学級に入っている小学校があります。色々なトラブルがありますが、そのトラブルが起こるたびにみんなで話合って解決するということに一生懸命取り組んでいる学校です。同和人権教育の流れの中から生まれた取り組みですが、大阪は普通学級に障害児の子どもたちが入って、一緒に生きていこうという取組を30年くらい行っています。大阪の高校の例では、発達障害の子どもたちに優先枠をつくって入学する形にしています。当然それに対応する必要がありますが、最終的には普通高校の卒業証書がとれる学力を身に付けて卒業しています。京都の場合は特別支援学校の高等部に入っており、入試制度そのものが違います。
  • 学校にダウン症の子を入れたいという親がいると、今はもう合理的配慮で親が入れたいという学校に入ることになり、特別支援学校へ行ってくださいという話にはなりません。普通の学校に受け入れた結果、子どもたちは自然にその子のことを受け入れて、何の区別もしません。
  • 外国では、特別支援学校は憲法違反で認められてない国があります。世界の先進国の中では、1975年ぐらいから特別支援学校ではなく普通学校の中で障害のある子どもたちが一緒に勉強する、例えば校長先生が全盲という例もあります。しかし、日本は、大阪のような先進的なところでないと一般的ではなく、先生方もまだ教育を受けていない状況です。去年くらいから、普通学校の先生方が障害のある子どもたちの教育をどうするかというカリキュラムが入ったので、これからだと思います。
  • 4年後に到達させたい状態のところに、精神障害者の方たちのピアサポート体制を文言として入れてほしいです。北海道の「べてるの家」の取組が先進的だと思うので、京都でも学んでやっていけたらと思います。
  • 障害者福祉で、IoTやAI、情報機器の開発が進んでおり、ろう者と手話ができなくても音声の変換機能があと数年でできると思っております。UDトークといわれる音声認識は、マイクを通せば、それが自分の携帯電話にほとんど音声認識で出てきますし、そのまま議事録にもなります。労働産業分野に入るかもしれませんが、そのような開発を支援していく、UDを実現させるための機器を開発する支援やベンチャーでやっている若い人の支援を、20年後の状況に書き込んでほしいと思います。


【その他福祉全般関係】

  • 京都府で「こどもの城づくり事業」という子ども食堂や子どもの居場所づくり事業をしています。5年前から、初めは夏休みと休日型という年間15日から始まり、50日型、100日型という形でだんだんと支援を頑張っているところです。大学生や教員のOBにも協力していただいています。母子家庭の母親は8~9割の方が働いているにもかかわらず、一般世帯の半分ぐらいの収入しかなく、非正規労働の人が多く、子どもの貧困の連鎖という形で、子どもたちにはいろいろな形で支援していきたいと取り組んでいます。生まれ育った環境に左右されることなく、子どもたちの行きたいところ、夢を持って頑張ってほしいと思います。
  • 去年から大手のコンビニで、全国で400人のひとり親の子どもたちに月3万円の奨学金をいただける事業をされています。奨学金は、子どもたちの学力による線引きをされることが多いですが、この事業は、所得が低かったり、低いことによって夢を実現できなかったりする方に渡しましょうと、作文を書いて、自分がどうなりたいかという夢を実現するための奨学金です。このように、企業が子どもたちに目を向けて支援をしてもらえる社会になってほしいと思います。
  • 学校以外に子どもの居場所ができるというのはすごく大切だと思います。生活保護の方は特に、家の中にいてもお金が入るため、孤立している高齢者の方がおられます。生活保護を受給するには、地域のこういうものに参加しなければもらえない、月1回ここに来ようとか、ひとり親の方も、居場所の支援の中で必ず親と一緒にすることでその親にも何か特典がもらえるような施策があると、社会参加し、地域との関係ができ、居場所が増えるきっかけができるのではないかと思います。
  • 世の中を支える15歳から65歳ぐらいまでの若い世代が減って高齢者が増え、生まれる子どもの数も減っている中で、自分で働いて両親、祖父母の世話をして、子どもも育てるのは大変です。1人が1人を育てる、社会で支えていく仕組みができていかないといけないと考えると、地域コミュニティ、小さなコミュニティ、町内のような場所が復活することは大切だと思います。
  • 母親の所得が高くても、正社員で夜の8~9時まで働いて朝は7時に出ていくと、母親との触れ合いがなく、その子どもはほっこりした場所が欲しくて居場所にきます。経済的な事情は関係なく、支え合いは必要だと思います。
  • 子ども、若者、障害者、高齢者など、それぞれの取組が分断されずに「ごちゃまぜ」という発想で、コミュニティの中で安心して年をとっていける、そういう政策があると京都で安心して年をとれると思います。子どもの居場所づくりも、高齢者施設の中にあってもいいと思います。お年寄りにとっては、子どもの声がしているだけで幸せになれます。京丹後に、子どもたちがいるカフェの隣が高齢者施設で、互いに建物の中を行き来している素敵な場所があります。地域の中で、年齢を超えてお互いが役割を持てるような場所があると良いと思います。
  • 最近は、マンションで動物が飼えないので、虫すら飼ったことない親子もいます。大人になったときに生き物に対する適応能力がないので、今の子どもたちの情操教育には、当たり前のように犬や猫もと過ごせることがメリットだと思います。それが未来の京都にとって得だということを書くべきだと思います。
  • 「正しく理解し」のところも、前の文章と後ろの文章を入れ替えるだけで違うと思います。「地域の人たちの共生を目指し、正しく理解する」なら分かりますし、「人と動物が共生する社会を目指すための啓発」なら理解ができます。
  • 一人暮らしのお年寄りが犬を飼っていて飼い主が亡くなったばあい、引き取ってくれる仕組みがうまくあれば良いと思います。エンディングノートの中に書き込もうという運動があり、アメリカでは、私の猫を世話してくれた人に遺産を全部譲りますという遺書を書かれた人がいるそうです。
  • 子どもが熱を出して、仕事をしている母親が帰ってこないといけないような状況があったときに、生活、仕事場、学校、医療、あるいは居場所というのがコンパクトに集まっていないと、将来は難しいと思います。しかし、人が集まる地域もあれば、逆にいなくなる地域も出てきます。人口は減るので、きちんとした都市計画を持って、同じ思いを持っている人を集めていくことは大事だと思います。商店街の空き店舗で、お店を若い人に貸してしまったら自分が住みにくい、知らない人に貸すのが不安と言って貸さない人がいますが、かといって商店街で夜にイベントをしようとすると、うるさくて寝られないと文句が出ます。そのような人は商店街に住んでもらっては困ります。本当に商売をしたい人だけが商店街に集まったり、御店をたたんで静かなところに住んだり、それらが選べるような、調整役をすることが行政の役割の一つだと思います。
  • 人間Uberといいますか、子どもが熱を出したが今日は大事な仕事があって家に帰れないというときに、信頼できるおばあさんが、私が保育園から病院に連れていってあげますよということを言ってもらえる仕組みができると、母親はすごく助かると思います。50代、60代の女性で子育てが終わった人たちは、子どものこともよく分かっていて、そういう意味で信頼できます。その人たちにお願いして、迎えに行って、おうちで見てもらうというようなことが現実にできると良いと思います。
  • 日常生活支援で、母親が急に残業になると保育所のお迎えに行って、家で見てくださいという取組はあります。しかし、病気の子どもを預かるとなると、人間関係ができてないと駄目ですし、責任問題になってくることもあり、病気の子どもは預かれないということもあります。
  • 20年後のありたい姿に、「経済状態に関わらず」「ひとり親家庭が安心して暮らせる社会が実現している」という二つの項目があり、この20年後に向けて4年後に到達させたい状態がありますが、そこに「自立に向けて」「自立した生活の確立」という言葉があります。経済的、社会的に自立していくというときの私たちのイメージは、「自分で立っていく」「誰の世話にもならない」ということで、ある意味孤立していくということです。この4年後に到達させたい状態の「自立に向けて」「自立した生活」という言葉と、上に書いてある「地域社会の一員として暮らせる」とか「安心して暮らせる」ということの間に、若干の距離があると思います。4年後のところに孤立を防ぐとか、今求められている新しい言葉が入るべきだと思います。
  • 行政が手を出す必要がある分野と、個人の努力でできる部分と、企業がやる部分、民間に任せてしまう部分が書かれているので、もう少し整理して自立と地域の間のワードが出てくる気がします。
  • 自助・共助・公助と言いますが、それが見えないと思います。
  • 依存症患者が専門の先生にお世話になったり治療の拠点に行ったりというだけではなくて、ピアカウンセリングと言いますか、依存者同士の結び付きの中で助け合う取組もあります。私が知っているのはダルクですが、互助組織というかピアサポート組織も含めた表現にするべきだと思います。
  • 自殺が多いのは50代、60代以上の方たちで、原因を見ると健康不安です。病気になっても生きていけるというロールモデルを示すことによって自殺率は減らせると思います。それぞれの悩みを抱えた人が支援を受けられると同時に、コミュニティの中でその人たちを孤立させないで声かけをしていくことによって自殺率が減ると思います。
  • 高齢社会になっていくと、病気と生活の両立支援という視点に広がっていくべきだと思います。

(注)Uber(ウーバー):アメリカ合衆国の企業であるウーバー・テクノロジーズが運営する、自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリ

(注)ダルク:ドラッグ(DRUG=薬物)のD、アディクション(ADDICTION=嗜癖、病的依存)のA、リハビリテーション(Rihabilitation=回復)のR、センター(CENTER=施設、建物)のCを組み合わせた造語で、民間の薬物依存症リハビリ施設

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