第3回集中ディスカッション [丹後活動プラン]
日時:平成16年9月21日(火曜)午後1時30分から
場所:天橋立ホテル(宮津市文珠)
意見の概要(商工業分野)
丹後織物の新しい分野・販路を開拓する戦略を立てよう
- 他の絹織物産地が低下する中で、丹後が唯一生き残り、日本の絹織物の半分を織っているという原点に立ち返って、その強さをどう伸ばしていくかという戦略、ビジネスモデルを戦略チームでつくる必要がある。ちりめんが100万反売れているということは、すごいこと。
- 1万円の反物が最終的に20万円で販売されているが、介在しているところがどこも儲かっていないというのが現実で、着物のビジネスモデルを変えていくことが必要。現在、川下的な部分が室町に集約されているので、京都府の中でこれを変えていくことが必要。
- 和装でなくてもいい。バイパスをして室町を避けて通るということが出来ないのか。売り先をコーディネートする仕組み、事業所がうまくネットワークするための核が必要。
- 直接小売に近いところで販売したらどうかということだが、丹後の体制等から考えると、室町も必要である。100台近い織機を面倒見ていくためには、白生地生産をなくすつもりはなく、本業としてやっていく。
- シルクは大変おもしろい分野で、これを使って新しいものが出来ないか。シルクはリサイクルが可能な商品であり、例えば電磁波を防ぐものとか、シルクで培った技術力で、機械金属の方ともコラボレートして何か新しいものが出来ないかと思う。
- 織物の仕事が大好きで何とか次代につなげていきたい。日本が世界に誇れるものは何かというテーマで学生の議論があり、その結論は着物であるという話を聞いた。若い人がそう思っているということでもっと自信をもってやっていこうと感じた。
- 次世代に引き継ぐために、個々の機業で頑張っているが、いろんな方向を向いている。今、地場産業が伝統工芸となるかどうかの瀬戸際の状況。
- 現在、高齢化、機械の老朽化が進んでいく中で、いつまでもつかということもある。技術の継承とかいったことも十分考え、足下もしっかりと固めて考えていく必要がある。メンテナンスをきっちりとし、新しい機械が生産される仕組みがないと今のシェアの維持も難しくなっていくのではないか。
- 賃機という協力工場があるが、今では払える工賃はわずかで、若い人にやってくれといっても無理である。1反当たりの単価を上げていくかという話になるが、コストが高くなり、中国等の輸入ちりめんが入ってきており困難である。
- 何を目指していくか、今すぐ出来ることと、10年後に向けてやることを分けていかないと、全体の底上げが出来ないのではないか。どういう用途のものがいるのか、そのために必要な人材をどうリクルートし、いつまでにどうするのかといった具体性がないと話が前に進んでいかない。
- ビジネスとしては3年~5年を目標にすべき。あまり長期で考えると世界の変化のスピードに対応できないし、市場が変わってくる。
- これからは「選択と集中」となる。上を徹底的に伸ばすように政策メニューを変えていく必要がある。今や産業政策は、福祉の時代ではなく、強いものを伸ばす方向しか税金が投入できない時代になってきている。
- 丹後の企業にはすごいものが隠れているはず。過去から未来へ続いていく軸の中で、どういう商品をつくっていくか、1社1社が頑張る方法もあるが、100社くらいまとめていってはどうか、まとまっていけば完成品をつくることもできる。次世代ファンド等により、これだけ日本の企業はすごいんだというところをみせる。
丹後ちりめんのブランド化を進めよう
- 丹後は日本を代表する一大織物産地であるが、付加価値やブランド性がない。和風小物を観光客に売るのは間違い。和風の文化、着物文化が廃れている中でどうしていくかということが大切。
- 日本ではシルクの洋服の良いものが売っていない。デザインの良いものを半オーダーのような形で最終製品として売っていくことが必要。何とか今の状況をブレイクスルーすることが必要である。
- ブランドを独自で作るのは他の商品との区別。販路から全てをフルセットで丹後でやるというのも一つ。ハイクラスの分野をターゲットにして、社交性が高く品薄の分野に狙いを定めていく。強烈なイメージ、商品力で、品薄の分野はきっちりとある。今までとは全く違う物を通信販売で売る、商社をつくる。そのためにはアピール力の強いものをつくらないといけない。丹後という名前を使うかどうかは考えるべきで、地域を売っていくということと商品を売ることは別に考えないといけない。
- 丹後ちりめんという一つのブランドは、業界の中では有名だが、一般の人にはそれほど認知されていない。
- ブランド化するということは最終製品に近づくことが必要。新しいバイパスを考える必要がある。織物では原価プラス利益という考えだけでは今は売れない。
- ロイヤリティを取られるが、フランス、イタリアのブランドと組むのも方法の一つ。
- 日本の中のファッション関係で、丹後でファッションショーという形で登竜門のようなことが出来ないか。イタリアのコモとかミラノコレクションとか、世界に打っていけるようなことをもう一度考えてもいいのでは。
- 海外展開では、色にこだわった方がよい。シルクはヨーロッパでは最高の素材として扱われており、様々なものが作られている。タイのシルクはイギリス人がプロモートしている。
- 丹後に一番欠けているものは、企画力、デザイン力。東京でデザイナーとコラボレーションする機会を得たので、これを起爆剤として、全国に展開していきたい。
- 丹後ちりめんが現在のままでは何故いけないのかと思う。ちりめんはあくまで着物のためのものであり、服地を作るのは別の問題と思う。形を変える必要は全くないと思う。
機械金属業の高いポテンシャルを生かそう
- 丹後の製造業の技術力は発展してきており、国内で通用するような機械、ソフトなどを丹後の中だけで作っていけるようになっている。今、丹後の機械金属業で出来ないものはないといっていい。ビジネス的に合うかどうかという問題はあるが、織機だってつくれると思っていただいてよいと思う。今後も進化していくと思う。
- 丹後の機械金属業は形は下請けであるが、製造機械を独自で開発し、そのシェアは50%にも達するものもあるように、独自に工夫していく部品メーカーだ。
- 完成品をつくると製造のリスクは大きくなる。すべて脱下請けということにするというのは疑問。相手方と十分な関係が保てれば、それもいいとも思う。今ある資源の中で、どうやっていくかという戦略をもつ必要がある。
- 常にお客が何を求めているかを考え、それに食らいついていく。そして決めたら思い切ってやる。投資が必要であればそれもおもいきってやっていく。そうして出来る範囲のことをやっていかないといけないと思う。
- 国内ではここ数年消費動向が大きく変わってきたのではないか。大量生産で製造し、客に買ってもらう時代から消費者の志向が強くなり、量を追うことが出来なくなってきた。
- 客がほしいものを1個でも作る、どこにもない量産品でないものをつくる、エンドユーザーが製造者と直で相対する新しい形を始めている。
- 機械金属については、これだけ地域に集積しているのに丹後で仕事が回っていない。この集積を活かせる仕組みが必要。それぞれの会社のPRが十分出来ていないのではないかと思う。
- 丹後ものづくり王国も出来る。他の地域にない資源があり、ポテンシャルもあると感じる。
ものづくりのための人材を育成、確保しよう
- 世界に発信しようにも人材がいないので、人材面の補給が必要。
- 民間の大手企業のOBを府のコーディネーターに登用し、丹後に仕事を持ってきていただき、技術的に対応できないものは京都工芸繊維大学のサテライト等の協力を得て、先端のものづくりをしていく仕組みづくりが必要。
- ものづくりを支えていくのは人。優秀な人材が地元に残らないことが問題。高校卒業後、みんな出て行く。特に知的労働をする人が必要。特に優秀な人がこちらに帰ってこられる仕組みと、期間をかけて人材育成に取り組んでいくトータルの仕組みづくりが必要。
- シンガポールは、世界の競争力が2位であるが、国の政策としてトップハンティングをしている。この地域でもそういうことを考える必要があるのではないか。
- ものづくりは人づくりであるという点で、資格を取得できる場が丹後にあればよい。京都から学校がくる、そうすれば全国から人がやってくる。
- 丹後には素晴らしい人がたくさんいる。丹後の雇用、働く場を考えていかないといけない。
内外の交流・連携を盛んにし、丹後の新たな構図を作っていこう
- 「海と温泉とカニ」から、「和」、「和の暮らし」、「まちなみ」というプロモーションを考えるべき。
- 観光客は今は豊かなライフスタイルを過ごすためにやってくる。ここに来たら着物が似合う、作れる、その実現のためにものを買ってもらうという演出も必要。ちりめんの工場見学の受け入れや、観光ツアーのコースに組み込むなど、工場内にコーナーを設けてオリジナルの土産品等を販売している。織物業界にとって考えていかなければならないのが、観光業との連携。
- 全国的に大学の繊維学部は少なくなってきており、大学も絹織物産地との連携は必要。
- 京都工芸繊維大学では丹後サテライトを設置して約2年になるが、まだ地元であまり知られていないのが現状。丹後サテライトには期待している。大学には知恵はあるがビジネスという点では非常に弱い。しかし、川上的なところで技術的なお手伝いをすることは十分出来る。
- 繊維を含めてうまく活かせる仕組みが出来ないか考えていく必要がある。機械金属と繊維がこれだけ集積しており、顔の見えるネットワークをつくっていく必要がある。ハイテクランドとして、これだけ織物業、機械金属業等がある中、日本でここだけでしかない、ここに来ないと仕事にならないという構図を作っていくべき。
- メーカーは製造段階で製品の特色が出せるが、販売店では、価格しか独自性が出せない。しかも競争相手はインターネットにより日本全国や世界であり大変厳しい。
- 若い人は住むところにそれ程こだわらないので、インキュベータ施設などを整備し、ITも活用して、新たな仕事・職場をつくっていくことも必要。
- 食品は人を育てる大事なものであり、安いもの、安いものという流れの中で、質の高いものを消費者に提供したいと考えている。
- 消費者マインドは、高い、安いというようなことに流されるが、そこの土地で取れたものをそこの料理法で調理し、安心して食べてくださいと提供することが重要、そういった食べ方や素材を次の世代に継承していくことが必要。
- 丹後の企業は、時間を作って、他の地域を見たり、聞いたりすることがなさすぎるように思う。様々な業界を見て、何を取り入れるか、流れをつかんでいくことが必要。
- 丹後は道路交通網の整備が一番遅れている。産業だけでなく、観光も、農林水産物の販売にしても高速道路の整備が必要。高速道路が必要というのは、ビジネスの場だけでなく、若者の働く場の確保という点もある。いろんなビジネス、事業、研究所が来てほしい。丹後は時間距離がかかり、北海道や九州よりある面では遠い状況を改善する必要がある。
- 高速道路がない、時間がかかると言っても、京都市内から1時間で来れるようになっても、それで丹後に観光に来る人は増えないのではないか。
- 飛行機の使い勝手も悪い。隣の豊岡に但馬空港があるが、伊丹にしか飛んでいない。関東圏(東京)の直行便でもあれば、観光の面でもいろんな面でメリットが出てくる。