山城広域振興局
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「ともに喜び合える地域づくりをめざして」…やわた流れ橋交流プラザ「四季彩館」を拠点に、地元の食材を使って地域づくりに取り組むNPO法人京・流れ橋食彩の会。理事長の谷口さんから、日頃の活動や運営、今後の目指す方向性等についてお話をいただきました。
交流会では、京都土の塾の森川さんをコーディネーターに、スタッフの確保・参加者等の人集め、資金、地域の活性化等の話題で意見交換を行いました。
地元の食材を使った農産加工品と体験を通じた地域の活性化に取り組んでいます。設立当時、農産加工を行うNPO法人は全国で2つしかなく、今でも全国的に珍しいようです。現在の会員は女性ばかりの32人で、最高年齢が74才です。平成11年に八幡市が小学校跡地を交流施設にしようということで、JA女性部などにアンケートをしました。農業の合間の時間に何かしたい、子どもが大きくなって時間ができたから何かしたいという24名が集まり、パン、ソバ、ジャムなど得意なものを作ることで始めましたが、地元野菜などを使って商品化するのに、2年半くらいかかりました。
そして、商品販売するにあたっては、組織化が必要ということになり、府や八幡市に相談し、会社、農事組合法人など組織の種類を教えてもらいました。農事組合法人は農家の人しかメンバーになれないので、不公平。会社は社長・部長の組織が必要で、営利主義だし、週3日・1日3時間しか働かないのにそんな組織は作れないなど、いろいろな意見がありました。そしてもう一つ初めて聞いたのが「NPO」。利益も気にしなくていい、のんびりとおばさんが働きたいと言う感じに一番合っているという印象を受けました。みんなで話し合って、NPO法人を平成13年に設立しました。
四季彩館がオープンして、農村女性の手づくりが珍しいのと、流れ橋という名所もあったので、はじめの1、2年は本当によく売れました。するとメンバーから「いくらNPO法人でも、売上げがあがっているのに無償ボランティアはおかしいのでは」という声が上がり、現在は1時間610円の有償ボランティアで運営しています。
私たちの一番の目的は、「メンバーのおばさんたちが毎日毎日やっていることや、作っているものを皆さんにわかってもらって、懐かしいなあと思ってもらえる」ことで、会員が常に意識しています。その思いを実現するために、日々の売り上げに必死です。四季彩館は大きな建物で、その一部を借りていますが、施設賃借料、光熱水費など、大きな経費が必要です。ほかに有償ボランティア代、原材料費、また運営経費が必要です。特に最近は原材料費や配達のためのガソリン経費が上がり、運営、経営の難しさがのしかかってきてすごく大変です。
そんな中で、食の問題、産地偽装、事故米問題等が起きており、先日お客さんから、「これからがあんたらの時代やで」と言ってもらって、そのことをメンバーに伝えると、「今こそ私たちが、消費者の方に顔の見える商品づくりをしていくとき」と、みんなますます気合いが入ったみたいです。お客さんの言葉の一つ一つに一喜一憂。「おいしかったよ」の一言で元気に、逆に商品が売れないとシュンとなる。毎日必死でNPOにしがみついているという感じです。
会の魅力は外からはなかなかわかりづらいのですが、午前中に加工作業をして、お昼にみんなで商品について話したり、試作品を食べたり、家のことを話したりできる、そんな会員の輪が会の魅力です。会員は増えていますが、だんだん高齢化しています。若い人に入ってもらいたいのですが、どうしても賃金がネックで、食べていけないですからね。
もう一つの柱が体験です。そばうち、パンづくり、ジャムづくり、郷土食、鯖寿司づくりなどの体験があります。加工品販売より、体験はもっとお客さんと直接触れ合えるから、いろいろなことが勉強できます。ある時、目の見えない方がパンを作りたいと申込みがありまして、戸惑いましたが、「感触だけでいいんです」と言われてチャレンジしました。はじめは無表情でしたが、パン生地を触られて温かい、柔らかいと感じた瞬間に、ニッコリと笑顔に。今までに味わったことのない、お金では買えない感動を得ることができました。
地元食材を使って、トマトケチャップやブルーベリージャムなどを作っていますが、今、消費者は食に対する不信感がすごくあって、生産者の顔がわかると、少々高くても、逆に安心と思ったらすぐ買っていただけます。新しい試みですが、小麦や卵のアレルギーを心配されるお客さんの声がきっかけで、米粉を使ったパンづくりをしたくて、府地域力再生プロジェクト交付金で製粉機を購入し、10月からは八幡産米でパンを作ります。米パンは卵を入れなくても作れます。自家製粉をしているところは珍しいようです。他の団体の方にも製粉機を積極的に使ってもらって広めてほしいと思っています。今後は、子どもや大人たちへの食育がもっと必要ですし、地域をもっともっと盛り上げていきたいと思います。ぜひ一度、四季彩館にお越しいただき、作っているところを直接見ていただければ、安心して食べていただけます。
常に地域と一緒にやっていかないとあかんと思っています。地域には農家の方が多いし、高齢化しています。毎日畑に行くのが生きがいです。私たちが作物を使わせていただくことで、おばあちゃんたちがもっと作ろうという気になって、私たちもそれでさらにおいしい商品をつくろうという気持ちになる。こうしたつながりを大事にして、地域がもっと元気になればと思います。私の夢ですが、地域や農家の人が農作業帰りに、泥んこの長靴でもいいので、気楽に寄ってもらえる「地域の居場所や交流ができるカフェ」のような四季彩館にしたいと思います。
☆課題がたくさん!
☆人を集めるための工夫
「私の人生を変えたNPO活動と私の出会ったNPOの達人たち」
NPO法人京都土の塾副理事長、府庁NPOパートナーシップセンタースタッフ森川惠子
今日はみなさんにお目にかかれて嬉しいです。愛知県三河で生まれ、大学は東京で、5年間の夫の転勤に伴う海外生活の後、黄檗に住んでいたこともあり、山城に来ると当時の自分を思い出します。いろいろなアルバイトを経て、リビング京都編集者、そして現在、府庁NPOパートナーシップセンターで協働のコーディネーターの仕事をしながら、「京都土の塾」の活動にもどっぷり浸っています。今日は、土の塾の活動を紹介しながらNPOの楽しさ、大変さについてお話しします。
活動場所は、西山・大原野の、荒れ果てた、獣が多く、機械が入れられない約2haの遊休農地。山が多く、高齢者では耕作できないようなところを、スコップとツルハシで開墾しました。「京都土の塾」が発足したのが2000年で、2004年に法人化されました。社員33名、役員16名。会員は300人ほどで、年間の延べ参加人数は約700人。若者もリタイアした人も、主婦もといろんな人がいます。全員集合は難しいのですが、水曜か日曜に集合し、道を整備したり、草刈りしたりと、みんなでやることが楽しみなのです。
20ほどのプロジェクトを立ち上げて、私は、さつまいもとタマネギのリーダー。リーダーはそれぞれの作物を勉強しつつ、塾長や元農家の方などの知恵を借りながら、みんなもそれぞれ考えながら作業します。京都市から委託を受けた放置竹林再生活動では、3140本の竹を切り、その作業費をいただき、切った本数で分配しました。少し自慢話ですが、大文字の送り火「大」の字は私たちの麦ワラで点火されているのですよ。今年で3回目です。当日、私たちの育てた麦で火がつく瞬間に立ち会えて感激です。大文字送り火保存会もNPO。NPO同士の協働で伝統行事を守っています。
私は町で育って、田植えも何も知りませんでした。土の塾に入ったのは取材がきっかけで、今はセンターで働きながら、他の日は一日中畑仕事をして、NPOで人生が変わったと思います。NPOってそういう力があります。土の塾が目指すものは、機械ではなく、素手で、全身で土と向き合うこと。自然と戦いながら自分で食べるものをつくり、食べるものにエネルギーを吹き込むことです。私がこんなに活動にのめり込んだのは、汗を流して作物を作って食べるところまでやるのが自分に合っていたから。労働の成果もすぐわかります。ツルハシで1日に1mくらい耕すと、体力はつくし、贅肉は減るし、ジムより効果的です。仲間がおもしろい。ユニークな人が集まっています。
若い子たちも頑張っています。ある大手のメーカーで働いていた男性ですが、心に苦しいこと抱え、一時出社できない人がいました。でも土の塾に10日ほど毎日来て鎌で草刈りしていたら、「明日から会社に行ってみます。どう猛な気持ちがわいてきた」と。私たちの活動は、人間の原始的な力を呼び起こすのだと思います。また、会員のお父さんで、少し認知症気味の方がおられ、もともと農業指導をされていて、しめ縄づくりを教えてくれました。認知症なんて嘘みたいでした。その後何度も来てくれています。
こうした活動で、自分自身も変わりました。まず、食生活が変わった。食べ物はおにぎりでいい。古い服で間に合うから、お金を使わない。小さなことにこだわらなくなる。好き嫌いがはっきりした。なぜ蛇・ゴキブリは嫌われる?とか、自然界での疑問がわいてくるので、暇な時間も面白い。五感が敏感になり、感情が豊かになってきた。恋する気持ちもわいてきて、夫婦仲がよくなります。
山城地域には熟年世代が多いとのことですが、「土の塾」も最初は団塊世代が中心でした。今は3歳くらいの幼児を持つ若い母親も増えてきています。みんな活動に参加すると、顔つきがよくなります。力もちになる。気前がよくなる。声が大きくなる。畑ではみんないい人になれます。私たちは次世代の子どもに野性の力を、そして大人にも野生の力をとり戻して、大人も、子供も、たくましくありたいと思っています。山城はいろんなところから移り住んで来た人が多いということですね。大抵どこでも、昔は地縁・血縁があったけれど、今は隣同士でもバラバラ。NPOで共通の目的を持った新しい結びつきができると思います。
NPOとの関わり方もいろいろあります。イベント参加してみる、手伝う、団体のものを買う、寄付をする、会員になる、運営に参加する、事務局スタッフになる。新たにNPOを立ち上げること等々。みなさんが今回体験塾に参加されて、どんな形を目指されるかをそれぞれ考えていただけたらと思います。
市民と行政がイコール、行政がちょっと大きい比重のところなど、協働の仕方はいろいろ違いがあって良いと思います。今は行政と市民がもっと協働していかないと、市民生活がうまくいかなくなっている段階にきていると思います。
ある集いでの意見で「楽しいことには人が集まってくれるけど、意識的なことにはなかなか集まってくれない。でもNPOには両方の要素があってよいと思う」と。また、あるNPOは「何かを始めるときはみんなで徹底的な話し合い、みんながOKしないと進まないシステムで運営をしている」という意見を聞きました。いずれもNPO活動をしている人ならではの意見だと思いました。
一方、ネガティブな情報になりますが、NPOを立ち上げて1~2年目はみんな頑張ります。でもその後が円滑にいかなくて、全然活動しなくなり、廃業の方向にいくNPOもあります。一緒に動く仲間がどれだけいるか、意志が通じ合っているか、素晴らしいNPOはそれがすごくうまくいっています。大変なのは、人、時間、お金で、理事会ばかりに時間取られすぎるのもしんどいし、あの人とは気が合わないとかもあるかもしれません。こうした問題をうまく乗り越えたNPOは長続きしてよい活動ができます。
阪神大震災の時、私は前の職場で忙しく仕事をしていました。自宅のある高槻の町で両隣だけ声をかけて、仕事にすっ飛んで行きました。後で、私はここに住みながらも、気持ちは会社に向いている、仕事人間な自分が「根無し草」と感じました。次のステージは地域にしっかり根を張った生き方をしたいと思っています。
私にとって、土の塾は居場所で、NPO活動は人生を変えてくれた「根っこ」になりました。団塊世代の方は、これから次のステージが始まります。皆さんは、入門講座でいろいろなNPOと出会い、様々な体験をされると思います。体験を通じて、いろいろな形で大きな根っこを築いて、豊かなステージをつくっていってください。それがきっと、元気なまち、魅力あるまち、あなたの好きなまちをつくることにつながると思います。
※講演や体験塾の詳細は、ホームページをご覧ください。
体験塾は21名が受講され、11月9日に閉講式。約1ヶ月間に延べ43名が、9体験メニューから選択したNPO活動に参加されました。閉講式での体験者の声を一部ご紹介します。
NPOや地域団体が、地域課題に取り組む上での様々な課題について、参加者同士で話し合う中で解決し、地域活動の次の一歩につなげる講座を、9~11月に5回シリーズで開催しました。
全体企画はNPO法人子育てを楽しむ会が担当され、子育て支援、まちづくり、発達障害児支援、環境保全等のNPO、行政職員等15名前後が参加。コーディネーターはNPO法人働きたいおんなたちのネットワーク吉田秀子理事長で、NPO法人化、行政との協働・関わり方、助成金の活用、次世代のリーダー育成等をテーマに活発な情報交換と交流を図ることができました。
詳しい内容については、今後、ホームページ等で紹介する予定です。
立命館大学政策科学部の基礎演習・地域での体験プログラムを実施。テーマごとにNPOの活動見学やヒアリング、現場体験
など、フィールドワークを行いました。
源氏物語千年紀を記念して、新たな宇治観光の魅力を探るため、観光客等に着物姿で宇治橋周辺を散策してもらう取組が10月からの約1ヶ月間、当センターを拠点に実施されました。同企画は、京都市内で着物パスポートの経験を持つNPO法人あいらぶKYOTOが主催し、地元NPO、立命館大学、京都文教大学などが連携。京都文教大学の着付けサークルの学生さんがボランティアとして着付けやPRに参加し、立命館大学公務研究科の長
濱さんは「宇治観光アンケート」で宇治観光の満足度や魅力調査を取りまとめました。
地域や商店街の方々との交流や、NPOセンターのPRのため、NPO法人まちづくりねっと・うじ、立命館大学と共同で、ラッピング体験や手作りグッズの販売、山城のNPOパネル展示などを企画。「きもので楽しむ源氏物語のまち・宇治」のPRもかねて、立命館大の学生が着物姿で、つきたてもち太郎「立命茶屋」を出店。大人気で、売り上げ上々、大忙しの一日でした。ブースをご利用の皆さん、ご協力いただいた皆さんありがとうございました。
新しいセンター事業及び協働団体の事業を紹介します。
いよいよ師走、当センターも開設して早くも7ヶ月です。この間、いろいろな人や団体にご協力やアドバイスをいただき、ありがとうございました。おかげさまで、11月末で約2,300名の方にご利用いただきました。来年も、引き続きよろしくお願いします。
「広げよう協働の輪つなげよう協働の輪」をキャッチフレーズに、この情報誌をお届けしています。こんな情報がほしい、こんなことを教えてほしい、その他お気づきの点など、ご意見やご要望をお寄せください。
問い合わせ先
京都府山城NPOパートナーシップセンター
e-mail:y-npo@drive.ocn.ne.jp
(事務局:京都府山城広域振興局企画総務部企画振興室TEL0774-21-2049FAX0774-22-8865)
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